7話 ギルドで絡まれました
「ふわぁ」
「これは……すごい……」
冒険者ギルドに入り目にしたものは、人、人、人。しかもどの人も武器や防具を纏っており、すごい迫力だ。そんな中りんねえと一緒に受付へと歩いていく。んー、でもやっぱり見られてるね、子供は私たちだけだし。うぅ、これはやっぱり冒険者に絡まれるパターンか? ってこんな事考えていたらすぐフラグ回収することになるんだろうなぁ。はぁ気が重い。
「こんにちは、今日はどうしたのかな?」
受付の前まで来ると、受付のお姉さんに離しかけられた。おぉ、すごいきれいな人だ。耳が長いからエルフなのかな。それに胸も大きいし。つい、自分のと見比べる。……悲しくなった。
「ふふ、大丈夫。あなたはこれからだよ」
うっ、考えてたことがばれてる。あーもー恥ずかしい。
「えっと、ありがとうございます。それでその、登録をしにきたのですが」
「あなたたち二人が? 依頼をしにきたわけじゃなくて?」
「依頼じゃなくて登録だよ、冒険者になりに来たの!」
りんねえが胸を張って答えてる。でも疑問に思われてるなぁ。やっぱり子供が登録するのは珍しいのか。よし、ここはアランさんの名前に期待してみようか。
「はい、門であったアランさんに紹介されたのですが……」
「へぇ、アランが……。あぁっとごめんね、あなたたちの子が登録するのは珍しくて」
「あー、やっぱりそうなんですね。それで登録するのは大丈夫ですか」
「ええ、特に年齢制限は無いから大丈夫。でも、あまりに若いこの場合は戦えるかどうかチェックするんだけど……アランからの紹介なら大丈夫そうね。それじゃあ簡単に説明するわね」
「はい、お願いします」
「まず、ギルドにはランクがあって下がFから上はSSまで。だからあなたたちはFランクになるわね。依頼はそれぞれランクに分けられていて、受けられるのは自分のランクのひとつ上まで。で、ランクを上げるにはDランクまでは一定数の依頼を成功させたら上がるんだけど、Cランクからは試験を受けないといけないの」
なるほど、やっぱりランク制なんだね。でも受ける依頼に制限がかかるならなるべく早く上げたほうがよさそうだね。Dランクまでは問題なさそうだけど……Cランクからの試験だどういうものかだね。
「それじゃあギルドカードを作るから名前と種族、あとは職業を教えてくれる?」
「職業って言うのは?」
「職業っていうのは自分お戦うスタイルを大まかに分けたものだね。前衛で戦うなら戦士、魔法を使うなら魔術師、回復を使うなら回復師とかね」
なるほど、色々種類があるんだね。あとさらっと言っていたけど回復とかもあるんだ。
「えっと、私の名前は蓮那、小黒 蓮那。種族は狐族で職業は魔術師です」
「私は凛、相馬 凛だよ! 種族は猫族で職業は戦士かな」
「ハスナちゃんにリンちゃんね……よし、これで大丈夫。はい、これがあなたたちのギルドカードよ。ちなみに無くした場合は再発行できるけどその時はお金がかかるから気を付けてね」
受付のお姉さんから渡されたギルドカードを見る。思ったよりも小さかった。でもこれで私たちも冒険者なんだ。そう思うと無性にうれしくなった。
「おめでとう、これであなたたちも冒険者の仲間入りよ。っとそういえば私の自己紹介がまだだったわね。私の名前はイメリア、ここの受付嬢をやっているの、これからよろしくね」
「はい、よろしくお願いします!」
「お願いします!」
「えっと、アランさんからここで魔物の買取をしてくれるって聞いたんですけど、ここに出して大丈夫ですか?」
「ええ、大丈夫だけど……どこにあるの?」
大丈夫なんだ。よし、それじゃあカウンターの上に出すのをイメージして……尻尾を振る! そうすると、パッとカウンターの上にウルフが出てきた。よしちゃんと成功した。
