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17話 今日から俺はアウトロー

 今日も今日とて回復薬を背中のリュックに沢山詰め込んで街の怪我人を治して治して治しまくる。

 それがこの俺の使命だ。


 回復薬の需要と供給?

 知らんなあ?


 「うう、娘が正体不明の謎の病気でもう1年も寝たきりに。このままだと不憫で不憫で。せめてお金があれば治せるのに。うう。」

 「お母さん私のことは気にしないで。もう泣かないで。」 


 病人発見!病人だが構うものか治してしまえ。

 「話は聞かせてもらった。」

 ここでぱっと入っていく。


 「あなたは一体。」

 「私はこの背中に背負った100本以上ある回復薬でありとあらゆる怪我、病気を治す通りすがりの錬金術師だ。」

 「あなたが噂の下級回復薬しか作れないけども数だけは豊富。どんな怪我、病気でも数の暴力でなんとか治してしまう伝説のしょぼめの錬金術師」

 言い方!

 あとしょぼめの錬金術師ってなんだよ語呂だけはいいなちくしょう。


 「とにかく。まずはこの回復薬を10本飲むんだ。」

 戦いは数だよ兄貴。


 「お兄さん、お腹がたぷたぷしてもうこれ以上は飲めない。ゲホゲホ。」

 「まだ治らないのか。しょうがない。では最終手段だ残りの回復薬をすべてぶっかける。」


 「止めてください。そんなことをしたらこの子が・・・この子がビショビショになっちゃう。」

 ビショビショになったからなんだよ、寝てたらビショビショにくらいなるだろ。


 「お母さん私頑張る。たとえビショビショになったとしても耐えきってみせる。」

 よし覚悟完了だな。では一気に行くぞドバドバ。ドバドバ。


 「ありがとう。お兄さんなんだかとっても良くなりました。」

 「ありがとうございます。おかげで娘が助かりました。」

 ふう今日も何とか数の力で治療できたぜ。あとはおたのしみだけだな。


 「ところで奥さん。娘の命は救ってやったんだ分かっているよな。」

 「そんな殺生な。」

 「これでもくらえ」

 「な、なにをしたんです体が。体が熱い。」

 ふふふ。これは大量に在庫を持て余している『繁殖』のスキル石、これを大量に入れることにより感度が100倍になるのだ。

 さあ、手が触れただけでとんでもない快楽が。

 あつ。ていうか痛つ。


 しまった『繁殖』と間違えて、『消化』のスキル石入れちゃった。これじゃあ分泌液が溶解液になって汗でも触れると溶けちゃう。

 「うううう。こんなところにおいしそうな男の子じゅるり。いただいきまーす。」

 やばい食べられちゃう物理的に食べられちゃう。溶けちゃう。らめえ僕、溶けちゃうぅぅぅ。

 



 「溶けるうううう。」


 そう叫んで目が覚める。 


 良かった。夢か。


 昨日はショックのあまり変な時間に寝たから、変な時間に起きてしまった。

 まだ昼前くらいじゃないか。


 まだ眠っていようかと思ったが目が冴えてしまったのでこのまま起きるか。


 昨日、あの後ずっと考えていた。

 そんなに回復薬をいっぱい作ることは悪い事なんだろうか。

 そりゃ他の人が全く食べていけなくなるくらい作るのは駄目だろうけど、少しくらいいいだろう。

 それが経済活動というものだろう。詳しくは知らんけど。


 そもそもチートというのは存在自体がズルなのだ。悪なのだ。

 そんな能力を持っているという事は俺自体が悪という事だ。

 ならば他人は気にせず自由に悪にやってやるという事だ。

 決めた今日から俺はアウトローになる。


 まあただ回復薬は一日10本にしておくか。

 あのばあさん怖いし。


 さてこれからどうしよう。


 回復薬が制限されているという事は次の儲け話を考えなきゃいけない。


 なんか新しい薬でも作ろうか。

 繁殖水も売れるかもしれないし簡易治療薬も効果を高めることが出来るし。


 ・・・うん。ちょっと薬は今はいいか。

 別にあのばあさんにビビっているわけじゃないけど薬関係は当分いいかな。


 だめだ何にも思いつかない。

 何か考えようとすると嫌なことを思い出してしまう。


 こういう時は外に出るのがいいか。


 とはいえ何処に行くか。

 ダンジョンに行くのもなんか気分じゃないし。


 買い物でもするか。お金は沢山ある。

 

