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24話 報告します

 目が覚めると見慣れない天井があった。


「あれ、ここは……」


 しばらく頭が回らずここがどこか分からなかったけど、だんだんと目が覚めここがどこか思い出した。そっか昨日村長さんの家に泊まったんだね。


「おや、お目覚めですかな。もうすぐ朝食の用意も出来ます」


「あ、はい。ありがとうございます」


 村長さんが朝食を用意してくれるみたいだ。まだ寝ていたりんねえを起こし。用意された朝食を食べる。


「そういえば解体の方は……」


「それならもう終わっております」


「え、もう終わったんですか!?」


 百匹近くあったのに……。今日中に終われば良いかなって思ってたけど、まさかもう終わっていたなんて。

 村長さんに連れられて、外に行くと解体された猪が積みあがっていた。


「これは、すごい光景だね……」


「うん、なんていうか……凄いとしか言い様がないね」


 積みあがった猪の横には、解体してくれたであろう男の人たちが血まみれで倒れていた。何も知らない人が見たら大量殺人現場だよ、これ。でも男の人たちはやり切ったぜ! っていうような清清しい笑顔をしていた。


「村の者総出で徹夜して解体したので、朝には間に合いました」


「徹夜って……」


「それだけ村の者が感謝しておるのですよ」


 そう言われると頑張ったかいがあったよ。さっそく解体された猪を順番に仕舞っていく。最後にお肉だけど……みんなが頑張ってくれたから少し置いておこう。


「これは……?」


「よければ皆さんで食べてください。私たちの分は十分ありますし、おすそ分けです」


「討伐だけでなく、お肉まで別けてもらえるとは……。何から何までありがとうございます」


 村長さんが深々と頭を下げてくる。あわわ、どうしよう。


「頭を上げて、おじいちゃん。美味しいものはみんなで食べたほうが美味しいからね! だからおすそ分けなんだよ!」


「ほっほっほ、確かにそうですな」


 胸を張り、笑顔で答えるりんねえ。そしてその笑顔につられて村長さんも笑顔になる。一瞬でこういう雰囲気に変えることが出来るからりんねえは凄いんだよね。


「それじゃあ帰る? イメリアさんも心配してそうだし」


「でも、解体してくれた人にお礼言えてないんだよね……」


「こちらのことは気にしないで下れ。解体した者には私から伝えておきます。そして、みんなで美味しく、ですな」


「うん!」


 村長さんの返事にりんねえが笑顔になる。さて、それじゃあ村長さんのお言葉にあまえて出発しようかな。


「それじゃあ、私たちは戻ります。ご飯、ご馳走様でした」


「またねーおじいちゃん!」


「ほっほ、またいつでも来て下され」


 村長さんに別れをいい、手を振りながら村を出発する。


「いい村だったねー」


「うん、また来ようね」


 色々危ない目にもあったけど、いい経験になったよ。美味しそうなお肉も手に入ったし。それじゃあ、イメリアさんに心配かけないよう早く帰ろうかな。




「二人とも大丈夫!?」


 ギルドに入るや否や、イメリアさんが受付から飛び出してきた。あちゃー、やっぱり心配かけちゃってたみたいだね。


「イメリアさん、大丈夫だから、大丈夫だから落ち着いてぇぇ!」


 イメリアさんに肩をつかまれ、ゆっさゆっさと揺らされているりんねえ。ここまで取り乱すイメリアさんも珍しい。


「イメリアさん、私たちは大丈夫ですから、揺らすのを止めてあげてください」


「え、あ! ご、ごめんなさい。 昨日帰ってこなかったから何かあったんじゃないかと思ってつい、ね」


「ご心配をおかけしました。色々と予想外のことがあったので……」


「また何かやらかしたのか嬢ちゃんたち」


 いつの間にかやって来たウルゴさんに、失礼なことを言われる。またやらかすとか、私たちが問題児みたいじゃない。でも完全に否定できないのが悔しい。


「別に私たちからやってるわけじゃないですよ……」


「それはそうなんだろうが、なぁ?」


「えっと、それじゃあまた奥の部屋の方が良いかな?」


「はい、お願いします……」


 ウルゴさんに言われた手前ここで! って言いたかったけど、巨大猪を思い出して言いとどまった。くそぅ。


「それじゃあ報告の方お願い」


 いつもの部屋に入り、さっそくイメリアさんに報告する。


「簡単に経緯を説明すると、最初は依頼内容どおり十匹ほどのい猪を倒して、さぁ帰ろうとしたら百匹ほどの猪に囲まれて、それもなんとか倒して今度こそ帰ろうと思ったら、今度は巨大猪が出てきて死に掛けました」


「まってまってまって、色々と意味が分からないわ。なんで十匹の猪討伐が百匹になってるの。巨大猪ってなに!?」


「さすが嬢ちゃんたちだな」


 イメリアさんは混乱している。ウルゴさんはもう何かを悟ったのか、大して驚いていない。


「私たちも分からないんですよ。実際、村の村長からの話では十匹ほどの群れだったって聞いていたので。十匹だったので難なく倒して安心していたら、いつの間にか回りに百匹ほどの猪に囲まれて、次から次へと向かってきて……」


「百匹の群れに囲まれて良く無事だったわね……」


「それはそこまで苦戦しなかったんですけどね」


「そうなの……さすがね」


「まぁ嬢ちゃんたちなら、百匹でも大丈夫だろうな」


 イメリアさんは感心し、ウルゴさんは当然だ、という顔をしていた。思った以上にウルゴさんからの評価が高いね。そういえばりんねえがぼっこぼこにしたんだっけ?


