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27話 気分はもう冒険者

 まずはお楽しみのスキル石について考えよう。

 決して目の前の大きなカエルをどうやって持って帰ろうとかブーメランどうしようとか現実逃避しているわけではない。


 『麻痺毒』これはまた水に混ぜて『消化』の溶解液と同様の攻撃用液体シリーズにしよう。溶解液もまだ使ったことないけど。

 『擬態』については悩む。

 ゴブリンスカウトであるサンに付けて偵察能力をあげるか、ギンに付けて敵から見づらくして敵のターゲットになりにくくするか。


 まあこれからいくらでもスキル石は手に入るんだしギンのスキル容量がいっぱいになりそうなのでギンは後回しでサンに『擬態』1.2のスキル石を入れていく。

 サンは『擬態』0.3を手に入れた。

 スキル石を入れると大体効果は落ちるからこんなもんだろう。


 というわけで楽しい楽しいスキル石タイムが終わったので今度は現実(カエルの後処理)と向き合おう。

 まずは大岩ガエルの解体をしてブーメランを回収したい。


 この大岩ガエルをよく見ると少し窪みにいて地面に擬態していたみたいだ。

 大岩ガエルの体を引っ張り上げようとする。

 かなり重い。40~50キロくらいはあるんじゃなかろうか。


 紐を大岩ガエルの体に括り付けて引き上げる。

 一人では引っ張っていたらゴブリンとギンが一緒に紐を持って引っ張ってくれる。

 まるで大きなカブだな

 ギンなんかはあんまり役には立ってないだろうが可愛いのでOK


 なんとか全員で引き上げてひっくり返す。

 お腹に剣を刺して裂いていく。

 何となくこれだと思う臓器を開いていく。


 何個目かの臓器の中からブーメランを見つけ出す。

 見つけ出したがべたべたする。


 水で洗い流したいが余分な水がないため断念。

 ブーメランは背嚢にしまっておく。


 解体はあまりやった事がないがこのまま続けて内臓を取り出していく。

 内臓は売れないらしいのですべて取り出す。

 内臓は少しギンやゴブリン達が食べて残りの物はすべて穴に入れて埋めていく。

 

 内臓系以外のいらないものも外したかったがどこがいらないのかどうやればいいのか分からないので試行錯誤して時間が掛かるくらいだったらこのまま持っていく事にする。

 移動時間の事もあるし今日はもうこれで帰ることにする。カエルを倒しただけに帰る。なんつって。恥ずかしくて死にたい。


 とにかくこんなに重いものは背負っていく自信がないのでここは飛行ソリの出番だ。

 この飛行ソリは以前に運搬用のソリに『飛行』スキルを入れたもので今ではスキル容量MAXの『飛行』3.0になっている。


 この飛行ソリは自力で飛ぶことは出来ないが凄い勢いをつけて登り坂や段差を発射台として空中に飛ばすことが出来る。

 まあ出来ると言っても何か積んでいればすぐに高度が低くなって地面についてしまうのだが。

 洞窟内はデコボコが多くソリで運ぶのは大変なので少しでも空中にいる時間があれば引っ張りやすいのだ。理論上。

 大きい荷物をこれで運んだことがない。今回が初めてだ。


 早速、カエルをソリにの上に運んで紐で縛る。

 そのままソリに括り付けてある紐を引っ張っていく。


 肩に紐を載せそのまま前へ前へと進んでいく。 

 なんかこれって石を紐で引っ張っていく古代の奴隷みたいな格好だな。もっと文明的なやり方はないのか。そんな事を考えながら進んでいく。


 ゴブリン達にも手伝ってもらいなんとか2-1の入り口までやってきた。

 ここから先は1階へと続く坂だ。

 気合を入れていざ押してまいる。

 紐は引いて行くんだけどね。



 だめだこれギブ。

 絶対無理。


 坂を上り始めて数100メートル登ったところで心が折れた。

 来たときはそんなに急じゃないと思っていたが荷物を引いてるととんでもない坂に感じる。


 ゴブリン達も頑張って押してくれたが全然前に進めない。

 とにかくずっと後ろに引っ張られて力を抜ける場所が全くない。

 なんで俺は誰かと延々と綱引きをしなきゃいけないんだ。地面が憎い。重力が憎い。


 こんなに荷物を運びながらの坂が辛いとは思わなかった。

 正直見積もりが甘かった。

 後、飛行ソリ登り坂だと何の意味もない。

 お前にはマジがっかりだよ、何のための飛行なんだよ、坂ぐらい軽く飛んで行けよ。


 そんな感じで愚痴りながらこれからを考える。

 

