表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Godspeed 星継ぎ物語 勇者のつもりだったのに編  作者: まとあし
勇者のつもりだったのに
7/15

学園へ(1 夜中の密会)

初めて小説を書いています。

プロローグで勇者や異世界の背景を小出しに説明をしています。

書いてる途中で辻褄が合わなくなることも多々あり、勇者や異世界の背景修正が多くなっています。


しばらくの間、ご容赦をお願いします。


勇者たちは謁見の間を後にし、そのまま王城を出て城下町の宿に向かった。

中世の街並みも馬車に乗るのも初めての者が多いらしく、勇者たちの間でちょっとした歓声が上がっている。


ミノル以外の勇者は、激動の1日を終えて安堵と笑顔の表情を浮かべている。

会話も弾んでいるようだ。


みんないい顔してるなぁ。

召喚され、陛下との謁見も無事に終わった。すごい一日だったもんなぁ。みんなひと仕事終えた良い表情をしてる。


おれは……やらかしてしまったけど。無かったことにできないし。開き直って一から、いや、マイナスから出直すしかないが、しかしポジティブシンキングだ!

小耳に挟んだ学園生活は意外と楽しそうだし未来は明るいと思おう。



宿は王都の城壁広場に接した旅立ちに適した一番立地の良い区画に建てられていた。

王都は王城をほぼ中心して、城壁で囲まれている。

王城から城壁門まで2㎞ほどの距離だ。

城下街ではゆっくり馬車を走らせるため、20分ほど掛かった。


ジレス司教は宿と言っていたが、その宿がかなり大きい。迎賓館まではいかなくても、王族や貴族が利用することを前提に建てられた豪奢なホテルだ。



宿に着くとジレス司教がこれからの予定を伝えてくれる。

「今夜から3日間、知己を得るためそして深めるため、この宿に泊まっていただきます。

 慣れない世界ですので外出は控えて下さい。


 宿泊中は、この世界の基本的なことを学んでいただくとともに、

 貴族や商人の方々とも顔繫ぎをしていただきます。


 勇者の活動の多くは貴族や商人の方々に支えられています。

 今後のためにも勉強会や夜会やパーティーに参加していただきます。


 各自一部屋ずつ用意しております。また食事や水・果実水もご用意してございます。


 軽食は部屋で取られてもよいですが、食事は食堂にてお願いします。

 朝食は5時から7時まで。

 昼食は12時から14時まで。

 夕食は18時から21時まで。

 軽い食事であればのをいつでも大丈夫です。

 なお、お酒は控えて下さい。8歳ですので。

 その他、何か必要なものは、控えている騎士に申しつけ下さい。


 お風呂は共同浴場がございます。

 いつでもご利用できるようになっておりますので、ご利用下さい。


 それでは、今から皆さんに鍵をお渡しします。

 ゆっくりおくつろぎ下さい。


 3日後の朝は7時に出発します。

 7時前に出発のお声をお掛けします。

 身支度を整え、宿の前にある広場にお集まりください。

 


 尚、私は201号室に宿泊いたします。

 なにかありましたら、お声を掛けてください。


 では、鍵をお渡し後、解散です。

 本日はお疲れさまでした」


食事か……忘れてたな。食事と聞いたら、急にお腹がすいてたぞ。

考えてみれば、昼頃に召喚された後は、水しか口にしていないもんな。


おれが着替えや謁見の時間を待つ間に小耳に挟んだ情報では、食事事情は前の世界とあまり変わらないらしい。

洋風の顔立ち、服装、建物、文化であることから、洋風の食事と変わらないってことだろう。

それとこの世界は、食事が朝夕の2回の習慣の人がも多いらしい。


しかし、日本人っぽい人が周りに見当たらないなぁ。

この分だと、鮨や刺身、鰻、うどん、天ぷらなどの和食はあるのだろうか?


懐中時計で確認すると、18時までには少し間がある。

とりあえず荷物あるので部屋に行こう。皆はまだロビーで歓談をするようだが、少し独りになりたい。


独りで部屋に向かうハジメを他の勇者が見ている。


「なぁ、ジェノ」

「なんだい?マット」

「あいつ変わってるよなぁ。いつも独りで居ないか?」

「それは私も思っていたよ」


「食事に誘ってみるか?」

ジェノスの表情が少し硬くなる。どうやらミノルと距離を置きたいと考えているようだ。しかし、そのことを皆に悟られぬように直ぐに笑顔に戻した。

「なぁマット。 彼は謁見のこともあるし、独りで居たいのではないだろうか。今日はそってしておいてやらないか?」

「それもそうだな」


その光景を見ていたジレス司教も複雑な表情だ。

ジレス司教は悪人ではなさそうだが、出世欲が少し強いように見える。

そして彼はミノルのことを常に気に掛けてもいるようにも見える。この世界にうまく溶け込めると良いと思っているようだ。

しかし、一方でミノルを利用しようともしているのも確かなようだ。


「ジレス司教、お時間よろしいですかな?」

身なりの良い執事のような人たちが何か想いに耽るジレス司教を見つけ取り巻き始めた。


「これはこれは皆さま。すでに部屋はご用意しております。さっそく調整を行いましょう。

 殿下の代理の方はおられますか?


