表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
絶対異世界無双したいマンが欠陥チート『スキル強奪』をつかまされた時に出来ること全部  作者: 立花 一


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

94/105

93話 4階層の敵

 昼過ぎに目が覚める。いつも通りだ。

 しかし、目が覚めた時、見慣れない光景に一瞬どこだか分からなくなる。

 そうか昨日、ダンジョンの宿屋に泊まったんだった。


 もそもそと2段ベッドから出る。見るとゴブリン達もサチもギンもみんな2段ベッドの上にいた。

 2段ベッドの上同士でキャッチボールをしている。楽しそうで何よりだ。高い金を払った甲斐があるという物だ。そういう事にさせて。


 出発するために身支度を始める。

 なんとこの宿には井戸がないらしく、水も買わなきゃいけないとの事。

 顔を洗う水を買うのも馬鹿らしいので自分の持っていた水を『水魔術』を使って増やして使う。

 これは飲料用にとっておいた奴だ。決してオークの死体を運ぶために使ったばっちい水ではない。あれ、この水袋が飲み水だよな?あってるよな?


 まあそんな感じ身支度を済ませたら飲み水を買う。

 俺のこだわりとして『水魔術』で増やした水を飲み水には使用しない事にしている。どこから来た水か分からないのであまり飲みたくないのだ。

 水が無くなってどうしてもという時なら飲むと思うが、水が手に入る環境ではなるべく飲まないようにしている。

 まあ、じゃあこっちの井戸から汲んでいる水が安全できれいなのかと言えば分からない。完全に気分であり好みの問題だな。


 飲み水も買ったので冒険者ギルドへ向かう。

 まずは買い取り所に行って昨日の買い取り値段を聞く。オークが1000で武器が全部で1100だ。

 全然、儲からなかった。オークなんて運ぶの凄い苦労したのに。武器だって嵩張るから積み方を苦労したし、それなのに2100って食事代にもならない。次からは全部埋めていこう。


 気を取り直して地図を買いに行く。これさえあればもう何も怖くない。迷子にもならないし、何より地図を書かなくていい。なんていい物なんだろう。

 販売店に行って地図を注文する。値段は30000だ。今までの地図に比べて高いが、地図の大切さを知った今では安いくらいだ。ありがとう販売店さんこれからも贔屓にさせてもらいます。

 後は、何か新しい武器とか薬とかがないか聞いてみたが別になかった。それどころか武器なんかはほとんど置いてない。狭いのであまり在庫を持てないそうだ。

 職人も地上にいるのでここでは、本当に全ての武器が無くなった時に地上に帰るための最後の予備くらいの扱いらしい。

 理由を聞くともっともだとは思うが、普通、ほらあるだろう。ダンジョンの街だぜ。普通の街では買えないとびっきり強い武器がさあ。なんかがっかりだよ。失望しました販売店さんのファン止めます。


 と言う訳で地図も買えたので、街をぶらついて食事をしたら、いよいよ4階探索を再開する。

 今日こそは蛇と戦っておきたい。何のスキルを持っているのか楽しみだ。

 

 早速、新しい地図で魔道具を起動した。なるほど4階はこんな形をしているのね。では街の外に出てみますか。

 今回は昨日とは別の出口から出てみよう。そっちの方が新しい敵も見つかるかもしれないし。


 そうして街の外に出る。

 街の外に出るときには、やっぱり冒険者が4人ほど待機しており、「こんな時間に?」とか「大丈夫か?」とか聞かれた。皆親切だな。

 「大丈夫です」と答えて外に出れば、今度こそ探索モードだ。


 いつ敵が出てきてもおかしくないように、水水水-麻-水水水-俺のバトルビーズモードになる。

 昨日一日この形を大分練習したので、かなりスムーズに動かせるようになった。

 蛇がいれば麻痺毒薬をもっと増やしていいかもしれないが、まあとにかくこれでやってみよう。


 少し歩くと次の部屋に出た。

 ここを4-4としよう。昨日行った反対方向の2つの部屋が4-2と4-3で今日のここが4-4とかの飛び飛びで付けると後でややこしくなるんだけど、まあしょうがない仮で4-4とする。