 カエルを全部持っていくことは不可能なので手足とかを切り落として背嚢に入れるだけ入れて持って帰ることにした。カエルだけに・・・ごめんやっぱ死にたくなる。


 とにかく担げるだけ担いで持っていく。

 全体の半分もないかもしれない。残りはゴブリンとギンに少し食べさせ埋めていく。


 なんか背嚢をぱんぱんにするのは久しぶりなのでかなり重く感じる。

 というか絶対重いだろ。この惑星いつの間にか重力の設定いじっただろ、そうじゃなきゃこんなに辛いはずがない。

 早く重力設定を戻せ、戻せよ、戻してくださいお願いします。


 そんなしょうもない事を考えつつ何とかダンジョンの入り口まで戻ってくる。

 移動するだけなのにいつもより大分時間を取られてしまった。


 まさか2階の一番の敵が坂だとは思いもしなかった。

 2階なんて楽勝だぜとか思っていた俺を叱ってやりたい。

 帰るまでがダンジョンだってね。カエルを持っているだけにねってこれはもういいか。


 とにかく持ち帰ったものを素材買取所に持っていく。

 少し査定があるらしいので夕方、清算してもらうことにして宿に帰る。


 しかしこのままだとカエルを1匹倒しても半分以上の物を捨てていくことになる。

 それに今日は様子見だったのでカエルを1匹しか倒さなかったが、これからはどんどん倒していきたいのでそうすると大半の素材を捨てていくことになる。


 トカゲの時も持てない分は捨てて帰っていたので同じと言えば同じだが、この先の3階、4階に進んだときも持てないものを全て捨てていたのではあまりにももったいない。

 折角冒険者として新たな一歩を踏ま出したのでこの問題もどうにか解決してもう一つ上のステージに進みたい。


 という事でこんな時は受付嬢のマリーさんに聞くに限る。間違いない。


 「魔物の素材を簡単に運ぶ方法てありませんか?なんか魔道具とかでもいいんですけど。」

 あれないの?入れると異次元に吸い込まれて大きさとか重さとかなんなら時間経過とかもなくなる鞄的なやつ。 


 「荷物運びの魔道具ですか?もしかして大岩ガエルでも倒しました?」

 「はい。おかげさまで倒せました。」

 少しドヤる。


 「なるほど、たしかにこのメンバーじゃ大岩ガエルを運ぶのは難しいですよね。重量軽減の鞄とか縮小の鞄とかありますけどもの凄く高い上に普通には売ってない物ですからね、手に入れることは出来ないと思いますよ。」 