 クレシア殿でしたか。

 ええ、資料はもうお手元に? ええ、例の話の。

 もちろんご説明いたします。

 ささ、他の方もどうぞ」


貴族や貴族の代理の執事がジレス司教と共に用意された広い部屋に集まる。

「早速ですが、今回の目玉はお手元の資料にある通りジェノス・ハイとマット・ウィリアムズです。彼らのギフトは、実に素晴らしい。そして、眷属には……」


ジェノスとマットのギフトは身体強化、魔力強化、魔力吸収である。

彼らは身体・魔力ともに最高の勇者なるだろう。

そして従者や眷属従者にもその加護が見込める。


この部屋に集まったのは、勇者の従者候補となるべく集められた子供をもつ貴族の関係者だ。

優秀な勇者につけば、能力も上がりやすい。自ずと生存率も高くなる。


そして、何と言っても眷属従者になることは王族貴族の名誉になる。

たとえ子供が戦闘で死亡したとしても家の名声を上げてくれる。

親としても王侯貴族としても、優秀な勇者の従者になるために躍起になるのも当然のことだ。


「性格はどうですか?

 勇者に選ばれてきているので、間違いないと思うが。


 明日からの言動はもちろん見るが、

 今日あなたが受けた印象で構わないから教えて欲しい」


ジェノスやマット、他の目ぼしい勇者、もちろんミノルの情報も報告される。

参加者からも情報が上がり、勇者一人一人の情報が交換される。


このような会議が勇者が眠るころに毎夜、3日間行われる。



最終日の18時過ぎの食堂では多くの人が食事を楽しんでいた。

勇者一行や王侯貴族が優先なため空いている席が無いと断られ、外に食べに行く商人たちもいる。


ミノルが食堂に向かうために部屋を出て階段へ向かっていると。


「お食事ですか?」

と、騎士から尋ねられた。


「はい」

短くミノルが答える。


「ご案内します。

 こちらへどうぞ」

2階フロアーの割と広めの階段ホールは、騎士の詰め所になっていた。


おれたちが困らないようにとの配慮と勝手に出歩かないようにの見張りのためだ、お疲れ様です。


食堂の一角には、勇者と関係者用のスペースが設けられている。


独りで食事に来ているのは、おれだけか?

3日目ともなると既にいくつかのグループが出来ていた。


いつも部屋に籠ったのが原因か。いや、おれ以外の皆は初日から馬車移動でも会話が弾んでいたしな。日々の勉強やパーティーなどでも、上手く立ち回れなかったし。

それに今さら会話に入るのも気が引けるな。


今日の食事は洋風のステーキコースだ。

脂肪の少ない赤身の肉だが旨かった。

付け合わせも悪くない。

パンは小麦の風味が強く少し硬いが、それが程よい良い風味をだしていた。


ここの食事は旨い。周りの勇者たちも、食べなれた味の食事で満足そうだ。

毎回こんな美味しい食事が出来るとは思ってもみなかった。この宿のシェフが一流の料理人なのだろうか?学園や街のレストランはどうなのか気になる。


夕食を食べ終えたハジメは、また独り風呂に向かった。


他の人とは学園でもしばらくは一緒だし、 少しづつ溶け込んでいけば良いだろう。

しかし、貴族や商人の人たちとあまり話せなかったのは良くなかったな。勇者の旅はその旅先の土地の貴族や商人に宿屋や食事、時にはお金も世話になることがある。


まぁ、贅沢を言わなければ何とかなると信じよう。消極的だけど、これもおれの性格なので仕方ない。


言い訳を思いつつ風呂に浸かるミノルであった。



3日目の深夜やっと従者の割り当て調整が終わりに近づいた。

満足顔の貴族代理の執事がいる一方、パッとしない顔の執事や貴族もいる。


パッとしない不満顔の執事や貴族は、低い評価の勇者の従者に割り振られた関係者だからであろう。そしてはっきりと不満が態度や顔に出ているのは、ミノルの従者に割り振られた関係者たちだ。ミノルの消極的で内向的な性格も低評価なのだが、彼のギフト長寿はもとより他のギフトも如何ともし難い。そしてあくまでも噂であるが、神々の不況を買っているとの噂が出ていることも不評の一因だ。


