92話 狩りの成果
あれからオークを狩って回った。
結局、4-2の部屋にいたオークは最初に倒したオークだけで他が見つからなかった。
しょうがないので帰り道だけ分かるように簡単に地図を書いて次の部屋に向かって狩りをした。
この部屋を4-3とした。この4-3も結構広く視界が悪いのでオークを探しながら転々としていた。
結果、オークの集団は4つで計11のオークを狩った。2匹で動いていたオーク達も一応集団と数えている。
4-3を全部回ったくらいで結構いい時間になったのでダンジョンの街に帰ることに決めた。
結局、この部屋には蛇が出ず戦う事は出来なかった。どんなスキルがあるのか楽しみにしていたのだが、残念だ。
今日はこれで狩りは終了だ。
オークを一か所に集めて埋葬する。4-2に置いてきたオークはこっちに持ってくるのが面倒くさいので帰りに個別に埋めていくことにする。
オークは体が大きく、ドンに複数積むことができないのだ。バラバラにして積んでも良いが、人型の物をバラバラにして積み上げるのはなんか抵抗があったのでやめた。
『水魔術』で簡単に運べないかなと淡い期待をもって試してみたら、簡単に運べた。水の中に閉じ込めて移動させるだけだ。
流石に何十体もの死体を運ぶことは難しい気がするが4、5体ならなんなく運べる。
これの事に気が付いて途中から倒したオークの死体を引き連れながら移動していたのだが、複数の死体を水の中に閉じ込めて引きずり回している光景はかなり狂気を感じたのでやめた。
ずっと持ち歩くのではなく4-3の部屋の真ん中あたりにまとめて置いておくようにした。
なので今は、11体のオークの死体が山のように積まれている。人型の死体が山のように積まれている光景はくるものがあるので早く処理しよ。よし、ギンよ思いっきり穴を掘ってこいつらを全部埋めろ。
「わん!」
ギンが勢いよく穴を掘って、すぐさま大きな穴を作ってくれた。ありがとう。
そこに3階から持ってきた魔鉄鉱石を入れてオークも入れて土をかぶせる。よしこれで完全犯罪だな。
最後にいつものように『繁殖』を入れた水、繁殖水をかけたら後処理は完成だ。繁殖水については意味があるのかどうか分からないが、これでうまくいっているので一応撒いている。
もしかしたら簡単にオークの死体を移動できるなら4-2の奴らもここに持ってくればいいのでは?と思う方がおられるかもしれない。
それが面倒くさいのだ。一旦4-2までいってまた4-3に戻ってくるのがとても面倒くさく感じる。
今日の仕事が終わった気分になっているのでなおさらだ。だから奴らは帰り道に個別に埋めて帰る。これは決定事項だ。
と言う訳で後処理も終わったしお楽しみの戦利品確認タイムだ。
最初に狩ったオーク以外で得た新しいスキルは『弓術』だ。なんとオークの奴が普通に弓を持っており、石を投げるだけでなく普通にザ・遠距離攻撃の武器で攻撃してきたのだ。
幸い、普通に水で矢を叩き落せたが、石を投げられた時以上にヒヤリとした。当然、すぐさまウォーターデスマスクの刑で行動不能にさせたが、こっちに遠距離攻撃がないと結構やばい相手だった。
他は新しいスキルはなかったが『怪力』が全部で8.9になったので誰かに付けよう。
ドンやニーについている『怪力』を上げるか残りのゴブリンやギンに付けるかだな。
とりあえず、今のドンの『怪力』を確認する。すると、『怪力』2.3と出た。
なんか記憶が曖昧だが前見た時はもっと低かった気がする。成長したのか。
ドンは普通に自分で成長できるし、今すぐ『怪力』を増やして運べる荷物の量を増やしたいとかがないし後回しでいいか。
