55話 めぐりあいほら②
新しい朝が来た。
とても清々しい朝だ。
希望の朝と言っても過言ではない。
何故ならここは州都アルステラ。素敵な素敵な女奴隷さんを売っている場所。
そして俺はそんな女奴隷さんを売っている場所をもう既に存じ上げている。
つまり俺はその気になれば、いついかなる時でも女奴隷さんを買う事が出来るという事。
そうつまり今日俺は女奴隷さんを買う。そういう事だ。
この街に来る前は奴隷商人さんがそういう店を紹介してくれると言っていたが、もう既に知ってしまっているので後は行くだけだ。
いそいそと何時ものように革の装備に身を包み、そんでもってゴブリン達に装備を着けたら準備万端。
いざベット屋。
でベット屋ってどこ?というかベット屋って名称なの?
何時なら冒険者ギルドの大天使受付嬢ことマリーさんに聞くのだが、この街にはマリーさんはいない。
じゃあこの街の冒険者ギルドの受付嬢に聞けば・・・と思ったがそもそもこの街の冒険者ギルドを知らないや。
つんだな。
「ワタル。ご飯行く。」
そんな事を考えているとアリサが朝ごはんに誘いに来た。
そう言えば飯も食べてなかった。
「・・・なんか既に準備万端。」
「あれだね。朝早く起きたから自然にね、準備をしただけだね。うん。」
「・・・そう。とにかくご飯に行く。」
疑われているがまあまだ何もしてないからね。現行犯逮捕は出来ないって感じね。
その後、この街で初めての朝食をとる。
ダンジョンの街と同じように屋台が出ているのでそこで軽食を買って食べながら歩く。
こっちの街は量は少ないがバランスよく肉だとか野菜だとかが入った料理が多い。
ダンジョンの街だと何だか分からない肉をそのまま焼いただけみたいなのばっかりだったのでなんか新鮮だ。
ただ向こうは向こうで肉の種類がとにかく豊富でそして量も多い。
そしてそんな所の料理をずっと食べていたせいか何かちょっと物足りなさも感じている。
大分、あの街に馴染んでいたんだなと思う。
そんなこんなで朝食を終えるとアリサは仕事に行くそうだ。
こっちでも魔物使いとしての仕事と勉強があるそうだ。頑張れ。
別れ際に慎重に行動しろだとか、裏路地の危ない所に行くなだとか、変な事をするなとかの注意を散々受けた。
大丈夫大丈夫、今日は奴隷しか買わないから大丈夫。口にはしないけど。
アリサの有難い話を聞いて見送るといよいよ自由時間だ。
相変わらず店の場所とかは分からないがとりあえずブラブラと歩いて探す事にする。
よく考えたらダンジョンに行くわけでもないし今日はとんでもなく暇なのだ。
だから少し観光がてらこの街を歩いてどうしても場所が分から無さそうなら奴隷商人さんにでも聞くことにした。
という訳で大通りを歩く。
この街はダンジョンの街とは比べ物にならないほど建物が密集して立っており、かなり人通りも激しい。
一言でいうなら栄えている。
そんな大通りを歩いているとかなりこっちを見ている。それもあまり良くない感情でだ。
一つはゴブリン達があまり歓迎されていない。
もう一つはこの格好だ。
他に歩いている人はみな服を着ているだけで革とか金属の装備を身に付けてはいないし武器だって携帯しているように見えない。
だからこのいかにも冒険者ですという格好をしているとなんかやばい奴が来た、みたいな雰囲気になる。
ダンジョンの街だと普通の格好なので気にもしていなかったが、こっちではかなり浮いている。
少しまずったかもと思いつつも宿に帰って装備を脱ぐのもめんどくさいのでこのまま歩く。
そうして歩いていると1軒の店が目にとまる。
その店はかなり大きく高級感ただよう店構えだが、その窓から見える商品は間違いなく家具を扱っておりベットも見える。
ここだ。ここで俺は運命の出会いをするんだ。
そう思い店の中に入る。
「いらっしゃいませ・・・・・・すみませんがお客様、当店ではそのような恰好では入れない決まりになっておりますでご遠慮ください。」
が直ぐに近くにいた店員さんに追い出される。
ええ、ドレスコードなんてあるのかよ。
おかげでウェルカム一昨日来やがれを食らってしまった。
しょうがないので他の店を探して入ってみたが同じように追い返されてしまった。
大通りは高級な店が立ち並んでいるとは思っていたがまさかこれほどとは、軽いトラウマになりそうだ。
この感じ、装備を脱いだくらいじゃ入れてもらえなそうだ。
それこそ入っている客の服の光沢が違う。
店に入るために高級な服を買うしかないのか?
