83話 高い壁
高い壁を作る事が出来ず、高い壁にぶち当たった次の日。
今日もまた長い時間をかけて3階の地底湖に来ていた。
昨日の帰り道からずっと考えているがなかなか良い案は思い浮かばなかった。
とりあえずここでぼーっとしてるのも勿体ないのでまずはギンに土を硬くする練習を再びさせる。
朝、ちらっとクレアさんやアマンダさんに聞いたところ土魔術でコンクリートみたいな硬さに変化させるのは凄く難しいらしい。
相当、高位の魔術師ですら変化させるのに長い時間と大きな魔力が必要らしい。
じゃあ、あのコンクリートみたいな土はどうやって作っているのかと思えば、単純に固まる前のコンクリートを流しこんでいるだけらしい。
なんじゃそりゃと思ったが詳しく聞くと納得した。
土と同じようにコンクリートが固まる前のものも操作できるので、固まる前に道の形に敷き詰めてそれを固めているだけらしい。
当然、元の地面を掘ったり、石を埋めたりなんかも土魔術で操作してやるらしい。
それらを総合してあの道は土魔術で作っていると言っているらしい。
では今回の壁もコンクリートを使って作るそういう案も考えた。
こっちの世界のコンクリートの材料は街で買えるらしいがそれを運ぶのが凄い大変だ。
何故なら重いから。重い上にここまでが遠いから。
今回は結構な大きさの壁を設計してしまったので運ぶ量が半端ない。やるとしたら相当な時間がかかる。数週間とかそういう単位のやつ。だからやるとしても最終手段だろう。
次に思いついたのはこの土塁の傾斜の所に石を積んで石垣を作るという物だ。
石垣の作り方については昔テレビでみたのでうろ覚えだが何となく分かる。
材料となる石もその辺に落ちているのを使えばいいと思っていた。
しかし今日、ここに来て分かったのだが、案外大きくて平たい石は転がってない。
無い事はないがあの壁一面分を確保しようと思ったら相当大変だ。
それにここでもだが壁の面積が大きすぎて石垣を作る時間がかかりすぎてしまうという事だ。きっと何か月もかかる作業になる。
これもあまりやりたくない。
では他の案はとなると、何も思いついていない。
正直詰んだ。
こっちに来れば何か思いつくかもと思ったがまだ駄目だ。
ここで問題です。この状況でどうやって壁を作るか?
3択です。1つだけ選びなさい。
答え1 ハンサムなワタルは突如、画期的なアイディアがひらめく。
答え2 仲間のギンが土の硬化を習得して助けてくれる。
答え3 何も起きない。現実は非情である。コンクリートの素をせっせと運ぶ。
今は答え1を選択しつつ、答え2を並行で行って答え3にならないようにしている。だから頼むどちらかのミラクルよ起きろ。3は本当に嫌だ。
だめだ。ここでじっとしてても何にも思いつかない。
こういう時は気分転換だ。何か別の事をやろう。
そうする事で思考が整理されてなんか凄いアイディアを思いつけるものだ。決して現実から逃げてるわけではない。
何かやる事はないかな。普段忙しくて出来ない事でこういう時にやって罪悪感がないやつ。
昔だったら筋トレとか部屋の掃除とかを始めたもんだが・・・・・・。
じゃあ、荷物の整理でもするか。
こっちの世界に来て結構長い事たっているので結構物が増えているから丁度いいや。
そう思い、自分の持っている荷物やドンに括り付けてある荷物の整理を始める。
今はお屋敷を拠点にして安心して荷物が預けられるので嵩張って使わないものは大体、お屋敷に置いてある。
だから持ってきている物が少ないかと言えばそうではない。
地図とか各種薬品などの冒険道具から衣服や食料品とかの生活必需品などのどう見てもいるものもあれば、スライムの素材で作られたボール、ブーメラン、ソリなんかの遊び道具もある。
一通り取り出して確認したが特に思いつくことはなかく、全部整理しなおして荷物に戻した。