 4-4(仮)を歩いていると前方にオークの集団がいる。

 こっちでもまずはオークなのか。そう思いつつ、先頭の水をオークに向かわせて戦闘の準備をする。

 向こうはまだ気が付いていない。無防備に背中を見せている。

 これは勝ちましたね。そう思い、近いオークから順々にウォーターデスマスクを付けていく。


 良し、お前たち行くぞ。

 暴れてもがき苦しむオークを見つつ、オークに駆け寄る。そして一体ずつ短剣で刺し殺していく。

 あっさりとオークを3体倒した。やっぱ『水魔術』って反則だろ。逃れるすべがないじゃん。


 そんな感じで順調にオークを倒していく。

 4-4(仮)の部屋を全て探して回ったがここにもオークしかいなかった。

 じゃあ、次行こう。

 地図を見ながら別の部屋へと向かう。2つほど道が分岐しているので何となくで次の部屋を決める。


 結局オークは6体しかいなかったので全部の死体を水の中に入れて持ってきている。

 かなりのグロい光景にサチは怖がって俺の手を強く握ってくる。

 俺も怖い。なるべく、視界に映らないように完全に俺の後ろにしているのだが、それもそれで後ろからオークの水死体が襲って来るような気がして怖い。

 これが棺桶を引きずって歩くRPG勇者の気持ちか。そんな事を考えながら足早に次の部屋へと向かう。


 新しい部屋に入ると入り口付近にオークの死体を重ねて山にしておく。

 この部屋を4-5(仮)として、探索を開始する。

 この部屋は地図上では先ほどの部屋より大きく縦に長い。この地図の形、間違いなく蛇の形、これは絶対、蛇が出るやつだ。


 そう思いながら、部屋を探索する。

 全てを探索し終わる。

 はい、蛇はいませんでした。オークは沢山狩れたが、蛇は一匹もいませんでした。

 誰だよ必ず蛇が出て来るとかいってドヤ顔決めてたやつ。全然いないじゃないか。出て来い俺がぶっ飛ばしてやる。

 そう思うが、少し冷静になり、はっと気が付く。これは蛇の罠だ。この地形で蛇が出ると俺に期待だけさせて裏切る。そして俺達の仲を悪くさせるそんな巧妙な罠だったんだ。何て狡猾なんだ。流石は蛇だな。


 馬鹿なこと考えてないで次に行こう。

 少し休憩したら、次の部屋を目指す。この部屋からも2つに道は分岐しているので、また行く部屋を決める。

 今度は蛇のいそうな場所を考えながら決める。

 さっきは細長い部屋に蛇はいなかった。つまり、この楕円ぽい形をしている部屋こそが蛇がいる部屋だな。

 と見せかけてこっちの細長い部屋だ。先ほどの部屋で細長い部屋には蛇がいないと思わせておいて今度こそいるパターンだ。間違いない。


 そんな訳で続いても地図上で細長い形をしている部屋に行く。

 狩りを始めてからそれなりの時間が経った。この部屋で狩りをした辺りで今日の予定を決めないといけない。

 それは今日は地上に帰るかそれともまたダンジョンの街で一泊するかだ。

 ダンジョンの街はいまの所、全くと言っていいほど稼ぎが無い。だから何日か地上に帰って回復薬を売ったりして稼ぎを出さなきゃいけない。

 ただ、蛇が安定して狩れて、高く売れるなら、この4階に暫く滞在してもいいのかもしれない。

 全てはこの部屋の狩り次第だな。


 そういう事情もあって4-5(仮)で狩ったオークの死体は置いてきた。どうせ次の部屋で最後になるので、次の部屋で狩った死体を4-5(仮)に持ってきた方がいいと思ったからだ。