でもそのためにはその店に入るための服が必要だ。
これが服を買いに行くために着ていく服がないという伝説の状態なのか。
ギャグでも何でもなく本当にこんな状態ってあるんだ。変に感心してしまった。
しょうがないのでこの格好でも入れそうな店を探すか。
そう思い、1本路地に入っていく。
あんまり深い所に行かなければそんなに危なくはないだろう、そういう判断だ。
アリサが言っていた危険な路地裏には該当しないだろう、多分。
路地を進んで行くと更に建物が密集して立っているように感じる。
小さな建物が密集しているのでとてもごちゃごちゃしているし複雑だ。
ここでまた別の路地に入ると迷子になりそうなのでこの路地が続く限り行ってみて無さそうなら大通りに戻ってからまた別の路地に入っていこう。
そう方針を決めてベット屋を探す。
少し歩いていくとそれなりの大きさのベットが置いてある店を見つけた。
店はそこそこ大きいし店自体も小奇麗だ。
これなら入っても危険じゃ無さそうなので入る。
入った瞬間、追い返されないかとひやひやしたが、店員はこっちを見て少し嫌な顔をしたが別段追い返すことも注意されることもないので入って中を見ていく。
中は普通に家具がいっぱい並んでいてベットも置いてある普通の家具屋だ。
本当にこんなところでそれようの奴隷が売っているんだろうか、ちょっと心配になってくる。
心配にはなるが他に当てもないのでここで買いたい。どうしても買いたい。
だが店員に「女奴隷くださいそれも処女で。」というのは恥ずかしくてとても言えない。
言えない、けど買いたい。そんな事を考えながら延々とベットの周りでうろうろする。
普通こんだけうろうろしていたら店員が話しかけてくるよね?うちの地元の家電量販店ならちょっとでもスマホに触ったらすぐに飛んでくるぞ。
そんな感じで話しかけてこい。
来ないか。
しょうがない、恥ずかしいけど店員に聞くしかないか。
「すみません。ちょっといいですか。」
「はい。なんでしょう。」
近くにいた少しでっぷりとした中年の店員が答えてくれた。
「あのこのベットを買いたいですけど。」
「それは有難うございます。」
「それで、なんというか、このベットを買った時について来るような特典?そういったものを見たいんですけど。」
「?特典ですか。特にはありませんが。」
何どういう事だ。
言い方か?言い方が悪いのか?
「ですから、何て言うんですかね。ベットで寝るときに必要なものといいますか、あると嬉しいといいますかそういうものを一緒に買いたいんですが・・・。」
「あると便利?布団も枕もお付けしていますがそういう物でもなく?」
「そういうのではなく、ほらあれです。あれ。奴隷とか」
最後めっちゃ小声になっちゃった。
「ああ、なるほどそういう。もしかして誰かにベットを買うとついて来るとか言われました?」
店員さんは凄く納得した表情で聞いてきた。
「あ、はい。奴隷商の店長さんに。」
「お客様それはですね。」
「君、そちらのお客さんはこっちで対応するから君は他のお客様の相手をしなさい。」
そう言いかけた時、他の店員さんが割り込んできた。
「いや、しかし。」
「いいから。さあお客様はどうぞこちらに。」
そういうと今まで対応してくれたちょっとでっぷりした人から少し神経質そうな顔つきの痩せた店員に変わる。
変わった店員さんに連れられて奥の部屋に行く。
応接間のようなその部屋でソファーに座りながら話を聞かれる。
「お客様は何でも特別な奴隷をお探しとか。」
「はい。そうです特別な奴隷が欲しいです。」
遂に辿り着いた。
さっきの店員に話が通じない時はあの奴隷商の店長さんに嘘を教えられたのかと思ったがそうじゃなかった。
正解はしつこく聞く。
これによって特別な奴隷への道は開かれるのだ。粘ってよかった。
「それでどのような奴隷をお探しなのでしょうか。」
「そうですね、何というかあの経験が少ない方といいますか、ない人がいいです。」
「経験がないですか。それはなかなか・・・それは男でも女でもよろしいのですか。」
「いえ女で、女の子でお願いします。」
良い訳ねえだろ。なんだよ男って意味わかんねえよ、ふざけてんのか。
「・・・そうですか。なるほど、お客様は大変運が良いですよ、今ちょうど条件に合う子が1人いまして。ただ経験がないとの事なのでスキルはかなり低いのですがそれでもよろしいでしょうか。」
スキルが低いのか・・・。
全然、構わないね。重要なのは処女であるかどうかだし。
「全然、大丈夫です。」
「でしたら少し移動しますのでついて来てください。」
そう言われ場所を移動する。
建物を出て、別の建物に入る。
そしてその建物から地下に降りて、そのまま地下道を通っていく。
かなり複雑な道順でこのまま放り出されたら確実に迷子だ。
かなり何かを警戒しているような何かを隠すようなそんなところだ。
取り扱う商品上こういう場所で取引をするのだろう。
俄然、盛り上がってきた。
「着きました。少々この中でお待ちください。」
そう言われて入った部屋は地下にあるとは思えないほど明るく先ほど話していたところと大して変わらない応接間があった。
そこで座って待っていること数分、入り口の扉が開けられてさっきの店員とそれにつれられて女の子が入ってくる。
その子は、褐色の肌に肩まで延ばされた黒髪、目に力はなく何処を見ているか分からない虚ろな目をしている。
体は小さく120センチもなくダボダボな服を着ていても分かるくらい痩せている。
腕なんて細すぎて折れてしまいそうだ。
日本のオタク文化に毒された俺にでもこれは言える。
これは無理。幼すぎる。
どう見ても小学生低学年かそれ以下だ。
「どうでしょうか。」
確かに、確かに処女を希望しましたよ、しましたけれどもこれはないでしょう。
それとも処女を希望するようなやつはとんでもない変態しかいなくて,こういう奴隷しかいないのだろうか。
「すみません。他にいないでしょうかもうちょっと年上の人とか。」
「・・・年上ですか。そうは言われましても、殺人が未経験で女の子といいますとこの子くらいしかいないので。」
「えっ?」
「えっ?」
何か話がかみ合わないぞ。
連れてこられた少女のスキル情報を見る。
『暗殺術』0.3
・・・・・・・・・。
『房中術』とか『催淫術』とかそういうスキルではなく『暗殺術』。
それってなんか死ぬほど気持ちよくなるとかそういう術ではなく、ガチの暗殺の方。
つまり性奴隷を売ってる店かと思ったら実は暗殺者を売ってる店だった。
どうやら勘違いでとんでもない店に来てとんでもない商品を見せられてるようだ。
これってアリサとの約束の危険な場所に行かないは破っているんだろうか?
そんな事を考えながらこの状況を切り抜ける方法を考えるのであった。




