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8話 詳しい説明を聞きましょう

「っと、そういえば自己紹介がまだだったな。俺はウルゴ。Bランクの冒険者だ」


「はじめまして、私はハスナです。でこっちが姉の……」


「リンだよ! おじさんよろしくね」


「おう、元気いっぱいだな嬢ちゃん。子供はそれぐらい元気なのがいいぜ、よろしくな!」


「わぷっ!」


 ウルゴさんがガハハと豪快に笑いながら私たちの頭をなでる。ふわぁ大きな手。男の人に撫でてもらうなんて何時以来だろう。どうしよう……ちょっと気持ちいい……。


「はいはい、セクハラしないの。奥さんに言いつけるわよ」


「ちょっと撫でただけだろーが! お前までそのネタ引っ張ってくるか!」


「え、あの、大丈夫ですよ。その、お父さんになでてもらったみたいで……嬉しかったし……」


 あれ! 私なに言ってるの! つい気持ちよくて変なこと言っちゃったよ。うぅ恥ずかしい。


「お、おう。まさかそっちの嬢ちゃんからそんな反応が出るとは……」


「珍しいね。はーちゃん、いつも初対面の大人には警戒してるのに」


 ほんとなんでだろう? アランさんにもあまり警戒しなかったし、異世界だからって浮かれてるのかな……うー分からない!


「そ、それよりも! さっきはありがとうございました」


 恥ずかしくなって話題転換する。ちょっと強引だったけど、いいよね。あの空気はもう耐えられなかったし!


「おう、気にするな。こうやって初心者のサポートするのも俺の役目だしな」


「サポート?」


「そうなの。こう見えて意外と面倒見いいから、たまに初心者のサポートをしてもらってるの」


「こう見えては余計だ。まぁ、そういうこった。それにアランのやつにも頼まれたしな」


 また、アランさんの名前が出たよ。ほんとに顔が広いねあの人。


「で、嬢ちゃんたちはこれからどうするつもりだ?」


「とりあえず宿屋に行くつもりですが……あ、イメリアさん買取はどうなりました。」


「そういえば、ごたごたして忘れていたわ。ウルフ5匹だから状態も良いし、7銀貨と50銅貨ね」


 イメリアさんからお金を貰いながら首をひねる。銀貨?銅貨? うーんやっぱりこの世界のお金の基準が分からないから、高いか安いか分からないなぁ。


「どうしたの、ハスナちゃん?」


「あぁ、嬢ちゃんたちは色々事情があってお金とかの常識がないんだよ」


「あら、そうだったの……」


 私の変わりにウルゴさんが答える。あれ、何で知ってるんだろう? アランさんから聞いたのかな。


「一応そのあたりも教えてやってくれってアランから頼まれたし、嬢ちゃんたちがよければ教えるが……どうする?」


「あ、お願いします」


「おう、まかせとけ! それじゃあ宿屋に行った後飯食いながら説明するか」


「何から何まですみません」


「子供が遠慮するなって。こういう時はドーンと大人を頼りゃあいいんだよ」


 胸を張りながら言うウルゴさん。おぉ、豪快なひとだなぁ。元の世界でも、こんな人と出会ってたら少しは違ったのかな……。って今考えることじゃないよね。お言葉に甘えてお世話になろう。


「それじゃあ、あらためてよろしくお願いします」


「よろしく、おじさん!」


「じゃあさっそく宿屋に行くか。もう場所は決めてあるのか?」


「アランさんに教えてもらった若葉亭に泊まろうと思うんですが」


「おう、若葉亭か……ってよりにもよってあそこか……。まぁ確かに嬢ちゃんたちにはぴったしだろうが……」


 どうしたんだろ。若葉亭の名前を出したら急に渋い顔をしだした。


「なにか問題が?」


「いや、こっちの問題だからなんでもねぇ」


「ふふ、せいぜい誤解されないようにね。それじゃあハスナちゃんに、リンちゃん。またね」


「はい、イメリアさんもありがとうございました」


「イメリアさん、またねー!」


 さて、それじゃあ宿屋に向かいますか。




「あんた……ついに子供にまで手を出したのかい……」


「ちげーよ! お前は俺を何だと思ってるんだ!」


「若い娘には目がないダメ夫。って思ってたんだけど……まさかそんな子供まで守備範囲だったなんて……」


「おい、変な誤解するな! それにまでっていってるが、今まで一度も手を出したことはないぞ俺は!」


「手をってことはそれ以外は出したのかい……!」


「だぁぁぁもぉぉぉ!」


 なるほど、イメリアさんが言っていた誤解ってこれのことか。奥さんがこの若葉亭をやっていたんだね。それにこの突っ込みは奥さんに鍛えられたんだ。あ、奥さんのほうも楽しそうだ。ウルゴさんのほうは……んー分かってるのかどうか微妙なところだね。


