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絶対異世界無双したいマンが欠陥チート『スキル強奪』をつかまされた時に出来ること全部  作者: 立花 一


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50話 とあるモフリストの戦い

 お嬢様にも困ったものだ。

 面白そうなものに目がなさすぎる。

 こんな怪しい集団を近づけるなんて。

 

 見ると人間は1人で後は魔物だ。所謂、魔物使いという職業のやつだな。

 しかし魔物使いといえども自分以外が全て魔物使いというのは珍しい。

 というか、そうかその手があるかと少し感心させられる。魔物使いというのもいい職業だな。


 改めて向こうの構成を確認する。

 まずはゴブリンが3匹だ。

 ゴブリンと言うのは見た目が小さくて可愛いものだがこいつらは少々大きくなりすぎている。

 これは少し減点だな。

 少々体が大きくなった程度で顔つきなんかもほとんど変わらないが小さい時より可愛さが減っている気がする。ゴブリンはやはりもうちょっと小さくないとな。


 3匹もいるんだから相当なゴブリン好きと見える。ゴブリンに人の格好をさせるのも悪くない発想だ。

 だが全員同じ装備と言うのもどうだろうかもっと別々に色々な服を着せるたりした方が良いのではないのだろうか。

 でも同じ服装をさせる事により調和を保つという点ではこの方が良いのかもしれない。あまりバラバラすぎるのも問題があるし揃っている事の良さというのも確かにある。

 この辺は研究の余地ありだな。


 続いてはロバだ。

 騎士の中にはロバの事を馬の劣化版だなんだと馬鹿にするものもいるが私はそうは思わない。

 ロバには馬にも負けないロバの可愛さがある。

 まず一つは小さい事だ。

 あの長い胴体に短い脚がとってもかわいい

 そして次にあの耳だ。馬よりも大きな耳がとてもかわいい。

 そしてあの耳に少し生えている毛、あれを触ったらどんな感触があるのだろうか。ああ触りたい。


 最後にあの銀色のモフモフな生物。

 お嬢様が犬だと当たりをつけ、あの魔物使いが洞窟犬と言った。

 間違いないあれが伝説の犬、夢にまで見たお犬様だ。

 物語の中で出てきてその存在を知った日から一度でいいから会ってみたいと思ってたあのお犬様だ。すごい本物だ。

 この辺りには生息しておらず飼っているものもいないため見たことがなかったのだがまさかこんな所で飼っている者と出会うとは。


 あ、お嬢様がお犬様に触ろうとしている、なんてことだ。それはいけない。

 思わず声が出てしまった。

 しかし構わずお嬢様はお犬様を撫で回す。

 私がいつか犬を撫でたいと言っていたのを覚えていてあえてやっているに違いない。

 すごいいい顔でこっちを見ている。うらやましすぎる。


 すごい気持ちいいらしい。

 私も触りたい、触りたいのにお嬢様の護衛をしている間は不意の事態に備えるために両腕をふさぐ事が出来ない。

 悔しい。悔しすぎる。


 そんな私の葛藤を見抜いているのかお嬢様は満面の笑みだ。

 今すぐお嬢様を斬り捨ててやろうか、そうしたら職務からも解放されて思いっきりお犬様をなでられる。そんな思いが頭をよぎる。

 だがそれは駄目だ我慢我慢そう自分に言い聞かせる。


 そんな私が必死で我慢している間にも新しい展開が。

 あの魔物使いがブーメランなるおもちゃを出して投げている。

 それをお犬様がキャッチする。可愛すぎる。

 持って帰って来て魔物使いの前でブーメランをおいて自信満々の顔で褒めてもらうのを待っている。可愛すぎてどうにかなりそうだ。


 あ!?お嬢様もあの遊びをやってる。

 くっ、うらやましいうらやましいうらやましい。

 斬りたい斬りたい今すぐお嬢様を斬りたい。

 そして私があの遊びをお犬様といっしょにしたい。


 そんな事を思っているとお嬢様があの魔物使いにお犬様を譲るように言っていた。

 いいぞお嬢様頑張れ。


 20万?30万?安い私にも買える今すぐお金をたたきつけたい。

 と思ったら相手が値段を釣り上げて来た。

 お嬢様が100万の提案をしている。

 あ、なんか勘違いしていたみたい。


 急に魔物使いはお犬様を売れないと言ってきた。

 お嬢様頑張ってください。なんとしても犬を、お犬様を家に連れて帰るのです。


 相手はかたくなに売れないと言っているが遂にお嬢様がご実家の家紋を出した。

 お嬢様が一番嫌う、ご実家の威光を使う形だ。

 こんな事をするなんて滅多にない、というか初めて見たかもしれない。 

 あんなに嫌っていた行為をしてまでお犬様を得ようとするなんてなんて罪作りな可愛さなのだろうかあのお犬様は。

 

