91話 ガチンコ
ちょっと拍子抜けするほど、あっさりオークを倒してしまった。
やっぱ麻痺毒薬は反則だな。俺よりでかいオークが一瞬で倒れてしまうのを見るとちょっと怖くなってきた。
まあ、麻痺毒薬の事は置いておいて楽しい楽しい戦利品タイムだ。
まずはオークの周りに落ちているスキル石を拾う。
『剣術』1.3、『棍棒術』1.5、『投擲術』1.2、『怪力』0.6、『怪力』0.6、『怪力』0.8、『繁殖』0.6、『繁殖』0.6、『繁殖』0.7の9つだ。
この中で気になる物は2つ。『投擲術』と『怪力』だ。
『投擲術』は初めて見るが、名前からするとなんか投げるんだろう。転がっている死体は何も持っていないのでおそらく石とかを投げるんだと思う。
石を投げるとかなんか弱そうだけど。まあ、石だしそれなりの速度で投げられるんだから、当たったら危ないとは思う。
今の所、使い道は思いつかない。
後は『怪力』についてだが、これは素直に嬉しい。
ドンが持っているスキルと同じ奴だ。あんなに小さな体でたくさんの重い荷物を持てるドンの事を考えると凄い、優良なスキルだ。
ドンの能力を上げても良いし、タンク役のニーに付けてもいい。むしろ全員に付けてもいい。
いくらあっても足りないくらいの超優良スキルだな。
当分はこの『怪力』目当てでオークを狩る事になりそうだ。
次にオークの持ち物を確認する。
オークはなんかボロボロの布を体に纏っていて、全裸ではなく半裸状態だった。
手には鉄なのかなんなのか、黒い石というか金属というかな物で出来ている剣や棍棒を持っていた。1匹については何も持っていなかった。
持って帰る物を決める。
まずはオークの持っていた武器だ。もしかしたら高く売れるかもしれない。
次は・・・うん、別に欲しい物ないや。布とか臭いから持って帰りたくない。
肉を持って帰ろうかと思ったが麻痺毒薬を使ってしまったので食用にはしない方がいいだろう。
という事でこの3匹は丸まる埋めていくことにする。
だがまだ3匹なので、後でまとめて埋めることにして、今は端っこに寄せておく。
じゃあ、次の獲物を探しに行きますか。
再び、左手に杖。右手に短剣の二刀流モードで探索する。
さっきの敵の感じで言えば麻痺毒薬を使わなくてもいいかも。
武術系のスキルもうちのゴブリン達より低いし、何より麻痺毒薬を使うと補充しなきゃいけないので大変なのだ。
強い敵なら構わずバンバン使っていくのだがここで何十匹も倒すような敵に使うのは勿体ない。
水は『水魔術』で簡単に増やせるが、麻痺毒薬は増やすと薄まるのか、どんどん『麻痺毒』スキルが減っていくのだ。だから麻痺毒薬は増やすことが出来ないのだ。
という事で今回は水水水-麻痺-水水水-俺という位置関係のアナルじゃなかったビーズ編成でいく。
戦闘用の水を自分の近くに置いてある防御用の水と同じくらいの大きさで作った。
こいつの使い方は単純で、近づけていって顔付近に纏わり付かせるだけだ。ウォーターデスマスクと名付けたこの技は、相手の視界と呼吸を阻害する。そうして水と戯れている間に剣とかでとどめを刺す、そういうシナリオだ。
自分で考えておいてなんだが、とてもグロい技なのでまだ誰にも使っていない。今日が初実戦と言う訳だ。
そんな事を考えながら歩いていると、またもやギンが何かを見つける。
丁度視界が開けているところなので俺にも分かった。部屋の角からオークたちが現れたのだ。
すぐさま俺は臨戦態勢に入り、水をオークに向かわせる。
すると今度は向こうも気が付いたのか、こっちに向かって駆け出してくる。
お前らもゴブリンパターンか。駆け寄らずにはいられない系オークか。
そう思って迎え討とうと水を操作していた所、視界に何かがこちらをめがけて飛んでくるのが映った。
ぶつかる。危ない。そう思った瞬間、咄嗟に反応し、手で顔を庇う。
バシャ
次の瞬間、何かが水にぶつかった音がした。