ごちゃごちゃに入っていた荷物が綺麗に分類分け出来た。何も思いつかなかったけどこの時間は無駄じゃなかった。そういう事にした。
後は何かないか。
一応、腰の収納に入っているスキル石でも確認するか。
そう思いスキル石を取り出していく。
ただ、スキル石に関しては結構頻繁に整理してるからそんなに散らかってないんだよな。
前は敵の落としたスキル石をそのまま持っていたので大変嵩張った上に管理が大変だったが、同じスキルなら一個にまとめられるようになってからは超スッキリしている。
目の前に今持っているスキル石を並べていく。
『薬効』、『繁殖』、『発光』、『消化』、『抗病魔』、『再生』、『飛行』、『音探知』、『棍棒術』、『剣術』、『槍術』、『擬態』、『麻痺毒』、『硬化』、『水魔術』、『暗殺』、『気配遮断』、『恫喝』
こうして並べてみるのも初めてなので思ったより一杯あってびっくりする。
一纏めにしてこれだからな。前みたいにバラバラだったらとんでもない事になってたな。
今だってこいつらをバラせるんだから、全部0.1とかにしたらどれくらいになるのだろうか。
それこそ並べるだけで壁が作れちゃうな。
まあ小石ほどの大きさだから小さすぎて無理だけど。大きくなれとか言ったらなったりして。
はい。ならないです。すみませんちょっと錯乱してました。
そもそも大きくなって平たい石になったとしても普通に土の中に入って行っちゃったりして直ぐ崩れそう。なしなし。
うん?
待てよ。土の中に入るとどうなるんだ?
入ったらどうなる?その辺の土だけにスキルが付くのか?それとも水みたいに全体に付くの?
水に何かスキルを入れるときはスキルは水全体に付いていた。
そして同じスキルレベルでも水の量により必要とするスキル石のレベルの量が変わる。つまり水が多すぎるとスキルレベルが0.1を超えるのに必要なスキル石の数がはんぱない事になる。
土の場合全部地続きだから、水と同じ全体ならいつまでたってもスキルは付かないって事?
考えてみたらよく分からなくなってきた。地面とか壁にスキルを入れようなんて思ったことなかったし。
いや、待てよ。『発光』スキルは普通に壁に埋め込んでたな。光石を埋めるのがめんどくさいから壁に直接入れてたんだった。
その時は普通に壁の一部分だけ『発光』スキルが付いていたっけ。という事は限定的に付けられる?
考えれば考えるほど分からない事が増えていく。
こういう時は試していくのが一番早いな。
地面に適当に要らないスキルを入れる。入れたのは『繁殖』の0.1だ。
すると見事に地面に入り、スキルの表示は『繁殖』0.1となった。
うん。入るのは入る。全体にはならなそう。
ただそれだと要れた物が悪かった。『繁殖』だとどの辺までがスキルを持った土なのか分からない。
じゃあ、次の実験。
『発光』0.1を地面に入れてみる。これも見事に入って『発光』0.1が付いて地面が薄ぼんやり光っている。
これで大体のスキルの影響範囲というか、どれくらいの面積の地面に『発光』スキルが付いているか分かる。大体、手を広げた大きさの一回りでかいくらいだった。
ここから更に『発光』0.1を入れてみる。すると『発光』スキルは0.2になり光っている強さは変わるが光っている範囲は変わらなかった。
なるほど、スキルのレベルが上がっても範囲は上がらずなのね。まあ、そんな気はしてた。
じゃあ、次に『発光』の範囲外の所に『発光』0.1を入れてみる。それも今光っている箇所の端の方でギリギリ光っていない所に入れてみよう。
さっき『発光』を入れた時は入れた場所を中心に光っていた。なので入れた場所を中心に範囲が決まるのであれば、二つの範囲が重なった場合どうなるのか?という事を確認したい。