 だが向こうは家紋を見ても顔色一つ変えずに拒否する。

 貴族の家紋を出すという事はこの家を代表して交渉しているという事、そしてそれを断るという事はその貴族の一族全てを敵に回すという事だ。

 平民がそれをやるという事は死んでもお犬様は渡さないという決意を示したことになる。

 命を懸けてまで渡したくないなんてなんて罪作りな可愛さだろうか。

 

 そんなやり取りをしていたら相手の魔物使いはあろうことかお嬢様に脱げと言ってきた。

 平民が貴族の子女に行ったのだこの発言だけで強姦罪として死刑に出来る。

 それもお嬢様相手ならこの場で死刑だ。


 という事は私の出番だ。

 今すぐやつの首をはねて、財産は没収だ。そうお犬様は没収だ。

 さあお嬢様今すぐ私にご命令を。

 そう思い剣に手をかけ待つ・・・・・・が命令が来ない。


 命令が来ないどころか、奴の発言を許す流れになっている。

 それもあのブーメランとかいうおもちゃでだ。

 納得できない。せめてお犬様にして欲しい。

 そんな事を思っていたが向こうは話し合いが終わってしまった。


 終わってしまったらしょうがない。時間を確認するともうそろそろ帰宅しなければならない時間だ。

 お嬢様にその旨を告げる。


 だがお嬢様はもうちょっとと言う。

 駄目だ。と言おうとしたがどうやらお犬様を売っている場所を教えてもらうようだ。

 それならしかたない。

 場所を聞いて覚えるのは私の役目だ。

 魔物使いから奴隷商の場所を聞く。

 お互いに不慣れな場所のせいかなかなか場所が分からない。

 そんな事をしている間もお嬢様はお犬様と遊んでいる。ズルだ。ズル過ぎる。


 なんとかお犬様を売っている奴隷商の場所を聞き出せた。

 これでこんな場所には用はない。さっさと帰るべきだ。さっさと帰ってお犬様を買うのだ。

 お嬢様を連れて急いでダンジョンから出る道を行く。


 「ねえ、エルザさっきの事どう思った?」

 「はい、とても可愛かったです。そして撫でたいです。」

 「犬の事じゃないわよ。男の方よ、あの男どう思った?」

 「あの男ですか?・・・特には。あ、魔物をいっぱい侍らすというのはいい方法だと思いました。」

 「・・・そういう感想になるのねあなたは。・・・じゃあ武人としては?」

 武人として?あの魔物使いと戦ったらという事だろうか。


 「普通に倒せると思います。あの魔物たちが一緒に居たら心ぐるしいですが、それでも直ぐに倒せますよ。」

 「そう?なかなかの武器を持っていたと思うけど。」

 「武器?持っているだけでしょう。体の使い方も間合いの取り方も素人でしたよ、武術を修めている感じはありませんでした。」

 「そう武人から見るとそうなのね。」

 そんな事をお嬢様がつぶやく。武人としてというなら魔術師としてなら違うという事だろうか。

 

 「この魔道具はどう思った?」

 そういうとお嬢様はブーメランとかいうおもちゃを取り出した。


 「ああ、ブーメランとかいうおもちゃですか。とっても楽しそうでしたね、私も早くやりたいです。」

 「そんなキラキラした瞳で・・・そんなにやりたかったの?」

 「それはもう。頭がおかしくなるかと思いました。」

 「・・・そ、そう。」

 なんかお嬢様がちょっと引いている。


 「聞きたかったのはそういう事じゃなくて魔道具としての性能の事よ。」

 「魔道具としてですか?私はそういう事は良く分かりませんが武器としてみるならおそらく威力が足りないでしょう。鳥などを狩るならいいかもしれませんが。」

 「なるほどね。」

 そういいながらお嬢様はブーメランを魔術で回しながら自分の周りを飛ばし始める。

 確かに魔術と組み合わせると便利かもしれない。


 「勘違いしているみたいだから言うと、これほとんど魔術は使ってないわよ。」

 「えっ?」

 「飛ばすときに少し『風魔術』を使っているけどあとはこの魔道具の力ね。」

 そう言いながらブーメランを自分の手元に戻す。

 「魔力の操作にコツがいるけれど魔力操作さえ覚えればあとは誰でもこれくらいは出来るわね。最初の飛ばすのだって投げればいいだけだし。魔道具としてはアーティファクト一歩手前といったところかしら」

