謁見(ジェノス・ハイ)
おれはジェノス・ハイ。
ジェノと呼んでくれ。
とある星の田舎町に住んでいた。
42歳、独身で学校で歴史を教えていた。
異世界転生?
異世界召喚?
どちらでも良い。
子供のころから、ヒーロー憧れていた。
男の子なら誰でも英雄になりたいって思うだろ?
おれは大人になってからも強く憧れていた。
強く思っていたことで、召喚されたのだろうか?
そうに違いない。
召喚に不満がある?
バカを言うな。
こんなチャンス滅多にない。
本物のヒーローだ!
おれの力を見せつけてやる!
着替えながら他の勇者を観察していると、ジレス司教から声を掛けられた。
「これから陛下に謁見していただくが、陛下から声が掛けられたら最初に応対して欲しい。
お願いできますか?」
これは勇者筆頭の役割?
チャンス!
すくなくとも悪い話ではない。
「お受けします」
簡単な受け答えだ。
間違えることもないだろう。
謁見の間で陛下から声を掛けられた。
勇者として力強く応えよう。
「ジェノス・ハイです。
招きに応じ参じました。
フランギルに忠誠を誓い、
フランギルの剣となり魔王を倒してご覧にいれます。」
力強く言葉を返せた。
顔は見ることが出来ないが陛下も満足そうだ。
他のメンバーも緊張が伺えるが上手く応えられている。
一山超えた気分だ。
あれ?終わりか?ミノルってやつが居ない?そんなはずはない・・・どうしたんだ?
顔を上げられないので、おれには状況がわからない。
おい!促されているじゃないか!
震えて声が出ないのか?なんてことだ!せっかくうまく行っているのに、全く情けない!
頼むよ、足を引っ張らないでくれ……同じ勇者として恥ずかしい。
ジレス司教から助け船がだされた。
見るに見かねた、と言うことだろうか。
ミノルはダメだな。
なにが『沈黙のミノル』だ。笑わせる……。
さっきもジレス司教から憐みの目で見られてたな。こんな召喚されて間もないのに何か問題のあるやつなのか?
しかし、いざ戦闘で固まられたら命とりだ。深く関わるのは止めておこう。あっ……勇者は回復ができるから簡単には命を取られないか。まぁしかし、奴はダメだな。
一波乱あったものの無事に謁見が終わった。
今から王城を出て、宿に行く予定だったな。できれば他の勇者とも話をしたいな。情報交換するほど情報を誰も持ってないだろうが、いざというときのために、各自の性格や考え方を知っておくのも悪くない。
気分が落ち着いてきたのか腹が減ってきた。とりあえずは飯を食いたいな。