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絶対異世界無双したいマンが欠陥チート『スキル強奪』をつかまされた時に出来ること全部  作者: 立花 一


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15話 戦いはここからが本番よ

 まずは準備から始める。


 今日の分の回復ゴケは採ってしまっていたがこれから行う事のためにまた少し採らせてもらう。

 大体、素材袋の3分の1くらい採る。


 他の回復ゴケの群生地でも3分の1ずつ採らせてもらって素材袋をいっぱいにしたい。

 他の縄張りだが3分の1くらいは大目に見てもらいたい。


 地図を見ながら効率のいいルートを模索する。


 どちらの群生地もかなり遠く、また行きづらい場所にあるのでなかなかルート選びは難しい。


 ただレベル上げの際にネズミを探してすべての部屋へは一度行っているので、部屋ごとの特性も分かっているし崖になっていて通れないようなこともないだろう。


 かなり時間をかけて移動し素材袋いっぱいになるまで回復ゴケを採取できた。


 次に考えることは新たなコケの群生地を作る場所選びだ。


 当然、人が来ないところがいい。

 最近全く他の冒険者と会っていないのでなんか自分家の庭のような感覚になってきているが、冷静に考えるとここはダンジョンで公共の場だ。

 当然、他の人も入ってくるし他の人も回復ゴケを収集する。

 黄金ルートのような人通りが多い場所に回復ゴケの群生地が新たにできたとしてもみんなに採られてしまう。


 いくら俺が作ったと言い張っても俺の物になるわけでもない。

 まあ、みんなのダンジョンなんだから当然だ。


 なら誰も知らない場所でこっそりやればいい。

 誰も採りに来ない場所なら他の人に採られることもないし採りすぎて怒られることもない。

 まさに俺だけの回復ゴケの群生地と言えるだろう。


 人が来ない候補はいくつかあるが一番はネズミ退治でレベルを上げていた崖の上だ。


 あそこは崖になっていて行き止まりというのと稼ぎにならない魔物しかいないため、わざわざ来る人が少ない。

 問題は10個部屋を経由していかなきゃいけないので遠いことくらいか。

 ただまあ他の候補はもっと遠かったりするので関係ない。


 というわけで2の部屋の崖上に行く。


 ずっとレベル上げをしていたのでここら辺のネズミも大分減ってほとんど見なくなった。

 たまに見るとこちらから襲っている。


 崖下からはほとんどこちらは見えないが用心するに越したことはないので完全に崖下から見れない位置の壁を探す。


 この辺でいいか。

 これより回復ゴケ農場を作る。


 まず取り出したるはさっきとった回復ゴケ。

 回復ゴケが付いている壁ごと削って持ってきている。

 当然、『薬効』スキルは抜いていないそのままの状態だ。

 それを光石の移植の要領で壁に穴をあけてそこに押し込んでいく。


 これで素材一袋分の回復ゴケの壁が出来た。

 

 これで後は回復ゴケが自然に生えてくるようになるまでこれを繰り返す。

 それがダンジョンでの回復ゴケの群生地を作るやり方だと思う。


 だが俺は違う、ここからさらに先がある。

 何故なら俺は『錬金』チート持ちだからだ。


 現在の回復ゴケの容量はこうだ。

 『0.1/0.5』


 つまり0.4分のスキルを詰め込める余地がある。

 その0.4分の隙間に埋め込むスキル石はこれだ、君に決めた。

 『繁殖』0.6


 ネズミ狩りの際に大量に獲得したこの『繁殖』のスキル石を使う。

 回復ゴケの繁殖力を強化する為だ。


 回復ゴケに『繁殖』0.6のスキル石を近づけて入れてみる。

 『繁殖』は0.4分入り、0.2分のスキル石が手もとに残った。


 壁に埋め込んだすべての回復ゴケに対して同じことを繰り返して今日の作業は終了。


 あとは明日、経過を観察してどうするか決めよう。


 回復ゴケの群生地作りはおそらく普通にやったら相当時間が掛かるのだろう。

 ダンジョンに3か所しかないのがその証拠だ。


 それがこの『繁殖』スキルでどうなるのか。

 回復ゴケが増えるのが早くなるのか、それとも全く効果がないのか。


 ともかくすべては明日だな。



 次の日

 ワクワクしながら崖の上に行く。

 増えているのかそれともたくさん増えているのか。楽しみだ。


 うん。分からん。


 昨日、移植した場所には回復ゴケが残っている。

 スキルも『薬効』0.1と『繁殖』0.4が付いているので間違いはない。


 ただ残っている回復ゴケが植えた面積より増えたのか?密度が増えたのか?減ったのか。

 それがちっともわからなかった。


 よく考えれば、何にも目印になるようなものを付けていなかったんだから分かるはずないか。

 なんか簡単に増える事しか想定してなかったから細かいことは全然考えてなかった。

 

