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4話 狼が現れました

「やりすぎちゃった……ってレベルじゃないよね……」


「さすがはーちゃん……って言いたい所だけど、これにはビックリだよ……」


 なんとか我にかえった私たち。火事にこそならなかったけど、火の玉が落ちた周辺が焦土とかしている。ほんともうどうしてこうなった。魔法が使えたことは嬉しいけど、さすがにちょっと威力が高すぎやしませんかね? やっぱりノリノリでやったあの詠唱が原因なんだろうか……。他にもいくつか考えられるけど、さすがにこれを見た後だと試すのが怖いね。


「ま、まぁこれで私もはーちゃんも一先ず戦うすべがあるって分かったね。あ、でもこっちには撃たないでね?」


「いや、やらないよ! もう一度試す勇気はないから、いざという時まで封印しておくことにする。それまではりんねえ頼りになっちゃうけど……」


「大丈夫! なにがあってもはーちゃんには指一本触れさせないよ!」


 りんねえが男前だ。惚れそう。

 っていやいやいや、そうじゃなくて。一先ずお互い戦うすべを得られたのは朗報だね。あとは無事に出られたらいいんだけど……なんか魔物とか居そうな雰囲気なんだよねこの森。あ、やばい、これフラグかな?


「とりあえず、ずっとここにいてもしょうがないから森の出口探そう。さすがにここで夜を過ごすのは怖いからね」


「だねー、よし! じゃあ出発進行!」


 りんねえが元気よくかけ声を上げ、私たちは森の出口を探して歩き出す。どうか無事に出られますように。




「うぅ、お腹すいた」


 ピンチです。

 しばらく道無き道を歩いたものの、出口どころか道すら見つけられなかった。そしてついに空腹が私たち姉妹に襲いかかった。不思議と体の疲れは思ったほど無いんだけど、空腹の方が……。晩ご飯食べる前だったからなぁ、せめて食べた後だったら。どこかに果物でもなってたらいいんだけど――――


「はーちゃん! みてみて、これリンゴっぽいよ!」


 ――――ってあるの! りんねえタイミングよすぎるよ。あぁでもこれでこの空腹感から抜け出……せ……る……あれ?


「りんねえ、これ色が……」


「大丈夫、形はりんご……だよ?」


 形はリンゴだよって、りんねえから渡されたリンゴは確かに形はリンゴだけど色が……紫色だよ。思いっきり毒がありそうだよ。え、これ食べるの?さすがにこれはヤバいんじゃないかな?


「おぉ、美味しいよこれ、色はヤバいけどすごく甘くて美味しいよ!」


 りんねえ食べちゃったよ、しかも色がヤバいって自覚あったんだ! つい心の中で突っ込む私。


 ……ええい、ままよ! そう思いながらかぶりつく。


「…………おいしい」


 ついそんな言葉が出てしまうぐらい美味しかった。うん、見た目に反してすごく美味しい。なんだろこれ、味はリンゴっぽくないけどすごく瑞々しくて甘みが強い。しかもさっきまでの疲れも無くなっている感じが。あれか、回復アイテム的な物なのか。

 まだまだ木になっていたリンゴもどきをりんねえが取ってきて、二人で食べ合った。うん、やっぱり美味しい。これでこの色がどうにかなれば……っていうのは贅沢かな。

 ふぅ、2つほど食べた所でようやく空腹感が無くなった。


「あー美味しかった」


「だね。りんねえのおかげで助かったよ。でも次はもう少し慎重になろうね。さすがにこの色はヤバいよ。」


「う、ごめん。空腹には勝てなかったんだよ……」




 食後の休憩も十分に取り、さあ探索を再会しようと思った矢先に茂みの奥からガサガサという音がした。何かがいる……? まさか、魔物? フラグ回収早すぎない?

 りんねえも聞こえたようで、じっとその方向を見ている。そのわずかに視線をそらしたタイミングを狙ってか、茂みから何かが飛び出してきた。


「っつ!あぶない!」


 そう言いながら、対応が遅れた私を抱えながら横へと跳んだ。驚きながらも顔を上げるとそこにはグルルッっと唸りながらこちらを睨む一匹の狼がいた。私が知っている狼よりも大きく、目も赤い。

 危なかった、あの一瞬を狙ってくるなんて……。りんねえが咄嗟に抱えてくれなかったらどうなっていたか。しかし、ここに来て初めての魔物だ。鼻をヒクヒクさせているので、もしかしたらさっき食べたリンゴもどきの甘い匂いに誘われたのかもしれない。

 一応私もりんねえも戦う力があることは分かっている。が、そもそもこの世界の基準が分からないから倒せるのかどうか分からない。さすがに木を吹っ飛ばせるぐらいの力が当たり前だとは思いたくないけど……。ここは少し慎重にいかないと、って考えてたらもうりんねえが飛び出したよ。なんかさっきも似たようなことあったよ。


「よくも、よくも私のはーちゃんを狙ったなぁぁぁぁ!」


 そんな嬉しいことを叫びながら、狼へと拳を振るった。あまりの早さに狼も対応出来なかったのか、りんねえの拳は狼の体を捉え吹っ飛ばした。ギャグ漫画かっていうぐらい。

 その後倒れた狼は、ピクリとも動かなくなった。え、一撃? 弱い魔物だったのかな? それともりんねえが強すぎるのか。

 なんかもう、私って考えすぎなのかな。ちょっと自信無くなってきちゃったよ。そう落ち込んでいると、りんねえが狼の首根っこを掴みながらやってきて、誇らしげにそれを掲げた。


「はーちゃん、獲ったよー」


「獲ったよー、じゃないよ……」


 そんなやり取りをしているとふいに声が聞こえてきた。


『ユニークスキルを習得しました』


 え、ユニークスキル? なにそれ?

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