 「えっ、それって人族の作り出せる限界の物って事ですか?」


 アーティファクトの詳しい定義は分からないが他種族からは長らく人族には作りだせないものがアーティファクトの定義だと言われていた。

 未だかつてアーティファクト級の認定を受けた魔道具を作り出した人族はいない。

 そのアーティファクトの一歩手前という事は人族の作り出せる限界、それも今生きている人族ではなく今までの現れた伝説的な職人全てを含めての最高峰の魔道具という事になる。


 「そんな凄い物なんですか?」

 「まあ機能としてはこの木の塊を空に飛ばす事の補助ぐらいしかないから、まあそんなに凄い事をやっているわけではないけどね。他の方法でも代用は出来るし、それこそ風魔術とかね。」

 まあそれだけの機能なら別に大したことはないだろう。

 「でもこれの凄いのは空を飛ばすという機能そのものという事、他の色んな魔術式を用いて無理やり空を飛ばしているんじゃなくてただ発動するだけで空を飛ばす事が出来るという事ね。」

 「?」

 「まあ私も専門じゃないからうまくは説明は出来ないけど、まあ凄く珍しい物という事ね。多分これに使われている魔術式はおそらくまだ誰も見たこともないだろうし解析も出来ないと思うわ。誰もまだ見たことがなく再現がかなり難しい、だからこそのアーティファクト一歩手前って事ね。」

 なるほど、分からないけど凄い物という事は分かった。


 「じゃあとても貴重な物なのですね。それを彼はあっさり渡したと。」

 お犬様は渡せなくても貴重な魔道具なら簡単に渡せる。

 あのお犬様は貴重な魔道具以上の価値があるという事、あの魔物使いもなかなか分かってるじゃないですか。


 「まああの男がどう考えていたのかは分からないけど、彼はこの魔道具は簡単に手放せるものという事ね。かなり無理目な要求をして相手の出方を伺ったつもりだったのだけれどもちょっと見誤ったわ。思ったより大物なのかそれとも何も考えていないのか。」

 なるほどお嬢様があのブーメランを要求したのは試していたからなんですね。


 「気が付いていた?あの男の装備、全部魔道具化してたわよ。」

 「あの安物の装備をですか?」

 「そうあんな安物をわざわざ魔道具化してたのよ。それも自分のだけでなく従魔の分も全部。」

 「えっ、従魔の物もですか。」

 あんな安物を魔道具化するだけでも凄いお金と時間がかかるだろう、それなのに従魔の分も全部だなんて。


 「そうよ。そんなのいくら私でも無理だわ。それに彼の武器は他の装備とは比べ物にならないほど濃い魔力が漂っていたわ。詳しく見てみないと分からないけどあれも相当な代物のはずね。」

 なるほど、あの持っていたメイスは魔鉄鋼製だとは思っていたが魔道具化したものだったのか。


 「まあそういう訳であの男はおかしいのよ。立ち振る舞いは素人、装備の素材は並以下。でもどれもとんでもないお金を使って魔道具化している。その上、見たこともないような珍しい魔道具を簡単に人に上げてしまう。」

 そう言われると凄いちぐはぐな印象だ。


 「だけど魔道具を献上したのは貴族に対しての無礼を働いた事の代償でしょう。それもお嬢様は家紋を使っていたとなれば・・・。」

 「あの男は家紋の事なんて全然わかってなかったわよ。それどころか貴族に対しての無礼を働くと言うのがどういう事かも分かってなさそうね。それこそ怒っている女の子に対して機嫌を取るためにおもちゃをあげたような感覚なんでしょう。」


 この街、というかこの辺りに居てそれを知らないという事はとんでもなく遠くから来たばかりなのか、そういう事を全く気にしなくていい立場の大物なのか、ただ単に常識がない馬鹿なのか。


 「私も最初、あのちぐはぐな金のかけ方からどっかの国のから来た貴族がお忍びでやって来てダンジョン探索をしてるだけなのかと思ったわよ。装備はその辺の冒険者に見せかけてるけど最低限の防御力をもたせているみたいなね。この地方にはいない犬も連れていたし。」