「猪百匹は良かったんですけど、そのあとの巨大猪が……ね。見上げるほど大きくて、不意を衝かれて危なかったです」


「巨大猪か……ジャイアントボアか?」


「巨大猪って言ったらそれしかないわね。でもあれ、滅多に会えないわよ」


 ジャイアントボアって言うんだあれ。一応確認のため、そのまま仕舞ってあった巨大猪を部屋の中に出す。


「これは……でけぇな」


「間違いないわね。それにしてもツインベアに、ゴブリンジェネラル、そしてジャイアントボアって一体どんな運をしているのよ。冒険者のなりたてが戦う相手じゃないわ」


「私たちだって好きで出会ってるわけじゃあないんですよぅ」


 そう、不可抗力だよ。向こうからやってくるんだから、しょうがないんだよ。


「それにしても……」


「ええ、そうね……」


「旨そうな匂いだな」「美味しそうな匂いね」


 ウルゴさんとイメリアさんが口をそろえて同じ感想を言う。そういえば雷でこんがり焼けたままだったね。たしかに美味しそうな匂いだよ。


「この匂い嗅いだら……お腹……すいた……」


 りんねえが匂いにやられた。


「それじゃあ、これは何時も通りこっちで解体して買取でいいのかしら?」


「あ、お肉だけ下さい」


「ハスナちゃんもやられたのね……」


 しょうがないよ。この匂いには誰も勝てないんだよ。


「普通の猪はどうする?」


「そっちは村の人が解体してくれたので、素材だけ買い取ってください」


「お肉は売らないのね」


「食べます」


「おい、どれだけ食う気だ!」


 ウルゴさんが失礼な想像をしている。さすがに猪百匹もいっぺんに食べられないよ!


「いっぺんには食べないですよ。収納術があるのでいつでも食べられます」


「そういやそうだったな……」


「それじゃあまた査定が終わったら報酬を払うわ」


「はい、お願いします。それじゃあ依頼の報告はこれで終わりですね」


「そうね、今回は助かったわ。ほかのパーティだったら確実に全滅していたから」


「たしかになぁ、このレベルの依頼を受けるパーティだとジャイアントボアは無理だろうなぁ」


 イメリアさんとウルゴさんが渋い顔をしている。猪十匹討伐が、百匹プラスジャイアントボアになっちゃったからね。一歩間違ったら死に繋がるし……。依頼内容を鵜呑みにし過ぎるのも危険なんだなぁ。


「ちなみにジャイアントボアってどのぐらいのランクなんですか?」


「そうね……ギリギリCランクってところかしら。勿論ゴブリンジェネラルよりかは弱いわよ」


 それもでCには入るんだね。あの強さなら納得かな。


「それにしても、これで四件目ね……」


「四件目?」


「ええ、依頼内容よりも数が多かったって報告がほかにもあったのよ。そのうち二つは失敗で後から別のパーティが討伐することになったのよ。幸いどちらも命からがら戻ってこれたから良かったんだけど……こう続くとね」


 イメリアさんが少し悔しそうな顔をしながら話をする。ギルドが出した依頼だから責任を感じているんだ……。


「しかし、こうも続くと……やばいな」


「そうなのよね、調査の方はもうさせているからその結果しだいね……。杞憂だったらいいんだけど……」


 内容が良く分からず、首をかしげながらウルゴさんとイメリアさんのやり取りを聞く。やばいってなんだろう?


「あぁ、ハスナちゃんは気にしないで。まだ確証はないからあまり不安にさせたくないの」


 さっきまで難しい顔をして話していたのに、私たちを不安にさせないよう、笑顔に切り替え話してくれる。この切り替えは凄いなぁ。さすがギルドの受付嬢。


「よし! しめっぽい話はこれで終わりだ。嬢ちゃんたちはこの後どうするんだ?」


「お腹がすいたのでご飯にしようかと」


「ご飯。お肉。食べたい」


 さっきまで黙っていたりんねえが急に元気になり、片言で主張してくる。お腹……すいてたんだったね。

 ここでふと思いつく。何時も通りお肉食べるのもいいけど、これだけのお肉が手に入ったんだからみんなを集めて、バーベキューみたいに食べてみるのも良さそうだね。さっそくその考えをりんねえに伝えると、喜んで賛成してくれた。


「ということでバーベキューでもしようかと思います」


「バーベキューって……なんだ?」


 そっか。こっちにはバーベキューって無いんだ。簡単にバーベキューの説明をすると、ウルゴさんも乗り気になった。


「それは面白そうだな! よし、場所は若葉亭の裏に丁度良い場所があるからそこを使えば問題ない。ほかのやつには俺から声をかけておくから、嬢ちゃんたちは準備をたのむ」


「分かりました。頑張って準備をします。イメリアさんもぜひ来てください」


「あら、私も良いの?」


「何時もお世話になっているので」


「ありがとう、ぜひ行かせてもらうわ。そうなるとギルドマスターにも声をかけたほうが良いわね。後から知ったら絶対拗ねるわあの人」


 何で教えてくれなかったの~! っていっているケリーさんがすぐに思い浮かんだ。


「そうなると……やるのは夜のほうがいいな」


「そうですね……準備も少し時間掛かりますし」


 するとりんねえが絶望したような顔でこちらを見つめてくる。あ、りんねえがお腹すいているの忘れてた。


「お昼は軽くにして、晩いっぱい食べよう?」


「うぅ、そうだね。我慢する」


 しぶしぶりんねえも了承してくれた。


「よし、そうと決まれば早速行動だな!」


「はい!」


 あれよあれよという間に決まっちゃったけど、今日の晩が楽しみだ。さぁまずは準備だね、頑張ろう!

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