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7話 ダンジョンにて③

 「おいこれからどうする。」

 「どうするって言ったって帰るしかないだろう。」

 「帰るってお前、道分かる?」

 「俺の地図はダメ、なんも書かれてないところにいる。」

 「俺のもダメぽい。」


 4人がなんか焦っている。

 彼らの地図は正しく現在地を指してないから今どこにいるのか分からないらしい。

 だが待ってほしい超絶几帳面で会う人会う人にA型だよねと言われるこの俺が描いた地図は正確な現在地を示している。ちなみにB型だ。


 「誰か来た道覚えている人いないの?」

 「教官のいう通り来てたからな全然覚えてない。」

 「俺もだ。」


 帰るのなんてそんなに難しいことじゃないだろ。

 当たり前のように地図を読んで当たり前のように帰る、ただそれだけ。

 そうこのB型謹製の地図を使えばね。 


 「この場所の入り口まではわかるんだから1個前に戻ってその時のマークの動きで大体どの辺にいるか確認するとか。」

 「えっ、この場所の来た入り口分かるの?」

 「ごめんそういわれると自信がない。けど誰か覚えてない?」

 「何となくはわかるけど自信はないな。」


 会議は踊る、されど進まず。ごめん言ってみたかっただけ。

 なんかすごい追い詰められてる。

 地図がないだけでこんなになるんだ地図すげえ。

 なんか他の人が焦ってるのを見ると逆に落ち着いてくるよね。


 「ワタル君はどうなの?」


 紅一点の女の子が聞いている。

 俺と同じ名前のやついたんだ。

 女の子に声かけられたのかと思ってドキっとしちゃった。

 

 「そうだ。ワタルはどうなんだ。」

 

 なんか皆がこっち向いてる。

 もしかしたら ワタル て私の事でしょうか。

 まじかよ俺、今、意見、求められてる。

 やばいやばいなんて言おう。

 そもそもなんで俺の名前知っているの?俺なんてだれの名前も知らないのに。

 やばいやばい考えまとまんない。

 

 「落ち着いて、焦らないでいいから。」

 「そうだなここで焦っても仕方ないしじっくり考えるか。」

 「それもそうか。よく考えれば地図はあるんだし帰る方向も分かるし敵も大したことないから適当に歩いてみてもいいじゃん。」

 「それはない。」


 なんか他の奴らが落ち着きだしてきた。

 どうやら俺の慌てふためく様をみて落ち着きを取り戻したらしい。 

 

 「それでワタル君はこの場所の入り口とか覚えてない?」


 「入り口大丈夫。地図は正確な場所を指しているから。」

 なんかちょっと片言みたいになっちゃった。


 「嘘、ちょっと見せて。」

 女の子に地図を見せる。


 「えっ、すごい綺麗に描いてる。見本の奴みたい。」

 すごい褒められた。べ、別に嬉しくなんか・・・めっちゃ嬉しい。


 「今がここで。前の部屋がここ。ここからこの順番に行って最後出口がここ。」


 今日、来た黄金ルート逆にたどって出口を示す。


 「えっ全部の道を覚えてるの。すごい。」

 すごい褒められた。

 今まで気が付かなかったけどこの子、金髪碧眼できれいな顔立ちをしている。

 なんかめちゃどきどきして来た。


 「なんだ。この地図があれば楽勝じゃん。」

 「本当、一時はどうなるかと思ったぜ。」

 「やるな。ワタル。」


 いつのまにか全員で地図をのぞき込んでいた。


 「つーか、今ここなんでしょ。でゴールがここ。ということはこうやって行けば簡単に着くじゃん。」

 「なるほどこっちの方が断然、近道だな。」


 たしかにこのルートは現在の8の部屋から初見の部屋を2つ通り過ぎて2の部屋に戻る。このルートを使えば黄金ルートは8つの部屋を通るのに対してこちらは4つで済む。


 だが待ってほしい。

 仮にもあの捻くれ教官がこんな簡単な試験を出すだろうか。

 他の4人のはともかく俺の地図はまともなことは教官も知っている。

 知っててこの試験を出したとしたらこのルートは一見簡単に見えて何か大きな落とし穴があるに違いない。

 そもそも行きに通った黄金ルートは安全安心の神のルートなのでこれを外れるのはいかがなものか。

 