 なるほどそう言われればあのちぐはぐな装備にもお犬様にも説明が付く。


 「それでこっちから家紋を使って探りを入れてみたんだけれど・・・」

 なるほどそれでお嬢様は普段では絶対使わない家紋を使って見せたという事か。


 「でも余計分からなくなったわ。どこの国から来ていてもその地域の貴族、ましてやうちみたいな所とは絶対もめたくないから、うちくらい調べて来て当然なのにそれも知らなかった。それに貴族相手でも態度を変えなかったのはどっかの王族なのかとも思ったけど、王族のお忍びならなおさら他国の貴族との関係は神経を使わなきゃいけないのに・・・むしろ挑発してるのかって態度だったし。」


 「・・・つまりあの男はどっかの国の王族であり。この国など眼中にないほどの大きな国もしくはこの国に対して侵略する口実を作りに来た者という事でしょうか。」

 そうなるとお嬢様を前にしてあの余裕も良く分かる。


 「まあ、それも考えたんだけれどね結局分からなかったわ。最後までこっちを子供扱いするし本当になにも知らないようにも見えたしね。」

 お嬢様が相手の事を図り兼ねると言うのは珍しい。


 「まあ分からないのは問題ないわ、これからじっくり暴けばいいだけだもの。という事で今後はあの男の事を調べるわよ。まずは犬を売っているとかいう奴隷商の所からね。」

 なんだ奴隷商の所を聞いたのはお犬様を買うためじゃなかったのか。


 「お嬢様明日はもう帰る日ですよ。」

 「だから急ぐのでしょ。グズグズしている暇はないわ。」

 お嬢様はいつだって思いついたら全力で行動する人だ。

 今回だって亀の素材が欲しいと旅行先で急に言い出したのだ。

 そのせいでこんな時間に二人だけでダンジョンに入っている。

 亀を狩る事は出来なかったが代わりの獲物を見つけてしまったようだ。


 「この辺であんな男がウロウロしているのを知ったからにはほっておけないし。何よりあの男は私の事を子ども扱いした。それがどういう事になるかきっちり教えて上げないとね。」

 そういってお嬢様がゾクリとするような笑顔を浮かべている。

 これは相当怒っている。

 あの男は終わったな。


 お嬢様はこの身長と見た目で幼く見られるが私とは1つしか歳が違わない。

 もちろんお嬢様の方が年上だ。


 そんな見た目のせいか、お嬢様は自分が幼く見える事がコンプレックスで容姿により子供扱いされたり見下されるのが一番嫌いなのだ。

 お嬢様の家の事もあり面と向かって馬鹿にされる事はないが内面では見下される事は多い。

 お嬢様は自分が馬鹿にされるといった事に敏感でそういった輩が心の中で馬鹿にしている事をちょっとした態度からすぐに悟ってしまう。

 そうなったらお嬢様の行動は単純だ。その場で相手の精神をボコボコにしてしまうのだ。


 そう言った意味であの男の態度は最悪と言えただろう。

 彼は完全にお嬢様の事を子供と思っていたしそれが態度として全面的に出ていた。

 あまりそういう人の機微に疎い私でも分かるのだから相当分かりやすいと言える。

 そんな彼がお嬢様を露骨に子供扱いをしてその上、子供だからと思いお嬢様の行った事をまともに取り合っていなかった。

 そんな態度を取ったのなら普通はボコボコではすまない、殺されてもおかしくないそんな態度だった。


 だが彼はお嬢様に何もされなかった。魔道具は奪ったが精神的に追い詰めるような事は何一つしなかった。

 これは彼が許されたから何もされなかったのではない。

 許されなかったからこの場では何もされなかったのだ。

 

 つまり彼はお嬢様に目を付けられたのだ。


 こうしてお嬢様に目を付けらた者は悲惨だ。

 お嬢様はどんな事でもしてその相手の人生に干渉する。

 そうして次第にお嬢様がいなければどうにもならない状況にまで追い詰められる。

 もちろんお嬢様がそう仕向けているのだがそんなことは相手には分からない。

 気が付いた時にはもう嬢様に心から屈服し、そして一生をかけて仕えようと誓う。


 そういう風にして自分の所有物にしてしまう、それこそがお嬢様の最大の仕返し方法なのだ。

 これはお嬢様が心の底から許さないと思いそれと同時に気に入った人物に対して行う行為だ。


 だからこれから彼は大変だろう。

 何しろ私が一度通った道だ。

 その悲惨さは身をもって知っている。


 だから彼にはなるべく苦しまずにこちら側に来ることを願うしか出来ない。

 なるべく苦しまずにそしてなるべく早く。

 出来ればお犬様と一緒に。

 そんな事を考えながらお嬢様と館へと帰還するのであった。


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