98話 クレアさんと行く、嬉し恥ずかしダンジョン旅行 なんかのポロリもあるよ④
大分冷静になってきたから後片付けをするか。凄いだるいが、なんとか自分に気合を入れて動き出す。
まずは一番近くのオーク周りから片付ける。
派手に水をまき散らしたため、水たまりになっている所に近づいていく。
自分で操っている時は塊になっているのでそうでもないが、こうしてばら撒かれると凄い量の水を操っているんだなと実感させられる。
まずはこの水の後始末だ。
水に杖を近づけてリンクを再構築していく。
リンクが出来ればもうこれは俺の水だ。自由自在に操れる俺の水になるのだ。そうして散らばった俺の水を集めていく。
イメージ的には、一旦近くの水にリンクを繋げて、そのリンクによりつながった水から水へ自分のリンクの範囲を広げていく感じだ。それで操れる水の範囲を増やしていく。見える範囲の水が全て操れるようになったら後は集めて一つの塊にする。
大分、大地に水がしみ込んだので最初に操っていた時よりは大分小さな塊になったが、まあしょうがない。回収できただけでも御の字だ。
何故こんなせこい事をしているかと言えば、単純に水が勿体ないからだ。ただでいくらでも水が汲める地上と違って4階では水が高い。だからなるべく地上から持ってきた水で賄おうと頑張っているのだ。もちろん飲み水はなくなったらちゃんと買う。あくまで戦闘用の水は使いまわす所存だ。
水を回収したおかげで見るからに大惨事だった水浸し現場も普通に地面が濡れている現場くらいになった。良かった。良かった。証拠隠滅。ここで大量の水で洗濯機の中を再現した上に、盛大に水をばら撒いた馬鹿はいなかった、いいね。
次にボロ雑巾のようになっているオークに近づく。
案の定、死んでいるのかスキル石が出ていたのでスキル石を回収する。死体は新たに操っている水でくるんで運んで行く。
その後は遠くで倒れている2匹のオークに近づいていく。
この2匹の事は大技をくり出したせいですっかり忘れていたけど、見たらスキル石を出して倒れていたので普通に死んだらしい。
顔の周りに張り付いていたはずの水はなくなっていたので、あの水竜巻合体事故の影響で解除されてしまったようだ。
落ちていたスキル石を回収したら、2匹の死体の近くに運んできた死体を水から放り出す。死体はここに放置しておいて最後に全部まとめて埋める。埋める場所は4-3で魔鉄鉱石を埋めている所だ。
そこまで運ばなきゃいけないので、死体を水の中に入れながら探査したいところだが、万が一の時に死体が入っている事により操作が失敗したら嫌だし、何よりグロいから一緒に移動するのは最小限にしたい。死体だけに。
くっ、思いつかなきゃ良かった、死にたい。死体ギャグだけに。すみませんもう黙ります。
と言う訳で戦いも終わったので次に行きたいところだが、なんかやる気が出ないので、ここで一旦休憩をとる。思えば3階で休憩してから一度も休憩せずここまで来て戦闘したのだ、疲れて当然である。
決してここまで来る道中に、考えて考え抜いたとっておきの必殺技が、クレアさんの琴線に1ミリも触れなかったからではない。嘘じゃない。心は折れてない。半分くらいしか。
休憩中にゴブリン達が、クルクル回りながらお互いにぶつかるというふざけた遊びをしている。さきほどの大技の再現らしい。何でお前らが回ってるの?お前らもあの技、くらいたいの?
