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第5話 VS七大古竜

「やっちまったよ……。どうすんだよ……」


頭をかかえる俺。

魔王って、こんな簡単に倒していいもんじゃないだろ、絶対。

たぶんこの世界には、打倒魔王を目標に日夜努力している連中がたくさんいただろうに。

あぁ、なんだか申し訳ない気持ちになってくる。


「まぁでも、やっちまったもんは仕方ない……か?」


バトルを吹っかけてきたのは魔王のほうだしな!

それより考えるべきなのは、今後の身のふりかただ。

俺が魔王を倒してしまったことは、公言するべきではないだろう。

勇者として祀り上げられるのもなんか気がひけるし、どんな面倒ごとに巻きこまれるか知れたもんじゃない。

幸い目撃者はいないわけだし、さっさとこの「現場」から離れるとしよう。


――しかし、俺は思い違いをしていた。

目撃者はいたのだ。俺が魔王を倒す一部始終は監視されていた。


「っ!?」


突然、あたりが暗くなった。

急に夜になったわけじゃない。俺の頭上に出現した巨大な物体が、陽の光をさえぎったのだ。


巨大な物体とは、竜だった。


翼の生えた巨大なトカゲ。いわゆる西洋の竜・ドラゴンだ。

それが全部で7体いる。全長は100メートルくらいで、それぞれ体表の色と各部のデザインが微妙に異なっている。

その中でセンターの位置を占めるのは黄金の竜だ。そいつだけは体のサイズもひとまわり大きく、集団のボスであることをうかがわせた。


「えーと、今度はどちらさまでしょうか?」

「人は、我らを七大古竜と呼ぶ」


黄金竜が答えた。ちなみに音声ではなく、頭に直接ひびくような声だった。


「我らは至高の賢者にして万物の監視者である」


ずいぶん大層な肩書だな……。

相手の名乗りがすんだところで、俺はステータスを確認。

最初にそれぞれの竜の名前をチェックする。



■■■■■■■■■■■■■■■■■■


傲慢の黄金竜・アルティルード

嫉妬の白竜・ホーリルード

暴食の黒竜・グラヴィルード

憤怒の赤龍・フレアルード

怠惰の青竜・フロスルード

強欲の緑竜・トルネルード

色欲の紫竜・ヴェノムルード


■■■■■■■■■■■■■■■■■■



次はステータス。まずはボスの黄金竜だ。



■■■■■■■■■■■■■■■■■■


《傲慢の黄金竜・アルティルード》

クラス:七大古竜

レベル:12000

HP:6800000/6800000

MP:15700000/15700000

攻撃:890000

防御:450000

敏捷:540000

魔力:970000

精神:633000


〈武器スキル〉

牙【9】

爪【9】

尾【9】


〈魔法スキル〉

火属性【7】

水属性【7】

風属性【7】

土属性【7】

雷属性【7】

光属性【7】

闇属性【7】

時空【6】

禁忌【3】


〈汎用スキル〉

HP自動回復【5】

MP自動回復【6】

MP消費軽減【5】

全ダメージ減少【8】

全状態異常無効【9】

多重詠唱【5】

魔法射程強化【8】

魔法範囲強化【8】

物理ダメージ反射【5】

オート魔法反射【5】

クリティカル率強化【6】

クリティカル威力強化【6】

魔力探知【8】

精神耐性【9】

飛行【9】

重力遮断【9】

威圧【9】

不老不死【9】

千里眼【9】


〈固有スキル〉

『アルティ・バーストブレス』

HPを消費して放つ特殊攻撃。回避不能・防御力無視のブレスを吐き、消費HP×2の固定ダメージを与える。


『黄金竜鱗』

10000以下のダメージを無効化する。


■■■■■■■■■■■■■■■■■■



……なるほど、魔王より強いな。

以上、感想終わり。

残りの6体は、得意な属性とかが違うだけでおおむね黄金竜の下位互換といったステータスだった。


つか、そもそも七大古竜ってなんだよ? ドラゴン族の最上位とかそんな感じなのか?

と、俺の疑問に対し、すかさず『ミーミルの脳髄』が答えを返してきた。


『七大古竜』

ドラゴン族の最上位種。傲慢の黄金竜・アルティルードを盟主とする七体の竜の総称。人間をはるかに超えた知能と強大な力、そして不老不朽の肉体を持つ。彼らが姿を現すのは、世界のバランスが乱れたときのみといわれる。


……なにやら不穏な一文が。

俺、世界のバランスを乱しちゃったかなぁ……?

