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第4話 VS魔王

「なんだかなぁ……」


巨大クレーターのふちに立って俺はひとりつぶやいた。

チートは望むところだったわけだが、さすがにこれはどうなんだろう。

ステータスを確認した時点でうすうす感づいてはいたが、これじゃあ適度に緊張感のあるバトルとかは望めそうもない。


まあでも、冷静になって考えてみると贅沢すぎる悩みか。

これはゲームじゃなくて現実。死はゲームオーバーではなく、死そのものだ。

その点、俺が戦闘で命を落とす危険性は万に一つもないわけで、これは素直に喜ぶべきだ。


さて、これからどうしようか。

とりあえずこのクレーターからは離れたほうがいい気がする。

どっかの国が調査隊とか派遣してきたら面倒だしな。

で、問題はどこに行ってなにをするかだが。

俺が世界最強クラスなのは確実なわけだし――


「いっそ魔王でも倒しにいくか?」


もちろん冗談のつもりだった。


「ほう、それは互いに好都合だな」


直後、背後から声が響いた。


「っ!?」


反応してふりむく俺。

いつの間にか上空に空間の裂け目(?)ができ、そこからひとりの男がヌゥッと姿を現していた

青白い肌に筋骨隆々の体躯。長く伸ばした白銀の髪をオールバックにしている。

尖った耳と異様に発達した犬歯。俺を睥睨する瞳は深紅色だ。

紫色のマントを身にまとい、右手には大きな鎌をたずさえていた。


「え~っと、すんません、どちらさまでしょうか?」

「見ればわかるだろう。私が魔王だ」


宙にうきながら応える魔王。

自称でないことは、『メタトロンの眼』と『ミーミルの脳髄』が教えてくれた。



■■■■■■■■■■■■■■■■■■


《魔王ネビロス》

クラス:魔王

レベル:6666

HP:2550000/2550000

MP:7000000/7000000

攻撃:526000

防御:212000

敏捷:375000

魔力:666666

精神:235000


〈武器スキル〉

長剣【8】

小剣【8】

体術【8】

鎌【9】


〈魔法スキル〉

火属性【8】

水属性【8】

風属性【8】

土属性【8】

闇属性【9】

時空【5】

禁忌【1】


〈汎用スキル〉

HP自動回復【3】

MP自動回復【5】

MP消費軽減【5】

闇属性強化【9】

全状態異常無効【9】

多重詠唱【4】

魔法射程強化【7】

魔法範囲強化【7】

重力遮断【8】

精神耐性【9】

威圧【8】

不老不死【8】


〈固有スキル〉

『闇の波動』

レベル1000以下の相手から、一定時間ごとにMPを吸収する。


『第三の眼』

開眼時、魔法攻撃力+200%。さらに世界中の魔力反応を探知できる。


■■■■■■■■■■■■■■■■■■



……おいおい、魔王がこのていどのステータスって……マジ?

俺の足元にもおよばないってレベルじゃねーぞ!


……いやでも比較対象が俺だから弱く見えるのであって、人間基準なら「さすが魔王! 強ぇえええッ!」って能力値な気はする。

汎用スキルも充実しているし、固有スキル『闇の波動』はなかなかのエグさだ。

人間族の初期レベルの限界が999なわけで、1000以上というのはかなり高い壁だろう。

まあ、俺のレベルは約10億なんだけどね!


「で、その魔王さんが俺になんの用すか?」

「フッ。知れたこと。私は貴様と戦いにきたのだ」


スゥッとクレーターの底に降りてくる魔王。彼我の距離は10メートルほどだ。


「まさか人間の中に、私以上の魔法の使い手がいるとはな。これほどの威力のメギド・フレアは初めて見たぞ」


クレーターを見渡して言う魔王。

……いや、俺が撃ったのはメギド・フレアじゃなくてファイヤ・ボールなんですけど。


「いやあの、さっきの発言は軽い冗談で……つか、俺と戦うために魔王のほうからやって来るなんて、なんで?」

「フッ。知れたことよ。貴様との戦いを望む理由、それは貴様が私より強いからだ!」

「はいぃ?」


真顔で聞き返す俺。


「私は心底飽いていたのだ。魔王の座に昇りつめてから幾星霜、待てども待てども私を倒しに来る『勇者』は現れない。仕方がないから、強大な魔力を放つ人間を見つけては戦いを挑んできたが、私と勝負になるような者はひとりとしてなかった」


おいおい。某格闘ゲームの主人公じゃあるまいし、「俺より強いやつに会いにいく」をリアルでやらないでくれよな。

魔王がいきなり現れてケンカふっかけてくるとか、悪夢ってレベルじゃねーぞ!

今回は俺だからよかったものの……いや、やっぱりよくねえよ!


