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22話 村に行ってみましょう

「ん~……」


 目が覚めるとベッドの上でした。

 あれ、なんでベッドに……。確か昨日はギルドの地下で修行してて、ケリーさんが戻った後もそのまま続けていて……うん、その後の記憶が無いね。もしかしなくても魔法の使いすぎで倒れちゃったみたいだね。ここまで魔法使ったことが無かったから分からなかったけど、まさか意識まで失うとは……。


 窓の外を見てみると、もう大分日が高くて昼近くにまでなっていた。隣のベッドではりんねえが気持ちよさそうに寝ているので、りんねえも私と同じだったのかな。


 それにしても、体がだるい。筋肉痛みたいな痛みは無いんだけど、力がでない。魔法使い過ぎるとこうなるんだね……。でもその分収穫はあったからね。ケリーさんのおかげでコツもつかめたし、大分魔法の操作もうまくなった。


「ぅん~、あ……はーちゃん、おはよー」


「おはよう、りんねえ」


 しばらくすると眠そうな顔をこすりながら、りんねえが起きてきた。


「んーっ、よく寝た! そういえばはーちゃんは大丈夫なの? 部屋に戻ってきたらもうベッドで寝ていたけど」


「ちょっと魔法使い過ぎちゃって倒れちゃったみたいなの。多分ケリーさん辺りがここまで運んできてくれたのかな」


「えぇ! それ大丈夫なの!?」


「うん、ちょっと体がだるいけど大丈夫だよ。その分大分うまく魔法が使えるようになったから。りんねえの方はどうだった?」


「こっちもばっちりだよ! ウルゴさんをぼっこぼ……じゃなかった、色々相手してもらったおかげで大分うまく戦えるようになったよ!」


 今ぼっこぼこって言いかけなかった……? まぁいいか、気にしないでおこう。


「よし、目が覚めた! それじゃあ朝ごはんを食べに……ってあれ、もうお昼?」


「うん、もうすぐお昼だよ」


「そっか、それじゃあたまには外で食べない?」


 外か……そういえばあまり外で食べたこと無かったね。


「いいね、行こう」


「じゃあ準備して行こう!」




 準備が終わり、りんねえと一緒に外へ出て、前アランさんに案内してもらった食べ物やさんがある通りへと行く。しばらく歩いていると道端でやっている屋台が見えてきていい匂いが漂ってくる。


「この甘辛い匂いは反則だよ」


 朝食を食べてないせいで、りんねえが割りと限界だった。その甘辛い匂いにつられて屋台のほうへと足を伸ばしてみる。


「お、これは可愛い嬢ちゃん達だね、一本どうだい?」


 屋台のおっちゃんが売っている串焼きを薦めてきた。これは……美味しそうだね。お肉を串に刺し、甘辛いタレをふんだんに塗り込んで炭火で焼いている。タレの香ばしい香りが物凄く食欲をそそるよ。


「じゃあ二本下さい」


「あいよ、熱いから気を付けてな」


 屋台のおっちゃんから串焼きを受け取り、火傷しないようふーふーした後お肉に齧り付く。


「ん~~~っ! おいしーい!」


「はふはふ、うん。美味しいね!」


 前に食べたツインベアには劣るものの、十分美味しかった。ここが店先だということも忘れて夢中で食べる私達。あっという間に食べ終わり、手にたれたタレをぺろりと舐めとる。


「あっはっは、うまそうに食べるなぁ嬢ちゃんたち。そんな顔が見れるなら作りがいもあるってもんだ」


「とーっても美味しかったよ!」


 屋台のおっちゃんにお礼をいい、また歩き出す私達。


「嬢ちゃんたち、うちのも食べてみてくれ!」


 さっきの様子を見られていたのか、他の屋台のおっちゃんから声をかけられた。せっかくなのでよってみよう。


「これがうちの香草包みだ。軽く塩と胡椒で味付けした肉と野菜を香草と一緒に蒸して、それをパンで包んであるんだ」


 手渡された香草包みを見ると、パンの中にお肉と野菜がたっぷり詰まっていた。香草で蒸してあるので香りもいい。


「あむっ」


 パンに齧り付くと香草の香りが広がり、味も塩胡椒で軽く味付けしているので、お肉と野菜の本来の旨みが際立っている。お肉はよく蒸されているおかげかとっても柔らかくなっていて、少し噛むだけでほろほろと崩れるよ。さっきのガツンとした味付けの串焼きとは違い、こっちはさっぱりとしていて食材お味を楽しめる料理になっていた。


