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絶対異世界無双したいマンが欠陥チート『スキル強奪』をつかまされた時に出来ること全部  作者: 立花 一


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66話 とある暗殺者の戦い

 「いいか次はないからな!分かったらとっとと出ていけ」

 「分かりました」

 そう言って首領(ボス)の部屋を出る。


 くそ、どうしてこうなった。

 怒りで扉を殴りそうになるのをすんでの所で堪える。

 ここで怒りを爆発させるのはまずい。


 そう自分に言い聞かせる。

 がイライラは収まらない。

 

 それもこれも使えない部下のせいだ。

 あいつらがしくじらなければ、こんな事にはならなかった。


 首領に殴られた箇所がズキズキと痛み出す。

 その痛みのせいで更に怒りは増してくる。

 早くこの怒りをどこかにぶつけなくてはならない。

 そう思い、足早にこの場所から逃れ、自分の部屋に移動する。


 移動しながら考える、どの無能のせいだ。

 どの無能のせいでこんな事態に陥っているんだ。


 時たま、噂を聞きつけて暗殺者を買いに来る奴に、商品にもならない下っ端を見せては、脅しをかけて金を巻き上げる。

 そんな簡単な事も出来ない無能な奴のせいか。


 客でもない奴に着いていったなら、夜にでもそいつを殺して、金目の物を奪ったらここに逃げてくる。

 そんな簡単な事も出来ない無能な奴のせいか。


 逃げてこないなら逃げてこないで、適当な殺しの犯人に仕立て上げて始末してやろうと計画して色々手をまわしてお膳立てしてやった。

 それなのに、犯人にすることも出来ず、まんまと捕まってしまった無能な奴のせいか。


 まあ、全員だな。

 この無能どものせいで俺がこんな目に会っているんだ。

 こいつ等のせいでどんだけ損をしたか。

 

 長い年月と多くの資金をつぎ込んで、意のままに操れる役人どもを作り上げたのに。それが全部パーだ。

 役人どもが捕まっただけじゃない、うちの連絡役が何人も捕まったし、拠点もいくつか抑えられてしまった。


 捕まった奴ら程度じゃ、うちの本体に辿り着くことは出来ない。

 出来ないが、だからと言ってはいそうですか、どうぞ持っていってくださいってなる訳ねえだろう。

 あれにだってたくさんの金を使っているんだ、大損だ。


 それにあの金づるが捕まっちまった。

 商会を乗っ取るためにうちに仕事を依頼したんだ、後はこの事で脅しをかけて絞れるだけ絞り取ろうと思っていたのに、最初の払いをしただけで捕まるとかどんな間抜けだよ。

 大損じゃねえか。


 騎士の奴らも奴らで、俺達を捕まえようとあっちこっちを嗅ぎまわってやがる。

 こんな状況じゃ、大きな仕事はしにくいじゃねえか。

 当分は大人しくしてなきゃなんない。


 その大人しくしている間どうやって稼ぐかって?

 知るかよ。

 自分たちで何でも仕事を見つけてくりゃいいだろうが。

 クソが!!!

 近くの壁を蹴りつける。


 首領に殴られた事を思い出して、湧き上がった怒りをそうやってぶつける。


 散々暴れてようやく落ち着く。

 

 こんな事をしている暇はない。

 やる事は山積みだ。


 嗅ぎまわっている騎士への対策。

 この隙を伺っている敵対勢力への牽制。

 この損失を補填するための新しい稼ぎの模索。


 頭の痛い課題が多すぎて嫌になる。

 こんな面倒事は部下に丸投げするに限るが、無能が多すぎてそれが出来ない。


 クソが。

 どいつもこいつも。


 駄目だ、少し落ち着こう。

 この先は失敗できないのだ、落ち着いて考えなくては出来るものも出来なくなる。

 ただでさえ今回の事で首領からは評価が下がっているのだ、今後の働きでへまをすれば、俺の地位が危ない。

 下手をすれば・・・。


 ようやくここまで登り詰めたのだ、こんな下らない事で終わらせてたまるか。

 とにかく、一つずつ仕事をこなしていくしかない。

 一つずつ、一つずつ。

 少しずつ、少しずつ。

 丁寧に、丁寧にだ。


 よし少し落ち着いて来た。


 こういう時はとりあえず、一番簡単な事からするに限る。

 となれば、あれだ。

 今回の元凶であるあのガキだ。

 うちの商品を買っていって、そんでもって裁判でうちの金づるどもを手放す元凶となったあのガキを殺す。


 そして、ついでにあの裏切り者も始末しておこう。

 

