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絶対異世界無双したいマンが欠陥チート『スキル強奪』をつかまされた時に出来ること全部  作者: 立花 一


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54話 めぐりあいほら①

 州都アルステラ。

 そこはただただ巨大な街だった。


 巨大な壁。

 巨大な門。

 そして門を抜けてると広がる光景にただただ圧倒される。

 建物の形や大きさはダンジョンの街と大して変わらないがここではその数が違う、密集度合いが違う。

 見渡す限り同じ形式の建物が密集している様はとても威圧的でとても美しい。

 ダンジョンの街も結構栄えていると思ったがここは比較にならない大都会だ。


 そんなファンタジー的大都会をキョロキョロしながら歩いていくと1軒の大きな門構えのお店に着いた。


 「着きました。ここが我が商会の本店です。」

 なるほどこれが今回の目的地でもある奴隷商人さんの本店なのね。

 門をくぐり抜けていき建物の裏側に入っていく。


 そこには広い庭というかグランドみたいな場所と大きな倉庫や家のような建物が立っていた。

 

 「護衛の方々は今日はここまでで大丈夫です。お疲れさまでした。とは言え手配してある宿に案内したいところですがこちらの作業もありますので少し待っていてもらえますか。」

 「宿って前に使ってた所だろ、場所は覚えているから俺たちは先に上がらせてもらうぜ。」

 「そうですか。宿は前の所で手配は済んでますのでうちの名前を出せば大丈夫ですから後は帰りの際によろしくお願いします。今日までありがとうございました。」

 「おう。また帰りの護衛でな。よし飲みに行くぞ、飲みに。そうだワタルも行くか?」


 なんか俺も誘われてしまった。

 旅で一緒だったとはいえこの仲良し度合いでは飲みは無理だな。

 「すみません止めておきます。」

 「そうか。じゃあまた今度な。よっしゃ行くぞ。」

 「飲むぜ。久しぶりの酒だ。」

 そう言うと護衛の2人は去っていった。

 「ワタルさんはもう少し待っていてください。」

 「はい。」


 そのやり取りの間にも一緒に旅をしてきた奴隷商の方々は荷物を下ろして倉庫に運んだり、魔物使いの皆さんも犬を建物に誘導したり忙しく働いている。

 もちろんアリサも働いている。

 なんか一人だけやることがない。ぶっちゃけ暇だ。

  

 「おお、アル着いていたか。」

 「はい。先ほど着きました。」


 そんな事を考えていると一際大きな声を出して近づいてきたおっさんというおじいさんというかの年齢の人がいた。

 かなり頭には白髪が混じっており大分、歳をとった感じだがそのエネルギッシュな感じから受ける印象はとっても若々しくおじいさんと言う感じではない。


 「今回は急なことで驚いたぞ。まさか10頭も売り先を見つけてくるとはな。しかもアルステラでだからな。凄いじゃないか。」

 そういいながら奴隷商人さんの背中をバンバン叩く。

 やばい苦手なタイプの人だ近寄らんとこ。


 「今回は運が良かっただけですよ。それより紹介したい人がいまして。こちらは今回、護衛に参加してくれたワタルさんです。ワタルさんはゴブリンを3匹もクラスアップさせたほどの魔物使いでもあり冒険者でもあるんですよ。」

 「おお、それは凄いじゃないか。ゴブリンを苦労して1匹育てたことある馬鹿なら何人か知っているが3匹も同時に育ててるとなるとそれは商売の可能性がある。大したもんだ。」

 やばい話がこっちに向いてきた。

 いつの間にか奴隷商人さんが仕事に戻ろうとしている。

 もしかしてこの人の生贄に差し出されてしまいましたか?


 「坊主のそのゴブリンはどんくらいでクラスアップさせたんだ?」

 「・・・4週間くらいです。」

 「4週間。4週間か・・・回復薬はどれくらい使ったんだ?」

 「・・・・・・わかんないです。数えられないくらい。」

 「じゃあ駄目だな。」

 駄目らしい。

 急に出てきて急に駄目だししないで欲しい。

 俺は褒められて伸びるタイプなんだ、もっと褒めてくれ。

 というかうちのゴブリン達は売らないけどね。


 「ゴブリン達は安いって聞きましたけど。」

 やることもないのでこの人と話をする。


 「安いな。1回クラスアップしたとしても大した値段にならんな。だから商売で育ててるやつはまあいないわな。」

 でしょうね。あんなに苦労したのに値段がそれほど上がらなかったら誰もやらないわな。

 

