67話 真夜中の訪問者
ドガ
バキィ
バタン
さっきから何か騒がしい。
この騒ぎのせいでだんだん目覚めていくのが分かる。
だが断る。
俺は眠いのだ。
久しぶりのベットでの睡眠なのだ、絶対に昼まで寝てやる。
「お前らうるさい。静かにしろ」
そう言うと物音が止んで一気に静かになる。
それでいい。
静かになったのに満足して再び眠りにつく。
ゆさゆさ。
誰かに体を揺さぶられる。
せっかく眠れてたのに、また目が覚めていく。
まだ眠いのに起こすんじゃない、絶対この眠さならまだ朝早いはずだ。
いや昼過ぎであってもこの眠さならもっと寝ていいはずだ、だから寝る。
「なんだかわかんないけど、後にして」
体を揺するのが止まる。
よし、じゃあ寝る。
ゆさゆさ
と思ったら再び体を揺さぶられる。
なんかしつこい。
緊急事態だろうか?
サチがトイレに行きたいとかそういうの。
「何?トイレ?」
「ゲギャ!」
返事はゴブリンの奴らだった。
お前らはもう一人でトイレに行けるだろ。
「一人で行け」
そう言って寝ようとする。
「ゲギャ!」
が阻止される。
なんか体を揺するのが強くなっている。
面倒くさいけど、こうなったら寝てられないので、しょうがないので起きる。
目を開けて体を起こす。
部屋が暗いので明かりをつけようとベットの脇に置いてある照明器具に触れる。
ちなみにこの照明器具はその辺の形のいい石に『発光』を入れて作った物で、触れて力を込めると結構な時間光る石だ。
ランプみたいなのを買うのが勿体ないというか面倒くさいので適当に作った物だ。
石が光はじめ、部屋が明かるなりぎょっとする。
なんか沢山の人が倒れている。
しかも派手に血を流しながら。
知らない惨状だ。
何だろう、気が付かないうちに別の世界に飛ばされてしまったのだろうか。
それも殺人事件現場の。
急いで天井を見てみる。
概ね知ってる天井だ。
そもそも最近ここの天井見てなかったからどんな天井か覚えてないや。
でもおそらくは前から泊っているいつもの宿の天井のはず、ネイビー。
「ゲギャ!ゲギャ!」
あまりの事に現実逃避して天井を見ているとゴブリンが声をかけて来た。
よく見ると体中に血が付いているし、血まみれの短剣を持っている。
私、犯人分かっちゃったんですけど。
お巡りさんこいつです。
「えっ、もしかしてお前がやったの?」
「ゲギャ!ゲギャ!」
得意満面の笑顔で答える。
「まじか」
ここでようやく目が覚めてきた。
慌てて、周りをもう一度、見回す。
倒れている人は5人。
全員血だらけ。
しかも一人はゴブリンのイチとサンが短剣を突き立てたままだ。
よく見ると犬のギンも足に噛みついている。
これがベットの上から見える景色だった。
急速に頭が冷えていくのを感じる。
5人殺害。
どうしてこうなったか分からないけど、これはまずい。
なぜなら、この世界って一人殺しただけで裁判にかけられて死刑になる所だからだ。
ソースは俺、最近まで裁判にかけられていた俺が言うのだから間違いない。
やばいやばいやばい。
またあの檻暮らしなのか。
ようやく、娑婆に出られたと思ったら1日で檻に帰ることになるのか。
それだけは嫌だ。
落ち着け落ち着け落ち着け。
冷静に今の現状を整理しろ。
まずは何でこんな事になったのかだ。
「なんでこんな事になったんだ」
分からない事は素直に聞きましょう。
そんな小学校の頃の教えが頭をよぎったので、素直に近くに居たニーに聞いてみる。
「ゲギャ!ゲギャ!」
先ほどからの得意満面な笑顔でニーは答える。
ふんふんふん。
なるほどね。
「わからん」
全然、分からなかった。
「ゲギャ!ゲギャ!」
ニーはちょっとびっくりしながらも、一生懸命に身振り手振りで説明してくれる。
なるほど!
