34話 審判の日
朝というか昼過ぎに目が覚める。
今日これからの事を考えると気が重い。
昨日の少女はあれからどうしたのだろうか。冒険者ギルドに訴えでたのだろうか。
冷静に考えると例のこの世界の知識が頭に浮かんでくる。
それによればこの世界にも婦女暴行みたいな罪はあり、それを訴え出た場合、冒険者ギルドがどう動くかは地域によって違うらしい。
じゃあこの地域はどうかと言えばそんな詳しい知識はなかった。役に立たない。
この街から逃げる。そういう選択肢もあるかもしれない。だがこのダンジョン都市にはお金になる素材、強くなるための魔物、そしてちゃんと話が出来る知り合い、この世界に来てから自分が築いた物の全てがこの街にある。
だからこの街からは出たくない。
となれば自首するしかない。
この世界に自首すると刑が軽くなるなんてことはないが、自首してあの少女にちゃんと謝って許してもらう、それしかない。
それでも許してもらえず捕まるような事があればそれはその時考えるか。
と言う訳で早速、冒険者ギルドへ・・・はまだちょっと早いかな。
準備そう準備がまだ出来てないんだ。もしかしたらお咎めなしの可能性もあるんだしいつも通りダンジョンに行くための準備はちゃんとしよう。
まずはいつものように回復薬を作る。
その後は昨日ゴブリンを倒して得たスキル石を確認する。
『剣術』は昨日1.5手に入れて合計で2.1ある。
魔鉄鋼製の剣は現在、『剣術』スキルが2.0でこれを3.0に上げようとすると1.0から2.0に上げるのにかかる値の倍かかる。
つまり次のレベルまでには12.0のスキル石が必要なのだ。
だから今、2.1程度のスキル石を魔鉄鋼製の剣に入れても小数点1位が少しあがるだけなので普段はやらないけど今日はなんかやっちゃう。
『剣術』2.1のスキル石を入れると『剣術』は2.1になった。やっぱ全然上がらないね。
それにしても昨日、剣を使ってみた感じ強いは強いが微妙な感じだった。
自分の動きが良くなるわけでもないし切れ味も剣の性能なのかスキルの性能なのかはっきりしないし。
このまま剣にスキルを付けるんじゃなくてゴブリン達に付けた方がいいような気もしてきたな。
でもでもやっぱり俺が最強になりたいから『剣術』はこの剣に付けるか。
もしかしたら使い方が悪いのかもしれないし、3.0くらいから急に強くなるのが『剣術』かもしれないし。
スキル上げは継続しよう。
後は『剣術』について誰かに詳しい話を聞ければなんか使い方のヒントにはなるかも。
それにしてもよく見ると剣に傷がついている気がする。これは大変だ俺の最強の剣が傷がつくという事は俺の最強に傷がつくという事だ。
と言う訳で剣に『再生』付けよ。『再生』を付けると時間が経つと傷が治るしメンテナンスも楽になるし。
『再生』のスキル石を1.0になるまで入れる。よしこれでこの剣は最強で無敵になった。
あとは何かやる事ないかな。
そうだこの剣に名前を付けよう。
何にしようかな最強剣か超強い剣かスーパーファイヤーサンダーウルトラ剣とか小二的なやつにしようかな。
厨二的にするなら・・・もういいか何か思い出したら悶絶しそうな過去の扉が開きそうだし。
いつも通り単純に名前を付けよう。
じゃあ魔鉄鋼剣で。
あとはなんかやる事ないかな
そうだいつもお世話になっているこの部屋に感謝の気持ちを込めて掃除でもしようかな。
いらないか。
いい加減覚悟決めるか。
今まで延ばし延ばしにしてたけど遂に冒険者ギルドに行くか。
とその前に回復薬をうってからね。
そんな感じで覚悟が決まんないままあっちへうろうろ、こっちへうろうろしながら遂にやることもなくなったので冒険者ギルドについてしまう。
びくびくしながら受付に行ってみる。
何か知らの情報があるかもしれない。困ったら受付のマリーさん頼りだ。
冷静を装いマリーさんの前を通ってみる。
はい自分からは話しかけて情報を聞き出す勇気なんてないです。
「あ、ワタルさんちょうど良かった。」
ドキッ。
遂に来てしまった。逮捕だ。死刑だ。
「キースさん達が話したいことがあるって探してましたよ。」
キースあの子はキースというのか。男の子みたいな名前だな。
「なんかゴブリンの育て方を聞きたいらしいですよ。」
そう言えばゴブリンに反応していたな。好きなのかな。
「他に何か言ってましたか?あと僕はどうなるんでしょうか。」
勇気をもって自分から聞いてみる。
「?他は特に。普通にあって話たら良いんじゃないんですか?最近あってないんでしょ。」
「?」
「キースさん達ですよ一緒に初心者講習会受けたじゃないですか。」
ああ、そっちね。あいつらね。
そんな名前だったっけ。ニナさんしか覚えてない。
「待ち合わせするなら伝言とか承ってますよ。」
「別にいいです。」
「そんな冷たいこと言わずにあってあげればいいじゃないですか。じゃあ向こうからの伝言貰ってそこで待ち合わせの時間と場所を決めてもらいましょうよ。」