 なんか凄い鞄は存在しているらしい。

 でも一般的に流通している物でもないようだ。残念。


 「それにしてももう荷物運びをどうするかで悩んでるんですか。普通、それってもっと後の階層に行くような冒険者の悩みなのに。ちょっと生意気悩みだぞ。」

 めっと指をさしてお茶目に言われてしまった。これは効く。ズキューンだな。


 「中層くらいに行く冒険者なら専門の荷物運びの人を雇ったり、荷物運び用の魔物を買ったりしますけど、どっちも2階辺りを攻略している冒険者じゃ高くて使えないですよ。」

 なるほど荷物運びの人とか魔物とかいるのか。

 知らない人とうまくやっていく自信はないので後は魔物しかないか。

 人より魔物の方がうまくやれるとか人間としてどうかと思うけど出来ないものはしかたない。


 いいヒントを貰った。魔物と言えばあの魔物屋もとい奴隷商の所に聞きに行こう。


 「ありがとうございました。参考になりました。」

 「もしかして魔物を買うつもり?」

 「はいそのつもりです。」

 「あきれた。本当に高いからよく考えてから買うのよ。」

 「はい。ありがとうございます。」

 大丈夫大丈夫。金ならある。

 一度は行ってみたいセリフが言えた。もちろん言ってないけど。


 マリーさんとの会話を終え食事とか諸々の用事を済ませ宿に戻る。

 今日はもう大分時間を使って眠いので奴隷商は明日というか今日の夕方に行くことにする。

 ということでおやすみなさい。


 そして俺の中での次の日、昼過ぎに目覚める。

 食事をして回復薬を作ってブーメランを洗ったらお次は昨日の得たスキル石の処理をする。


 まずはカエルから得た『麻痺毒』から麻痺毒液を作る。

 『麻痺毒』は1.1のひとつしかないから作れて1本分だろう。

 まずは1.0のスキル石と0.1のスキル石に分割していく。

 そして回復薬の容器に水を入れたらそこに『麻痺毒』1.0のスキル石を入れていく。

 最近は1本分の物を作るときには水瓶を使わずに回復薬の容器でそのまま作るようにしている。

 そうして『麻痺毒』1.0の水、命名、麻痺毒薬を作った。


 次にはゴブリンから得た『棍棒術』3.6、『剣術』0.9、『槍術』0.3のスキル石について考える。

 昨日の戦闘で合計16匹倒し得た物だ。


 棍棒はちょっとカッコ悪いから保留としても剣と槍はスキル入りの武器を一本ずつ持ちたい。

 しかしスキル石は今までの経験から物に入れた場合、スキル量は減るので武器に入れたとしても同じく減るだろう。

 だから今、『剣術』にしても『槍術』にしても大したスキル値の武器は出来ないからもう少しスキル石がたまってからで遅くない。

 それに入れるからにはいい武器にしたいので買ってくる必要があるし保留だな。

 


 とりあえず出来る事はやったので回復薬を売ったのち、奴隷商の所へ向かう。


 奴隷商の建物に入ると前に対応してくれた人と目が合う。

 「どうなさいましたか。洞窟犬に何かございましたか?」

 そういえばギンを買ったばかりだった。

 ギンについて何かまずい事でもあったのかと思われたらしい。


 「あの今回は犬の事ではなくて、荷物を運ぶ用の魔物について聞きたくて来ました。」

 「荷運び用の魔物ですか?それはダンジョンで使う事を考えての魔物ですよね。」


 なんかすごく不思議そうに聞き返された。


 「はい。魔物の素材を持ち帰るのが大変で、荷物を運ぶ魔物がいると聞いて。」

 そういう魔物がいるのは分かっているだ。ソースはマリーさん。


 「はい。当然、うちの方でも取り扱っています。見ていかれますか。」

 「お願いします。」


 そう言うと魔物がいるところに案内される。

 向かった先は建物の裏側でそこには奴隷商とはまた別の大きな建物があった。

 人が住むような建物ではなく屋根が高く一つの大きな空間を区切ったような作りをしている。

 なんか倉庫というか見たことないけど畜舎とはこんな感じなんじゃないかという建物だ。


 中に入ると草とかあれとかの独特の匂いがした。


 これはあれだ。

 馬だ。きっと馬系の魔物が出てくるに違いない。

 荷運びと言えば馬だ。なんなら荷物を載せないでそのまま騎乗して移動してもいい。

 夢は広がるな。


 そんな事を思いながら奴隷商人について行く。

 

 「こちらが当店で扱っている中でもおすすめの荷運び用の魔物でございます。」

 そういって紹介されたものは4本の脚で立っており、長い首の上に顔がありそこにはピンと立った長い耳が付いている。

 そしてお尻に長い尻尾が垂れ下がっておりそのシルエットは馬だ。

 だがなんか小さい。とてつもなく小さい。

 顔の高さが俺の胸くらいまでしかない。

 昔、競馬場で見た馬は近くでも見るととんでもなく大きかったがそれと比べるとすごく小さい。

 

 あれかな?戦国時代の日本の馬とかは実はすごく小さくて、現代のサラブレットのようにかなり品種改良がされて体が大きくなった今の馬のイメージと比べると全然違うものみたいなことかな。

 この馬も品種改良前なのかな?


 「これってもしかしてあれですか?あの魔物ですか。」

 「はいロバです。」


 ロバかよ。うすうす気が付いていたけど。

 というか全力で違う事にしようとしたのにロバって確定するなよ。名前が観測されるまでは馬なのかロバなのか確率は半々のはずだろうが。量子力学なめんな。


 「馬ではなく」

 「はいロバです。」

 

 つまり


 ご注文できるのは馬ですか?いいえロバです。


 てことですね。 


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