「わからん」
「ゲギャ!ゲギャ!」
ニーは悔しそうに地団駄を踏みながら、それでも俺に分かってもらおうと一際大きな身振り手振りで説明してくれる。
しかし駄目。
全然、わからない。
でもなんだか、この必死さが面白くなってきた。
こうなったら主人として、こいつの心意気に応えなくてはならない。
俺は俺に出来る最大級の真剣な顔でニーを見る。
「話は聞かせてもらった。お前の思いは十分伝わった」
ニーに向かってそう言うとそれまでの身振り手振りを止めてこっちを見る。
ゴクリ。
誰かの喉がなった気がした。
「でも何言っているか分からん」
ニーがずっこける。
ゴブリンもずっこけるんだ、やるじゃん。
「おい!そこのお前」
そんな呑気な事を考えてたらそんな声が聞こえてきてびっくりする。
慌てて声のする方を見る。
声は確かにイチ、サン、ギンが固まっている所から聞こえた。
え、お前ら誰か喋れるの?
「聞こえてるんだろ、お前だよ。お前!」
再び声がする。
今度はそっちを見ていたので分かった。
死体だ、イチ達の下にいる血だらけで短剣がバンバン刺さっている死体が喋ってる。
怖っ。
「は、はい。何でしょう」
反射的に敬語になってしまう。
「お前、早くこいつらをどけさせろ!」
すごい上から何か言ってる、下に這いつくばってるくせに。
もしかして、この偉そうさはリッチとかそういう偉そうなやつなの?
怖すぎ、絶対そのままでお願いしたい。
「早くしろ、俺にこんな事をしてどうなるか分かってんだろうな」
分かりません、一体どうなってしまうんでしょうか。
動く死体的な魔物が押し寄せてくるのだろうか、勘弁してほしい。
どうにかして倒せないかな、塩とか効くのだろうか?洋風だから聖水とかそっち方面かな?どっちにしろ持ってないけど。
そんな事を考えていると隣で寝ていたサチが俺の体にしがみついてきた。
そしてその体は小刻みに震えている。
布団を頭まで被っているので外は見えてないだろうが、相当怖がっている。
もしかしたら部屋にいるあの死体な魔物を見てしまったのかもしれない。
まあ、あんな魔物が居たら怖いよな、俺も怖い。
前は寝ているとよく抱き着いてきたものだったが、最近は一緒に寝ていても抱き着いては来なかったので頼られているようで少し嬉しい気持ちもある。
よし、俺も怖いけどサチの為に頑張っちゃうぞ。
「おい、お前無視してんじゃねえぞ」
声がして、サチの体がビクッと反応し更に震えが大きくなる。
震えるサチの頭を優しくなでる。
「大丈夫、ちょっとやっつけてくるから」
そう言ってサチの体の震えが小さくなったのを確認してから、サチの体を離してベットを降りる。
まずはやつを倒すための武器を用意しよう。
ベットの傍にある、背嚢の中をあさる。
聖水はないけど、水に『消化』を入れた溶解液を見つけた。
後は『薬効』入りの回復薬だな、大抵のアンデットは回復薬が効く。
取り敢えずはこいつらを試してみるか。
後は何だろう、何が効きそうかな。
メイス?メイスは僧侶とかパラディンとかが使ってるイメージだからなんかアンデット系に強いかもしれない。
一応、手に持っておこう。
準備完了したので恐る恐る、死体の魔物に近づいていく。
部屋の中に転がっている他の死体を避けながら近づいていく。
というか、こいつらは動かないの?動かないと見せかけて急に動くとか無しだからね、絶対だよ。
他の死体にビビりながら進み、喋る死体の前までたどり着く。
「お前、早くこいつらをどけろ!早くしろ、くそが!」
近づいた瞬間、動く死体が喚き散らす。
近くで見ると短剣が刺さっている箇所からは血がドクドク流れており、血だらけになっているがその他の体の損傷が少ない。
顔色とか肌の色なんかも生きている人間と変わらない、これで死んでるなんて。
よく見ると呼吸のたびに胸が上下しているし芸が細かい。
ていうか、呼吸?
「えっ、もしかして生きてる?」
「当たり前だろうが、早くこいつらをどうにかしろ」
俺の呟きに反応して答えが返ってくる。
えっ、生きてるの?それ早くいってよ。
そんな事を目の前にいる男に対して思うのであった。
長い事、更新できず申し訳ありませんでした。
作品は続けていくつもりですのでこれからもよろしくお願いします。




