73話 新生ワタル隊、出動せよ②
冒険者ギルドを目指して歩くこと数分、ようやく冒険者ギルドに着いた。
何か久しぶりすぎて懐かしい感じがする。
ドンを厩舎に預けたら冒険者ギルドに入り受付に行く。
「あ、ワタルさんじゃないですか。最近、全然来ないんで心配しちゃいましたよ。今までどうしてたんですか?」
受付にいたマリーさんが俺に気が付いて話かけてくれる。なんかちょっと嬉しい。
「仕事でアルステラの方に行ってたんですよ」
「そうだったんですか。急にぱったり来なくなったのでてっきり・・・」
てっきりって何ですか、もしかして死んだと思われていたのか。
まあ、冒険者だしそういう危険もあるし、そういう事もあるんだろうな。
「そうれはそうと、州都まで行ってたんですね。いいなー。あっちはここじゃ売ってない可愛い物とかオシャレな物とか一杯あるんですよね。私も最近行ってないんで羨ましいな」
確かにこの街は如何にも冒険者の街なので実用性特化のものしか売ってないけど、アルステラは州都という事もあってオシャレな物も一杯あったな。
サチの身の回り品を買うためにアリサに連れられて行った店なんかはかなり華やかだったので驚いたのを覚えている。
そこまで考えて気が付いた。
これあれだろ、気の利くモテ男ならお土産で可愛い小物の一つでも買って帰ってプレゼントするところだろう。
そういうモテ男ムーブを決める事によって好感度を稼いで、素敵!抱いて!展開に持ち込めるんだろ。
しまった失敗した、イベント絵を一つ見落とした。
「それはそうと、後ろの可愛い子は誰ですか?」
「この子はサチ。妹です」
またもや決まった、完璧な妹紹介ムーブ。
やったか!?
「そんな訳ないじゃないですか。また買ったんですか?全くもう」
またしても瞬時に妹言い訳最強理論バリアが突破されてしまった。
というかこの理論バリア弱くない?いつも速攻パリンクロンされるんだけど。
もしかして?この妹言い訳理論弱い?
「いいですけど、ちゃんと責任持って面倒みるんですよ」
マリーさんにも女将さんと同じような事を言われる。
なんで俺の周りの女どもは何時も同じことを言うんだろうか?お前は俺のかあちゃんかよ。
「なんですか、なんか文句あるんですか?」
あ、すいません。反省してます。調子乗りすぎました。この子はちゃんと責任持って育てます。
思った事が態度に出てしまったのかマリーさんに怖い顔されてしまった。
ひたすら平身低頭な態度でその場を乗り切り、次に販売店に行く。
「お、久しぶりじゃないか。死んだかと思ったよ」
販売店に行くと店員のおっさんにそう言われる。
やっぱり死んだと思われてたのかよ。
「そう言えば注文の品はもう出来てるよ。ちょっと待ってな」
そう言ってギン用の首輪とブーメランを持ってきてくれる。
ギンの首輪に土魔術の媒体になる琥珀が付いている。
土魔術を強化するというのでなんか強そうなスキルが付いているのかと思ったが何も付いてなかった。残念無念。
取り敢えずギンに首輪をつけてやる。
「わんわん」
首輪をつける終わるとなんか嬉しそうに俺の周りを走っている。
嬉しいか良かった良かった。
「それで注文が止まってる杖はどうするんだ?」
現実に戻された。見たくない、考えないようにしてた現実が今ここにある。
水魔術用の杖を注文しようとしてた時はお金が一杯あったので意気揚々と注文しようとしてた。
後は素材である魔鉄鉱石を持ってくるだけだった。
だが魔鉄鉱石もないし、何より今現金は100万ちょっとしかない。
杖は220万だ、つまり全くお金が足りない。
「実は――」
店員さんに事情を説明する。
魔鉄鉱石はきっと用意できる、お金も少し待ってもらえれば必ず用意できる、ただ今は手持ちが100万しかないことを告げた。
「まあ、それなら魔鉄鉱石と100万を持ってきな。それで注文かけてやるから。大体は半金を貰ってるんだが100万でもいいや。ただし物が出来るまで大体10日だから、その間に残りのお金は用意しろよ」
「はい。ありがとうございます」
やった、言ってみるもんだな。これで何とかなる。
回復薬の儲けは1日150000だから10日もあれば120万なんて楽勝だな。
やっぱり俺の偽錬金スキルは最高だぜ。
そうと決まれば、早速ダンジョンに行って『薬効』のスキル石と魔鉄鉱石を取りに行こう。
「ところで後ろのお嬢ちゃんはどうしたんだ?」
「妹です」
「そんな訳ないだろう。どうせその子もダンジョンに行くんだろう?なら装備はどうするんだ?」
また一瞬で嘘を看破されてしまった。やはりこの妹言い訳理論弱い。
まあそれより、サチの装備か。全然考えてなかった。
一緒にダンジョンに行くなら流石にこのままじゃまずいか。
いくら後ろで戦闘に参加させる気が無いとはいえ、布地の服だけで何の防具もなしのとかダンジョンを舐めてるのかと各所から怒られそうな案件だな。
まあお金もないしとりあえず昔ゴブリン達が着ていた防具でいいかな。