なんでこんなグイグイ来るのか、まあ会うだけなら別にいいか。
「じゃあそれでお願いします。」
マリーさんは満足そうにメモか何かを書いている。
「他に何か僕に用事がある人とか、なんか僕に対して物申したい人とかいないんですか?」
再度、勇気を出して聞いてみる。
「?別にないですよ。何かあったんですか?」
「・・・いえ。別に何もないです。」
良かった。まだ大丈夫。凄くほっとした。
どうやらまだ相手は訴え出てないか、容疑者として俺は浮上していないみたいだ。
「そう言えば。僕がゴブリン3匹連れてるのって有名なんですか。」
「有名って程じゃないですけど、ゴブリンを3匹連れている新人がいるって噂になってるくらいですかね。」
「そうですか。」
ゴブリン3匹は噂にはなる程度には珍しい出来事なのか。
という事はあの少女がゴブリン3匹連れた奴でしたと言えばすぐに俺に結びついてしまうという事だな。
やばすぎ。
という事は事態は最悪でもないが良くもないそんな感じなんだな。
「あ、思い出した。そういえば駆け出しの魔物使いがゴブリンを3匹連れている冒険者の事を聞きまわっているって話があった。」
ドキッ。
それやんけ。
やっぱ向こうもこっちを探しているのか。どうしようどうしよう。
「それでその子は何て?」
「別にどの時間によく冒険者ギルドに来るのかとかそんな感じの事を他の受付の子が聞かれたくらいで別に他には。何かその子にしたんですか?」
「っ。別に何がってわけではないんですが。少しその。ちょっと。」
「何があったか分かりませんがとりあえず悪い事をしたならちゃんと謝った方がいいですよ。」
おっしゃる通りです。
「・・・分かりました。お姉さんが一肌脱いであげましょう。その子が受付に来たら伝言を伝えますよ。待ち合わせの場所とか。」
「いいです。大丈夫です。本当に。」
「いいから。いいから。」
なんか今日、押しが強いよマリーさん。
まだこっちの心の準備は出来ていない。覚悟は決めた?そんなの嘘に決まってるだろ。
相手がこっちを探しているならそのうち接触してくるだろう。
それまでは見だ。
自分で行く勇気は今のところ俺にはない。断定。
「何をしたか知りませんが謝るのが遅くなれば遅くなるほど、難しくなっていくものなんですよ。悪いなら時間を空けずにスパッと謝った方がいいですよ。時間をかければかけるほど謝りづらくなりますし。」
一分の隙も無い正論だ。
そりゃそうだ。先送りにしてもいいことなんて一つもない。
「・・・・・・じゃあ。伝言を時間は夕方ならいつでもいいと。」
「分かりました今度、会えたら伝えておきます。ちゃんと謝るんですよ。」
無理やりに会う予定を入れられてしまった。
でもまあこれで良かったかもしれない。自分一人じゃ絶対に会いになんて行かないし。
まだ状況は全く進展していないが、こうやって少しでも先の事が決まるとこれはこれで少し心が軽くなる。
後はどうやって謝るかだな。
何とかビンタ一発で済まないだろうか。
お金ならいくらでも払うんだが。
そんな事を考えながらダンジョンで狩りをする。
昨日とは違い今日はいつものルートで2階へ行く。
途中、昨日会った場所で会うかもと思ったが彼女はいなかった。
さっきまでの俺なら今日も昨日と同じように別ルートで2階に行っていただろう。
そう言う意味では少し覚悟が出来たのかもしれない。
マリーさんには感謝だな。
そうしてこの日は前の日と違って前向きにダンジョンで狩りをすることが出来た。
後は彼女に謝るだけ。そう思いながらこの日は終わった。
次の日、いつもの準備を全て済ませて冒険者ギルドに行く。
前日にマリーさんが面会の段取りをしてくれるといったので今日は相手の返事があるかもしれない。
そう思い冒険者ギルドの受付に来たら居た。
あの子だ。
あの銀髪、あの青い目。間違いない。
明るいところで見る彼女はダンジョンの暗がりで見た時よりもいっそう美しく見えた。
そしてそんな美少女がこっちを睨んで待っている。
怖い。
美人が睨んでいるのってなんであんなに怖いのか。
ゾクゾクはしない、まだ俺は初心者らしい。なんの?
あまりに怖すぎて混乱してしまった。
それにしてもこれはないよマリーさん。
昨日の今日で連れてくるとか反則でしょ。
今日はまだいないと油断させておいて連れてくるとか人間のすることじゃない。
「ほらワタル君。彼女ずっと待っててくれたんだよ。ちゃんと話しなさいよ。」
そう言ったマリーさんは満面の笑みだ。
物凄いしてやったり感。満面の笑みアンド、ドヤ顔だ。
なんんてこった。あんな悪魔の所業をしておいて笑顔だなんて。
いや逆なのか悪魔ほどよく笑うっていうし。マリーさんまじ悪魔。
「・・・・・・話がある。・・・こっち来て。」
「・・・・・・・・・・・・はい。」
そうして俺はおとなしくこの少女に言われるままついて行く事しかできなかった。