「だが! そんなとき、貴様という存在が突如として現れた! 私は歓喜した! そして居ても立ってもいられなくなり、こうして貴様と相まみえるにいたったのだ!」


しかし、むこうは完全にやる気だ。


「さあ、戦いの時だ! 我が名は魔王ネビロス! 魔族の長にして世界にあまねく闇を統べる者なりッ!」


うわ、名乗りとか始めちゃったよ。


「いやあの、何度もいうけど俺はあんたと戦うつもりは――」

「さあっ! 決闘の礼儀だ! 貴様も名乗りをあげるがよい! 」


……ダメだこりゃ。説得してお帰りいただくとかどう考えても無理ゲーくさい。


「えと、俺は日向マサキだけど……」

「マサキか! なんと神妙不可思議なる響き! その名、我が魂に永遠に刻みつけるとしよう!」

ザッと魔王が一歩を踏みだす。


「ぐぅっ……! なんという凄まじいプレッシャーか!」


おそらく俺のスキル『威圧』や『覇気』が自動で発動しているのだろう。魔王は猛烈な逆風に立ちむかっているかのようだった。


「あのー、いまさらなんだけど、やっぱり戦うのはやめたほうが――」

「クククッ……ハハハッ! やはり私の眼に狂いはなかった! 久しく忘れていたこの感覚! 自分より強き者に巡り会えたこの僥倖! 血湧き肉躍るとはまさにこのことだッ!」


笑みをうかべながら一歩ずつ近づいてくる魔王。

やばいよ、このひと根っからのバトルマニアだよ。生粋の戦闘民族だよ。


「いざ――勝負ッ!」


ついに魔王は左手を突きだし、魔法を発動した。


「メギド・フレア!」


魔王が放ったのは火属性最強魔法。

しかしどんな魔法であろうと、俺の固有スキル『アイギスの盾』は反射してしまう。


ゴゥォオオオオオオッ!


直後、爆光につつまれたのは俺ではなく魔王のほうだった。

熱と衝撃波が過ぎ去ったあと、巨大クレーターの中に小規模のクレーターが新たに生まれていた。

「ぐっ……! 私の魔法が反射されるとはな……!」


少なからずボロボロになった魔王の姿があらわになる。



■■■■■■■■■■■■■■■■■■


《魔王ネビロス》

HP:2050000/2550000

MP:6999750/7000000


■■■■■■■■■■■■■■■■■■



ステータスを確認。

いまのメギド・フレアの反射で魔王は50万のダメージをうけたようだ。

50万という数字はとてつもなくでかいと感じるかもしれない。


だが思いだしてほしい、俺のHPは約10兆。

仮に『アイギスの盾』がなくて50万ダメージがそのまま通ったとしても、俺のHPをゼロにするには2000万発が必要という計算になってしまう。

2000でも気が遠くなる数字なのに、2000万である。

……いくらなんでも無理ゲーすぎるだろ。


「やっぱやめたほうがいいって。言っとくけど、俺はどんな魔法でも反射しちまうぜ。たぶん」


俺はふたたび説得にかかるが、


「フッ。魔法がいっさい通じぬか。だがその程度のことで怖気づく私ではないぞッ!」


魔王の戦意はゆるぎない。

ダッと地を蹴るや、今度は大鎌による物理攻撃を仕掛けてくる!

しかし魔王はわかっていない。物理攻撃だって反射されるのだ。


「いやだからやめろって!」


俺は制止しようとして右手を前に差しだした。

トンッ。思いがけず、その手が魔王の振った鎌の先端に接触した。

それが攻撃と「判定」されてしまった結果、


ズァッ! 衝撃波が発生し、大鎌と魔王の右腕を消滅させる。

ドゴゥッ! さらに衝撃波はクレーターの壁面をえぐり、長大なトンネルをつくりだした。

さらに――


「なっ――!? こ、これは……!」


残った魔王の肉体も、光の粒子に分解され消滅していく。



■■■■■■■■■■■■■■■■■■


《魔王ネビロス》

HP:0/2550000

MP:0/7000000


■■■■■■■■■■■■■■■■■■



ステータスを確認すると、魔王のHP(とMP)がゼロになっていた。

あちゃー……。俺が攻撃した結果、固有スキル『アダマスの鎌』の効果が適用されてしまったわけか。


「……そうか。私はここで滅するのか」

「あー、なんつーか、ごめん。まじすまんかった」


目をそらしてとりあえず誤っておく俺。


「……フッ。なにを謝ることがある。正々堂々と勝負して敗れたのだ。私に悔いはない。この世に思い残すこともない」


えぇ~……。魔王さん、なんか満足げに微笑をうかべちゃったりしてるよ。

リアクションに超困るんですけど!


「感謝するぞ、ヒュウガ・マサキ。最期に貴様と立ち合えたこと、僥倖だった――」


サァッ――! 魔王の肉体が完全消滅する。


………………。

…………。

……。


かくして魔王ネビロスは倒され、世界には平和がおとずれたのであった。

一件落着。大団円。そして感動のエンディングへ――

……って、ンなわけあるかいッ!


ピロンッ。



■■■■■■■■■■■■■■■■■■


武器スキル『鎌』を習得しました。


称号「デモンスレイヤー」を獲得しました。


■■■■■■■■■■■■■■■■■■



効果音とともにウィンドウが開き、そんなメッセージが表示された。

……いらねえ。つか空気読めよマジで……。


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