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19話 ランクが上がりました

「そういえば、一つ伝え忘れてたことがあるわ~」


 すっきりとした表情で話すケリーさん。ウルゴさんは横で倒れてぴくぴくしている。


「今回の件でリンちゃんとハスナちゃんのランクをDまで上げることにしたの~」


「Dって、私立ちまだFですけど……」


「ゴブリンジェネラルを倒せるなら問題ないわ~。むしろそんな子をFのままにするほうが問題よ~」


 そういえば、ジェネラルってCランクのパーティで倒すような魔物だったんだっけ。まぁ、上げてもらえるのなら助かるね。でもそうなると今後の予定をどうしようかな。


「ハスナちゃんどうしたの~?」


「いえ、これからどうしようかな、と思いまして……。予定だと毎日の生活費を稼ぎつつ、ランクを上げていこうと思っていたんですけどジェネラル討伐で思いがけない大金を貰えましたし、ランクもEどころかDまで上がったので」


 そう、当分の目標だったものがこのジェネラル討伐で達成されてしまったんだよね。


「わたしは……ちょっと修行をしたいかな」


「りんねえ?」


「あのとき、おじさんに助けてもらわなかったら多分死んでただろうし、力はあるけどやっぱりまだ使いこなせてないんだよね。だから経験を積みたいな、と思ってる」


 凄く真面目な顔でりんねえが話す。


「たしかに、私もまだまだ魔法を使いこなせていないよね……。最初から思いっきりやってたらりんねえを危険な目にあわせなかったのに、そのあたりの加減も経験不足だよ。でも、でもねりんねえ。一つだけ言わせて」


「なに、はーちゃん?」


「急にそんな真面目なこと言って、熱でもあるの?」


「はーちゃん! それどういうこと!?」


「たしかに猫の嬢ちゃんがそんな真面目なこと言うなんてな……明日は嵐か?」


「おじさんも!? 急に復活したと思ったらそれ!?」


「あらあら、うふふ~」




「いいもん、どうせわたしなんて……」


 いじりすぎてりんねえが拗ねてしまった。拗ねたりんねえも可愛い……じゃなかった。


「ごめんねりんねえ、機嫌直して?」


「ぷいっ」


 話しかけてもこっちを見てくれない。あぁぁぁ、どうしよう。りんねえに嫌われちゃう! こうなったら……。


「今日一緒に寝ても良いから……」


「ほんとに!? じゃあ許してあげる! ふっふ~、はーちゃんの尻尾もふり放題だ~!」


 あっれぇ~? これは早まっちゃったのかな。これは無事に明日を迎えられるのだろうか……。


「あらあら、本当に仲がいいわね~。冗談抜きで私の娘にならない?」


「え、あ、あの、考えておきます」


 いきなり振られて焦ってしまった。でも娘にって言うの本気だったんだ。


「とりあえず話を戻すぞ。嬢ちゃんたちはそれぞれ経験不足だから修行をしたいってことでいいか?」


「そうですね」


「よし、それじゃあ猫の嬢ちゃんは俺が時間の空いているときに見てやろう」


「おじさん、いいの?」


「おう、ジェネラルとの戦いも見てるから、色々アドバイスも出来るだろう」


「じゃあ私はハスナちゃんを見ようかしら~」


「え?」


 意外な提案に驚いてしまう。ケリーさんってギルドマスターだよね。そんなことしてる暇はあるのかな。


「長時間は無理だけどちょっと見るぐらいなら出来るわ~」


「いや、だから心の声を読まないでください」


 また読まれたよ。本当に心を読むスキルとか持っているんじゃないだろうか。


「じゃあ決まりだな。場所はギルドの地下に修練場があるからそこでだな」


 へぇ、そんなところがあるんだ。でも近いのはありがたいね。いちいち外に行くのは面倒だろうし。


「そういえば、魔物とかが載っている本ってありますか?」


「それならここの二階にあるわよ~。他にも魔法についてのもんとかもあるから、役に立つわよ~。見たいときはギルドの受付に言えば大丈夫」


 あるんだ。というかギルド便利だね。依頼受けることしか考えていなかったからそこまで見て無かったよ。


「それにしても、魔物の本だなんて、ハスナちゃんは勉強熱心なのね~」


「魔物の特長とかが事前に分かっていれば戦闘に有利なので、できれば勉強しておきたいんです。それに私は魔術師ですから、どの属性が有利とか効きにくいとかは把握しておきたいです」