直接訊いてみることにする。


「で? 七大古竜が俺になんか用でも?」

「言葉を慎め。この場はすでに審判の場である」


白竜が言った。


「いや、慎めって言われても。つか、審判の場ってなんだよ?」

「監視者たる我らの使命は、世界の調和と均衡を守ること」


と黒竜。


「調和と均衡を乱すものとは、すなわち混沌である」


と赤竜。


「我らは正邪の区別なく、混沌のみを滅する」


と青竜。


「ヒュウガ・マサキ。魔王を討ち果たした汝こそは混沌である」


と緑竜。


「故に、我らは審判を下す。汝が罪に与えられし罰を宣告する」


紫竜が言い、黄金竜がおごそかにつげた。


「滅殺」


残りの6体も復唱する。


「滅殺」「滅殺」「滅殺」「滅殺」「滅殺」「滅殺」


「審判は下った。ヒュウガ・マサキ、最期に発言の機会を与えよう」


黄金竜が俺にうながす。

……いや、発言の機会って、なんでそんなもんいちいち与えられなきゃいけないんだよ。

ムカつく以前に呆れてしまう俺だった。

まあ、話はだいたいわかったが、いちおう確認しておくとしよう。


「えーと、おまえらの言い分はこんな感じか? うっかり魔王を倒しちまっった俺は、世界の調和と均衡を乱す存在だから殺さなくちゃいけない、と」

「然り」


黄金竜が答えた。

そう言われてしまうと、ぶっちゃけ俺自身にも自覚がないわけじゃない。

世界の調和と均衡を乱す存在……まさにそのとおりじゃないかって気がしてくる。


しかし、だからといって素直に殺されてやる気はない。

つか、そもそもこいつらに俺が殺せるのかというと……。


「その、俺が悪かった」


いろいろ考えたあげく、俺は謝ることにした。


「悪かったし反省してるし二度とやらないと誓うから、今回だけは見逃してほしいなぁ、なんて思ったり」

「棄却」


速攻で拒否られた。


「すでに審判は下った。汝の命乞いは無意味である」

「いや違えよ、なに勘違いしてんだよ! おまえらのために言ってんだよ俺は!」


あの程度のステータスとスキルじゃ、俺と戦えば魔王の二の舞確定だ。こいつらはそれを全然わかってない。

自分たちが敗けて死ぬ可能性を少しも考えてないとか、本当に頭がいいのかよ?


「執行!」


黄金竜が一方的に宣言し、ガバッと大きな口を開いた。


「アルティ・バーストブレス!」


シャッ! その口腔から黄金色の閃光が放たれる!

回避不能の固定ダメージをあたえる必殺のブレス攻撃。

一般的な尺度でいえばかなりの脅威といえるだろう。


が、それも『アイギスの盾』の前ではまったくの無力だ。

カキンッ。どこかマヌケな効果音とともに反射されるブレス。

ジュアッ! 微妙に角度がズレた結果、反射したブレスは黄金竜の右脚を吹き飛ばした。



■■■■■■■■■■■■■■■■■■


《傲慢の黄金竜・アルティルード》

HP:3800000/6800000

MP:15700000/15700000


■■■■■■■■■■■■■■■■■■



いまの一撃でHPが300万も減っていた。

計算すると、HP100万を消費してブレス発射+反射したブレスで200万ダメージ=合計300万ダメージといったところか。

他人事だし自業自得とはいえ、わりと目も当てられない結果だ。


「ガァッ……!? ば、馬鹿な……我の攻撃が、反射されたというのか……?」


はい、そのとおりです。これで諦めてくれるといいんだが……。


「なんという危険な存在か……! やはり汝はこの世界から消し去らねばならぬ!」


って、思いっきり逆効果かよ!

これはもう、ストレートに言って聞かせるしかねえ!


「待て待てっ! おまえらにもプライドとかあるだろうから黙ってたけど、これで実力の差ってやつがわかっただろ? だから俺に関わるのはもうやめとけって。はっきり言うけど、これ以上やるとそっちが死ぬことになるぜ」


「我らは死など怖れぬ。故に、命を賭してでも汝を滅する!」


ダメだ、完全に意固地になってやがる!

グバッ! 今度は黄金竜のみならず、7体すべてが口を開きブレス発射態勢に入った。


「見よッ! 我らが畢生の究極奥義をッ!」


7体が吐きだしたブレスが一点に収束し、巨大な球体のエネルギーを形成する。


「アルカンシェル・フルバーストブレス!」


ジュオォォォォォッ! 7色の極太ビームが一直線に俺へと迫る!

7体のドラゴンの合体攻撃。その威力先ほどの『アルティ・バーストブレス』の比ではないだろう。


しかし――

たとえ話だけど、蟻が象に噛みつくのに1匹だろうと7匹だろうと違いがあるだろうか?

断言するが、ない。逆にすりつぶされるのがオチである。


カキンッ。『アイギスの盾』が『アルカンシェル・フルバーストブレス』を反射する。

反射された7色の極太ビームは、7体のドラゴンをまとめて呑みこんだ。


「あ、ありえぬッ! 我らが、我らが滅びるなどォオオオオオオオオオオッ……!」


みずから放ったブレスの奔流の中で、消滅していく黄金竜たち。


「あーあ、言わんこっちゃない……」


ブレスが空の彼方に過ぎ去ったあと、「至高の賢者にして万物の監視者」らしい七大古竜は細胞の一片すら残さず完全消滅していた。

……ええと、今回は俺、悪くないよね?

ちゃんと警告もしたし、こっちから攻撃もしてないし、相手のブレスは回避不能だったし。

いや、俺なら回避不能の攻撃も回避できちゃったかもしれないけどさ。


ピロンッ。



■■■■■■■■■■■■■■■■■■


称号「ドラゴンジェノサイダー」を獲得しました。


■■■■■■■■■■■■■■■■■■



またもや空気を読まないメッセージウィンドウが表示された。

だからうれしくないって……なんの達成感もないぞ。


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