ギンも別に付けた所で何かが変わるわけでもないし・・・、決めた。ニーの『怪力』を2.0に上げて、他のゴブリン達に『怪力』1.0を付けよう。必要な『怪力』のスキル量は8.0なのでピッタリだな。
早速、ゴブリン達に『怪力』を付けていく。見事狙い通り、イチとサンに『怪力』1.0を付けてニーの『怪力』を2.0にした。
後はオークから取ったスキル石で有用なのは『剣術』、『槍術』だな。これらのスキルレベルの高いものが手に入ったのが地味に嬉しい。もうちょっとまとまったら槍を作るのもいいかもしれない。
『剣術』をゴブリン達に付けようかとも思ったがこれも保留。新しい剣を手に入れた時の為に取っておきたいからだ。決してゴブリン達が俺より強くなるのが嫌なわけではない。断じて違う。
何かスキルも増えたしスキルレベルも勝手に上がっているし、ここで久しぶりにこいつらのスキルを全部確認しておくか。
イチ
『剣術』3.1
『繁殖』1.3
『抗病魔』1.0
『再生』2.0
『音探知』2.0
『連携』1.0
『硬化』1.0
『怪力』1.0
『12.4/46.0』
ニー
『剣術』2.4
『繁殖』1.3
『抗病魔』1.0
『再生』4.0
『音探知』2.0
『連携』1.0
『硬化』3.0
『盾術』2.1
『怪力』2.0
『18.8/46.0』
サン
『剣術』2.4
『繁殖』1.4
『抗病魔』1.0
『再生』2.0
『音探知』4.0
『擬態』3.0
『連携』1.0
『硬化』1.0
『気配遮断』2.1
『怪力』1.0
『18.9/46.0』
ギン
『嗅覚探知』3.0
『土魔術』2.3
『威嚇』1.0
『抗病魔』1.0
『再生』2.0
『擬態』2.0
『連携』1.3
『硬化』1.0
『13.6/32.0』
ドン
『怪力』2.3
『持久力』2.6
『抗病魔』1.0
『再生』2.0
『音探知』2.0
『擬態』2.0
『連携』0.7
『硬化』1.0
『13.6/32.0』
サチ
『暗殺術』0.3
『再生』2.0
『抗病魔』1.0
『3.3/11.0』
しかし久しぶりにこいつらのスキルを見ると何か凄い成長している。今まで全く気にしてなかったので確認してなかったがいつの間にかレベルが上がってたみたいだ。
まあ、あんだけ蟹やら亀やらを倒していればそうかもな。
サチも結構、スキル容量上がったし何かスキル入れて上げようかなと思ったがまだいいか。どんなことしたいか本人が見つけてからでも遅くない気がするし。
とりあえずはこのままでいこう。
よし、戦利品の分配も終わったし帰ろう。
途中、オークの死体を埋葬しながらダンジョンの街、4-1に戻った。
街の入り口では冒険が4人ほど待機している。出て行く時に見た人とは別人のような同じような。とにかく向こうから少し挨拶をしてくるので挨拶を返しながら入っていく。
街の中に入ると、夜とは雰囲気がガラリと変わっていた。
ダンジョン内なので明るさは同じで薄暗いはずなのだが、それを感じさせない人の熱気により、とてもあかるく感じられる。
狭い通りに人は溢れ、ほとんどの店が開店しており、屋台なんかも出ていてちょっとしたお祭りみたいだ。
昨日、通った時は一人もいなかったのでかなり寂しい感じがしたが、今では通るのが少し嫌になるくらい人で溢れかえっている。
ここで見ていても始まらないので通りを歩き冒険者ギルドを目指す。
途中、屋台の煙にやられたのかゴブリン達が吸い込まれていくので飯を買って食べながら歩く。屋台の値段は吃驚するくらい高かった。3倍くらいした。しかしそれなのに量も味も普通だった。これがダンジョン街の洗礼か。
屋台ではダンジョン内にも関わらず、普通に串を焼いていた。火を使って大丈夫なんだろうか。ここで生活している人たちがそれで大丈夫というのなら大丈夫なのだろうがやはり気になる。