ちくしょう、こいつら俺の傷口をえぐって、俺の心を完全に折りに来てやがる。やるじゃないか、よくぞここまで成長した。褒めてやろう。だからもう止めてください。俺のライフはゼロです。これ以上は致命傷です。
そう思っていたら隣に座っていたサチも参加してクルクル回りながらゴブリン達にぶつかりに行ってた。嘘だろ。サチ、お前もか。
呆然とぶつかり合っているゴブリンとサチを見ていると、ゴブリンにぶつかったサチがそのまま、弾き飛ばされ転んでしまう。しかしサチは嬉しそうに笑いながら立ち上がると、またゴブリン達にぶつかりに行く。
ちょっと遠くに座っているクレアさんもそれを見て笑っている。
まあ、楽しいならそれでいいか。
十分休憩もできたし、ちょっと前向きになれたので狩りの続きをする。
その後、4-2でもう1組、4-3にいって2組狩った。当然、全部ウォータデスマスクと短剣で一突きのコンボだ。何の苦労もなく倒せた。やっぱり大技なんて要らなかったんだ。
この時点で大分遅い時間になったのでこの日は終了。
死体は全部移動させ、4-3の魔鉄鉱石を埋めた場所を掘り返して、そこに全部埋めた。掘り返すのも埋めるのも全部、ギンが高速でやってくれた。よくやった、何時もありがとう。
「これで今日は終わりにします。ダンジョンの街に帰って休みましょう」
「・・・分かりました」
返事をするクレアさんが少し暗い。何かあったのだろうか?
まあ考えて分からないし、聞き出す話術もないので街に行く。
街に着くともう時間的に大分、人が起きてきているのか、大勢の人がいて活気にあふれていた。クレアさんも夜の街からの変化に驚いているようだった。
街に入って、その辺の屋台で食べ物を買って食べる。相変わらず値段が高いがしょうがない。最初はクレアさんが少し遠慮していたが、ゴブリン達もサチもバンバン食べるので、それにつられて食べている。沢山食べて大きくなりなさい。何がとは言わないが。
ご飯をたんまり食べたので次は宿屋に行く。
売る物が無いので、今回は冒険者ギルドへは行かない事にした。
真っ直ぐに前回も泊った宿屋へ歩き、程なくして到着した。
「3人と4匹なら1泊70000だよ」
受付に立つオッサンにそう言われる。相変わらず高いがしょうがない、それでお金を払う。
払ったらオッサンに部屋の場所を教えられ、カギを一つ渡してくる。
「え!?1部屋なんですか?」
「そうだよ。連れは小さい奴ばかりだし、ベッドは4つもあれば十分だろ」
確かに俺とサチで1つ、クレアさんが1つ、残りの2つのベッドをゴブリン達の3匹で使えばいいのだから、2匹で1つの組を作れば普通に眠れるだろう。
しかしそれだと重大な問題が一つある。
それはクレアさんと一つ屋根の下になってしまうではないか。いや同じ宿に泊まるのだから、元々一つ屋根の下なんだけど。そうじゃなくて、俺が言いたいのはそういう事ではなく。同じ部屋で寝泊まりしちゃうと、これってもう同棲じゃん。友達以上恋人以上じゃん。やばい興奮して来た。
違う違うそうじゃない。俺は紳士だ。常に紳士を心がけている男だ。男女がいきなり同じ部屋に泊るのはまずい。そういうポーズを取ろう。
「いやでも男女ですし、出来れば部屋を分けて取りたいですが」
「何?2部屋にしたいの?それなら倍の140000だね」
はあ!?なんでいきなり倍なんだよ。人数で金とるなら普通に70000だし、部屋で金とるなら部屋単位の値段を提示して2部屋分、請求しろよ。
まあ、1部屋使うのに1人分の料金で泊れないことは分かる。その分泊まれる客が減るからな。だけど倍はないだろう、せめてベッド4つなんだから4人分の料金を要求するべきだろう。
「いくらなんでも倍はないでしょう。せめてベッドが4つなんだから4人分の料金で一部屋でしょう」
「・・・ああ確かに、じゃあ一部屋、追加するなら30000追加で100000でいいや」
減るのかよ。結構、素直だな。じゃあそれでいいか。
いや待てよ、冷静に考えると、やっぱ駄目だろう。どう考えてもおかしい。納得できない。
何で直ぐに値下げするんだよ。ここはもっと足元見る場面だろう。もっと、どん欲になれよ。商売してるんだろ。お前には養う家族はいないのかよ。
そっちが高い料金を要求する。それも、払えないくらいのぼったくり価格をだ。そうすれば。そうすれば。クレアさんすみません、ぼったくり価格なので一部屋しか取れません。本当に本当に不本意ですが一部屋でいいですか?となるじゃないか。
それなのに、こっちの提示通りに値下げしたら、俺が払えそうじゃないか。払えそうなのに1部屋でいいですかとは提案しづらいじゃないか。どうしてくれるんだ。責任もって値上げしろ。
いや、100000はまだ常識的に考えてぼったくり価格か?ここからもう一ゴネ出来るか?
