表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/16

携帯研究所

火炎球(ビットフレイム)!」


 その言葉と共に放たれた火の球は、先程の雷球と比べると、思いの他小さかった。しかし、そのまま数メートル先の岩に接触した瞬間、轟音と共に膨れあがり、岩をドロドロの熔岩へと変えた。


冷凍球アイシクル!」


 そう唱えると、凍てつく様な冷気の塊が現れ、熔岩を飲み込み周囲を雪原へと変える。


「……身体強化フィジカルブースト


 そう呟いた慎太郎は、おもむろに足下の石を拾い上げる。そして軽く力を込めると、石はまるで焼き菓子の様に粉々に砕け、彼の手の平から溢れて行った。


『……ファッキン。なんつー干渉力だ。マスター、俺のデータベースに誤情報を入力したのか?』


「いや、違う……。単純に俺にも想定外なだけだ……」


 そう言った慎太郎は、空を見上げてため息をいた。

 周囲には焼け焦げ、凍てつき、ズタズタにされた採石場の様な景色が広がっている。


 先程のオークとの戦闘後、結晶化したアストラル体を回収した二人は、ひらけた岩場を見つけて魔術の実験を行なっていたのだ。

 先程から使っていたのは、彼がこの世界に持って来た魔術道具マジックアイテムの中でも最弱の干渉力を持つはずの‘‘新人の指輪(リングオブルーキー)’’。この指輪に込められた魔術は、どれもさしたる破壊力など秘めてはいない。牽制や補助を主目的とした魔術道具マジックアイテムだからだ。

 しかし、オークを一瞬で消し去った雷撃球エレクトリックを始め、実際に行使した魔術は想定を遥かに超えた性能を示していた。

 流石に最大の干渉力を持つ筈の‘‘魔術師(ロッド)(オブ)ソーサラー’’には遠く及ばないが、それでも本来の性能とは懸け離れていた。


「……まさか……やはり……」


 先程の考えが頭をよぎる。

 自らの知識には無い結晶化したアストラル体。そして、簡易ではあるが先程行った魔術実験での桁外れの結果。

 それらを加味して考えれば、()()である可能性は極めて高かった。


『どうしたんだよマスター。とりあえず実験は終わったんだろ?次はどうするんだ?』


 そうプロメテウスに話しかけられ、慎太郎は思考を止めた。

 現状では、これ以上の考察には意味が無い。手にした情報では、仮説しか立てる事は出来ず、そして立てた所でなんら役に立つ事も無い。

 

「そうだな……取り敢えず、魔術道具マジックアイテムの調整をする。このままじゃ出力が高すぎて使い物にならないからな」


 そうプロメテウスに告げると、慎太郎は首に付けた魔術道具マジックアイテムを起動させる。

 ‘‘携帯研究所モバイルラボラトリー’’と名付けられたこの魔術道具マジックアイテムは、文字通り携帯可能な研究所である。

 内部には様々な魔法陣マジックサーキットが施されており、素材さえあればかなりの魔術道具マジックアイテムの製造、調整が可能となる。

 今回の場合、素材は無い訳だが、もとと成る魔術道具マジックアイテムは手元にあり、調整程度なら容易く出来るだろう。


ーしかしー


「……」『……』


 慎太郎達の目の前に現れた研究所は、明らかに縮尺が異常だった。ドアの高さは4メートル近くあり、ドアノブも両手で掴まなければならない程。巨人が使うならば丁度良いのかも知れないが、平均的な厨二男子たる慎太郎には不便極まりない。


「……先ずは携帯研究所こいつの調整からか……」


 そう呟いて深いため息を吐くと、慎太郎はプロメテウスを引き連れて中へと入って行った。




ーーーーーー




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