 本日、採取してきた分の回復ゴケを移植していく。

 素材袋一袋分で昨日と同じように3か所から均等に持ってきたものだ。


 昨日の場所とは少し離れた場所に植えていく。


 今回は、回復ゴケと回復ゴケとの間に少し隙間を作っていく。


 この隙間は均等にしたいのでなにか目安になるものが欲しい。

 定規みたいなのがあればいいのだがないのでそこに落ちていた適当な大きさの石にする。

 この石の端から端までを1として上下左右にこの1の隙間を開けて回復ゴケを植えていく。


 これで新しいエリアは完成。


 あとは昨日のエリアと今日のエリアの今の大きさを記録しておくために目印をつけていく。

 まずは壁を少し掘って直接線を書いておく。

 横幅と上下が分かるように線を書いた。


 ダンジョンは自動で修復しているらしいのでこの書き込みが消えてもいいようにその線の下に石を置いておく。

 上下の目印は思いつかなかった。

 棒でもあれば刺しておくんだが。


 これで作業は終了かな。

 あと呼び方が面倒くさいから昨日の分をA面、今日の分をB面とすることにした。



 次の日

 回復ゴケの様子を見に行く。

 A面、B面共に回復ゴケの範囲は減っていた。

 

 壁に書いた目印は大分薄くなっていたがまだ見れた。

 それによれば範囲はあまり変わっていなかったが密度はかなり減っている。


 それはB面にある回復ゴケの隙間から分かったことだ。

 昨日の基準石で測ると明らかに隙間の間隔が広い。

 回復ゴケの大きさはまちまちなので測っていなかったが隙間は等間隔なので間違いない。


 どこまで減っていくのか分からないが、このままでは遠からず全部なくなってしまう気がする。

 これはもしかしたら徐々に壁に飲み込まれているのかもしれない。


 なんだろうか『繁殖』を入れるのはいいアイデアだと思ったのだが意味なかったのだろうか。

 それとも最近『錬金』スキルなんて馬鹿にしてたから『スキル強奪』が拗ねてしまったのだろうか。


 とりあえず一袋分回復ゴケは持ってきているのでこれをどうするか考える。  


 まず一つは1面に集中的に植えて減っているであろう箇所を補強していく補強作戦。

 二つ目は新たな場所にもう一面作ってそこで新たな試みをしてみる作戦。


 まだ3日目だし折角だから新しいことをしてみよう。


 昨日と同じように少し離れたところに回復ゴケを等間隔で埋めていく。

 そして次に水袋に入れていた水に大量に在庫がある『繁殖』のスキル石を入れて、『繁殖』1.1スキル入りの繁殖水を作る。


 そして今日作ったC面にそれをかけていく。

 繁殖×繁殖で無限繁殖作戦だ。


 とりあえず今日のところは帰る。


 帰る途中で湧水を補給したがそこで新しい発見があった。

 湧水のスキル容量は『0.0/1.4』で普通の井戸水よりも高い。

 明日の繁殖水はこっちで作ろうそう思い湧水ポイントを後にする。



 次の日

 A面、B面、C面を確認する。


 C面の隙間を確認する。

 昨日より隙間は開いている。

 開いているが昨日のB面よりはその量が少ない。気がする。


 定規がないから正確に測れないので明確に違いが分からないのが痛い。


 とりあえず感覚的には繁殖水使った方が良さそうなので続けていこう。


 そうなると後は他のアプローチ方法を思いつかないので今日、採ってきた分の回復ゴケはA面の補強に使う。

 後は実験用の新しい面を作らずにA面B面C面を補強しつつ繁殖水かけつつで様子を見るしかないな。


 やれることはやったので後はチート頼み。

 頼むぜ『スキル強奪』、『錬金』チートなんて言ったのはあやまるから。

 俺にはお前しかいないんだからな頼んだぜ相棒。



 それから1週間後、回復ゴケ農場計画を初めて11日目


 今、崖の上の回復ゴケ農場を見ている。

