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絶対異世界無双したいマンが欠陥チート『スキル強奪』をつかまされた時に出来ること全部  作者: 立花 一


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85話 決戦

 湖面から亀が上がってくる。

 こっから先は少しでも油断してはいけない。

 やつは上陸する勢いそのままにこちらに攻撃して来れるのだ。

 左手に杖と操作している麻痺毒薬のかたまり、右手に閃光石。こちらの準備は万端。いつでもこい。


 じっと奴の出方を窺う。

 湖面上に顔を出して泳いでいるが特に何もやってこない。

 あれだ。遠いから見つけづらいんだ。蟹もそうだった。

 じゃあちょっと待ちますか。

 少しだけ肩の力を抜く。


 すると亀は急に勢いよく泳ぎだし回り始めたかと思うと、そのまま勢いを付けてこっちに突撃してきた。

 やっぱ、気を抜いたらダメじゃん。馬鹿なのかな。

 そう自分をののしりながら、いつでも走り出せるように身構える。

 相手との距離はまだ80メートル以上あるのだ。まだ慌てる時間じゃない。はず。

 落ち着け。落ち着け。練習は俺を裏切らない。練習通りにやれば大丈夫。あ、練習はギン相手で全部タックル食らってた。


 そんな事を考えている間にも亀はどんどん近づいてくる。

 どのくらい引き付けておくのかそれをちゃんと考えていなかったことに気が付く。

 やばい目に見える感じはまだ遠い気もするし、すぐにこっちに到達しそうにも見える。

 やばいやばい。全然冷静になれない。

 いつだ。何時動けばいいのだ。

 もう動き出さないとまずい。避けられない。そんな恐怖がどんどん大きくなっていく。

 だがまだ早い。まだ引き付けないと壁に当てられない。そう自分に言い聞かせ走り出すのを我慢する。


 駄目だもう我慢できない。恐怖に負けて走り出す。

 いや違う自分の危機に対する本能にしたがっただけだ。逃げたわけではない。そこんとこよろしく。


 壁と平行に走り出す。

 横目で亀を見る。

 もう大分近い。そして明らかにさっき自分がいた場所より俺に対して向かってきている。

 やっぱ、方向を変えられるんだ。ズルだ。ズルすぎる。突進といったらまっすぐだけだろ。偽装表示で訴えるぞ。

 駄目だ。近い。もう亀を目で追っている余裕もない。そこからはわき目も振らずただただ必死で走る。


 ドコーン。

 何かが横を通り抜けたと思った瞬間音と振動がやって来る。

 亀が壁にぶつかったのだ。

 急いで後ろを振り返り亀の方を見る。


 亀は見事に壁に阻まれその場で止まっていた。

 壁は貫通することも上に登られることもなくその場に亀を止めた。

 よし、成功だ。

 心の中で喜びが湧き上がってくる。がまだだ。これからが本当の本番だ。


 左手に持っていた杖に全意識を集中する。

 自分が走って逃げている間にも麻痺毒薬のコントロールは失っておらず、まだ塊として残っている。

 それどころか自分の足元にある。

 さっき夢中で走っていた時でもきちんと制御して移動させられていたのだ。これは本当に練習のたまもの。毎日練習していた甲斐があった。


 麻痺毒薬を一気に加速させて亀の方に向かわせる。

 亀は方向転換している最中だ。どこにぶつけるべきか。

 そう思った瞬間、亀と目が合った。

 完全にこちらの方へ向き終わり、完全に俺を捉えた瞬間だった。


 まずい。本能的に麻痺毒薬を操作する。

 夢中で操作した麻痺毒薬はどういう軌道を描いたか分からなかったが見事、亀の顔にぶつかった。

 

 やったか!?

 右手の閃光石を強く握り閉めながら、いつでも逃げられるように腰を落としながら、亀の方を凝視する。

 相変わらず、亀はこちらをじっと睨むように見ている。

 何だこれ効いているのか、それともただ単にこちらの出方を窺っているのか。

 分からない。ちょっとも分からない。

 これはどっちなんだ。効いているのか。効いていないのか。

 この場合はどうするべきなんだ。逃げるべきか。倒しにいくべきかそれが問題だ。


 いや、冷静になろう。もし奴に麻痺毒薬が効いてない場合、俺が動いた瞬間に次の一手を打ってくるはずなのだ。

 後の先を取りに来ている。そう考えると全ての辻褄があう。

 つまり、先に動いた方が負ける。



 な訳ないか。すみません。ちょっと人生で一度は言ってみたいセリフを言っただけです。

 少し頭が冷静になってきた。

 相手が動かないのであればこっちから動くしかない。

 この場合、最悪の事態は麻痺毒薬が効いておらず向こうが動けるという事なので、最悪を想定して行動しよう。

 相手が動けるという事は有無を言わさず逃げるべきなのだ。その為の準備はしてある。

 だから動いて相手の出方を試すにしても、逃げる準備を使う為の動きをするべきだ。


 恐る恐る右手に持っている閃光石を亀に向けてみる。

 亀に動きはない。やはり効いているのか?