ここに貴族自らが来ている者も居る。たぶん男爵だろう。

我が子を少しでも有利な勇者の従者にねじ込みたい思いが透けて見えるが、王族や公爵家、侯爵家などの上位の貴族執事の意向に逆らえず苦虫を潰したような表情だ。


伯爵家や子爵家の執事の中にも割り当てに不満顔のものもいる。主のため、その子息や令嬢のために、強く要求を出したいが、王族や公爵家の不評を買うことにならないか心配で、良い勇者の従者になることが出来なったようだ。


ミノルの従者に当てがわれた貴族の執事と男爵ちは、密かに話し合い、この場で調整を覆すのは難しいと判断したのか、一旦は調整を受け入れ、執事は主の貴族に、男爵は寄り親の貴族に助けを求めることにした。

会場を出た彼らはその足で報告と相談を持ち掛けに行った。


ちなみに、ここには騎士や平民の子供の親は呼ばれない。

騎士は明日の朝に調整されて馬車に乗り込むことになる。

その後、平民の子供が適当に馬車に案内されることになっている。



翌朝6時過ぎ、雲が少しあるが良い天気だ。

空は高く青い。

風も気持ち良い。

旅の初日としてはうってつけの日になった。


ミノルは既に独りで広場に居る。

いや、独りだが周りではたくさんの人働いている。それをミノルが独り眺めているのだ。

周りで働く人々は、学園まで送り届けてくれる騎士たちや物資を運ぶ商隊、それに関係する人々だ。彼らは忙しく出発に向けて最終準備や確認作業を行っている。


彼らの作業を見つつミノルは考えている。

謁見での失敗とこれから先の不安と期待で落ち着けなかったのだ。それに特にあの謁見の声のことも気になって、結局昨夜はほとんど眠れなかったのだ。



なぜこんなに早くに独りでいるかと言うと、眠れぬ夜を過ごしたミノルが懐中時計を見ると朝の5時少し前だった。

部屋に置いてあるタライの水で顔を洗い歯を磨く。

そのまま身支度を整え、食堂に。


空いていると思っていた食堂は商人たちで酷く混みあっていた。

そんな騒がしい中、朝食を済まし騎士のひとりに広場の集合場所まで案内してもらう。集合時間には少し早いがこれで寝坊は無い。そんな感じで独りで広場に座って働く人々を観察していたわけだ。




物思いにふけながら周りを見ている内に、周囲のが喧騒さらに大きくなってきた。


人が増えてきたな。子供たちも居る。あの子たちが、おれたちと一緒に学園に行く子供かな?


何気なく子供たちの方に耳を澄ませると会話が聞こえてきた。

「お前も選抜されたのか?」

「ああ、お互いに頑張ろう」


あれ?あんなに遠いのに会話が聞こえる?昨日まではあんな遠くの声は聞こえなかったのに、これは勇者の能力が開花してきたってことか?よくわからないけど、そうなのかな。


それはともかく、選抜された?とは。そっか。試験に受かった子供たちなのだな。きっと彼らは優秀な子供たちのなのだろう。例の勇者の従者候補ってことか。


「あそこに座っているやつ、勇者か?

 黒い髪に黒い目。

 沈黙のミノルじゃないか?」

「そのようだな。」

「おい!見るな! 目でも合って、こちらに来たら困るだろ!」


噂が流れるのは早い。

汚名返上。

名誉挽回……がんばろう。できるだろうか?できるだけ頑張ろう……。



それにしても大規模な旅団だ。人を乗せる馬車が16台、荷馬車が30台。

多くの騎士の護衛もある。

大所帯だ。


学園がある街まで1日25km~30㎞を走り、10日間の旅だそうだ。

途中の村々に泊まりつつ行程を進める。



出発の号令が響き、いよいよ出発だ。

いろいろ有って、おれの乗った馬車は幌馬車で7人乗っている。

大人2人に子供5人だ。


いろいろ有ってのいろいろは、は今は考えたくない。


冒険者風の服は支給されているのか、子供たちは皆同じ格好だ。

まだ緊張しているのか不安なのか、誰も話さない。

でも、子供らしく皆の目はキラキラしている。


空きスペースに追加の荷物が所せましと載せられている。


ゆっくりと馬が歩み始めた。


城壁の大きな門を抜けると田園風景が広がる。

大自然の中、学園に向けて馬車がゆっくり進んでいく。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