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11話 もう二度と回さないと決めたガチャほど直ぐ回す。

 宿に帰り、自分の部屋に飛び込む。

 叫びだしたくなる衝動を抑えながら今日の事を反省する。


 なぜ短剣を買わなかったのか。

 そもそも装備は全部、レンタルでよかったのではないか。

 所詮はボロ装備なんだからお金をためて新しいいい奴を買うべきではなかったのか。

 大金を持った時に気が大きくなってしまったのではないか。

 いや違う、回復薬から無限にお金が手に入りそうな安心感のせいだ。そのせいで油断があった。

 そもそもなんで短剣もなしにトカゲに挑んだのか。

 明日、回復薬を売ればお金を持って短剣も買えるのに。

 『再生』といういかにもな強スキルのせいだ。これさえなければ。

 トカゲなんていなければ。

 いや黄金ルートなんて人通りが多いところが悪い。


 そこまで来てまたあの時の事を思い出して叫びだしたくなる衝動に駆られる。

 再び、衝動を抑えながら今日の事を考える。


 そんなことを繰り返しているうちに朝が来た。

 

 完全に一睡もしてない。


 とりあえず体を動かす。

 まずは昨日と同じように回復薬作りからだ。

 

 蓋つきの水瓶になみなみと水を汲む。

 そこに『薬効』0.1のスキル石をドバドバ入れていく。

 何回かの微調整の結果、今日も『薬効』0.1のスキル石100個入りの回復薬が出来る。


 朝食を済ませ回復薬を薬屋に持っていく。

 寝不足のせいか太陽があたると瞼の裏がいたい。そして水瓶が重い。


 「すみません回復薬を売りたいんですが。」

 薬屋の店主に水瓶を出す。

 

 「なんだい今日も持ってきたのかい。これまた大量だ。ちょっと待ってな。」


 水瓶を持って奥に下がっていく。

 少しして空の水瓶とお金を持って現れた。


 「今日も150000だ。それでいいね。」


 「はい。」


 昨日と同じ値段で売れた。


 水瓶を置いたら、次は武器だ。

 昨日の戦いを何度も思い返してどうすればよかったか考えた。

 一番簡単なのはもっと長い武器、例えば槍みたいな物で相手の間合いの外から一方的に倒す。

 ただ槍を急に使えるか、もっと言えば動いている生き物に当てて殺す事が出来るのかといえば無理だろう。

 それはいきなりローキックが打てないのと同じように練習した動作しか出来ないからだ。

 だから武器はいつも通りの短剣にする。

 短剣もそれほど振る練習したわけではないがそれでも実戦で一度トカゲを殺している。いわゆるコンバットプルーフというやつだ意味はふわっとしか知らない。


 ただトカゲを倒した戦闘では教官が気をそらしていた。

 そのため簡単に刺す事ができた。今回は教官が居ない事をなんかで埋めないといけない。

 だがそれも考え済みだ。

 我に秘策あり。


 というわけで結局、ギルドの販売店でいつも使っていた短剣を買う。50000ディールなり。

 

 ついでにスライムの素材を1袋分売っていく。査定はすぐに済んでお金が支払われたが1000ディールで食事代にしかならない。でも捨てるのもな。


 昼食をとって次の場所に行く。

 回復薬とかを入れるための容器を買いに行くのだ。


 昨日聞いていた場所を思い出しながら行く。

 薬屋のすぐ近くと聞いていたが案の定迷った。


 ようやく目的の小道具屋を見つけてはいる。

 お店の中には棚が所せましと置いてあり、その中に多種多様な容器が並べられている。


 どれが回復薬の容器か分からない。

 ざっと見て回ったがそれっぽいのがいっぱいあった。大きさも何種類かある。

 分からないので店員さんに聞いてみる。おっとりとしていて可愛い系の女性なので少し声をかけるのに時間が掛かった。5分くらい。


 「すみません回復薬を入れる容器ってどれになりますか?」

 「劣化保護が付いている物ですとこちら、劣化保護が掛かっていない物ですとこちらですね。あとは容器は大体熱に弱いんですけどこちらなんかですと温かいうちに容器に入れても容器が溶けたりしない物ですね。」


 劣化保護タイプの容器を見ると『保存』0.3とあり、他の容器は何もスキルが付いていない。耐熱とかついてないのか。

 

 「劣化保護と普通の物っていくらですか。」

 「劣化保護が5000で普通のが100ですね。」


 天と地じゃないか。

 普通の回復薬の容器に『保存』もついてないし普通でいいや。


 「普通の物を20本ください。」

 「毎度ありがとうございます。」


 2000ディール払って店を出る。

 

