69話 事後
「なんか大きな音がした。大丈夫?」
そう言って、アリサが部屋に入って来る。
近くの部屋に泊っているアリサがさっきの音を聞いてやってきたらしい。
結構、大きな音たしたし下手すりゃ揺れてたかもしれない。
ちょっと男の下の床がどうなっているか見たくない。
「なにこれ・・・」
アリサがこの部屋の惨状を見て絶句している。
そりゃそうか、俺が今殺した男もそうだが、部屋の中には他にも死体が転がっている。
この状況は控えめに言って大惨事だ。
そりゃ言葉も失うわな。
そう言えば、他にも死体があったな。
あれってゴブリンやギンが殺したなら、もしかしたらスキル石が落ちているかもしれない。
ちょっと探してみよう。
1体、1体死体の近くにいって石が落ちていないか確認する。
するとちゃんとスキル石が落ちていた。
全部回収してスキル毎にまとめる。
結果、『暗殺』8.5、『気配遮断』5.5、『恫喝』0.8が手に入った。
『暗殺』もそうだが『気配遮断』が沢山手に入ったのが嬉しい。
これでサンが少し強化出来るはず。
『暗殺』についてはサチが持っているからサチのスキルを伸ばしてもいいけど保留だな。
出来れば、サチにはそんな生臭いスキルは覚えて欲しくない。
「何しているの?」
そんな事を考えているとアリサがショックから立ち直ったのか話かけて来た。
「ちょっと、死体の様子を確認してただけ。ただのしかばねだったよ。」
「?そう。それより、これどういう事。説明して」
そう聞かれたので今までの経緯を説明する。
起きたら男たちが倒れていた事。
男たちは暁のさそりで、俺達を殺しに来たがゴブリンやギンたちが撃退してくれた事。
最後の一人は俺が殺した事。
その際に大きな音を出してしまった事を一気に説明した。
「・・・そう、なら直ぐに騎士に知らせないと」
やはりそうか、騎士に知らせなきゃ駄目か。
何人も死んでるしこれでまた檻暮らしか。
襲われたんだしこの前みたいに行き成り死刑はないと思うけど裁判までは前みたいに檻暮らしか。
気が滅入る。
「じゃあ私行ってくる、明かりの魔道具かして」
そう言うとアリサは照明として使ってた『発光』入りの石を持って外に出ていく。
暫く待っていると何人かの鎧を付けた人を連れてアリサが帰ってくる。
「これはお前がやったのか」
「はい、私がやりました。しかしこいつらは無関係です、連れていくなら俺だけにしてください」
鎧の人に聞かれたのでそう答える。
せめてこいつ等は檻暮らしは勘弁してやって欲しい。
「?行くなら一緒がいいんじゃないか。まだ狙われているかもしれないし」
そういう考え方もあるか。
しょうがない、苦労をかけるがみんな一緒に行こうか。
「分かりました。みんなで行きます」
「よし、じゃあ詰め所に移動しよう。お前たちはここに残って死体の処理をしろ」
「「はい」」
荷物を急いでまとめて、アリサを含めたみんなで鎧の人の後についていく。
着いたのは捕まった時に連れて来られた場所と同じだった。
やはり檻の中か、そう思ったが案内されたのはシンプルな応接間みたいな部屋だった。
じゃあ取り調べか。と身構えたが普通に世間話みたいな感じでさっきの出来事を聞かれた。
アリサにした説明と同じことをもう一度この人に話す。
その中でゴブリンやギンたちが暗殺者を撃退した話をいたく感心して聞いていた。
曰く、寝ている所を襲撃されてそれを撃退するのはよほどの手練れだと言われて気分が良くなった。
そうでしょうとも、うちの子は凄いのです。
現場見てないけど。寝てて全く気が付かなったけど。でもうちの子は凄いのです。
後、話していて分かったのだが一般人同士の、ましてや犯罪組織の人間に対しての殺人なんて別に裁判にならないし罪にもならないらしい。
なんだよ心配して損した。
普通ならそのまま事情を聞いたら釈放なのだが、俺の場合は暁のさそりに狙われているのでこのままここで宿泊していいらしい。
何より俺が来たらウォーレン家の長女の前に連れて来るように言われていたらしい。
ウォーレン家の長女つまりあのお嬢様の事らしい。
どうやらあんな形で裁判が終わったために、俺は狙われる可能性が高いと考えていたお嬢様は、どんな顛末になろうと知らせるようにこの地域の騎士や警備兵に通達ががあったらしい。
なるほどね、普通に考えたら襲われる感じなのね、俺覚えた。