 「じゃあなんで聞いたんですか?」

 「そりゃあいっぺんに3匹もクラスアップさせたとなれば、何か新しいやり方が見つかったのかもしれないじゃねえか。安いといっても簡単にクラスアップ出来るならいっぱい仕入れていっぱい売ったら儲かるからな。まあ今回は無理そうだがな。」

 薄利多売ってやつね知ってる知ってる。

 でもゴブリンだからな、そんなに需要なんてあるんだろうか。

 男の子は一度は買ってみるとは聞いた事あるけど薄利多売ってそういうレベルの必要性じゃなくてもっと日常的に使う消耗品とかそういうレベルのやつじゃないなの。


 「不思議そうな顔だな。」

 「はあ。そんなにゴブリンて売れるのかなって。その方法だと常に売り続けなきゃいけないし。」

 「おっ、なかなか分かってるじゃないか。ゴブリンなんて死ぬからどんどん売れてるようなところもあるしな。死なない程度にちょっと強いゴブリンなんて少し売ったら欲しいやつ全員に届いちまうかもな。」

 やっぱりね。


 「でもな坊主。商売人ていうのは欲しがってるやつに売ってるうちは2流なんだよ。1流はな、客が欲しいと思っていなくても実はその商品があると便利だというのを気づかせてそこに売るもんなんだよ。つまりその商品が必要なところを探してそこにねじ込んでくるのが1流なんだよ。売れるか売れないかじゃないんだよ、売るんだよ。」

 おお、なんかかっこいい。


 「坊主はうちのような奴隷商で一番大切なことは何だと思う?」

 「・・・信頼?」

 商売の基本と聞いた事がある。


 「なるほど信頼か、それは確かに大事だな。これがなくなったら商売は終わりだわな。いい言葉じゃないか、これからは一番大切な事は信頼っていう事にするぞ。」

 なんだそりゃ。

 その前の一番は?元一番はなんだったんだよ。クイズ出しておいて正解教えないとかあり?


 「その前の一番はなんだったんですか?」

 「それはまあ、あれだ。教育だよ、教育。」

 「教育ですか?」

 奴隷商なのに?


 「奴隷商ってのはな2種類いるんだよ。いろんな所から奴隷を見つけて連れてくるだけのやつと、その奴隷に仕事をするための技術を仕込んで価値を上げてから売るやつの2種類だ。連れてくるだけでも儲かりはするんだけどなやっぱりそれだけじゃ1流として認められないんだよ。ちゃんとした奴隷を育てられるようになって初めて1流とされるんだよ。」

 ふーん。奴隷商なんてどっかから見つけてきてそのまま売るだけの商売かと思ってたよ。 

 そういうこともしてるのね。


 「当然、仕事を教えるのは難しいし時間もかかるからなどんな仕事でも出来るようにすることは無理だしこっちも教える人材がいないからな。だから自然とその奴隷商で作れる奴隷ってのも決まって来るんだよ。うちで言えば魔物と魔物を扱う仕事だな。」

 へー、そういうジャンル分けみたいなのがあるのか。


 「今回一緒に来たあの馬と馬を操縦してたあいつら、あいつらもうちの奴隷で出来ない商品だ。」

 えっ!そうなの。あの2人って奴隷なんだ。


 「そんでもってあいつらを売る場合、どこに売ればいいと思う?」

 売る場合?それはもちろん・・・どこだろう?

 「・・・馬車を持っている人?」

 「まあそうだな、あいつらの仕事は馬車を引くことだしそれを操縦することだ。だからそれは正しい。ただ大抵馬車を持っている奴らはもう馬も御者も持ってるもんなんだよ。」

 まあ考えてみれば馬車ってのは馬と馬車本体がセットのもんだな。

 御者がどのタイミングでいるのか分からないけど、現代で言えばエンジンと車体と運転手みたいなもんだ。

 じゃあ、ますます分からない。いつどこで売るんだろう。


 「答えは簡単、馬車屋に売るんだよ。そんでもって馬車屋は全部セットで客に売りつけるってわけだ。簡単だろう。」

 簡単だけど、簡単だけどなんかおかしくない?