 次の段階に移る。次は逃げの用意をしたままで動けない時用の攻撃手段を用意する。

 つまり、左手に持っていた杖を腰に差し。代わりにメイスを取り出す。

 まだ亀に動きが無い。これは効いている確率が赤丸急上昇だ。


 よし、もう少し大胆に行ってみよう。

 左手のメイスと右手の閃光石を素早く持ち替えたら右手のメイスに魔力を込めていく。

 亀に攻撃するのだ。それもあの憎き顔めがけだ。叩け。叩け。叩け。

 まあ、近づかないんですけど。

 十分魔力が溜まったらそのままメイスを振り下ろし衝撃を飛ばす。


 ベコ。

 衝撃波はそのまま亀の頭に命中した。亀はそれでも何のリアクションもしない。

 これは完全に効いているに違いない。

 今すぐ亀に近づいていって、ねぇねぇ今どんな気持ち?ダンスを踊りたい。これもう勝っただろ。


 いや待て、勝利宣言はまだ早い。近づくなんてもってのほかだ。

 前に不用意に亀に近づいて行って大変な目にあったのを思い出せ。

 ここからでいい。殴るのはここから。ここから何の面白みもなくただ淡々と殴る。それだけでいい。


 そこからはメイスに魔力を込めては衝撃波を飛ばす作業をする。

 当たっても当たっても倒れない亀を見ていると近づいて行って一気に倒したくなる衝動に駆られる。だが我慢する。俺は我慢が出来るタイプの転移者なのだ。我慢我慢。


 そう思いながら淡々と殴る事、数発。合計で5発目くらいだろうか。亀の頭が大きくへこんだと思ったらそのまま亀はでろーんとなってしまった。

 やったか!?


 そう思い亀に近づく。

 近づきながらこれで死んだふりで剥ぎ取り中に突然反撃されたら死ぬなと思い立ち止まる。

 危ない危ない。もっと慎重に行こう。


 メイスと閃光石を構え万全の状態で亀に近づく。

 亀の正面ではなく横に回り込めばいきなりの突進も大丈夫だろう。そう思い亀の横に回り込む。

 かなり近づいても亀が動く気配がない。


 どうなんだこれ?本当に死んでるのか?

 確認するすべがないので慎重に進んでは立ち止まり、また少し進んでは立ち止まる。そして時々その場で足踏みをしたりして近づいている振りをしたりする。

 フェイントだ。亀が生きていた場合を考えてのフェイントだ。フェイント3段だ。


 そんな事をしながら亀に近づくが一向に動きが無い。完全に死んでいるかのようだ。

 だが、俺には予感があった。

 こんなものではない。亀はこんな簡単には死なないのだ。簡単に麻痺毒薬が効いて簡単に叩き殺される。そんな簡単な敵ではないのだ。

 この敵はもっと強く、もっとしぶとく、もっとしたたかなのだ。

 ここからだ。ここから亀は何か逆転の手を狙っている。その手が何なのかを見極めなければこっちが危ういのだ。

 

 そんな何か起きる予感を胸にしながら更に進んで行くと見つけた。見つけてしまった。

 スキル石だ。

 スキル石が亀の傍に転がっている。


 なんだ。死んでんじゃん。


 何が予感だ。恥ずかしい。

 完全に死んでいる敵相手に心理戦してたよ。恥ずかしい。

 変なフェイントとかも入れてたし。恥ずかしい。

 早く言ってよ。死んでいるなら死んでるって。


 死んでるなら話は早い。

 一気に亀に近づき確認する。

 完全に体はでろーんとしてるし、目は焦点があってない。

 これは死んでます。俺にははっきりと分かります。ワタルターレン死亡確認。

 

 しかし、こんなあっさり倒せていいのだろうか。

 突撃をかわした時は危険が多少あったが、後は何の危険もなくただ一方的に殴るだけで倒してしまった。

 計画通りと言えば計画通りなのだが、あまりにも上手くいってしまうとこれはこれで何か重大なミスが隠れ潜んでいるのではないかと不安になってしまう。


 とは言え勝利だ。それもとびっきりの勝利だ。

 今亀を倒しただけではない、今後も亀を狩り放題というのが確定した大勝利だ。

 ラスボスが餌になった瞬間だ。ワッショイワッショイ。


 「「ゲギャ!」」

 「わん!」

 「・・・・・・」

 一人で喜んでいると皆が駆け寄ってきた。

 そうだった。この作戦には皆の特にギンの力が必要不可欠だった。俺の勝利じゃなかった。皆の勝利だ。

 よしお前たち、勝鬨を上げるぞ。えいえいおー。えいえいおー。

 右手を突き上げながら掛け声をかける。


 お前たちもやるんだよ。ほら一緒にえいえいおー。えいえいおー。

 「ゲギャ!ゲギャ!」

 「わん!わん!」

 「・・・・・・」

 ゴブリンやサチは右手を上げながら、ギンは一生懸命前足の片方を上げながら、ドンは・・・まあちょっと動いてたな。うん。


 とにかく皆で一緒に勝鬨を上げる。これでこの戦いが本当に終わった。そんな気がした。

 

 

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