とにかくそういうわけでお嬢様とあうのは確定なのだが、この時間なら当然お嬢様に会えるはずがない。
なので今日はここに泊って明日の朝改めて会いに行くという事で決まった。
アリサは関係ないので宿に帰る事になった。
最初は俺と一緒に泊ると言ってたが、宿泊施設は狭いので一緒のベットで寝るようなことになると聞かされて引き下がった。
心配してここまで着いて来てくれたアリサにお礼を言って別れたら、宿泊施設でみんなでぎゅうぎゅうになりながら寝た。
次の日。
朝に無理やり起こされ、慌ただしく朝食を食べて支度をする。
正直寝足りない、全く寝足りないのだが、これがこの場所の規則と言われればしょうがないので従う。
支度が終わった後はやる事がないのでまったりしていたら、騎士ぽい人が呼びにやってきた。
どうやらお嬢様と会えるらしい。
ゴブリン達はどうしようかと思ったが前回も一緒に会っていた事を思い出しみんなで行く事にする。
騎士(暫定)に案内され一つの部屋に通される。
確信はないが部屋の内装とかが同じだと思うので昨日、お嬢様とお茶会をした場所だろう。
部屋のソファーに座って待つっていると直ぐにお嬢様は女騎士さんを従えてやってきた。
そして前回と同じように女騎士さんを立たせたまま対面のソファーに座った。
「ごきげんよう、また会ったわね。」
「あ、はい。お久しぶりです?」
ごきげんようだってリアルで言ってる奴初めて見た。
そのせいで変に動揺しちゃったから変な返答になっちゃった。
「まさかこんなに早くに再び会うなんて予想外だったわ」
「そ、そうですね」
「思ったより相手の動きが早くて。まさかその日の夜に仕掛けてくるとはね」
「そうですね」
「そして、まさかあなたがそれを撃退できるなんて」
「えっ」
「少しあなたを見くびっていたようだわ」
えっ、どういう事?俺って殺されると思ってたって事?
まあ確かに俺は何も気づいてないし何もしてないんですけど。
「それでこれからどうするの?このまま暁のさそりに狙われた状態だと知った上で今まで通り生活するの?」
ドキッとする。
あまり考えないようにしていた事を指摘されてしまった。
昨日は撃退できたが、次どうなるか分からない。
襲撃者の人数が増えたら、襲撃者の強さが上がったら、もしもの場合を考えると怖くなる。
それに殺されるのは俺だけではない、従魔のみんなやサチまでもが殺される。
そんなちょっと考えればすぐに分かるような簡単な事に今、気がついてしまった。
「ここでもう一度改めて聞きくわ、私の元で働かない?」
「えっ」
「うちで働くという事は我がウォーレン家の庇護に入るという事よ。分かりやすく言えば、暁のさそりも簡単に手だしできないように住む場所なんかを用意できるわ」
そうかお嬢様に使えるという事はそういう特典もあるのか。
前に何も考えずに面倒くさそうだからと断ってしまったが、よく考えて答えなきゃだめだったんだな。
「仕事の内容なんかは前と同じであなたの出来る範囲で私を助けてくれればいいわ。後はそうね、ダンジョンがあった方がよければアルスターに住んで貰ってそこで活動していればいいわ」
「・・・・・・アルスター?」
なんだそれ、ちょっと美味しそうな名前だな
「あなたと最初にあった街よ。ダンジョンのある。昨日もこのやり取りしたわ」
なんかお嬢様が少しずっこけたように見えた。
そうだそうだ、あの街がアルスターだった。
あの街は俺の中でダンジョン都市になっちゃったから今更アルスターと言われても全然ピンとこないし、覚えられないな。
しかしダンジョン都市で生活できるなら俺に何の問題もない。
問題がないどころか最高の環境だ。
なんでこんなにいい条件をお嬢様が出してくれるのか、すごく引っかかる所ではある。
何かとんでもない裏があるのでは、そう考えてしまうほどいい条件だし、お嬢様は怖い印象のある人だ。
だが、これは受けるしか選択肢はないな。
俺の選択が俺だけでなく、隣にいる従魔やサチの命にかかわる事だと気が付いてしまった。
だからなるべく安全な選択をしなければならない。
「分かりました。お嬢様に仕えます」
「そう。それは良かった」
そう言うとお嬢様はにっこりと笑う。
その素敵で怖い笑顔を見て、ちょっと失敗したかなという感情とこの人に任せておけば大丈夫かなという感情が湧いて来るのを感じた。