そう思い屋台の火元を確認してみるがそこには石が置かれており、そこから熱を発していた。
よく見るとその石は『発熱』0.3というスキルを持っておりこれにより熱を出しているのだろう。
あまり気にしたことが、もしかしたら地上の屋台もこれを使っているのかもしれない。
これがあれば火を使わなくても料理を温める事が出来るのか。そんな便利な物があるなら早く言って欲しい。
そうしたらもう少し、ダンジョン内の食事のレベルが上がったのに。食事チートでウハウハだったのに。
うんごめん、俺は自炊できないからよくよく考えたらその石があってもあまり意味ないわ。ちょっと見栄を張りました。
少しお腹も膨れてきた所で冒険者ギルドに着いた。
今の時間は空いていて、正面の扉から入れるようだ。厩舎のような物が見当たらないので建物の横の所にドンを待たせてギルドの中に入っていく。
中は狭い感じはするが、概ね地上の冒険者ギルドと同じような作りになっている。中央には受付があり、そこには美人の受付嬢達が座っていた。
良し。よく分かっているじゃないか。ここで最前線だからという理由でむさいオッサン達が受付やってたらガッカリするところだった。
具体的に言うと昨日のイカツイ顔のオッサンみたいなのがこのギルドには沢山いて、受付から何まで全部あのオッサン。そんな悲惨な事態を想像して一人ブルーになってたのだ。
それが杞憂で良かった。ありがとう、ここの偉い人。ありがとうここまで来てくれた受付嬢。
そんな感謝を心の中で送りながら、一人の受付嬢に話しかける。
「すみません」
「はい。なんでしょう」
ちょっと怒っているのでは?と感じるほどクールで事務的な返事が返って来た。
くっ、こういう愛想のない系の人は大好物だが、実際に自分が話さなきゃいけない状況の時は辛い。
しかし、ここで横の受付嬢に話しかけるのもこの人に失礼なので頑張って会話を続ける。頑張れ俺。
「あの・・・えっーと・・・昨日ここに初めて来たんですけど、その時は冒険者ギルドが開いてなくて。それでイカツイじゃなかった大柄な男の人が出てきて、なんか仮の許可だから明日またこいと言われたので来ました」
なんだか、考えがまとまらず、支離滅裂な説明になってしまった。そもそも俺もなんで今日こなきゃいけないのか理解してなかったし。
「ではギルドカードを出してください」
言われるままギルドカードを渡した。
「少々お待ちください」
この説明で分かったのか分からなかったのか。ギルドカードを持ったまま、クール系事務お姉さんは後ろに下がってしまった。
とりあえず、待ちますか。椅子があるのでそこに皆で座りながら待つ。
少しの間待っているとクール系お姉さんが戻ってきた。
「ワタルさん確認が終わりました。只今よりワタルさんの4階での活動が認められました。これにより4階以降のダンジョンへの挑戦とこの冒険者ギルドの施設を利用可能となります」
なんか許可されてしまった。そもそも許可されてなくても普通に4階で狩りしてきちゃったんですが。
「すみません。もう4階で狩りしてきたんですが、まずかったですか?」
「いいえ。うちの職員より仮の許可が出ておりましたので、問題ありません」
「そうですか」
あの時の仮の許可ってこれか。ありがとうイカツイオッサン。おかげでこのクール系美人お姉さんから蔑みの目を向けられる事も罵られる事もなかったよ。ありがとう。
「それではこの冒険者ギルドの説明をいたしましょうか?」
「よろしくお願いします」
そうしてクール系お姉さんにこの施設の事を聞く。
といっても買取所と販売店と依頼ボードがあるくらいでかなりこじんまりとした冒険者ギルドだった。