「これもおいしーい!」


「私はこの香草の香りが気に入った」


「お、嬢ちゃんは分かってるねー」


 串焼きのおっちゃんと同じように笑顔になっている。たしかに作った料理を美味しそうに食べてもらえると嬉しくなるよね。


「今度はうちのスープはどうだい。野菜たっぷりだよ!」


 こんどはおばちゃんに声を掛けられた。なんでこんなに声をかけられるんだろう? そう思っていたら、最初に食べた串焼きの屋台に行列が出来ていた。


「おや、ばれちまったみたいだね。嬢ちゃんたちがすごく美味しそうに食べるから、他の人が釣られて買いに来るんだよ」


 食べてただけなのに屋台の宣伝になってたんだね。というか、それだけ食べているところを見られていたんだ……。うぅ、ちょっと恥ずかしい。


「うちのスープはサービスするから食べていってくれないかい?」


「……いただきます」


 恥ずかしいけど、さっきパンを食べたせいで水分が欲しくなったんだよ。どうせもう見られてたんだから開き直っちゃえ。


「うちのスープは肉の屑でとった出汁でたっぷりの野菜を煮込んでるよ」


 おぉ、これも美味しそう。飲んでみるとお肉の旨みと野菜の甘みが混ざり合ってほっとする味になっていた。野菜もよく煮込まれているのでとろける様な柔らかさだ。


「はーっ、ほっとするね~」


「うん、体の中からぽかぽかするねー」


「喜んでもらえて何よりだよ」


「とっても美味しかったよ、おばちゃん!」


 スープを食べ終わったところで、お腹も大分いっぱいになった。最初は料理屋に行くつもりだったんだけど……こういうのも楽しくていいね。


「お腹いっぱいだぁ。美味しかったね」


「うん、またこういう風に食べに来ようね」


 りんねえも満足し、次は何を食べようかって話をしながら他の屋台を見て回った。




「イメリアさん、こんにちはー!」


 屋台を見て回った後、のんびりとギルドにやってきた。


「こんにちは。そういえばハスナちゃん、体のほうは大丈夫?」


「起きた時は少し体がだるかったんですけど、ご飯食べてのんびりとしていたら大分調子も戻りました」


「そう、なら良かったわ。昨日倒れたハスナちゃんをギルドマスターが運んできたときはビックリしたわよ」


 やっぱりケリーさんが運んでくれたんだ。それにしても、イメリアさんにも見られているなんて。うぅ、恥ずかしい。


「心配かけてごめんなさい。ちょっと調子に乗って魔法を使いすぎちゃって……」


「なるほどね、まぁ魔術師なら一回は経験することだし、実践でならなくてよかったわ」


「ですね。倒れるときの感覚が分かったので、次は大丈夫です」


「リンちゃんの方は……大分暴れたみたいね。ウルゴが死にそうな顔をして、猫の嬢ちゃんとは二度と戦わねぇ、って呟いていたわよ」


 死にそうな顔って、りんねえいったい何したんだろう……。


「あはは……、ちょっとテンション上がってやりすぎちゃったよ」


 ウルゴさんにそこまで言わせるなんて、ちょっと見てみたかった。


「それで今日はどうしたの?」


「今日は何か依頼がないか見に来たんですけど、なにかお勧めあります?」


「そうね、なら丁度いいのがあるわ。東のほうにある村で猪が出たから退治して欲しいって依頼があったのよ」


「村で猪ですか」


「たしか依頼で他の村に行った事なかったでしょ。二人なら余裕で倒せるだろうし、いい経験になると思うのよ」


 確かに他の村どころか、この街以外に行った事ないんだよね。猪ならすぐ倒せるだろうし、やってみようかな。それに美味しそうだし。


「りんねえ、受けてもいい?」


「私は大丈夫だよー。この街以外に行った事ないから楽しみだよー」