「それでもまだ高いですよ」
「じゃあ90000でいいよ」
下げるな!!何、勝手に下げてるんだ!!それだと困るだろお互いに。
故郷に残した家族へ仕送りの一つでもしたいだろ。馬鹿か。ちゃんと考えろ。だから勝手に下げるな。
ちくしょう、こうなればイチかバチかもう一ゴネしてみるか?
しかし、それでまた下がってしまったら最初の70000とほぼ変わらなくなってくるぞ。そうすると一部屋を主張する意味がなくなってくる。
どうする、どうするんだ、俺。
「あの別に一部屋でもいいですよ」
考え込んでいた俺に、そうクレアさんが提案してくれる。
いいんですか?じゃあ一部屋で。
と言いかけて思いとどまる。まだ早い。これじゃあ俺が一部屋を望んでいるみたいだ。全くの不可抗力で、仕方なく一部屋になってしまう。そういう展開に持っていかなくてはならない。
「いやでも、同じ部屋は流石にまずいですよ。なんとか二部屋に出来ないか」
「じゃあ、8」
「ちょっと、黙ってて貰えますか。今こっちで大事な話をしているので」
今、宿屋の店主が俺達の会話に割り込んで、とんでもない事を言いそうになったので黙らせる。
ちょっと待ってろ。今、一度は断るっていう、日本人の様式美をやっているんだから。この儀式が終わって一部屋になったらいくらでも払うから。140000でも200000でも。金ならいくらでもある。
「・・・本当に一部屋でいいですよ。ベッドが4つって事は四人部屋なんですよね?」
「はい、そうです。完全に四人部屋です。それでも一部屋はなあ」
不味いよな。一部屋は不味いよな。四人部屋とは言え、一部屋は不味いよな。でもクレアさんがそこまで言うなら。
良し、ここまでやれば、奥ゆかしい日本人として、何処に出しても恥ずかしくないだろう。そろそろ、一部屋に決めよう。
「・・・同じ部屋が嫌なのでしたら」
「いや、すみません。値段の都合上クレアさんには迷惑をかけますが一部屋でいいでしょうか?」
やべえ、やりすぎた。クレアさんが折れそうになったので、慌てて一部屋を提案する。
なんか凄い露骨な感じなってしまった。これだと必死で一部屋にしたいと思っているのが、バレてしまってないだろうか。仕方なく仕方なく一部屋な感じは残っているのだろうか。
「はい。一部屋で大丈夫ですよ」
「すみません。本当にすみません。店主じゃあ一部屋でお願いします」
「はいよ」
そう言って先ほど渡そうとしたカギを再び渡してきたので受け取った。
受け取ったら早速、部屋に行く。告げられた部屋の場所は前回と同じ場所なので迷わずたどり着く。
「えっ、こんなに狭いんですか。ベッドも4つってこんな形?」
部屋に入るなりクレアさんが部屋の狭さと2段ベッドに驚いている。
どうやら想像していた四人部屋とは全然、違ったらしい。
まあそうだろう。俺も最初は驚いた。でも、もう遅いんです。あなたはこの一部屋で一緒に泊る事に合意してしまったんですよ。ゲヘへへ。
「2段ベッドは何処を使いますか?何処でもいいですけど、上はゴブリン達が使いたがるので、上の場合はゴブリン達と話し合いになりますね」
「はあ、そうですか」
なんか心ここにあらずと言った感じだ。まだここで寝泊まりする事の実感が無いのかもしれない。ここは一気に畳み掛けるか。
「もしリクエストが無いなら、こっちで勝手に決めちゃいますけど」
「・・・はい。それで大丈夫です」
じゃあ、こっちで勝手に決めてしまおう。
「ゴブリン達は上のベッドを使っていいぞ。誰と誰が一緒に寝るかは勝手に決めろ。サチは俺と一緒にこっちの下のベッド。クレアさんはそっちの下のベッドを使ってください。それでいいですよね」