「えっとはじめまして。今日から冒険者になったハスナです」


「リンです、よろしくおばさん!」


「ここの女将をやってるエリンだ。よろしくね二人とも。この馬鹿が迷惑かけなかったかい?」


「馬鹿って俺のことか!?」


「いえ、大丈夫です。むしろ色々助けてもらったので」


「おや、そうかい。こんなのでも役に立つもんだねぇ」


「おい、さっきからびどくねぇか俺の扱い……」


 あ、ウルゴさんがへこんだ。しかしこのおばさん、ウルゴさんよりも豪快な人だなぁ。勢いがすごいよ。


「それで、ここに泊まりたいんですけどいくらになります?」


「泊まりなら、一部屋一泊1銀貨だよ。食事は各自自由で、ここで食べるなら1食30銅貨さ」


 一泊1銀貨かぁ。ウルフのお金が5銀貨と50銅貨だから、5泊までだね。うーむ、何に使うか分からないからとりあえず三日分にしておこうかな


「じゃあとりあえず3泊でお願いします」


「はいよ、それじゃあ3銀貨ね」


 お金をおばさんに手渡す。これで手持ちは2銀貨と50銅貨か……。早めにお金の基準を聞かないと使いづらい。


「よし、んじゃあ飯食うか! 今日は俺のおごりだ」


「いいんですか? ありがとうございます」


「やったー! おじさん太っ腹!」


 ご飯、こっちに来てから始めて食べるご飯だ! どんな料理が出てくるんだろう。うー、今から楽しみだ。


「腕によりをかけて美味しいのを作るから、楽しみに待ってな」


「こんなでも腕はいいから期待していいぞ」


「こんなは余計だよ!」


 ほんと仲良いね。




 ウルゴさんに案内されて席に着く。どうやら一階が食堂のようだ。今はあんまり人がいないみたいだけど、時間的に昼を過ぎてるのかもしれないね。


「よし、じゃあ飯が来るまで色々説明しようか。で、何が聞きたい?」


「んー、私は難しいこと分かんないから……はーちゃん任せた!」


「もう、りんねえったら。えっとそれじゃあまずお金について教えてください」


「よしきた、金は基本この三種類だ」


 ウルゴさんがごそごそとお金を取り出してきた。さっき貰った銅貨と銀貨に……もうひとつは金色の貨幣だった。ということは金貨かな。


「右から銅貨、銀貨、金貨。んで、銀貨は銅貨100枚分で金貨は銀貨100枚分になる。一般的な家庭の収入は月大体金貨1枚だな」


 なるほど、100枚ごとなら分かりやすいね。それに収入の平均が金貨1枚って言うことは、日本円だと大体10万円ぐらいになるのかな。で、そうなると銀貨が千円って所だね。


「ちなみにもう一つ光貨ってのがあって金貨100枚になるんだが、まぁこれは国が使うぐらいで見る機会はほとんどないな」


「なるほど、って国?」


「あー、そっからか。ここはフォークランドって名前の国だ。中央のほうへ行けば城があって国王を筆頭とした王族が住んでいる。ま、機会があったらいってみるといいぜ」


 おーやっぱり王族とかお城があるんだねー。でも行ったら変なことに巻き込まれそうだから怖いなぁ。ま、王族に関わるなんてそうそう無いだろうし、心配しなくてもよさそうだけどね。


「じゃあ次は魔法ってどんなのがあるの?」


「あー魔法か。俺は使えんからそこまで詳しくは内が、属性は火・水・風・土・雷・氷・闇・光・時空の全部で9種類だ。その中でも時空は使えるやつがあんまりいねぇから珍しい。で、魔法の種類は主に攻撃魔法・回復魔法・強化魔法の3つだな。もっと詳しいことを知りたいなら、イメリアにでも聞いてみるといい。あぁ見えてCランクの魔術師だからな」


 イメリアさん魔術師だったんだ……。それに時空魔法は珍しいのか。これは不用意に使わないほうが良いね。


「あとはそうだなぁ、イメリアからランクの説明は受けたと思うが、それぞれ目安があってな。Cランクが中級者でBランクにもなりゃあ一人前だ。Aランクは達人の域に入るからそんなに数はいねぇな。SやSSになってくるともう英雄や伝説級のやつだな。つーことで一般的にはBランクになりゃあ十分すごいって感じだな」


 なるほど……ん? って事は


「じゃあウルゴさんって結構すごいんですか?」


「おう、自分で言うのもなんだがランクに恥じない腕はあるつもりだぜ」


「おぉー、おじさんそんなに強いんだ! 人は見かけによらないね!」


「おめーは一言余計だ!」


「えへへ、ごめんなさーい」


 ウルゴさんとりんねえがきゃっきゃやっていると、いい匂いが漂ってきた。おぉ、これは食欲をそそる。おなかが減っていたから余計にだね。匂いのするほうを見るとエリンさんが大きな皿を持ってやってきた。ってでかい!


「はいよ、おまたせ! 二人は初めてだし歓迎もかねて奮発したよ!」


「おぉ! おいしそう」


「ふわあ、すごい」


「どうだ、すごいだろう。ちょうど話も終わったところだしさっそく食うか!」


「「はい!」」


 この世界に来てはじめて食べた料理は、それはもう言葉では言い表せないくらい……美味しかった。

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