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1話 僕が次に目覚めたら

 夢から覚めた。これから楽しいことがいっぱい起きるはずの夢から。

 だから今からは最低の現実に引き戻されたはずなのだが、顔がちくちくしてとても体が痛い。

 どうやら地面に寝ているらしい、それも一面土で草ぼうぼうのところ。ちくちくしていたのは草らしい。草生えてますよ。


 いくら現実が最低でも、地面スタートはない。寝る前の俺は一体何をしていたんだ。

 寝ぼけた頭で寝る前の記憶を探ろうとした直後、目にした風景の違和感から一気に意識が覚醒する。


 壁だ。目の前にでっかい壁がある。見上げるほどの高さがあり両端はここから見えない、遠くに門らしきものがあるなんか白っぽい灰色ぽい色の壁だ。

 そして壁以外の景色も変だ。壁の反対側には見渡す限りの平原。木は背の低いものがまばらにしか生えてなく土と草と木以外は何にも見えない。畑とか家とかが全くない。オラこんな村嫌だ村を超える超ド田舎だ。


 そしてようやく夢の内容を思い出しそしてようやく思い至る。

 夢だけど夢じゃなかったんだ。俺は今、異世界にいる。

  

 ということはつまり今の俺は『スキル強奪』という超強力チート能力を持ちながら異世界に来てしまったよやれやれな状態ということだ。なんて日だ。


 早く『スキル強奪』が使いたい。しかし自分の体には何の変化も感じられない。

 まずは本当に『スキル強奪』があるのかを確認したい。

 ステータスとつぶやいてみる。なにも起こらない。次々に思いつくステータス表示系のワードを言ってみるが何も起きない。なんか恥ずかしくなってきた。


 まずは誰か人に会うのが先だな、外にいるのも怖いしとりあえず推定街と思われる門の内側に入りたい。そう思い門に向かって歩き出した。


 歩き出して気が付いたが、自分の格好がおかしい。なんかの革の靴になんかの革のズボン、なんかの布でできた服をきて、なんかの革でできたマントをつけている。

 おそらく下着はトランクスみたいなあまりしめつけないやつで服のしたにも肌着みたいなのをつけていて、靴下らしきものも履いている。

 そしてズボンにポケットがなく代わりに左右の腰に縫い付けてある四角い小物入れみたいなのがついており、入り口が金属の留め金で閉められるようになっていた。


 ぱっと見なんかのコスプレみたなこんな服は持っていなかったのでこの異世界に来るときに支給されたものなのだろう。そう考えた時ふと思い出した、そうだこっち来る際に支度金が日本円にして10万ほど用意されているはずと。

 

 左右の小物入れをあさってみると何やら金属でできた貨幣らしきものがたくさんでてきた。初めて見る貨幣だが直観的にこれが何か理解できた。単位名はディールで万、千、百、十、一の位の硬貨があり、今所持しているものは全部で10万ディールあるらしい。


 この情報はどこで知ったのか思い出そうとしたが思い出せない。思い出せなかったがふと夢の中のプロジェクターの光景がうかんだ。もしかしたらあの表示されていた情報の中にこのことがあったのかもしれない。ろくに説明を読まずに眺めているだけだったがそれでも効果があったのかもしれない。もしかしたらあれはこの異世界の知識を植え込むための装置だったのかも。


 そんな事を考えながら歩いている間に門の前に辿り着いた。

 高さも幅も何メートルもある大きな門で押すのか引くのかも分からないし絶対一人で開けることはできないような門だった。ここまで考えて気が付いたけどこの門閉まってるじゃん。


 時代劇とかで見る大きな門の横に人一人が通れるような小さい門はないもんかと思い探してみるがない。結構歩いて探してみるがないということはないんだろう。


 困った。途方に暮れて門のそばの草むらに座りこんでいると鐘がなる音がした。

 そしてその直後、門の向こうから大声が聞こえてきた。


 「開門。開門するぞ」


 門が開くらしい。

 そのまま門が開くの見ていた。

 門が開くと門の中からごてごてとした革の鎧ぽい装備を着た兵士が出て来て門の両側に着いた。


 「なんだ随分早くから来ていたんだな、坊主が今日の一番乗りだな。」


 近い方の門番がこちらに気が付いたらしく声をかけてきた。

 やばい想定外だ。急に話しかけないでほしい。しゃべることを事前に考えてないとなんて言っていいか分からずうまく会話できない系男子なんだ俺は。そこら辺を考慮してほしい。