 「じゃあ随分遅くなっているし反対意見がなければこの近道を使おうか。」

 「賛成、なんか腹減ってきたし。」


 黄金ルートを外れるとは愚かなり。

 まあ言えないんだけどね。

 

 「よしじゃあこのルートで行くか。道案内は地図を作ったワタル。お願いできるか。」

 「・・・分かった。」


 しょうがない、この第2ルートを行くか。

 このルートもまた神ルートであることを祈るしかない。


 そう祈りながら先頭で地図を持ちながら先頭で歩き出した。

   

 帰ること優先なのでスライムもすべて無視してただあるく。

 心配とは裏腹に何事もなく未知の部屋を2つ通りすぎる。


 そして早くも2の部屋へと辿り着いた。


 拍子抜けした。

 単純に近道だった。

 

 そう思い部屋にみんなで入る。

 少し行ったが2の部屋のような大きさがない。

 幅も狭いし視界も開けていない、なにより天井が低い気がする。


 地図を出して現在地を確認しようとした瞬間、何かが目の前を横切った。

 何かが飛び回っている。


 この薄暗い場所で顔の周りを飛ばれるとまるでなんか残像を残しながら飛んでいるように見える。

 手を振り回しても一向にあたる気配がない。

 実体は見えないが心当たりはある、黒コウモリだ。

 

 「なんだこれ。」

 「全然あたらない。」


 周囲でも黒コウモリ(仮)の襲撃を受けている。

 だが奴らは周りを飛び回っているだけで攻撃がない。

 が鬱陶しい。


 「きゃっ」


 短く悲鳴が上がる。


 「ネズミだ。ネズミが襲ってきてる。」


 見ると後ろから黒い波が押し寄せてくるように見えた。

 そしてその黒い波には赤い点が無数についている。

 普通のネズミより異常にでかいが形はネズミだった。

 あれが全部ネズミかよやばすぎ。


 どうやら上にはコウモリ、下からはネズミの波状攻撃のようだ。


 「まずい。走れ。逃げろ。」


 その言葉がきっかけとなってみんな一斉に走り出す。

 この先に行けば空間が開けているそう信じて。


 「だめだ止まれ。」


 少し走ったあと先頭で走っていたやつが叫ぶ。


 近づいてみるとなんと道の先が崖になっている。

 その下には大きな空間があった。


 やられた。

 同じ部屋のように地図上では書かれているが高さが違うのだ。

 こっち側は高所にあり、あっちは低地。

 断崖で切り分けられている空間だったのだ。

 この高さではどうやっても降りれない。落ちれば死だ。


 ネズミが迫る。

 ネズミに追い詰められた。

 部屋の中ほどまで入ってコウモリと同時に襲い獲物を崖まで誘導して逃げられないようにしたんだ。


 「こうなったらもう戦うしかない。戦って勝つしか生き残る道はない。」

 そういい他の奴らは剣を構える。


 俺も咄嗟に剣を構える。

 隊列もくそもないただみんな横に並んだだけの陣形だった。


 幸いな事にコウモリは追ってきてはいないみたいだ。

 奴らも連携をしているわけではないのかもしれない。 

 