 この街は中央部分が商業区域となっていてお店がたくさんある。

 回復ゴケ農場を作っている時は余裕があったためダンジョンに入る前に替えの服をかったり、洗濯屋に洗い物を出したりしていた。

 

 いつもは夕方でその後のダンジョンもあるので目的のお店しか行ってなかったが、今日はまだ昼でダンジョンにもいかないから色々見て回れる。



 大通りを歩いていく。

 かなり歩き回ったので疲れてきた。

 見て回っていて楽しかったのは武器屋、防具屋、魔道具屋の3つだ。


 発見もあった武器や防具にスキルが付いているものがあるのだ。そういうのは大抵とんでもない値段が付いている。

 大抵は『火魔術』だとか『風魔術』だとか魔術関係の物だった。

 だが中には『怪力』だとか『移動』だとか『不動』だとかなんだかよく分からないけど強そうなのもあった。


 そこで自分の左手の防具に『再生』が付いているのを思い出した。

 今まで気が付かなかったが、左手の防具はトカゲ狩りの時に穴だらけにされたはずなのにもう穴はなくかすかに跡が残る程度だった。


 つまりいつの間にか『再生』スキルにより自動修復されていたのだ。

 この事からすれば適当な装備品に『再生』スキルをつけるだけでボロ儲けだ。


 さらに言うなら魔道具屋で扱っているものには大体スキルが付いていた。

 自分の持っている地図のマーカーについていたのを見つけた時に気づくべきだったがこういった魔道具を壊してスキル石を取ることによって様々なスキルを集めることが出来る。


 そしてそれを防具や武器に付ければ凄い物が出来て大儲けできそうだし自分で使ってもいい。

 魔道具の値段もピンキリだからどんなスキルを狙うかは考える余地があるが。


 なんだ金儲けにも自分の強さ上げにも行き詰っていた感じがしたが、全然大丈夫じゃないか。


 そうして気をよくして周りを見ないで歩いていたせいかいつの間にか路地裏の方に入ってしまっていた。

 薬屋とか小道具屋とかで路地裏の店にも慣れている気がしていたが、この辺はちょっと空気が違う。

 具体的に言うとなんか怖い。

 呼び込みが多い繁華街みたいな雰囲気だ。

 呼び込みは一人もいないけど。


 ちょっと戻ろうかなと思いつつもそこで思い出す。

 そうだ俺はアウトローになったんだった。

 だったらこんなところでビビってないで、むしろこの辺に馴染みの店の一つでも持ってやろうと意気込む。


 少し行くと冒険者ぽい人がいっぱい出入りしている大きな店があった。

 なんだろうと看板を見るとそこには燦然と輝く奴隷商の文字が書かれている。


 これだ。

 これしかない。

 絶対に大盛りにしよう。


 そもそもなぜ異世界に来た時点で奴隷の存在を確認しなかったのかかと。

 なぜ奴隷の存在を今の今まで忘れていたのかと。

 しっかりしろよ俺。


 当然、奴隷なんて人権を無視した残酷な制度はあってはならない絶対の悪だ。

 絶対に許してはいけない悪の制度だ。


 だがしかし今、俺はアウトローだ。

 残念ながらアウトローまで落ちてしまったからにはそんな悪の制度を使ってしまっても仕方ない。

 仕方がない事なんだ。実に残念だ。


 それによくよく考えれば、奴隷という可哀そうな身分まで落ちてしまった人を俺がお金で救い出せるという事でもあるのだ。

 当然、むふふな対価はいただくが。


 いや違うそうじゃない。

 思い出した。俺のチートは誰かを急激に強くすることが出来るチートだった。

 だからこれは俺が強くなれない分、手っ取り早く戦力を補強するための手段なんだ。


 それも俺の秘密を絶対に漏らさない相手、それが奴隷なだけなんだ。

 だから俺は本当は嫌だけど、仕方なく奴隷を持つしかないんだ。

 だけど優しいご主人様である俺は奴隷が望むのであればいつでも解放する心づもりなんだ。

 そんな話絶対にしないけど。そっちの言い訳で行こう。


 そうと決まれば話は早い。