 「あの・・・えっと・・・おはようございます。」

 だめだ挨拶しか出てこない。


 「はい、おはようさん。随分早かったがどこから来たんだ。」


 くっ、相手は会話継続系男子だった。

 何も思いつかないので寝ていた方向を指さす。


 「あっちの方角には何もなかった気がしたが。」


 あっちの方角には何もないらしい。あそこに異世界から召喚されました、そう答えようと思った瞬間思い出した。

 そういえば異世界に行った物語の主人公は異世界から来たことを知られたらまずいから大抵の場合は隠してたんだった。俺も隠さなきゃ。やばいただでさえ会話という高難度クエが、嘘じゃないけど適当な事を言って俺が異世界からやってきたことを秘密にする超々高難易度クエになってるじゃん。むりです。


 「あそこで寝てました」

 考えても何も思いつかないのでそう答えて寝ていた方向を指さす。


 「もしかして門の外で一人で寝てたのか」

 「はい」

  素直にうなずく。


 「あれか閉門に間に合わなかったのか。閉門に間に合わなかったら壁の近くで眠れとか言われてたんだろ。あれは思ったより安全じゃないからな次からは気をつけろよ。」

 「はい」


 どうやら高度な情報戦の末うまいこと誤魔化せたらしい。


 「じゃあ身分証を見せてくれ」

 

 まだ戦いは続くらしい。なんだよ身分証って、これ持ってないて言って大丈夫なやつなの?持ってないと人権がなくて迫害されたり奴隷にされたりするそんなものじゃないよね。やばい正解が分からない。やばいやばいどうしよう。


 「もしかして身分証持ってないのか?」

 

 やばい、わたわたしてたら怪しまれてる。


 「はい」

 何も思いつかないので素直にうなずいた。


 「結構、遠くから来たんだなそれも一人で。大変だったな。とりあえず身分証がないなら商業ギルドか冒険者ギルドに入ってギルドカードを作ってもらうことになるが、坊主はどうせあれだろダンジョン目当ての冒険者志望だろ。」


 「はい」

 セーフ。どうやら身分証はなくても大丈夫らしい。また高度な情報戦に勝ってしまった。

 安心感から反射的に答えてしまったがこれから冒険者になる気だったのでセーフ。というか冒険者ギルドってやっぱりあるのね。しかもダンジョンもあるのかよテンション上がってきた。


 「じゃあ門を抜けて大通りをまっすぐ行ってちょっとしたら右手側にすごく大きな建物が見えてくるから。そこが冒険者ギルドのアルスター西門支部だからそこに行きなさい。ギルドカードを発行してもらいなさい。次からはギルドカードを見せてもらえばいいから。」

 

 「はい、ありがとうございました。」

 

 そういって顔を上げた時ようやく初めて相手の顔を見た気がした。どうやらさっきまで相当緊張していて相手の顔もまともに見れてなかったようだった。まあ初対面の人と話すときは大抵そうなのだが。


 そして門をくぐってようやくこの街に足を踏み入れた。


 そしてその時の僕のテンションは最高潮に達していたと思う。

 それは初対面の人との会話という緊張からの解放、会話がうまくいった事への喜び、初めて異世界の街並みをみた感動が入り混じっていたが、それが霞んで感じるほどの大きな興奮が今胸の中にあった。

 

 それはあの兵士の顔をみた時にようやく気が付いた。兵士の横にまるでゲーム画面のように文字が空中に表示されていた。


 『槍術』2.3

 『警戒』1.1


 きっとあの兵士のスキルが表示されていたのだろう。

 これで『スキル強奪』の能力には相手のスキルを見ることが出来るという事が分かった。

 そしてなにより俺には本当に『スキル強奪』を持っていているということを実感した瞬間だった。 



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