 どこかの店を見てみようかと思ったがさすがに眠たすぎる。

 頭も回らなくなってきたし心臓もどきどきして来た。

 もう少し時間を潰したかったがここら辺が限界だ。

 宿屋に帰って寝る。おやすみなさい。



 次の日、ぱっと目覚める。

 すごいスッキリとした目覚めだ。

 かなり喉が渇いているので水を飲む。

 これだけ寝たのはいつ以来だろうかというほど寝たはずだ。

 なんと清々しい朝だ。もう夕方だけど。


 徹夜明けで夕方に寝て次の日の夕方に起きる。

 まるで一日を無駄にしたような日曜にやったら確実に後悔するようなダメダメムーブだが今回はこれでいい。


 全て計画通りだ。

 昨日というか一昨日寝なかったのはダンジョンでのトカゲ事件を思い出して眠れなかったのではない。

 眠らなかったのだ。

 これはすべては活動時間をずらすために行っていた事。

 今日から俺は夜ダンジョンに入って昼間寝る、夜シフトに移行するのだ。


 こちらの世界では照明が現代日本ほど発達していないため夜活動している人はほとんどいない。

 酒場みたいなところだって夜遅くまでやってない。体感で21時くらいには全部の店は閉まっている。

 そうなるとこの辺は完全な無人だ。


 街でさえそうなのだからダンジョンだって当然、人はいない。はず。

 にも関わらずダンジョン内は光石のおかげか昼も夜も同じ明るさなのだ。まあ夜中に入ったことないから分からないけど、昼間も夕方も同じ明るさであることを考えると明確的に明らか。

 だから夜にダンジョンに入ったとしてもデメリットは一切ない。


 これで交通量が多い黄金ルートだってすいすいのすいだ。

 もう二度とあんなことも起きない。いや起こさせない。


 この作戦のヒントは現代日本にあった。

 日本にいたころでさえ長期休みで昼間家にいる頃、昼間散歩などをすると近所の小さい親子連れやジョギングおじさん達にじろじろ見られている気がして鬱陶しかった。

 そんな時に生み出した奇跡の作戦が夜中に散歩するだ。

 これを行うと眠らないと評判の現代日本ですらほとんどの人と出会わないまま散歩が楽しめる、そんな完璧な作戦だ。

 まあ唯一欠点を上げるとするならば見回りのポリスメンと出会うと面倒くさいことくらいだ。


 そんな唯一の欠点もこの異世界ではポリ公どもが居ない事で大解決。

 つまり一部の隙も無い完璧な作戦、名付けて夜は穴場で運動会作戦だ。


 そもそもいままでの朝早くに起きて夜はすぐ寝るというのが間違っているんだ。 

 そもそも有志以来、人間の正常な活動時間帯は深夜だったのだ。

 なぜ楽しいアニメが深夜やっているのか。

 なぜ楽しいバラエティが深夜にやっているのか。

 なぜ楽しいスポーツ中継が深夜にやっているのか。

 なぜ楽しいラジオ番組が深夜にやっているのか。

 なぜ楽しいことはすべて深夜にあるのか。

 答えは簡単、深夜こそ正常な人間が起きているべき時間だからだ。


 対して昼間はどうだ。

 くそくだらない情報番組と通販しかやってないじゃないか。

 つまり昼間は寝る時間なのだ。


 長期休みに気が付くと深夜ずっと起きていて朝になってから寝る、そして起きるのは夕方。

 どんなに直しても長期休みになると気づいたら必ずその生活サイクルに戻る。

 それは体の本能として夜に活動するように出来ているからだ。


 だから、僕たちは夜である。


 というわけでダンジョンには夜入ります。


 今は何時か正確には分からないが早速支度を行う。

 

 外に出るとまだ夕方くらいなのでダンジョンに入るにはまだ時間がある。

 とりあえず朝飯?を食べる。


 そこで気が付いたのだが。

 夜になるとお店はやっていない、つまり昼飯?が食べられないということだ。

 

 そこで朝の店が開く時間になるまでにお腹がすかないように携帯食料を買いに行く。あのボソボソしているやつだ。


 ギルドの販売店で携帯食料を買い溜めする。ちょっと奮発していい値段の干し肉の奴を買ってみた。


 まだ夜には早いどこかで時間を潰そう。

 そう言えば資料室というのがあったと思い出す。


 早速資料室に行く。

 中は資料室とは名ばかりに本はほとんどなく地図がいっぱいあるだけだった。

 どうやら初日に作ったように地図を写しに来る場所らしい。

 

 適当な地図を持ってみて開いてみるとそこには誰かが書いたメモがびっしりと書かれていた。

 回復ゴケの場所、湧水の場所、トカゲがよくいる場所など稼ぐポイントみたいなのをメモしたものだった。なるほどこれが資料というわけね。

 ありがたくその情報をメモしていく。


 黄金ルートの8か所の部屋にトカゲのメモはなかった。

 トカゲとの遭遇率は低いからレアモンスターなのかと思ったが単純に出現場所から外れていたらしい。


 トカゲのメモを書き写していると職員から声をかけられる。


 「もうそろそろここも閉めるから早く地図をしまって出な。」


 もう冒険者ギルド自体が閉店らしい。


 外にでると辺りは真っ暗だった。


 もう夜だ。


 つまり俺たちの時間だ。


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― 新着の感想 ―
[良い点] その生活サイクルは完全に私だ。
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