まだゴブリン達が小さかった頃に作った奴だし、ちょうど今のサチと同じくらいの大きさの時も装備してたから大丈夫だろう。
ゴブリン達の旧装備はドンが持っている荷物の中に入っているはず。
と言う事で早速、ドンを預けた場所に行く。
ドンを預けた所に着くと早速、荷物をあさってゴブリン達の旧装備を取り出す。
これには『再生』スキルを付けてあるので目立つ傷も、欠けた場所もなく一見新品のようにも見える。
だがこれは一発で中古だと分かる事がある。そう臭いのだ。
何回か洗った事はあったがゴブリンがずっと付けていた物なので、汗やら何やらと革独特の匂いが相まって臭い。
新品と見せかけて臭い、不意打ち悪臭トラップが付いているのだ。
何故このような事を言うかというと、今まさにサチに防具を付ける際にそのトラップに引っかかって、サチが臭いという顔をしたからだ。
きっと臭いという事前の覚悟がない分、不意打ちで臭いこのトラップは効いたようだ。何時もは全く文句を言わないサチが少し嫌そう顔でこっちを見ている。
そんな表情を見ていると色んな意味でこっちは笑顔になってしまう。
俺も装備しているこの革の防具は全部同じように臭いし、つけていれば自然と慣れてくるから、我慢、我慢。そう言い聞かせてサチに防具を付けていく。
びったりとはいかないが思った通り、サチの体にもこの革装備をつけさせる事が出来た。
これで防具は大丈夫、後は武器だな。
戦闘はさせる気はないが何かあった時の護身用に俺の使っていた鉄の短剣でも持たせる。
あくまで護身用なのでピンチになった時以外、絶対に抜かないように言い聞かせる。
よし、これで準備は万端だ。いざダンジョンへ。
「お、坊主生きてたのか」
いざダンジョンに入ろうとした瞬間、入り口で待機している顔見知りの冒険者に声をかけられた。
やっぱ死んだ認識なのね。
「はあ、まあ」
「最近見ないから心配したぜ。後、その小さい子はどうしたんだ」
「はあ、妹です」
何回も聞かれすぎて、完全にこのやり取りに飽きてしまった。絶対、嘘つき呼ばわりされるし、だからかなりおざなりな返事になってしまった。
「ははは、妹かよ。まあそういう事もあるわな。無理させるなよ」
完全に信じてないような感じで返されたけど、否定はされなかったのでこれは通じた。そういう事にした。妹言い訳理論の完全勝利だ。これからも俺はサチを妹と言い続けるよ。
そんなよく分からないテンションになりつつ、久ぶろのダンジョンに足を踏み入れた。
久しぶりに入ったダンジョンはまあ、普通だ。普通にダンジョンって感じだ。
ただ他の奴らには違って感じるらしい。
ゴブリンやギンなんかは久しぶりのダンジョンではしゃいで走りまわっている。
ドンはマイペース過ぎてよくわからん。
そしてサチは初めてダンジョンに入ったのか、辺りを興味深く見回したり、時々物陰から出てくるネズミやスライムにビビったりしている。
うんうん、急に出てくるとビックリするよね、怖くないようにお兄さんが手を繋いであげよう。
お前たちは適当にやってていいから・・・と思ったらもう倒して食べ始めてるのね。そういやこんな感じだったわ。思い出してきた。
あ、スキル石出てる、拾ってこ。
とまあそんな感じで久々のダンジョンを進んで行く。
まずは1階の俺が回復ゴケを繁殖させて作った回復ゴケ農場に行ってみる。
場所自体は入り口から近いのだが高い場所にあり直接登れないため、他の部屋をいくつか経由して遠回りしていかなきゃならないため結構遠い。
ダンジョンがかなり久しぶりなのと最近長い距離を歩いてないせいか凄く長く感じる。
道間違えてるんじゃないかと地図で確認するが合ってる。
でも体感的にはもう着いていてもおかしくない、やっぱり道が・・・合ってる。
そんな事を繰り返してようやく回復ゴケ農場の入り口に着いた。
そういえばこっから先はコウモリがいて、近づくと攻撃して来るんだった。
「よしサチ、あっちの方まで走るぞ」
そう言ってサチの手を引き走る。
途中、コウモリが顔の周りを飛んで攻撃というか威嚇というかをしてくる。
サチと手を繋いでない方の手で振り払いながら走る。
なんか久しぶりすぎてコウモリの攻撃が怖く感じる。
なんか薄暗闇で飛行生物が顔の周りを飛び回るのって怖い。
というかいつもこんなにいたっけ?というくらいコウモリの波状攻撃が密だ。
なんとかコウモリを振り払ってコウモリエリアの外に出れた。
サチも結構な速度で走ったのでかなり呼吸が荒い。
そして顔色が悪い。悪いというか半泣きだ。
そう言えば、コウモリが出てくるの言ってなかったな。コウモリが出て来ると知っていてもあんなに怖かったんだから初めてだったらそりゃ怖いか。
「ごめんごめん、コウモリの事言うの忘れてた」
そう言うと珍しくサチが抗議の目線を送って俺の手を強く握った。
ごめんごめん、でもこの部屋はこっからが本番なのだ。
この崖付近まで獲物を追い詰めてから狩りに来る、この部屋の本当の主との戦いが待っているのであった。




