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15話 ゴブリンの巣へ向かいます

 イメリアさんに言われた通り一日ゆっくり休み、その次の日朝一にギルドのほうへ向かった。扉を潜った先にはもうすでにイメリアさんとウルゴさん、そして宵の風の人たちが集まっていた。


「「おはようございます」」


「リンちゃん、ハスナちゃんおはよう。それじゃあメンバーもそろったことだし、早速はじめるわね。ゴブリンの巣はハスナちゃんたちが戦った所からさらに奥へといった所にあったそうよ。ただかなり規模が大きいらしくて、昨日は発見できなかったけどゴブリンジェネラルがいるかもしれないの」


 後から聞いた話だけど、どうやら巣に必ずゴブリンジェネラルがいるとは限らないらしい。ただ今回は規模が大きいみたいだから覚悟はしたほうがよさそうだね。


「なるほど、規模が大きいとなると二手に分かれる可能性もあるな。そっちは大丈夫か?」


「えぇ、大丈夫です。一度経験したこともあるので。むしろそちらの方が心配ですが……」


「こっちは俺も付いていくから大丈夫だ」


「二手にってどういうこと?」


「あぁ、規模が大きいと途中で道が分かれたりする場合がある。一ずつ行けばいいと思うかもしれんが、挟み撃ちになる可能性があるから基本二手に分かれて同時攻略になる」


 たしかに、挟み撃ちになると乱戦になって厄介そうだね。


「そういえば、おじさんは今回も付いて来るんだね」


「嬢ちゃんたちなら大丈夫だとは思うが、さすがに事が事だけに、な。よし、それじゃあ行くか」


 ウルゴさんの賭け声とともに宵の風と一緒にゴブリンの巣へと出発する。




「はぁぁぁ!」


 目の前でオルランドさんが戦っている。

 巣へ向かうまでの戦闘は宵の風の人が担当すると言ってくれたのでお言葉に甘えることに。ちょうど他の人の戦い方を見たことが無かったので観察させてもらおう。


 オルランドさんは片手剣と盾で敵をひきつけながら戦う盾戦士だった。ただ、防具は軽装でうまく剣と盾で捌きながら戦っている。


「はっはぁ!」


 調子の良い掛け声とともに敵へ突っ込んでいるのがクーランドさん。ただ使う武器が槍でりんねえと同じなのが残念だ。クーランドさんがりんねえも槍を使うと知って――――


「使う武器が同じなんて、やはり君と出会ったのは運命……」


 ――――とかなんとかほざいていたので、ウルゴさんを静めた一撃と同じものを食らわせておいたよ。りんねえに近づく者には容赦はしない。

 ただ、周りから腕だけは優秀といわれるだけあって、力強さだけでなく、敵の急所へと当てる技術もあった。


「たぁ!」


 キャロさんは弓でうまく前衛二人の援護をし、オルランドさんが裁ききれなかった敵などを倒していた。やはりパーティだけあって、息もぴったり合っているね。


「はっ!」


 そして最後がカリナさん。エルフのイメージどおり魔法を使っている。ウルゴさんの言っていた通り、普段私が放っている一節の威力を二節で出していた。本来なら三節はいると言われていたが、カリナさんは優秀なので二節で放てるみたい。

