新学期(すみれ視点)
朝起きて、カレンダーで日付けを確認すると入学式から1週間も経っている。
何はともあれ、今日は記念すべき初登校だ。
リビングでは、母が朝からお酒を飲んでいる。
去年のクリスマスに父が不倫をしていたことを近所のママ友から聞いてしまったらしい。
私が私立聖女子学院に合格すれば少しは元気になるかと思ったがいっこうに乱れた生活のままだ。
それどころか今朝はお酒の量が増えていた気がする。
朝食は食パンを食べ、お昼用に菓子パンをカバンに入れる。
そして、きっちりとブレザーの第1ボタンを留め、まだ慣れないネクタイも頑張って結び、スカートも膝丈で調節する。
「よしっ!」
新しい制服を着るとやっぱりテンションは上がる。
「行ってきます。」
やはり、母から返事はなかったがもう慣れた。
通学路を歩いていると前に女の子の2人組がいる。ネクタイの色から同じ学年だとわかる。
後ろを歩いていると、自然に2人の会話が耳に入ってくる。
「そう言えば、高入生の清水 すみれさん、高校入学式の日に事故にあってからずっと入院しているらしいですよ。」
「まだ学校に来ていないのですか…戻ってきた時に授業についていけるか不安でしょうね…。」
目の前で自分のことが話されているのは不思議な気分だ。
きっとクラスでも話題になっているのだろう。