 まあこれは次の部屋でとんでもない量のオークが出ない事が前提の判断だ。だからオークよ一杯でるな。ほどほどに出ろ。


 そんな事を考えながら歩き、次の部屋に着いた。

 ここを4-6(仮)として、探索を開始する。


 何体かオークを倒して部屋の中央付近に行った時、それはいた。

 岩陰から顔を出してこちらを窺っている。

 蛇だ。顔しか見えないが蛇で間違いない。遂に俺は蛇に会うことが出来たんだ。

 だが感動している暇はない。向こうは既にこちらを認識しているのだ。もしかしたら攻撃態勢に入っているのかもしれない。

 こちらも素早く迎撃態勢に入る。


 毒とかあったら嫌だからなるべく近づかないで倒したい。だからゴブリン達も突撃させないでここで待機させる。

 蛇がゆっくり岩陰から出て来る。デカ。というか長っ。

 最初顔しか見えなかったので油断していたが滅茶苦茶でかい。胴体が恐ろしく長いのだ。


 少しずつこちらに迫ってくるその姿を見て、ますます近づきたくなくなった。

 この距離だ。この距離で倒す。


 蛇に近づけさせていた水を加速させ、一気に蛇に襲い掛からせる。

 一瞬で巨大に膨らんだ水が蛇に襲い掛かりそのまま蛇を水の中に閉じ込める。


 勝ったな。

 そう確信した次の瞬間、驚くべき事が起きる。


 蛇が水中を泳いでいるのだ。それも物凄いスピードで。体をうねうねさせて。

 

 今までの人生の中で、こんなスピードでうねうねしながら動き回る体の長い生き物は見たことが無い。

 蛇を捕まえるためにかなりの大きさに膨らんだ水の中を、出口を求めて上に下に物凄いスピードで暴れ回るように動き回る様は、端的に言ってキモイ。無茶苦茶キモイ。超キモイ。

 生理的に無理と言ってもいい。


 そんな生理的嫌悪を催すような蛇の水中軌道にげんなりしていたら、蛇が急にこちらに向けて加速したかと思うと一気に水の檻を突き破ってこちら側に向かってくる。


 やばい。やばい。超怖い。こっちに来てる。やばい。やばい。


 パニックになりながらもまだ蛇の体の半分を捉えている水を操作する。

 水の形を変えて蛇の頭辺りに持っていくと横から殴りつけるように水の中へ引き戻す。

 そのまま、蛇の進行方向を変える。変えた。

 だが、蛇もすぐさま水の流れを脱して、再びこっちに向けて泳いでくる。


 やめて。やめて。超怖い。もう無理だから。これ以上は無理だから。


 必死になりながら水を操作する。

 水の流れを変えて、変えて、変えまくって蛇の進行方向を変える。

 しかし蛇もまた水の流れが変わっても変わっても態勢を立て直してこちらに迫ってくる。


 キリがない。

 このまま、水の中で蛇と戦っていても全くダメージが与えられそうにない。


 意を決して、蛇を閉じ込めている水を解除する。

 瞬間、水の外に投げ出される格好で出て来る。蛇は一瞬何が起きたか分からないようにその場で暴れ回っている。


 今だ。

 この隙にバトルビーズモードの中団にある麻痺毒薬を操作し蛇にぶつける。

 蛇の暴れ回っている勢いが徐々に弱まっていき、最終的には動かなくなった。


 良し。うまく行った。やっぱり麻痺毒薬が最強だ。やっぱり麻痺毒薬を使っておけば間違いないんだ。わっしょい。わっしょい。


 迫りくる蛇の恐怖からようやく解放され、俺のテンションは何処かおかしくなってしまった。

 少し、時間が経ち冷静になった。

 

 後は、蛇にとどめを刺すだけだ。

 だが、さっきの動きを見てしまったので、蛇に近づく気にはなれない。もし近づいた瞬間に動き出したら俺はもうビックリしすぎて死んでしまだろう。そんな自信がある。だから近づかない。絶対にだ。