『発光』0.1を入れる。すると2つの光っている部分は境目も分からず、横長な範囲で1つになったように見える。
そして範囲は横に手のひら二つ分となっている。
そして『発光』スキルレベルは0.1だ。つまり単純に考えれば2つの『発光』スキルが合体して1つになったという事だ。
光っている箇所にもう0.1入れると表示は0.2になったので計算は合っている。
後は何を確認したらいいだろう。
そうだ。光っている地面の周りを掘ってみよう。縦というか厚みがどうなっているのか確認しよう。
掘って確認した結果、厚みも手を広げた大きさの一回りでかいやつ。つまり最初の範囲と同じで縦横高さが全部一緒の立体ということだ。
なるほど、なるほど。
じゃあここで更に実験してみよう。
『発光』スキル0.1分の範囲と同じくらい量土を掘る。でもってそれを縦を倍、横は一緒、厚みは半分の立体を作る。
そこに『発光』スキルを0.1分入れてみる。すると思った通りスキルは0.1となり全体が光るようになっていた。
更に厚さは半分くらいだが縦も横も3倍以上の立体をギンに作って貰い、そこに『発光』スキルを0.1分入れる。
すると『発光』スキルを入れた所中心に光っており、範囲は手を広げたよりもずっと大きな範囲だった。測ってないので正確ではないがおよそ倍の範囲に見える。
じゃあ次はこれだ。
また先ほど同じ厚さ半分の大きな立体を作って貰い、そこに『発光』スキルを0.2分入れてみる。
すると光る範囲は先ほど同じでスキルレベルが0.2の物が出来た。一気に入れても範囲は変わらないわけね。
今ので分かったことを整理してみよう
1つ目は土に入れると一部分だけスキルを得る。
2つ目はスキルを持っている所に入れるとスキルが上がるだけだが範囲が重なっている場所にいれると範囲が増える。
3つ目は厚みを減らせば減った体積分、光る範囲が増える。
4つ目は一気に0.2入れても範囲は増えない。
よしこれらの事を踏まえて最後の実験をしよう。
ギンにさっき作って貰った厚みと同じ土の壁を土塁の前に作って貰う。高さは土塁の上までなので3メートル横は適当だが1メートルもないだろう。
そこに『硬化』0.1のスキル石を入れていく。
壁が硬く出来ないのなら『硬化』を入れて硬くすればいいじゃないという作戦だ。
範囲を広げるように等間隔でスキル石を入れていき今作って貰った壁全体に『硬化』が行きわたるように入れていく。
高い所は3メートルもあるので手が届かなかったが、ドンに踏み台になってもらう事でなんとか作業できた。
全部に入れ終わったと思う。今まで気にしてなかったので分からなかったが、どこまでがスキルの有効範囲なのかは見ていれば何となくの感じで分かる。
その感覚で言えば作って貰った壁に全て『硬化』スキル0.1が行きわたった。
触ってみた感触では、きちんと土が固まっていてちゃんとした壁になっている。
。
ギンは壁の後ろからどんどん土を埋めていってもらい、きちんと土塁と壁の隙間をなくし、土塁の一部にしてもらった。
よし、最終確認だ。ギンに壁に使っている『土魔術』を解いてもらう。
これで崩れなかったら壁の完成だ。
ドキドキしながら見守る。
ギンが『土魔術』を解いたはずのタイミングから結構時間が経った。でもまだ壁は崩れていない。
やったか!?
壁に近づき壁に触れてみる。
すると壁は崩れ・・・ない。
ちょっとやそっと押しても叩いても崩れない。
やった出来てる。本当に壁が出来てる。実験は成功だ。
あんなに自分たちが四苦八苦して作ろうとした壁が『強奪スキル』のチート力であっさりと作れてしまった。
やっぱチートってすげえという気持ちが湧き上がる。
と同時に努力を一瞬で否定されたようで、少しもにょる。
まあいい、今は壁の作り方が分かったのだ。
後は壁を作るのみ。
亀よ首を洗って待っていろ。




