29話 一番いい装備を頼む。
宿への帰り道を歩きながら再びロバの運用について考える。
今回運んできたカエルは全部で2匹。
持ってみた重さで言えばおおよそ80~100キロの間くらいでカタログスペックからすると余裕で運べる重さだ。
実際、ドンが背負って移動しているところを見ていたが無理なく運べていたように見える。
しかしドンが運んでいたのは4分の3にあたる量で残りは俺が一生懸命、重力と戦いながら持って帰ってきたものだ。
なぜそうなってしまったかと言えばドンに積める重さの限界より先に鞄に詰め込める限界が来てしまったからだ。
ようするにカエルの肉は重さのわりに大きくてかさばるので持ってくる量がこれで限界ということだ。
仮にドンが持って帰ってきただけの量だけだと100000ディールの4分の3で75000ディールという事になる。
1日にドンのおかげで75000稼げるとしてドン全体で150万かかっているから元を取るには20日掛かる計算だ。
これを早いと見るか遅いと見るかは人によって違うと思うが俺は遅いと思うし、思ったよりも稼げないとも思ってる。
ゴブリン達なんて1か月以上かかってようやく戦力になってくれたんだから贅沢言っているような気もするが、このゴブリン達との1か月があったからこそ生き物を世話をするというのは大変だという事を本当の本当に実感している。
だからその生き物の世話を考えるとドンの今の稼ぎでは微妙と思ってしまう。
駄目だ。思考がネガティブになってしまう。
そもそもこうなったのは後先考えずに何でも買ってしまう俺がいけないんだ。それをドンのせいにするのはよくない。
それに買ってしまったものはしょうがないんだから、これをどうやって活かすかを考えるべきだな。きっとそう。
こういう時はギンを思いっきり撫でて癒されるに限る。
そう思いギンを思いっきり撫でまわす。
「はっ、はっ、はっ。」
ギンも気持ちよさそうに撫でられている。ここかここがいいのか。
そんな事をしていると視線を感じて振り返る。
ゴブリン達が見ているのかと思ったらドンだ。
「・・・・・・・・・」
なんかこっちをじっと見ている。
なんだろうか、もしかしてドンも撫でて欲しいのだろうか。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
取り敢えず撫でてみるか。
頭のたてがみと長い耳を撫でていく。
耳がふさふさでとても気持ちがいい。
一通り撫でて満足してドンの頭から手を離すとドンからの無言の圧力がなくなっている。
これで正解だったのか。今度からはドンも積極的に撫でていこう。
そんな事をしている間に宿に着いた。着いてしまった。
さあこっからが戦いの本番だ。
ドンも宿に入れてもらえるのだろうか。
宿には厩舎みたいなものがないから必然的に裏の庭で過ごしてもらうか部屋に入れるかだろう。
俺は当然、庭に放置するのは可愛そうなので何とか宿に入れてあげたいが、冒険者ギルドでは犬は入れたけどロバは駄目だった。
きっと騎獣は建物の中にいれないもので、どこでもそんな扱いなんじゃないだろうか。
ドン達を宿屋の前で待たせて、自分だけ宿屋に入り女将さんに交渉しに行く。
「あのすみません、ロバってここに泊められますか?」
「泊められる訳ないでしょ。」
でしょうね。そりゃそうだ。俺だって自分の家にロバ泊めていいて聞かれたら断るわ。
「なんだいもしかしてロバ買ったのかい?」
「はい。」
「呆れた、昨日の今日でもう新しい魔物を買ってきたのかい。とんでもないねえ。」
なんかさっきも同じような事を聞いた気がするがそんなに呆れてしまうような愚行なんだろうか。
たかだか1日おきに新しい魔物を買っただけじゃないか。しかも150万もするやつ。
はいすみません愚行でした。
「そういう事なら厩舎の方に預ければいいよ。」