 黒い波の先端とぶつかる。

 その瞬間剣を地面に突き刺す勢いで突く。


 しかし当たらない。


 こんな足元にあるものに対して突くという行為をするためには中腰か完全に一回しゃがまなくてはならない。

 そんな状態で突くなどという動作自体、日常でやることがないのだ。うまく突けるはずがない。


 「くそ、当たらん。」

 「痛っ。噛まれた。」


 どうやら他の奴もうまくいっていない。

 そして奴らは足から、振り下ろした手から登って防具がないところに噛みつこうとしてくる。


 顔付近に来たのを間一髪振り落とす。

 前から後ろから来るので、体に違和感を感じたらそこを激しく動かして振り落とさないとどっか噛まれてしまう。


 しかしそんな激しい動きは長く続かないだろう。

 疲れて動けなる前に奴らを減らさないと。

 でもどうすれば。


 どうして義務教育の指導要綱には足元から襲い掛かってくる敵に対して有効な運動がないんだよ。

 こういう事を想定して指導要綱作れ。怠慢だ。税金返せ。


 瞬間、右斜め前からネズミが襲ってきているのが見えた。突きは間に合わない。

 咄嗟に右足の裏ででボールをトラップするように受け止める、そして流れる形でシュート。

 あっさりとネズミが吹っ飛んでいく。


 そうか体長20センチほどで足元に高速で迫る物体を対処するという運動はサッカーの動作によく似ている。

 つまりネズミをサッカーボールだと思えばいいんだ。

 ということは義務教育でサッカーを教えていたのはこの時のためだった。

 サンキュー指導要綱。もう税金は払えないけど。  


 そうと分かれば神経を右足に集中する。

 そして右足の裏でボールをストップ。

 そのまま体を浮かせて、体重をかけきって踏みつぶす。

 ぐちゃという感触とともに相手が動かなくなったのを確認した。

 いけね最後サッカーじゃなかった。


 コツは動作を小さくすること。

 決して足を大きく上げないこと。

 向かってくるものに対して最小限の動きで足の裏で足の側面で勢いを殺す。

 これ本当にサッカーのトラップと一緒だ。

 サッカーて本当にこういうときのために習う球技だったんだ。


 「足だ。足を使え。スライムと同じで踏みつぶせる。」 

 一匹倒した瞬間、叫んでいた。


 それからは夢中でネズミと戦う。

 襲ってくれば受け止めて踏み潰す。

 来なければこっちから寄って行って踏み潰す。

 噛まれるのを気にせず振り払って潰す。

 潰す潰す潰す潰す潰す。


 「やべえ、なんかあいつ笑いながらネズミ踏みつぶしているぜ。」

 「目こわ。」

 「しっ、そっち見てないでこっち手伝って。」


 なんか声が聞こえた気がしたが構わず踏み続ける。 

 もう周りにネズミが見えなくなったころ、辺りを見回す。

 そこには無数のネズミの死体が転がっていた。


 昔やったゲームでマッハで踏むだけという必殺技があってすごい弱そうとか思ってたけど、めっちゃ強いのね。ごめん馬鹿にしてた。


 他の奴らも、戦い終わっているようだ。

 ネズミはこちらの反撃が激しくなった辺りから引いていったらしい。


 「ネズミの死体は持って帰れないから埋めるとしてどう帰る。」

 「ここが降りれないってことはさっきの場所に戻ってこことこことを通れば2の場所に戻れそうだけど。」


 地図を見ながらみんなで話し合う。


 「一度、8の部屋に戻った方がいい。それで今日来た、道を戻るのがいいと思う。あそこは安全が確認されてるし、ネズミに噛まれたからその個所をきれいな水で洗い流した方がいい。4の部屋には湧水があった。」


 今度は自分の意見が言えた。


 「なるほど、そうするか。俺はワタルに賛成だ。」

 「「俺も」」

 「私も」

 「ありがとうみんな。」


 大きな穴を掘ってネズミの死体を埋める。

 コウモリゾーンを走り抜け8の部屋に戻って黄金ルートを逆行する。

 その際に4の部屋の湧水で傷を洗い流した。

 

 そして3の部屋で回復ゴケを採って帰ることにする。

 光石を置いてきた分、荷物がに空きが出来たからだ。


 回復ゴケを採ろうとしたときにそれは見えた。


 『薬効』 0.1


 回復ゴケのスキルだ。

 しかし行きの時は見えなかった。

 何かが変わったのだろうか。


 他の四人を見てみる。

 するとさっきまでは見えなかった彼らのスキルが見えた。

 『剣術』だとか『風魔法』だとかスキルが1未満のものだ。

 どうやら1未満のスキルでも見えるようになったらしい。

 何がきっかけなのだろうか。


 まあそれはいいそんな事よりスキルだ。

 今度こそ『スキル強奪』を発動させるのだ。

 この相手なら何の気兼ねもないはず。


 やり方は分からない、分からないがとにかく集中する。

 スキル名を見ながら奪えと強く念じながらスコップを振り下ろしコケをはがしていく。

 その瞬間、コケと一緒に何か落ちた。

 