 遠くで、短剣に魔力を込め、蛇の首めがけて斬撃を飛ばす。

 見事に蛇の首が飛んだ。

 そして胴体の近くにスキル石が落ちたのを見た。


 そこでようやく、蛇を倒した実感がわくと共に全身の力が抜けてその場に座り込んでしまった。

 やっぱ凄い緊張していたんだな。俺が生まれてきた中でも一番の恐怖を感じたかもしれない。そんなやばい相手だった。

 そんな事を思いながら蛇をじっと見ていた。


 少し、休んでから立ち上がって蛇に近づく。

 ここから楽しい楽しい、戦利品確認タイムだ。

 蛇の近くに落ちているスキル石を拾う。


 蛇の落としたスキルは『致死毒』1.5、『熱探知』1.3、『消化』1.3だった。

 やっぱり、毒持ってたのね。しかも『致死毒』とかいう凄い怖い名前だし、やっぱり絶対に蛇には近づかない。

 『致死毒』については名前が怖すぎるのであまり使う気が起きない。もし間違って自分たちにかかってしまったらと思うと・・・。暫くは様子見だな。


 後は『熱探知』と『消化』か。

 『熱探知』は何かカッコイイ能力だから一度は憧れるけど、探知系は音探知があるからまあ、優先順位は低いな。

 『消化』はスライムのドロップで一杯持っているから全然嬉しくない。


 つまり蛇のスキルは大してめぼしい物が無かった。

 あんなに怖い思いをしながら、これだけとは。なんかどっと疲れが襲ってきた。

 

 今日はもう狩りをする気になれない。

 もしかしたら明日もここで狩りを・・・何て思ってたけど、それもなしだな。

 取り敢えずまだ時間的に間に合うし地上に帰ろう。

 この疲れた気分をフカフカのベッドで寝て癒すんだ。そうだそうしよう。


 そうと決まれば早速、行動だ。

 蛇は値段が分からないので持って帰った方がいい気もするが、麻痺毒薬を使ってしまったのと今はあまり蛇を見たくないので埋めていくことにする。

 4-5(仮)のオーク達を集めている所に持っていったら一緒に埋めよう。

 それまでは蛇は水で運ぶことにする。


 少し歩いていくと、蛇が水の中から襲ってきそうで怖い。速攻でその場で埋めた。

 精神的に良くない。少なくともフカフカして精神力を回復しないと無理。


 と言う訳で蛇を埋めて、オークも4-5(仮)で埋めたら4階での後処理は終わり。

 後はひたすら地上を目指して歩くのみ。

 

 4時間半もある道でしかも上り坂。

 何回か休憩をはさんで地上に出た時は物凄い達成感と凄い帰ってきた感じがした。今俺は生きている。


 持ち帰った物もないので屋台で食事をしたら、すぐにお屋敷に帰る。

 もうすぐだ。もうすぐで俺もフカフカの温かい布団で眠れるんだ。僕も帰るよ。おうちに帰るよ。でんでんでんでん、ばいばいばい。


 そうして屋敷に着いた時、異変が起きた。

 俺を見て皆が騒いでいる。

 無事だったのか。とか良く帰ってきたとか。そんな事を言われる。

 あっ、そういえば4階に泊る事を誰にも言ってなかったわ。

 そしてこれ、やばい奴だ。

 

 その事を悟った瞬間、急に部屋に帰りたくなくなった。

 あんなに待ち望んでいた。フカフカの布団も全然、恋しくなくなった。

 ちょっと昔の宿屋に行こうかな。暫くはそこで寝泊まりしようかな。そうだそうしよう。


 「ワタルさん!」

 そう思い踵を返した瞬間、後ろから声をかけられた。

 今までの彼女からは想像できないほどの大きさで呼びかけられたその声にビックリして立ち止まってしまう。

 そして恐る恐る振り返ったその先には、前に一度見たいような。それよりも、もっと恐ろしいような。

 そんな怒りの表情で立つ、クレアさんがいた。


 あっ、これ死んだかも。 

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