 どこかの娼婦が生んだ汚い子供をわざわざ拾って育ててやった恩も忘れてのうのうと生きている、あの裏切り者にしかるべき制裁を加えなくてはならない。

 人が折角、手ずから教育してやったというのに、体に刻みつけてやったというのに。

 うちを抜けるという事がどういう事かこの際、きちんと再教育してやらなくてはな。

 もちろん、今いる他の奴らにだ。


 あいつは見せしめに殺してやる。

 それもただでは殺さない。

 苦しめて、苦しめ抜いて誰も逆らおうと思わないほどに惨たらしく殺してやる。


 その事を考えると少し胸がすっとしてきた。

 なんだかとても楽しくなってきた。

 そうだ、これだ。

 こういう娯楽が無くては。

 これから楽しくない、日々が待っているのだこういう気晴らしをして楽しまなきゃどうにかなってしまう。

 そうだ、そうしよう。


 そうと決まれば、早速仕事だ。


 「今夜、例のガキをやる。宿に張り付いている奴にそう連絡しておけ」

 自分の部屋に着いた瞬間、中で待機している部下にそう命令する。

 部下の一人は命令を受けて即座に部屋を出ていく。


 元々、あのガキを殺すつもりで準備はしていた。

 宿に侵入するのもやつの部屋の中に入るのも宿の人間を買収しているので簡単だ。

 連絡をすれば、宿に居る奴が扉を開く。


 後は夜に忍び込み、寝込んでいる所を襲えば簡単に事が運ぶだろう。

 相手は素人のガキ1人とゴブリンが3匹、あとは使えない裏切り物だけだ。

 こんなのこちらの人数を相手と同数用意してやれば簡単に終わる仕事だ。


 この仕事は事前準備が9割だ。

 事前に情報を収集して、計画に必要な物を用意しておけばいい。

 殺すと思った時には、後は実行に移すだけ、それこそが真のプロフェッショナルだ。

 最近の奴らはそんな簡単な事が出来ない奴が多い、多すぎる。

 使えない奴らだ。

 使えない奴が多すぎるせいで俺が直々に出なきゃならない。

 本当にクソな状況だ。

 クソが。


 まあいい。

 とりあえず、この件はこれで片が付く。

 まだ、夜には時間がある、それまでに他の仕事にとりかかろう。

 なにせ、やる事は沢山あるのだ、気が進まないが少しずつ片付けていかなければならない。



 「そろそろ、いい時間かと」

 部下にそう声をかけられて、書きかけの書類から目を離す。

 かなり、集中してしまったのか大分時間が過ぎたみたいだ。

 街はもう寝静まっている頃だ、これ以上遅くなってもいい事は何もないだろう。


 「じゃあ、行くか。他に3人ほど集めて来い」

 「はい」


 部下が集まるまでに自分の支度をしよう。

 そう思って立ち上がるが、別に何も必要な物が無い事に気が付く。

 武器は何時も携帯しているものでいい、何か特殊な薬品が必要な訳ではない。

 単純に部屋に行って、寝ているまま、そのまま息の根を止めて帰ってくるだけ、そんな簡単な仕事だった。


 暫くして部下が集まる。

 これで俺を含めて5人、絶対に失敗しない、なんて簡単な仕事だ。

 「よし、お前らこれから仕事だ、俺達の本業だ。さっさと行ってさっさと帰ってくるぞ」

 