「え! えっとハスナちゃん、これどうやって出したのかな……?」
「え?」
し、しまった! 何気なく出しちゃったけど、これユニークスキルだった! ど、どうしよう。あの様子じゃあ普通じゃないみたいだし。こ、これはごまかしたほうがいいのかな……。
「おいおい嬢ちゃんよぉ。このウルフ、いったいどっから盗ってきたんだ?」
色々考えを巡らせながらイメリアさんと見詰め合っていると、後ろからにやにやしながらやってきた男が話しかけてきた。
「盗ったってなに! これは私が倒したんだよ!」
「はっ、お前が? うそ言うんじゃねぇよ。おめぇみてーなチンチクリンが倒せるわけねーだろ」
「ちょっとワルターあなたいきなりなに言い出すのよ」
「そうだよ、いきなり変な言いがかり付けないでよおっさん!」
「あーもーキャンキャンうるせぇなぁ。どうせ誰かが倒したやつをくすねてきたんだろうが!」
なにこいつ。いきなりやって来てりんねえを盗人呼ばわりして。すっと頭が冷えるのを感じながら目の前にいる男を睨む。これ以上私のりんねえにひどい事するなら……消し炭にしてやろうか……。自然と尻尾も逆立つ。
「ちょっと……ハスナちゃん……それ……」
驚いた様子でイメリアさんが私を見ながら何か呟いている。あぁでも今はそんなことはどうでもいい。目の前の男だ。
「あーはいはい。おめーさんたちそこまでだ。ギルド内での揉め事はご法度だぞ」
男とにらみ合っていたら不意に私たちを諌める声が聞こえてきた。ちょっと誰よ! この男を消し炭にするのを邪魔するやつは。
「だれだ! ってウルゴ……」
「おいおい、ワルターおめぇなに子供に喧嘩売ってんだ? そんなに喧嘩してぇなら……俺とやるか?」
「ちっ!」
「そっちの嬢ちゃんも落ち着けや。そんな顔で睨んでたら、せっかくの可愛い顔が台無しだぜ」
ふぅ、ついりんねえを馬鹿にされて冷静じゃなくなってたみたいだ。
しかしすごいね。目の前の男がウルゴって人にひと睨みされたらすぐに去って行ったよ。ってか私には笑顔で可愛い顔とか言ってきたんだけど……ナンパ?
「えっと、ナンパですか? 私おじさんはちょっと……」
「ちっげーよ! 何でいきなり初対面の子供ナンパしなくちゃいけねーんだよ! ってか俺は妻子もちだよ!」
おぉ、ノリのいい突込みが返ってきた。一睨みで追い返すぐらいだからどんな人かと思ったけど、面白い人だね。
「妻子もちなら余計に……。それに浮気はダメですよ?」
「だからちげーって言ってんだろ! ってか口元がちょっと笑ってやがる!
あーもーさっきまでの威圧感はなんだったんだよ嬢ちゃんよ……」
あ、からかってるのに気付かれた。
「あはは、おじさん面白いね!」
「ごめんなさい、ついノリのいい突込みが来たのでつい頑張らないといけない気がして。あと威圧感ってなんです?」
「そんなことがんばるんじゃねえよ……。というか嬢ちゃん無意識かい」
「みたいです。ついりんねえのこと馬鹿にされて頭に血が上ってたみたいで」
「はーちゃん、私のために……!」
「わぷっ!」
りんねえが抱きついてきた。あぁ、やっぱりりんねえはいい匂いがする。
あ、イメリアさんとウルゴさんが驚いてる。ってあぁ! 今度は微笑ましそうに私たちを見てる。うーりんねえに抱きつかれるのは嬉しいけど、人の目があると恥ずかしい。
「りんねえ、そろそろ……」
「だめーもうちょっとー」
今度は顔をスリスリしてきた。離れてもらおうと思ったのに、さらに悪化したよ。
「仲いいわねぇあなたたち」
「いいじゃねぇか」
「え、ウルゴさんも抱きつかれたいんですか?」
「だからちげーって! いつまでそのネタ引っ張るんだよ!」
うん、やっぱりいいねその突っ込み。