謁見(ジレス司教)
アラン・ジレスです。
フランギル大聖堂の司教を勤めています。
フランギル大聖堂のNo2を自負しています。
今日の勇者召喚の儀をつつがなくこなせたので、フランギル大聖堂の大司教へそして枢機卿へまた一歩近づいたことでしょう。
残すは陛下への謁見のみ。
このまま順調に済んで欲しいものです。
フランギル大聖堂の大司教の座が手に入り、陛下からの件の例の依頼も上手くこなせれば私の地位も盤石、いろんなことが思うがままです。
私のためにも勇者たちにはしっかり働いでいただきましょう。
勇者たちの中で一番落ち着いているは、ジェノス・ハイのようですね。
勇者の素質もかなり高くて良いようですね。
ここは一つ、彼に陛下からのお言葉への返礼の一番手になっていただきましょう。
なに、簡単な言葉ですので、落ち着いている彼ならそつなくできるでしょう。
・・・謁見・・・
ジェノス・ハイ、やはり良いですね。堂々たる口上、見事でした。
幼い声とはいえ、力強さが伝わってきました。
役に立ちますね。
それを見抜いて依頼した私、さすが私です。
さてさて、問題のミノル・サトウですね。
なぜに返礼の言葉を返さないのでしょう?
あっ、例のあれの関係で更に貶められているのでしょうか?
しばらく様子を見たい気もするが、ここは陛下の意向に協力しましょう……。
そう、不自然にならないように助け船を。
「陛下、お恐れながら、ミノル・サトウ殿はどうやら気が動転していてうまく答えられないようです」
陛下、あまりにこやかな笑顔は良くないですよ。まぁ、例の陛下からの依頼をミノル・サトウに担って貰うことは私が進言したこと、少し心が痛みます。しかし、この不祥事でミノル・サトウの評価は低くなり、陛下の付けた二つ名で更に噂に尾びれが付くでしょうからね。陛下はさすがに策士ですね。
昔から勇者の転生前の年齢や過去は公式に聞かない。昔から聞いてはいけないと伝わっている。個人的に親しい間柄になれば別なのだが。
私もミノル・サトウが元の世界で何者で何歳がなど一切聞いていない。
集まった貴族たちは、本当に子供だったのかもしれないと思ったかもしれない。
召喚するにあたり、活動に問題が起こらないように、いくつかの条件を付与している。
1.勇者になりたい気持ちが極めて強い者
2.正義感が極めて強い者
3.困難に直面しても、負けずに勇気を奮い立たせられる者
4.異世界に来ても、一人で生きられる精神力の強い者
4つ目の条件で子供は対象外になるのが普通だ。
神に召喚を依頼するのだから間違いはない。
しかし、受け取る側の人には勘違いが多い。
ミノル殿には気の毒だが、これから問題児勇者を演じてもらいましょう。
しかし、ギフトの長寿が気になりますね。過去の資料にないとすると、全くの初のギフトになりますね。要注目です。
そうそう、勇者は貴重な存在です。
周りが見限っても、私は私のためにしっかり支援しますからねミノル・サトウ。どうぞご安心を。勇者を、我が国、陛下のために、何よりも私のためにしっかり見守り育てて行きましょう。
「例のあれの関係」「陛下の依頼」……ミノルの知らぬところでミノルは既に利用されようとしていた。