体に痛みはない。慌てて周囲の状況を確認する。
顔の前と言うか体の前面に巨大な水の柱が展開していた。
自分が防御用に足元に忍ばせていた水を無意識に展開したようだ。
投げられたものが何か確認しようとした瞬間、再び何かが飛んでくるのが見えた。
今度は落ち着いて前方に展開した水で叩き落す。
石だ。石がこっちに飛んできているのだ。
そこで先ほどのオークの『投擲術』スキルを思い出す。そうかあっちに居るオークが石を投げているんだ。
その事に気が付き、全力で反撃をする。まずはオークの投石戦士を潰してやる。
オークに向かわせていた水の位置を確認する。意識を手放していたがまっすぐ移動していた水は2匹の多くを追い越していた。
しかし、水の位置は幸いにも後方で石を投げていたオークの目前まで迫っていた。
いける。
一気に水を加速させると振りかぶって石を投げようとしているオークの顔に纏わり付かせる。
オークは不測の事態に必死に水を振り払おうとしているが、一切水は離れない。
これでオークの投石戦士は大丈夫だろう。少なくとも暫くは投石できないはずだ。
ふと意識を前方にやる。
そこには既に目前までオークが2匹迫っていた。
「イチ、ニー、サンお前たちは右のオークをやれ。俺は左をやる。サチたちは下がって」
そう指示をだし、左側の槍のようなものを持ったオークの対処をする。
前方に展開していた水を高く高く広げ、そのまま覆いかぶされるようにオークに叩きつける。
叩きつけながらオークの周りに水を流し込んでそのまま水の檻を作り、オークを水の中に閉じ込めた。
オークはなんとか逃れようと抵抗するが水の中の為、動きは鈍る。少しずつ移動できたとしても水も移動してしまうのでどうすることもできない。
咄嗟の思い付きでやったがこの技は強い。ウォータープリズンと名付けよう。直ぐに忘れると思うけど。
イチ達はどうなった?そう思い隣を見る。
すると棍棒を持ったオークが横なぎの一撃をくり出している所だった。それをきちんと盾を構えたニーが受け止めようとする。
ちゃんと防御態勢に入っているこれなら大丈夫か。
バコン。
しかしその大きな音と主にニーは体ごと吹っ飛ばされた。
嘘だろ。予想外の結果に慌てて助けに入ろうとする。
だが、ニーは吹っ飛ばされながらも全くダメージが入っていないかのようにすぐさま駆け出しオークの前に飛び出す。
オークは再び棍棒を構え、次の一撃を放とうとするがそこまでだった。
オークの後ろに回り込んでいたイチとサンの攻撃が無防備なオークの背中に突き刺さる。
オークは暴れながらイチとサンを引きはがそうとするが、次第に力が弱くなりそのまま倒れた。
凄い、3匹であっさりとオークを倒した。こいつら結構強くなってるんだな。
しみじみとゴブリン達の成長に感心していたが、思い出した。俺もオークと戦っていたんだ。
そう思い自分の目の前にいたオークを見てみる。
そこには水の中で力なく横たわっているオークがいた。そうか水の中から抜け出せなかったのか。
そんなオークにとどめを刺すべく短剣に魔力を込めて、心臓を貫く。もちろん刺すときは心臓の周りの水をどかしてから刺した。
短剣を抜くと一気に心臓から血が吹きだす。やばい水がオークの血で汚染される。そう思い慌てて水をオークの周りから遠ざける。
何とかオークの周りの水を全部遠ざけた。しかしちょっとオークの血が入っちゃったなと思い、水を見てみる。すると水の中に入ったオークの血はそのまま混ざることなく水の中に浮いていた。
なんか不思議な光景だ。血って水の中に落とすとこんな感じだっけと思いつつも、血を外に出せと念じてみる。
すると水の中で浮いていた血が動き水の外に吐き出される。こんな事、出来たんだ。新発見だ。何かに使えないか後で考えよう。
そう思いながらオークの傍に落ちていたスキル石を拾っていく。
そこで、また思い出した。そうだオークて3匹いたんだ。あいつどうなったんだ?