 そう声をかけて、外に出る。

 もちろん、部下たちは無駄口も叩かず、黙ってついて来る。

 まあ、下っ端のこいつらは無駄口をたたくことは出来ないんだがな。


 後から合流した3人の下っ端の奴らは本当にただの道具であり消耗品だ。

 最初にいたのは部下で後の奴らはただの道具、価値は最も低く、いざとなったら使い捨てる、そんな存在だ。


 こいつらはその辺のスラムのガキや娼婦が生んだガキなんかを引き取ってはそういう道具に仕立て上げる。

 まずは喉を潰す。

 声を出す必要がないからだ。

 その後は逆らったらどうなるか、徹底的に体に刻み付ける。

 無くても問題ない箇所を引きちぎったりするのがおすすめだ、これで大抵の奴は抵抗することをあきらめる。

 体への教育が済んだら、後はうちらの組織の物である刻印を付けて完成だ。

 これで俺達の命令に何でも従い、いざとなったら死ぬ、そんな都合のいい道具となる。


 しかしそんな道具が1つ、他の奴に奪われた。

 最初はただ、遠くで仕事をさせている、しかもそれは極々簡単で直ぐに済む、そんな仕事だ。

 それなのに全然帰ってこない。

 あまりに帰ってこないから、仕事をしくじって死んだのかと思ったがそういうわけでもなかった。

 あろうことか、その道具は仕事もしない、死にもしない、その仕事先で何もするわけでもなくのうのうと生きているだけだった。


 あいつら、あの道具たちは自分たちで考えて行動するという事はない、そう教育しているからだ。

 ましてやうちの組織を裏切って他の所に逃げるなんて事は絶対にあり得ない。

 だからこの状況は、うちの道具を誰かに奪われたという事だ。

 

 別に大切にしているわけではない、無くなっても何とも思わない、そんな物だ。

 だが、誰かにあげて惜しくないかと言えばそれは違うし、ましてやそれが他人に奪われたとなったら、それはもう許しがたい行為だ。

 だから、殺す。

 奪ったやつも、裏切ったやつも。

 うちの商品を奪ったらどうなるか、裏切ったらどうなるか身をもって教えてやる。


 そんな事を考えているうちに、目的の宿屋に着く。

 時間も時間なので周りに誰もいない。


 裏口に回り、扉を確認する。

 手筈通り、カギはかかっていない。

 気配を殺したまま、宿に入っていく。


 部下に目配せをして、やつらが泊っている部屋に案内させる。

 当然、部下は事前に調べが済んでいるので迷いなく部屋に着く。


 裏口の扉と同じように、この部屋の扉もカギが開いている事を確認すると、気配を殺したまま、全員で部屋の中に入る。 

  

 部屋の中にはベットが4つ並んでおり、そこに人影が5つ確認できる。

 3つのベットに1人ずつ寝ているのと、1つのベットに2人寝ているように見える。

 2人で寝ている方は顔を出しており、例のガキと裏切りものであることが分かる。


 完全に寝ている、この部屋に俺達が入って来ても全くそれは変わる事はない。

 時々、鋭い奴がいて侵入すると目を覚ます事もあるが、今回はそんな事もなく、間抜けな顔して寝てるやつが居るだけだ。


 あとの3つのベットはゴブリンなんだろう。

 事前の情報で聞かされてはいたが、1つベットで1匹ずつ寝かせているとはいいご身分だ。

 布団を頭までかぶっているため、顔は見えないが、まあ大したことじゃない。

  