後変わったところで言えば、伝言を地上のギルドに対しても行える。これでここから地上のマリーさんに愛を囁く事も出来ると言う訳だ。そんな事は間違っても出来ないわけですが。
後は、オススメの宿の情報も聞く。イカツイオッサンに聞いたような気もするが、やっぱり美人さんに聞いた方がいいだろう。もしかして、もしかしたらだけど、このお姉さん達は宿住まいで、同じ宿になったりする可能性だってあるわけだし、やるだけやってやらあの精神。
はい。普通にオッサンに聞いたところと同じところでした。いいもん、まだチャンスはあるんだもん。
聞ける情報も全部聞いたので、お姉さんにお礼を言って買取所に行く。
昨日の戦利品のうち、オークの持っていた武器と1体だけ持ってきたオークの死体を売るためだ。
ドンからオークを下ろし、買取所に運ぶ。自分より大きな死体だ、運ぶのがとても大変だ。
水を使って運んでやろうかと思ったけど、あまり人前では使わない方がいいと思いこうしたわけだが心が折れそうだ。
何とかゴブリン達に手伝ってもらってオークを運びきった。
しかし、こんだけ頑張ったのに受け取った買取所の人の話ではオークの死体は大して値段が付かないらしい、精々1000ディールくらいらしい。トカゲ以下だ。
じゃあ、武器が高く売れるのか?と言えばそうでもないらしい。これもクズ鉄なのでこんだけ持ってきても1000も行かないらしい。
完全に地雷だ。全く売る所がない魔物らしい。オークなんだから食べたら美味しいのでは?そう聞いたら凄い変な顔をされた。オークを食べるとか相当な極限状態じゃないとしない行為らしい。そんなにまずいのか。そう思ったがなんか聞ける雰囲気じゃなかったのでやめた。
とにかく、そんな感じなのでオークは狩りの相手として人気がないらしい。そのくせ、見つかったら相手が嬉々として襲って来るのでかなり嫌われているらしい。ゴブリンと同じだな。
そんな訳で4階での初めての狩りは大した収入がない事が決定してしまった。
少し、ガッカリ。
亀と回復薬のおかげでお金には困っていない。だがそれでただ働きをしたいかと言えば、そうではないのでなんかどっと疲れてしまった。
販売店で地図を買おうかと思ったがその気持ちもなくなってしまったので宿に行って寝ることにする。
教えて貰った近くの宿屋に入っていく。出てきたのはオッサンだった。こっちね。こっち方面でオッサンをぶつけて来るのね。
ますますテンションが下がったが宿をおさえる。
宿はサチもゴブリンもギンも俺も皆同じ料金で一人10000で6人で60000。高い超高い。それなのにベッドは4つしかない。完全にぼったくりに来ている。
でもどこもこの値段らしいのでしょうがないので1日分払う。
払った後にロバは別に料金が必要らしい。これも共同の厩舎があって一日5000らしい。高い。でもギンが10000だから一瞬、安い気がしてしまった。ちょっと負けた気分だ。
とにかく全額払って、ドンを共同の厩舎に預けたら部屋に入る。
部屋は見事に狭く、ベッドは2つしか入らないスペースしかない。しかし聞いていた情報どおりベッドは4つあった。2段ベッドが2つで4つのベッド。なるほど確かに4つだ。全然納得いかないけど。
もう文句を言う気も起きないので寝ることにする。
ギンは地面で寝るのでベッドの空きは4つ。
俺が1つでサチも俺と一緒に寝るというので、ゴブリン達に一つずつ、あてがう。
何かお前たち出世したな。昔は1つのベッドで皆一緒に寝てたのに。
まあいいや、俺は寝る。
お前たちも早く寝ろよ。誰が2段ベッドの上になるかなんてどうでもいいだろ。早く決めて寝ろ。
無理なのね。そこは譲れないのね。
あ、そう。俺は下でいいから先に寝るわ。おやすみなさい。
そうやってダンジョン街での1日目は終わったのであった。