オークが投石していた場所を見てみるがここからではオークが見当たらない。
なんだ?逃げたか?
そう思いオークの投石戦士がいた辺りに行ってみる。
するとオークはその場に倒れていた。岩の陰になって見えなかっただけだった。
よく見るとスキル石が落ちているので死んでいるようだ。
改めてオークの死体を見る。そこには首を掻きむしったかのような跡があり、顔は紫色になっていた。当然まだ水は顔の周りにある。
うん。めちゃくちゃグロい。残酷と言ってもいい殺し方だ。
誰なんだ・・・?こんな残酷な殺し方をしたやつは。
誰だ・・・? 誰だ・・・? 誰・・・?
あ・・・俺だった。
すまん。どうせ殺すんだけど、なんかごめん。次はもっと楽に殺してあげよう。
そんな風に思うくらいは無残な死体だった。
とりあえず、落ちているスキル石を拾う。『投擲術』1.3があった。やはりこのスキルを持っているやつが石を投げていたのか。
今回は結構、ヒヤリとした。まさか向こうが遠距離攻撃をしてくるとは思わなかったからな。
これまで出てきた敵で遠距離攻撃をしてきた敵がいなかったのですっかり頭の中から抜け落ちていた。
『投擲術』を見た時点で気が付くべきだった。よく考えれば『投擲術』なんだから遠距離攻撃になるのは当たり前なのだが全然、結びつかなった。
反省。反省。
しかし、遠距離攻撃で先制されて接近された割にはあっさりと勝ててしまった。
いつもは『水魔術』を麻痺毒薬を撒くくらいにしか使ってなかったが、普通に戦っても十分強いな。
というか強すぎじゃないだろうか。距離関係なく相手の顔に纏わりつかせたらそれだけで終わりだし、接近されても水の中に閉じ込めればいい。遠距離攻撃も防げるし、試してないがきっと近距離の攻撃もはじけるだろう。
偶然で手にしたので選んだわけではないが『水魔術』が最強の気がしてきた。初回無料ガチャで大当たりを引いた気分だ。ビッグラッキー。
よし感想戦も終わったところで次に行こう。まずはオークの処理だ。
オークの処理は先ほどと同じようにスキル石と武器だけ取ったら死体は一か所に集めておくだけにした。
先ほどのニーがオークの一撃で吹き飛ばされていたのを見てちょっと不安になったので『怪力』を入れてみる。
全部で3.9あるのだが、まずは1.0からだ。『怪力』1.0のスキル石を作ってニーに入れてみる。
すると『怪力』0.5のスキルが付いた。2分の1パターンだ。ラッキーこれはコスパが最高のやつだ。
次に『怪力』1.0のスキル石を入れてニーの『怪力』を1.0まで上げた。
これで少しは相手の力に対抗できるだろう。
他の奴らはもう少しスキル石が溜まってからだな。
オークは普通に麻痺毒薬なしで戦っても勝てる。その事がさっきの戦闘で実証された。どんどん狩っていこう。
さっきの戦いで注意する点は相手が飛び道具を持っている事とウォーターデスマスクをやったらすぐにとどめを刺す事。これぐらいだな。
幸い、まだ時間はある。いつもならもうとっくに帰り道を歩いている時間なのだが、今日は帰りの時間を気にしなくていいので時間がたっぷりあるのだ。
良し、この辺のオークを根絶やしにしてやりますか。
何故なら俺は最強の『水魔術』を得た、無敵の魔法剣士なのだから。よしオークよ、首を洗ってやるぜ。待ってろよ。
そう気合を入れて、オークを狩りに行くのであった。