 そこには一面、緑色に苔むした壁がある。

 他の回復ゴケの群生地に比べて面積はかなり小さいがそれでも1人で使うには十分な大きさだ。

 完璧だった。完璧に計画通り回復ゴケ農場を作り切ったのだ。


 最初はA面、B面、C面ともにコケは減っていたが根気よく補強を続けていた。

 いつから増え始めたのかは分からなかったが増え始めたらすぐだった。

 A面、B面、C面は今やつながっており境目も分からないほどだ。


 とにかく成功したのだ。

 今日はもう移植用の回復ゴケは持ってきていない。


 増え始めたと気づいたときに収穫しようかとも思ったがやめておいた。

 採るなら完成してからだと思ったからだ。

 そして昨日、今日を初収穫の日として朝からワクワクしながらやってきた。

 

 そしてスコップで壁の回復ゴケを採っていく。

 どれぐらいと採ろうか。

 まだ次の日の回復具合を確認していないのであまりとりすぎるのもなんだし。


 とりあえず『薬効』スキル石で500個、つまり回復薬にして50本分の量を収穫した。


 はがれた壁の面積を見る。

 他の群生地の感じだともうちょっととっても回復しそうだが、初回なのでこんなものにしておく。

 後は明日の状況を見ながら決めていこう。


 しかし50本分だ。

 いつもは10本分なので一気に5倍だ。

 しかも農場はこれからも手入れをしていくのでもっと面積は増やしていく予定なので今後はもっともっと作れる。


 これで資金の目途はたった。

 待ってろよ俺の最強装備、待ってろよ俺の無双伝説。


 初収穫の次の日

 起きてから大忙しだ。

 何故なら今日は50杯分もの回復薬を作らなくてはならない。


 まず器が足りない事に気付いた。

 急いで蓋つきの水瓶を買いに行く。

 そこでつい調子に乗って10個も買ってしまったから大変だ。

 一度に背嚢と両手で4個が限界なので3往復もしてしまった。


 そして回復薬作りも大変だった。

 いつもの5倍井戸から水を汲んでいるのだから終わるころにはへとへとになってしまった。


 しかし5個の水瓶が並んだ時になんとも言えない達成感を感じた。


 さあ、薬屋に売りに行こう。


 と思い背嚢に2個、手に1個持った時点で重すぎてこれ以上持てない。

 仕方ない2往復しよう。

 

 薬屋に入り店主のおばあさんに声をかける。

 「すみません。回復薬を売りたいんですが。」

 「はいよ。そこ置きな。」


 手に持った水瓶を下ろし、背嚢の中から二つの水瓶を取り出す。


 「ちょっと待った。もしかしてそれ全部、回復薬かい?」

 少し焦ったようにおばあさんが言う。


 「はい。あと2つほど宿にあります。」

 「あきれた。そんなに作ってもうちじゃ買い取れないよ。」

 

 どうやら買取の上限があったらしい。

 それなら他のところで売るか。


 「それじゃあ他の薬屋は。」

 「他の薬屋も同じだよ。いいかい、これ以上買い取れないって言うのはこの街全体の話だ。下級回復薬なんて使うのは初心者の冒険者だけで需要なんてそんなにないんだよ。どこの薬屋もその需要を分け合って話し合いでお互いに作る本数を決めているんだよ」


 なんだそりゃ談合じゃないか。


 「そもそも下級回復薬は見習い薬師の仕事だ。彼らが生活のため、スキル上げのために作るべきものなんだよ。どこの薬屋も自分たちで抱えている薬師たちの生活や成長を守るために売る分の本数を確保している。だから急にそんなにたくさん持ってこられても買い取ることは出来ない。」


 たしかに回復薬はもうかる。

 今の俺でも1か月あれば300万かせげる。


 「あんたが冒険者で片手間に作っている回復薬の分だけ見習いの仕事を奪っているんだよ。本来ならその10本分だって将来、薬師になりたいって思っているやつの分だったんだ、あんたが回復薬を作ることでそいつの未来を奪ったことになるんだよ。」