「それじゃあその依頼受けます」


「分かったわ。それじゃあ村の場所は……この辺りね」


 イメリアさんが地図を取り出して依頼の村を教えてくれる。ここからそんなに離れてなさそうだから……歩いて三時間ぐらいかな。


「よーし、それじゃあいってみよー!」


「気を付けてね」


「はい、行ってきます」


 張り切っているりんねえを先頭に街を出て、村がある方向へと歩き出す。




「けっこう歩いたけどあんまり疲れないね。向こうにいたときなら絶対へばってたよ」


「はーちゃん、体力無かったからねー」


 うだうだと無駄話をしながら歩いていると、ようやく目的の村らしきものが見えてきた。


「はーちゃん、村があるよ!」


「うん、依頼の村はあれかな」


 やっと見えてきたので、気持ち早足になる。

 村の前まで来ると男の人が立っていた。


「おや、見かけない子だね。どうしたのかな?」


「こんにちは、ギルドの依頼を受けて来ました」


「依頼というと、猪討伐かな。それじゃあ君達は冒険者なのかい?」


 男の人がギルドの依頼と聞いて、訝しげに聞き返してきた。まぁこんな子供が冒険者だって言ったら怪しまれるよね。


「そうだよ、こう見えてDランクなんだから!」


「Dランク……君達が……」


 りんねえが胸を張って答えると、男の人は驚いた様子で呟いた。


「これはすまなかった。こんな小さな冒険者を見たことが無かったものだからね。それじゃあ村長の所に案内するよ」


 男の人に連れられて村長の家へ向かう。さすがにセルカークの街に比べると小さいけど、思っていたよりかは規模が大きかった。畑仕事や木細工をしている人もいて、それなりに賑わっている。


 村長の家らしき家の前まで来ると、丁度中からおじいさんが出てきた。


「村長、丁度良かった。ギルドから依頼を受けて冒険者がやって来ました」


「おぉ、そうか。冒険者は……後ろのお嬢さん方かな?」


「はい、こう見えてDランクの冒険者みたいです」


「Dランクとな……。それはすごい。ようこそ御出で下さった。ささ、中へどうぞ」


 村長に促され家の中へと入っていく。部屋の真ん中には火鉢が置いてあり、まさに昔の日本の家のような雰囲気でちょっと落ち着く。


「あらためて、私がこの村の村長をやっております。さっそくですが依頼の詳しい説明を」


「はい、お願いします」


 りんねえと一緒におじいさんの前に座り話を聞く。ギルド以外で依頼の話をしたことないからちょっとドキドキするね。


「数日前に村の畑に猪が現れまして、いつもなら村人を集めてすぐに狩るのですが、今回は逃がしてしまい後を追ったのです。すると追いかけた先には猪の群れが居りましてな。数が十頭ほどだったので、さすがに我々だけでは無理だと判断し依頼を出したのです」


 猪十頭は結構多いね。私達なら問題ないけど、普通の人じゃあ無理だろうね。


「それで、その場所は?」


「村にある畑から森のほうへと向かった先に居りました。見つけた以降近づいていないので、今も同じ場所にいるかは分かりませんが……」


「分かりました。それじゃあさっそく行ってみます」


「よろしくお願いします」




 詳しく説明を聞いた後、村長の家を出て説明にあった畑に向かう。


「私が見つけたときはあちらの方角でした」


 最初に発見した男の人が見つけた方角を教えてくれる。よし、それじゃあ猪退治だ。


「行こうかりんねえ」


「うん、がんばろうはーちゃん!」


 さぁ待っていろ牡丹鍋……じゃなかった猪!

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