 部下たちに目配せし、配置につかせる。

 それぞれ1人ずつベットの傍に立たせる。

 そして合図と同時に4人で一気にゴブリン3匹と例のガキを殺す。

 残りの裏切り者は捕まえて、拠点に連れて帰りじっくりと殺す。

 それだけ、たったそれだけの簡単な仕事だ。


 部下が配置につき武器を構えるのを確認した。

 よし、じゃあやりますか。

 手を挙げる。

 そして手を振り下ろして合図を送ろうとした瞬間、見えた。

 床だ、床が動いた。そう見えた。


 何か居る。

 それも1つじゃない、複数。

 床だと思ったその動いた何かは、そのまま部下たちに襲いかかる。

 部屋が暗いと言うのもあるが、暗がりでも見えるように訓練している俺ですらはっきりと何か分からない。


 これはまずい、こっちの奇襲は失敗したのだ。

 下手をしたら、今回の事が察知されて待ち伏せされていたのかもしれない。


 撤退するか、そう考え始めた時、ようやく相手が見えてきた。


 手前にいるやつらはゴブリンだ。

 奥に居るやつらはまだはっきりと見えていないが2匹しかいないし大きさ的には大したことがなさそうだ。

 そしてそいつらは部下たちとまだ戦っている。

 

 なんだ、そんなもんか。

 完全に奇襲されたので、大層な敵が潜んでいたのかと思ったが聞いていた戦力と変わらない。

 こちらの奇襲は失敗したが、これなら作戦はまだ大丈夫だ。


 このこざかしい敵を殺して、そこで寝てるガキを殺すだけでいい。

 そう思い、一番近くにいるゴブリンに襲いかかる。


 ゴブリンは部下に短剣を突き刺しているが部下はそのままの状態で、ゴブリンともみ合っている。

 だから、簡単。

 手に持った、短剣をゴブリンの首筋に刺す。

 ゴブリンもこっちに気が付いたのか手のひらを出す。

 がそれも無駄だ、その手もろとも串刺しにしてやる。


 ガキィーン

 手のひらを貫通して首筋に短剣を突き刺したはずなのに、何故か硬い物を刺したような感触と共に短剣がはじき返される。

 意味が分からない。


 「ゲギャ」

 ゴブリンは手のひらをこちらにかざして笑っているように見える。

 手のひらは貫通どころか血ひとつ出ていない。


 舐められた。

 ゴブリンごときに。


 クソが。

 ぶっ殺してやる。

 

 笑っているゴブリンの後ろに素早く回り込む。

 そして一気にゴブリンの背中めがけて短剣を振り下ろす。

 これならあの手も届かないだろう。


 ガキィーン

 またしても硬質な手ごたえ。

 背中は少し血が出ているがそれだけだ。

 少し皮膚を切っただけで、何のダメージも与えられていない。


 「ゲギャ」

 ゴブリンの顔は見えないがこっちを笑っていることだけは分かった。

 クソ野郎が。 


 続けて何度も短剣を振り下ろす。

 首筋や脇腹といった柔らかそうな場所を狙うが結果は同じ。

 ほとんどダメージがない。


 クソが、どこを狙えばいいんだ。

 そう考えていたとき、ゾクリとした。

 何かやばい、そう思い反射的に身をよじり振り返った。

 その瞬間肩に衝撃が走る。

 痛えええええ。

 肩に短剣が刺さっている。


 ゴブリンだ。

 別のゴブリンが俺に攻撃してきやがった。


 連れて来た部下の一人が倒れているのが見えた。

 ゴブリンに倒されたのだ。


 まずい。

 こっちはまだ1匹も殺せてないのに、手が空いているゴブリンが出来てしまった。


 撤退だな。

 この状況はもう無理だ。


 撤退するしかない。

 そう思い、走り出そうとした瞬間、足に痛みが走る。

 何かが足に噛みついている。

 獣だ。

 小さな獣が俺の足に噛みついてやがる。

 振りほどこうとその辺の壁に叩きつけようと足を上げた瞬間、反対の足に痛みがはしり、転倒する。

 足から短剣が生えている。

 みるとまた別のゴブリンがいて短剣をさしていた。


 慌てて周りを見渡すが4人の部下は全員倒れている。

 まずい、そのせいでここにいる敵は全員、俺に来ている。

  

 地面に倒れ、足を封じられた俺にゴブリンの1匹が近づいてくる。

 俺にとどめを刺すつもりだ。

 まずい。まずい。まずい。


 「お前らうるさい。静かにしろ」


 こんな何でもない、簡単な仕事で、ゴブリンに殺されるのかよ。

 そう思った時、そんな場違いで間抜けな声が響いた。

 

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