「は、はい。大丈夫です。・・・一緒に寝るのかいいな」
最後。今、最後に言った言葉。聞き逃しませんよ。ボソッと小声で言ったつもりでしょうが、バッチリ聞こえました。俺はその辺の難聴主人公と違って耳が良いんです。
何ですか?クレアさんも一緒に寝たいんですか。しょうがないな。狭いけど、狭くて大変だけど、そこまで言うのなら、一緒に寝るのもやぶさかではないです。
「サチちゃん。今日は私と一緒に寝ない?」
サチにそう聞いてくる。なんだ、そっちか。そりゃそうだろうよ、けっ。
横を見ると、サチが首を横に振って否定していた。
選ばれたのは私でした。そうでしょう。そうでしょう。クレアさんも俺を選んでもいいのよ。言わないけど。
まあ、そんな馬鹿な事を考えていてもしょうがない。もうかなりいい時間なので直ぐになる事にする。今日も疲れたし明日もあるのだ。
早速、ベッドの中に入って寝る態勢に入る。
それを見たサチもベッドに潜りこんでくる。良し寝る態勢に入ったな。ゴブリン達はゴブリン達で、まだ誰が一人で寝るか揉めている。あいつらは無視だな。じゃあ、お休みなさい。
「えっ、もう寝るんですか?」
寝ようとしたところでクレアさんに話かけられる。
「はい。明日も大変ですから早く寝た方がいいですよ」
横になりながらそう言って今度こそ寝ようと目を閉じる。
どうせ隣にクレアさんが居た所でこの状況では何も出来ないのだ。ならばすぐに寝るに限る。
「うぅ、ベッドが硬い。それに何だかかび臭い。これ洗濯してるのかな。うぅ」
何やら隣からそんな声が聞こえる。
まあ、この部屋のベッドは硬いし臭いしで、お世辞にも良いとは言えない環境だ。
もしかしたら、いい所の子であるクレアさんは経験したことない環境かもしれない。
だが甘えては行けない。冒険者とはこの劣悪な環境で寝ることが出来て一人前となるのだ。
だからこの環境に耐えて、頑張って寝てください。
明日、会う時は成長して、一人の立派な冒険者になったクレアさんと会う事にしましょう。
という事で今度こそおやすみなさい。
「うぅぅぅ。臭いよ。硬いよ。サチちゃん。サチちゃん。せめて手だけでも、手だけでも繋ぎながら寝ましょう」
うん。うるさいからサチ、向こうで一緒に寝てやって。
えっ、嫌だって?頼むよ、この通り。頼りになるのはサチしかいないんだ。明日、好きな物食べさせてあげるから。
なんとかお願いして、サチにクレアさんと一緒に寝てもらう事にした。
サチが来てクレアさんは満面の笑みだ。サチはちょっと嫌そうだ。すまない我慢してくれ。俺の安眠の為にも。後で好きな物、一杯食べさせてあげるから。
「えへへ、サチちゃんだ。サチちゃんと一緒だ」
サチが行って落ち着いたのか、クレアさんが嬉しそうにサチを抱きしめて寝転がっている。この分なら劣悪な環境の事は忘れているだろう。
騒いでいたゴブリン達も決着が着いたのか上のベッドの中に入っている。。
良しこれで万事OKだな。今度こそ寝るぞ。お休みなさい。
前回あとがきで、書こうと思い書き忘れた事を少し書かせて頂きます。
誤字脱字報告をしてくださる方。
とても助かっております。
皆さんのおかげでこの作品が、誤字脱字が死ぬほど多い作品から誤字脱字が多い作品にランクアップ出来ています。本当にありがとうございます。
感想を書いて下さる方。
大変、励みになっております。
返信が出来ていませんが、全部読んで力にさせて頂いてます。本当にありがとうございます。
以上、皆さま本当にありがとうございました。