「え、そんなのあるんですか?」
「裏のちょっと行ったところにこの辺の宿屋が共同でやっている厩舎があってそこに預ければいいよ。1日1000ディールね。」
そんな所があるのか心配して損した。
1000とか高いのか安いの分からないけど。
ギンは2500取られている事を考えると安いのか。
というかギンがここに泊めてもらってるのってこっちに泊めた方が料金取れるからてことないよね。犬にたいして寛大で優しいからだよね。そうだと言ってよ女将。
取り敢えず女将の案内で厩舎にいって厩舎に居た係りの人にお金を払ってドンを預けていく。
なかには水もあるし食料の干した草みたいなのもあって至れり尽くせりで1000ディールだって。ギンなんてなんもなしで同じ部屋にいるだけで2500。やっぱおかしくね。
まあいいや。これでドン問題も片付いたし今日はもうこれで寝る。
考えなきゃいけない事もたくさんあるけど明日の俺が何とかするだろう。おやすみなさい。
次の日目覚めてからこれからの事を考える。
まずは獲物の事。
カエルは倒したら荷物になるので後回しでゴブリンを主に狩っていきたい。
その心はゴブリンの落とす武術系のスキル石だ。
今現在、『棍棒術』6.0、『剣術』2.1、『槍術』0.6なのでこれをどんどん増やしていき自分の武器に入れるつもりだ。
まあまだその武器がないんですけど。
昨日もカエルを倒して荷物がいっぱいになったから帰ったが本来なら時間もあったしもっといっぱいゴブリンを狩ってもっとスキル石を集める事は出来た。
俺の最強の武器(予定)を作るためにもこの作業は優先的に行いたい。
あとはその武器関連に関して考える。
スキル石の集まりから考えてまずは『剣術』入りの剣を作ろうと思う。
『剣術』も2.1集まったし1日に1くらいは取れるので今日潜れば3くらいで仮に入れた時の値が3分の1になったとしても1.0の剣が作れる計算だ。
という事で昨日は保留にしてしまったが今日はスキルを入れる用の新しい剣を買いに行こうと思う。
以前に装備を見に行ったときは買う気がなかったのでざっくりとしか見ていなかったが今は300万以上お金があるんだからなんかいいやつが買えるだろう。
なんか昨日も大きな買い物を衝動買いして後悔したような気がするけど気にしない。
俺は前に進む男だ。
買い物に行く前にいつもの日課や昨日得た『擬態』や『麻痺毒』の処理をする。
『擬態』のスキル石をサンに入れると『擬態』が0.9に上がった。惜しい後少しで1.0だ。
次に『麻痺毒』を入れた麻痺毒薬を2本分と回復薬をいつもの分作ったら外に出る。
危うくそのまま街に行きそうになったので慌ててドンを厩舎から引き取ってきたら今度こそ街へ行く。
まずはいつものように回復薬を薬屋に売り、その後冒険者ギルドの販売店に行く。もちろんドンは所定の場所に預けてる。
販売店では顔見知りになった店員に剣を出してもらう。
出してもらうのは様々な材料で出来た剣、それも今使っている短剣と同じくらいの大きさかそれより少し大きいくらいのやつだ。
一つ一つ出してきてもらっては説明してもらう。
まずは鉄というか鋼の剣だ。
これが一番使われている安くて硬い剣だ。値段は40万でまあ買える。
問題はスキル容量が『0.0/2.0』しか無い事だ。
これでは『剣術』も2.0までしか入れられない。
次は青銅の剣だ。
鋼より柔らかいらしいが値段は同じ40万。
なんでも魔力抵抗が鋼より低いらしく魔力を流して剣を強化できるタイプの剣士はこれを使うらしい。
そんな事できないから俺にはただのちょっと柔らかい剣だ。
ただしスキル容量が『0.0/3.0』なので少し『剣術』が高められる。
続いては木刀だった。
木で出来ているのですぐ壊れるかと思いきや意外と丈夫でその辺の魔物を撲殺するにはこれで十分らしい。