 車とエンジンがセットになっているのまでは理解できる、全部の車はそうだから。

 だけど車を買ったら一緒に運転手までセットについて来るというのはおかしい。

 自動運転のシステムが付いてきますと言われればそういうものかとも思うが・・・まあ奴隷制度があるってのがそもそも現代と全然違うからな違和感があるのは当然なのかも。


 「・・・でも御者も馬もいらないって場合も多いじゃないんですか?」

 「まあそういう場合もあるわな。馬を手に入れたら馬車が欲しいとか、御者は代々それ用に仕えている者達がいるとかな。でも大抵の場合はセットで買っていくんだよ。なぜならそれ専用に教育された馬と御者ってのは見つけるのが難しいもんだからな。それが馬車屋でセットになってるならそれで買っちゃうってもんだ。」

 そういうものか。

 

 「まあ話はそれたけど、うちは魔物関係を中心にやってるってわけ。その中で新しくゴブリンの教育方法が見つかったってんならそれは新しい商売になるかもしれないって思ったって事、そんでもって売る先は後でどうとでもするって事よ」

 なるほどね。

 教育方法が商売につながるって事ね。

 でもさっきの馬車屋で御者が売っているっていう話のインパクトで全然頭に入ってこない。

 普通に車を買いに行ったら運転手もついて来てその日から人一人養っていくて事だもんなビビるぜ。


 というか待てよ。

 奴隷商たちは自分たちが買ってきた奴隷に専門の教育を施す。そして馬車を買ったら御者がついて来る。

 じゃあ何を買ったらあれ専門に教育を受けた処女的な女の人はついて来るんでしょうか。


 「・・・参考までに。参考までに聞きたいんですが、あれな・・・夜の女性的な奴隷は何屋さんで売っているんでしょうか?」

 「夜の女性?・・・ああ、そういう奴隷ね。」

 そういうとニヤリとした笑いを浮かべてこういった。

 「そりゃもちろんそういう事をする場所だよ。」

 そう言う場所?それって、それって。

 「・・・つまりは?」

 「ベットだよ。ベットを買えばそれはそれは綺麗な女がついて来るってもんだよ。」

 そういいって笑いながら俺の肩をバンバン叩いてくる。

 そうかベット。ベットを買えば綺麗な女の人が。


 「店長。なんの話をしてるんですか。」

 「・・・・・・」

 そういっていつもの奴隷商人さんが話に割り込んできた。後ろにはアリサもついて来ている。

 「ワタルさん何の話をしていたんですか?」

 「いえ何でもないです。・・・商売の基本の話とかそういうのです。」

 アリサが後ろにいるのでベット屋の話は出来ない。なんとか誤魔化さなくては。


 「本当ですか。何やら店長が楽しそうにしてましたので何か変な事でも吹き込まれたのではないかと。」

 「そんな事はないよな。単純な世間話だよな世間話。」

 「そうです。世間話です。」

 「・・・・・・」

 アリサが凄い疑いの目で見ている。俺は無実だまだ何もしてない。まだ。


 「それよりそっちのお仕事は終わったんですか?」

 「・・・そうですね。こちらの仕事は終わりましたのでワタルさんを宿に案内しようと思いまして。」

 「そうですか。なら行きましょう、すぐ行きましょう。」

 「・・・・・・」

 アリサはまだ黙ったままだ。

 勢い。勢いで押しきれ。

 風よ。吹け。


 「・・・じゃあ行きましょうか。店長には話がありますので夜時間を空けておいてください。」

 「おう分かったよ。坊主も嬢ちゃんもまた今度な。」

 そう言って店長さんと別れる。

 アリサは黙ったままで追及はなかったのでセーフと思いたい。


 ドンは奴隷商人さんの本店で預かってもらえることになったのでこの店に置いていく。

 ドンとの別れが済んだらいよいよこの街の宿に向かう。


 奴隷商人さんに連れられて魔物使いチームの人たちと宿に行って宿泊の手続きをした。

 お金は奴隷商人に払ってもらったのでタダだ。


 驚いたのはゴブリン達が泊るのに相当難色を示された。

 奴隷商人さんがいるので断られなかったが相当嫌なようだ。

 俺とゴブリン達とギンで4人部屋に案内された際も絶対に汚さないように念を押された。

 ダンジョンの街とは大違いだ。

 ちなみにギンは全然嫌な顔もされず、むしろ触りたい触りたいオーラでいっぱいだった。


 その後、アリサと一緒に外で夕飯を食べた。

 食事はダンジョンの街より洗練されているように感じたが肉が少なく高かった。

 食事だけで言えば向こうの方がいいかも、そんな事を話ながらアリサと過ごしていると最初は疑いの目を向けていたが最後にはいつも通りだった。

 やったぜ完全勝利。


 夕食を食べた後は眠くなったので直ぐに寝ることにする。

 待ってろよ俺のベット屋。待ってろよ俺の奴隷。

 そんな事を考えながらこの街の初日を終えるのであった。



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