「素晴らしいわ~! 最近の子はそういうことしないからね~」


「だな。特にランク上がりたてとかになると自分の腕を過信しすぎるところがあるからな。上位ランクで必要なのは事前の準備だっていうのによ」


 なるほど、私も調子に乗らないよう気をつけないとね。ジェネラルで痛い目をみたし。


「ギルドマスター、そろそろお仕事を……」


 こんこん、というノックの後に男の人の声がした。


「あら、コーネ。入ってきていいわよ~」


 ケリーさんが入るように促すと、眼鏡をかけ、本を持った青年が入ってきた。うわぁ、ものすごく秘書っぽい見た目だね。


「これは、かわいらしいお嬢さん。ご想像の通り私はギルドマスターの秘書をしているコーネリアと申します。以後お見知りおきを」


「だから、なんでここの人はナチュラルに心を読むんですか!」


 もう我慢できずに思いっきりつっこむ。私ってそんなに分かりやすいのかな……。


「りんねえ、私はもうダメだよ……」


「大丈夫だよはーちゃん! それがはーちゃんのいいところだよ!」


 落ち込んでいるとりんねえに褒められた。

 いいところ……なんだ?


「そうよ~、心の中で何を考えているか分からない人よりかはハスナちゃんみたいな素直な子のほうがいいに決まってるわ~」


「あなたが言わないでください。あなたが」


「あらあら~、どういう意味かしら~?」


「ふっ」


「うふふ~」


 不穏な空気になり、りんねえに抱きつく。

 え、なにこの二人怖い。


「おいおい、その辺にしとけ。嬢ちゃんたちが怖がってるぞ」


「おっと、これは失礼しました。怖がらせてしまい申し訳ありません」


 微笑みながら丁寧に謝ってくるコーネリアさん。すごい、一瞬で切り替わったよこの人。


「それで、コーネ。もうそんなに時間がたったのかしら?」


「ええ、これ以上長引くと業務に支障が出てきます」


「ならしょうがないわね。それじゃあ今日はこの辺にしておきましょうか~」


 そういえば、本来はジェネラル討伐の報告だけだったんだよね。そう考えると色々話し込みすぎたね。


「それじゃあ今日は色々とありがとうございました」


「ありがとうございました!」


 ケリーさんにお礼をいい、部屋を出る。一階に降りると冒険者でにぎわっていた。


「さて、今日はこれからどうするんだ?」


 ウルゴさんに聞かれて、どうするか考える。う~ん、昨日ジェネラルを倒したばかりだし、さっきも色々あったから依頼って気分じゃないかなぁ。


「今日はゆっくり休もうかと。それでいい、りんねえ?」


「うん大丈夫だよー。わたしもまだ疲れが抜け切れてないしね。それよりも、そろそろお風呂が恋しくなってきたよ。動くと汗もかいちゃうし……」


「お風呂かぁ。私も入りたいな~。でもあるのかな……?」


「風呂か? あるぞ」


「「あるの!?」」


 ウルゴさんの答えに声をそろえて驚く。周りにいた人がちょっと驚いている。お風呂あるんだ。それは朗報だ!


「若葉亭の近くにみんなで入る風呂屋があるぞ」


「そんな近くにあったなんて……。よし、さっそく今日行こうよはーちゃん!」


「そうだね、今日の夜にでも行こうか!」


 お風呂と聞いてテンションが上がりまくる私達。女の子にとってお風呂は大事なんだよ。


「じゃあ行くときになったら案内するぜ。ついでに一緒に入るか?」


「「なに……言ってるの?」」


「いや、冗談だよ……そんな目で見るな……ちょっとしたお茶目じゃねえかよ……」


 私達の冷ややかな目を受けたじろくウルゴさん。女の子に向かってその発言は、お茶目じゃ許されないと思うな。これはエリンさんに報告だね。


 それにしてもお風呂か……。とっても楽しみだ。

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