 拾ってみるとそれは黄色の小さな楕円形の石のようだった。

 しかしその横にはしっかり『薬効』0.1の文字が見えた。

 そしてコケの方には何のスキルもなかった。

 成功だ。初めて『スキル強奪』に成功した。


 そこからは夢中で回復ゴケから『薬効』を奪っていく。

 あまりに夢中で採りすぎたせいか他の4人から注意が入った。


 フェイクでコケを袋に詰め、スキルの石をズボンの収納にいれる。

 やばいニヤニヤが止まらない。ダメだ我慢、我慢するんだ。


 ニヤケるのは我慢しながら出口まで歩く。


 出口まで着いた瞬間後ろから声をかけられた。


 「よし、試験終了、みんな合格だ。」

 教官だった。

 

 「近道に気付くとは思っていたが、まさかネズミがあんなに繁殖しているとはな。でもまあみんなかすり傷程度でよく頑張った。」

 

 どうやら後ろからついて来ていたらしい。全然気づかなかった。


 「地図のマークは付けた時と同じようにマーカーを印につけて魔力を込めれば消える。」


 そうやってマークを消すのか。


 「あとネズミに噛まれた奴はこれを飲んでおけ、水で流したみたいだがこれで万全だ。」


 何かの薬を渡される。『抗病魔』0.5とあるから感染症対策なんだろう。


 「あとは装備や備品はちゃんと返すように。清算は明日行うから。あとは・・・」


 なんだまだあるのか早く帰りたくなってきた。


 「今日は本当によく頑張った。正直、途中で無理かと思ったがよくあの状況を切り抜けた。これで今日からお前たちは本物の冒険者だ。」


 やばいちょっとじんと来た。ちょっと泣きそう。 


 「これで初心者講習は終了だ。明日からは各自で頑張るように。あともっと専門的な訓練はギルドでやっているから興味があったら来るように。ただし有料だがな。」


 これで本当に初心者講習は終わった。

 さあ帰ろうと思ったときに声をかけられる。

  

 「ワタルは明日からどうするんだ。良ければ俺たちとパーティーを組まないか?」


 どうやらパーティーの誘いらしい。


 「いや、やめておく」


 だが断る。


 「なんで?冒険者のソロはかなり難しいらしいよ。パーティー組んだ方が絶対いいって。」


 女の子の誘いに若干揺れる。いやかなり揺れる。


 「まだ一人で試したいことがあるから今はやめておく。」


 だが断る。


 「じゃあ、しょうがないな。パーティーが組みたくなったらいつでも言ってくれ。」

 「分かった。その時はよろしく。」

 断ったが誘ってくれてうれしかったありがとう。言わないけどね。


 「まあなんにしても今日は助かった。ありがとうワタル。」

 「こっちこそありがとう。えーと・・・」


 「なんだ名前覚えてなかったのか。俺はキース。」

 「私はニナよ。今日はありがとう。」

 「俺はケビン。地図助かったぜ。」

 「俺はピーターだ。目めっちゃやばかったぜ。」


 最後の最後で名前を知った。


 「キース、ニナ、ケビン、ピーターこちらこそありがとう。助かったよ。またどこかで。」

 「「またどこかで」」

 

 こうして怒涛の初心者講習が終わった。

 これで何とか冒険者としてやっていけそうな自信はついた。


 なにより『スキル強奪』の力が使えるようになったのだ。

 

 きっとこれからは無敵で無双な新しい自分になるに違いない。


 そんな予感を胸に初心者講習は終わったのだった。


お読みいただきありがとうございます。

第1章はこれにて終了です。


この後17時に短い他人視点の話を1話を挟んでから

24時に続きの1話を投稿する予定です。

2話掲載ですのでよろしくお願いします。



あと今までは恥ずかしくてかけませんでしたがこれを機に書かせていただきます。

評価、ブックマーク嬉しかったです。

これからも評価、ブックマークしていただけると励みになります。


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