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トモガレ・ナギサの異世界転生! ~望め、全てのチートはそこにある!~

作者: 丹幡うみの

 トラックだ。


 もうこれ以上は何も言わなくてもわかるだろう。そういうことだ。


 目を開ければそこには真っ白な空間が広がっていた。床は大理石に見まごうまがりの光沢を放ち、奥行も高さも無限に広がる白い空間。


 いつか来ると思っていた。

 毎日は理不尽な暴力に侵食され、自室に籠もる怠惰な日々を送っていた。いつとも果てぬ時間の中。画面に向かう無為の日々。だからだ。

 こんな日が、いつかは来ると思っていた。


 ガッツポーズを思わず取る。ぐっと力が入った腕は、生前の物よりしっかりとしていてる。身体も重くない。体重もマシなものにシフトチェンジされたのだろう。

 不衛生だった服も、いつのまにか白い布で出来たトーガのようなものになっている。清潔感が溢れるその服装は、神聖さすら感じられる。


「さて、時間はあまりないな」


 こんなとこに飛ばされて、かつ意識があるのだ。これはお決まりの展開だろう。

 そう、みじめな世界とはおさらばというやつだ。


 そして多くの確率で自分というものに付加価値がつけられるはずだ。異常とも言えるほどの能力。誰にもまけない異能。


 ともあれ、よくあるタイプでは、どんなものが欲しいかの選択を迫られ、自分で決めることもある。

 こんなこともあろうかと毎日妄想していたかいがあったというものだ。どんな能力が欲しいかはすでに決めてある。


『――――ようこそ。トモガレ・ナギサ』


 来た!

 多重に聞こえる女性の声。これぞ天の声というやつだ。

 振り返ると、両目を閉じた美しい女性が宙に浮いていた。その腰から生えるのは純白の羽毛持つ翼。神聖な波動をあたりに振り撒きながら、輝いている。


 にやけるな。テンプレだと転生後も管理者がついて来る場合がある。第一印象は重要だ。


「あなたは、女神さまかな?」


『そのとおりです、トモガレ。すでにわかっていると思いますが、貴方はもといた世界での生を全うしました』


 女神が両手を広げる。


『しかし、あなたという存在を失うのは惜しい。よって、異世界に転生させたいと思うのです』



 よっし! 異世界確定イイイイイ!!

 頭脳がフル回転する。ここからが本番だ。できる限り最強で、できる限りハーレムな能力をもらう!


『異世界に転生するにあたって、能力を――』


「おう! それはもう決めているぜ。まず必要なのは防御力。何者も俺にダメージを与えられない。通常時でも防御フィールドが張られるタイプで、オンオフが自在の奴な。俺がダメージを受けた時点でダメージを受けた時点まで遡及し、その事象自体をなかったことにしてしまう機能付きで。次に攻撃の能力だが、相手から受けたスキルは全て取得。見たスキルも全て取得だ。ついでに想像したスキルを現実になるように組み合わせて合成するスキルが欲しい。ある程度スキルがいきすぎたら別次元に飽和した力を保管していつでも取り出せるようにする機能もつけてくれ。インフレで死亡とかよくあるからな。最後に回復能力だ。HPMPも思い通りに回復。他人の負傷も癒せるようにな。ん~、あとは騎乗系かね。モンスターをテイムして乗ったりする能力も頼む。テイムした時点で乗りこなす技能も自動修得な」


 ふう。こんなものか。なんだか言い足りない気もするが、まあよしとしよう。

 お金の自動複製や増殖なんかも考えたが、これだけ能力があればいくらでも稼げる。


 女神さまが閉じた目の向こうで俺を眺めた。小首をかしげる。


『……その能力でよろしいのですね?』


「もちろんだ!!」


『では……。総合能力名【全テ円環ノ理アー・サール・ノグト・エグィエ】を貸与します。ご武運を』


 女神の声と共に、頭上から一枚のカードが降りて来る。きらきらと光を振りまきながらゆっくりと。

 俺は表情が緩むのを感じた。これからが楽しくなるぜ。


 この不思議空間の効果なのか、カードに書かれている能力名も、その効果も理解できるようになっていた。あれを取れば俺は無敵だ。さて、異世界へのゲートはどこかな。


「あ、女神さま、俺って赤ちゃんから? それともこの姿のまま……って、誰だお前」


「え、あ、ひぇ」


 振り向いた先に女神さまはいなかった。そこに居たのはさえない顔をした男。

 頭の上には能力名が書かれたカードが張り付けられている。【臭い袋(アンポプリ)】。ひどく臭い匂いを全身から発する。


 くっ、コイツ馬鹿じゃねえの。いきなり現れたからちょっとビビったけど、何このクソ能力。

 自分で選んだの? それともこれしかなかったの。いずれにしろご愁傷さまだね。


「……お前、何見てんだよ」


 さえない男の視線は、俺を通り過ぎて背後へと流れている。嫌な予感がして振り向いた。


「なんだこりゃ……」


 見渡す限り、デブかったりモサかったりする男が、いたるところに出現していた。

 その頭の上には全員漏れなくスキルカードが。


 どいつもこいつもダサいスキルしかない。鼻からオレンジジュースが出る能力なんて、どこで使うんだよ。呆れと同情の視線を、なんとか押し隠すと、俺は空を向かって叫んだ。


「女神さま! もういいだろ! そろそろ送ってくれよ!! 新天地へさ!!」


『わかりました。それでは始めましょう。ルールはさきほどの通り――』











『ここでぶちたおした人の能力が、あなたの能力です。ご武運を』

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[一言]  丹幡うみの様  初めまして、中村尚裕と申します。  Twitterからやって参りました。よろしくお願いいたします。  さて、辛抱たまらん素直な感想。  ――座布団一枚!  大いに笑…
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