 早く奴隷商に行き、可哀そうな奴隷の少女もしくはお姉さんを助けに行かなくては。


 だがちょっと。ちょっとだけ入りづらいな。

 せめて入り口の冒険者がいないと話は違うんだけどな。

 あ、今がチャンスだけど向こうからやってくる人が。

 いや自分、全然、奴隷とか、興味ないんで、通りかかっただけなんで。はいすぐ向こう側に行きます。


 なんて入るに躊躇してたらかなりの時間がたってしまった。


 ここでうじうじしていてもしょうがない勇気を出していくしかない。

 そう思いやっとの思いで奴隷商の扉を開けて入る。


 中に入ると案外、普通の店だった。

 中に何も陳列されておらず店員がたっているのみだった。 

 もっと鎖でつながれた半裸の女性が一列に並んでいるとかそういうのを想像していたが違った。

 

 「いらっしゃいませ。何かお探しでしょうか?」

 店員の1人が話しかけてくる。


 「奴隷を買いたいのですが。」

 「どのタイプのものをお探しでしょうか?」

  

 タイプ?タイプは何でもいいが処女だ。これだけは外せない処女をくれ。

 俺くらい異世界リテラシーが高いと処女以外の女は駄目だ。

 何故なら病気が怖いからだ。


 処女以外を抱くと異世界の未知の性病にかかって死ぬ。これは必ずだ。

 だから処女を選ぶ。


 処女でも先天的に病気を持っている場合がある?

 そんなわけないだろ処女は鉄壁なんだよ。処女なめんな。

 というわけで処女を頼む。


 「なんかこう経験値がすくないというかなんというか」

 言わせんなよ恥ずかしい。


 「?まあでしたら初心者用のものでも見てみますか?」

 「じゃあそれでお願いします。」

 通じたのか通じてないのか分からないが案内してくれるというのでついて行く。


 建物の中を通って一つの部屋に案内された。

 その中に入るとそこには全裸で紐でつながれた緑色の肌の小柄な人影があった。

 そしてその顔をよく見ると化け物だ。

 顔のつくりを悪く言っているのではない本当に化け物なのだ。


 「このゴブリンなどは初心者の方もよく買っていかれますよ。」


 え、ゴブリン買ってするの?初心者レベル高すぎじゃね?


 「すみませんなんかこう普通の人間はいないでしょうか?」


 「ああ、そういうことですか。ここには人間の奴隷はいないんですよ。」


 なんですと


 「ここは特殊な街ですからね、労働力としての奴隷は必要ないんですよ。唯一必要なそういう事が専門の奴隷は全部、娼館のほうに直接卸されますからね。ここでいう奴隷っていうのは全部、魔物の事を指すんですよ。」


 嘘だろ。夢も希望もありゃしないよ。

 そういう娘はすべて娼館てそれじゃあ、処女様はいないじゃないか。

 あんまりだ。あんまりだ。

 これじゃあ俺の最強の奴隷ハーレム部隊が作れないではないか。


 「それでどうします。先ほど言ったようにゴブリンなんかは弱いですけどクラスアップもしやすいですし、そのクラスアップ先は多種多様です。前衛にもなれますし後衛にもなれます。必要に応じてあらゆる役割をこなせるのはゴブリンだけでしょう。」


 クラスアップってなんだろ進化てきなことかな。


 「それにゴブリンはクラスアップの数も大変多い。最初はもちろん弱いですが最終的にはどんな魔物にだって負けないくらい強くなる。そういうのがゴブリン育成の醍醐味なんですよ。それに育てていけばあのおとぎ話のアグーのようにゴブリンキングになれる可能性もあります。なので初心者は買われる方が多いんです。」


 なんだよアグーて豚かよ。それならオークにしろ。


 興味なくゴブリンを見ていて気付く。


 『剣術』0.3

 『棍棒術』0.3

 『槍術』0.2


 こいつらスキル持ってるよ。


 そしてそこでひらめく。


 こいつらのスキルって、武器に入れたら俺にもこのスキル使えるんじゃね。


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