ただし鋼や青銅と打ち合うと折れる。当たり前か。
値段は10万でスキル容量が『0.0/3.0』なのでなんかの確認用にはいいかもしれない。
というか今俺が使ってる剣て5万で買ったんですけど、木刀よりも安いんですけど。
どんだけボロいやつなんだよ。なんか使うの怖くなってくる。
「次からは高いやつだ。見るだけでも勉強になるからな。よく見ておけよ。」
そう言って持ってこられた剣は鋼の剣とほとんど何も変わらない剣だった。
しかしスキル容量を見てびっくり、『0.0/5.0』もあった。
「これは魔鉄鉱石から作られた魔鉄鋼の剣だな。鋼と同じくらいの硬度で鉄よりも青銅よりも魔力を通す逸品だ。冒険者が初心者を抜け出して最初に目指す目標でもあるな。」
魔鉄鋼の剣かこれはいいな。硬いしスキルも5.0まで付けられる。いいじゃん。
「いくらですか?」
「400万だな。」
高い、鋼の10倍はする。
しかし高いが買えなくもない。昨日までの俺なら。
昨日まで500万近くもってたのに今はまだ受け取ってないカエルの素材買取分合わせても350万いかないくらいだ。
誰だ高い買い物した奴出てこい。すみません俺です。
まあ何日か回復薬を売っていればそのうち溜まるからまあいいんだけどね。全然負け惜しみなんかじゃないんだからね。
「これより強い武器はないんですか?」
負け惜しみついでに聞いてみる。
「この上って言ったらミスリルとかかな。鋼より硬くて魔鉄鋼よりも魔力を通すものだ。まあ物はないけどな。でもこの街の職人はミスリルまでなら加工できるからミスリル鉱さえ持ってくれば作ってくれるかもな。」
ミスリルってあるんだ。
しかも持ってくれば作れるとか胸熱。
魔鉄鋼、君も素晴らしい金属だったが相手が悪かったね。もう勝負ついてるから。
「ミスリル鉱とかどこかで取れるんですか?」
「まあ大体はダンジョンで取れるもんだよ。このダンジョンでも昔出たとかいう話も聞いたことがあったけど今は聞いたことないな。」
ミスリル君、駄目じゃん。
「まあこのダンジョンで狙うんなら魔鉄鉱石だな。2階からもでるし。」
「本当ですか。もしかして魔鉄鉱石を持ってくると魔鉄鋼の剣とか安く作ってもらえたりするんですか。」
「魔鉄は魔鉄鋼にするまでが難しいからそんなに安くならないと思うよ。精々、一割引きくらいじゃない。」
残念、そんなに安くはならないのね。
「魔鉄鉱石狙いはあんまりおすすめはしないな。鉄鉱石のなかに魔鉄鉱石が混じってるんだけど見た目からじゃほとんど見分けはつかないし重いからそんなに量を持って帰れないんだよ。」
重い荷物を持ちながら帰る坂道は辛いもんな。
「定期的に鍛冶ギルドの方からクエストを出して大人数を集めて大規模に鉄鉱石を掘ってくるけど、その中でも本当に僅かしか出ないからね大変だよ。個人で狙う冒険者もいるけど大抵の冒険者は鉄鉱石を持って帰ってくるだけになるね。」
なるほど完全な鉱石ガチャなのね。しかも鉄の割合が超多いクソガチャ。
外れの鉄なんて小さくても重いからなそんなに量を持ってこれないもんな。
いや待てよ。こんな時のためのドンなんじゃないだろうか。
100キロくらいまでなら簡単に持ってこれてるし流石に鉄なら荷物もいいっぱいになって積めませんもないだろうし。
「鉄鉱石の買い取りってキロあたりどれくらいですか?」
「?キロあたり1500くらいじゃない。」
「魔鉄鉱石は?」
「15000くらいじゃない。」
1500か100キロ積んで15万か昨日が10万で確定なら1.5倍かしかも俺が背負わなくていいし当たりが出たらさらに儲かる。
これはなかなか良いんじゃないだろうか。
それに俺には魔鉄鉱石を引き当てる自信がある。
それは今ならガチャでSSR引ける気がするみたいなそんな何の根拠もない奴じゃない、SSR確定ガチャ券使うから確実くらいの根拠がある。
我に秘策ありだ。