 そんなこと言われても・・・。


 「今までは家で作る分の回復薬を買い取ってたけどね、それも1日に10本分が限界だ。それ以上売るっていうなら薬剤ギルドを敵に回すことになるよ。」


 そんなでも。


 「でも余った分なら他の街に売れば。」

 「あんた本当に素人だね。こんな回復ゴケから作った下級回復薬なんてすぐ悪くなっちまうよ。それを防ぐためには大掛かりな魔法で作られた専門の容器が必要だ。だがそれには金がかかる。そんなもんを儲けの少ない下級回復薬なんてものを運ぶのに使ってたらすぐ破産しちまうよ。」


 たしかに劣化保護が掛かっているのはすごく高かった。


 「今持ってきた分は買い取る。明日からは10本ずつしか買い取らない。いいね。」


 そうは行っても今までの努力がこれからの計画が。


 「分かったら返事!」

 「はい。」


 お金を受け取りしぶしぶ薬屋を出ていく。


 これからどうするか。


 まだ最強装備を買うには全然資金が足りない。

 今まで通り、回復薬を10本分売るとしても他に何か稼げるものを探すしか。

 だめだ全然、頭が働かない。

 全然、気分が乗らない。



 まだ時間が早いがいつの間にか冒険者ギルドまで来てしまっていた。


 「ようワタル久しぶりだな。」


 後ろから声をかけられたので振り返る。キースたちだ。


 「久しぶりだな。初心者講習以来、全く会わないんだもんな。もっと会えるかと思ってたよ。」

 「そうだね。」


 キースの後ろから仲間の3人もやってくる。


 「おうワタルじゃん。」

 「お、本当だ。」

 「久しぶり。ワタル君も今帰り?」 


 よく見ると何か大きなものを狩ったらしい、荷物がいっぱいで一部ひきづって持ってきている。


 「いやあ、ようやく2階で狩りが安定するようになってな。初めて大岩ガエルを狩れたよ。」

 「あれはやばかったな。」

 「まじで死ぬかと思った。」

 「やっぱりまだ早かったんだよ。もっと安全にいかないと。」


 楽しそうに今日の狩りの話をしている。

 つらい。


 「ごめん、もう行く。」


 「そうか、また今度会ったときそっちの話も聞かせてくれよ。」

 「じゃあね。」

 「またな。」

 「また今度。」 


 急ぎ足で彼らから離れる。

 今一番見たくなかったかもしれない。

 彼らはもうすでに2階で順調に狩りをしているらしい。

 とても楽しそうだ。


 何より彼らを見た時気づいた。


 『剣術』1.3

 『風魔法』1.0

 『弓術』1.1

 『盾術』1.2


 彼らはそれぞれ1.0以上のスキルを獲得していた。

 

 彼らは初心者講習が終わった短期間でスキルを獲得できたのだ。

 つまり普通にやっていれば何かしらのスキルが付くという事。

 俺にはつかない。

 俺は一生、他のスキルを覚えることなく強くなることもないことが分かってしまった。


 気が付けば宿の自分の部屋にいた。

 ベットに倒れこむ。


 ふいに感情が溢れてくる。


 何が回復ゴケ牧場だ。

 何が錬金術師スタイルだ。

 何がこれからの新しい無双の形だ。

 ただ単に見習い薬師の真似事をしていただけじゃないか。

 

 やっぱり無理じゃないか。

 

 何をやっても自分には何のスキルも身に付かない。

 それなのにあいつらはもうでに次の段階に進んでいる。


 何がチート能力だ。

 何が『スキル強奪』だ。

 欠陥スキルもいいところだ。

 全然役にたたない、役立たずチートだ。


 ちくしょう。ちくしょう。ちくしょう。ちくしょう。


 こんな事なら異世界なんか来るんじゃなかった。

 自分の部屋から出るんじゃなかった。

 帰りたい。

 帰りたい。


 早く部屋に帰りたい。


 この日、初めて僕はダンジョンを休んだ。

いつもお読みいただきありがとうございます。

第2章はこれにて終了です。


この後17時に短い話を1話。

24時に続きの1話を投稿する予定です。

2話掲載ですのでよろしくお願いします。



あと前回も書かせていただきましたが改めて。

評価、ブックマークありがとうございました。

これからも評価、ブックマークしていただけると励みになります。

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