 戦闘中はこんなに真面目でかっこいいのになんであんなことになったんだろうね。うぅ、思い出しただけで尻尾がぶわっとなったよ。


「お疲れ様です」


「みんな、お疲れ様! もうこのあたりには居ないよ」


 もうすぐ巣だということで一度休憩を取ることに。りんねえの探索術のおかげで何かあったらすぐ対処できるからゆっくり休めるんだよね。


「さすがに巣に近いせいか、敵が多かったですね」


「だなぁ。まぁその分俺の勇姿をリンに見せることが出来たから問題ないぜ!」


「あんたはまだそんなこと言ってるの……」


「あ、あはは……」


 クーランドさんはまだあきらめてないようだった。キャロさんは呆れてるし、りんねえも苦笑いしてるよ。


「よし、それじゃあこの辺で休むか」


 各自それぞれ腰を下ろし休む。


「さりげなく私の横に座らないでください、カリナさん!」


「そんなこと言わないで!」


 カリナさんが捨てられた子犬のような目で私を見つめてくる。いや、ほんとさっきまでのかっこいいカリナさんは何処へ行ったの。


「はぁ、まさかカリナがこんなことになったうなんて……ねぇ」


「キャロ……可愛いはね……正義なのよ!」


「「はぁ……」」


 今度はオルランドさんも一緒に盛大なため息をついていた。


「それにしてもハスナちゃんの強化魔法はすごいねー。ここまで違うとは思わなかったな」


「ですね、私もいつもより体が軽くて捌きやすかったですよ」


 前衛の二人が、私がかけた強化魔法をほめてくれた。どうやら魔法の威力だけでなく、強化魔法の効果も普通とは違うみたい。


「さすが私のはハスナちゃんね、可愛いだけじゃなくてこんなすごいことも出来るなんて!」


「いや、だからカリナのものじゃないって」


 私の変わりにキャロさんがつっこんでくれた。そして私はカリナさんから距離をとる。あ、またカリナさんが悲しそうな顔を……。




「よし、それじゃあそろそろ行くか」


「りょーかい!」


 十分休みを取ったので、あらためてゴブリンの巣へ向かうことに。


「止まって」


 しばらく進むとりんねえねがみんなに止まるよう言ってきた。


「この先に大量のゴブリンがいる。多分巣だね」


「そうか、みんな準備はいいか」


 その声にみんながうなずき、なるべく見つからないようゆっくりと進んでいった。

 進んだ先にはひらけた広場があり、そこには柵や簡単な家などが並んでいた。


「これはすごいな……」


「そうですね、ここまで大きいとは。これならほぼ間違いなくゴブリンジェネラルがいるでしょうね」


 ここから見える範囲にはいないけど、やっぱりいる見たいだね。


「それじゃあまずここを制圧するぞ。ハスナ、広範囲の魔法は使えるか?」


 ウルゴさんに聞かれてちょっと考える。広範囲か……、よし、これでいこう!


「大丈夫です」


「よし、最初はハスナの魔法で敵を撹乱し、その隙に各自撃破だ」


 ほかのみんなもそれにうなずく。それじゃあドカンといこうか。


「吹き荒れる風よ、すべてを切り裂け、風塵」


 詠唱が終わると、広場の中心に大きな竜巻が現れ、ゴブリンや策などを切り刻みながら吹き飛ばしていく。我ながらなかなかの威力だね。と自分を褒めながら横を見ると、宵の風の人たちがぽかんとしていた。あ、あれ……? またやりすぎた、かな。


「驚くのは後にしろ! まずはここを落すぞ」


「よーし、やっと暴れられるよ!」


 ウルゴさんの声で我に返った宵の風が広場へと向かう。りんねえも道中戦闘できなかったので、嬉しそうな顔をしながら突っ込んでいく。


「切り裂け、風刃」


 私も遅れないようゴブリンへ魔法を放つ。やっぱり端のほうが被害が少ないので、そのあたりを中心に攻めていく。


「せいっ、たぁ、もういっちょ!」


 りんねえも軽い身のこなしで次々とゴブリンを倒していく。はじめて戦ったときにちょっと苦戦していたナイトも、難なく倒していたのでこつを掴んだみたいだね。


「せいやぁぁぁ!」


 すごい掛け声が聞こえた方を見てみると、ウルゴさんが大剣で敵を叩き潰していた。うわぁ、ナイトの盾もろとも切っちゃってるよ。あれじゃあ盾の意味が無いね。

 りんねえもその様子を見ていたみたいで、ウルゴさんのまねをして盾の上から切ろうとしている。が失敗した。


「氷よ貫け、氷針」


「あ、ありがとうはーちゃん」


「もう、あんまり無理はしないで」


「はーい」


 りんねえが笑いながら答える。本当にもう、見てるこっちははらはらするよ。


 そうこうしていると、このあたりの敵を倒し終わったみたいで宵の風のみんなが集まってきた。


「とりあえず、このあたりは大体終わったな」


「そうですね、ハスナさんの魔法のおかげでだいぶ数が減っていたので楽でした」


「そうだな、しっかしなんだあの魔法。すごい威力と範囲だな」


「そうそう、はーちゃんはすごいんだよ!」


 りんねえが誇らしげに答える。こういうとき一番食いつきそうなカリナさんは……あれ、真面目な顔をしながらぶつぶつ呟いている。


「たった二節……それであの威力と範囲……私なら……」


「かーりな、戻ってきなさい!」


「え、あぁキャロ。ごめんなさい」


「どうしたの? やっぱりハスナちゃんの魔法がすごかった?」


「そう……ね。とりあえず私には無理よ。あれだとB……いえAランク相当になりそう」


 Aランク! そ、そこまでなのかな。ちょっと驚きながらカリナさんに尋ねてみる。


「カリナさん、私の魔法ってそんなにすごいんですか?」


「そうね、あの威力や範囲はすごいってほどじゃあないんだけど、あれを二節で出せるって言うのがね。普通ならもっといるのよ」


 なるほど、威力や範囲は問題ないけど、それをあの短い詠唱で出してることが問題なんだね。


「だからね、ハスナちゃん。今度私に教えて、そう二人っきりで!」


「お断りします」


 即答するとカリナさんは崩れ落ちた。せっかく真面目なカリナさんだったのに、最後にこうなるかな。


「それじゃあこの先が二手に分かれているから、分かれるぞ。さっきのを見たら、こっちも心配ないって分かっただろう」


「ええ、そうですね。リンさんの動きも素晴らしかったですし、私たちよりも上かもしれませんね」


「それでもゴブリンジェネラルがいると危ないだろうから、気をつけろよ」


「はい、クーランドさんたちも気をつけて」


 そういいながら私たちは宵の風と分かれて進むことに。




 少し進むとまた広場のような所が見えてきた。


「よし、じゃあハスナ、また頼むわ」


「分かりました。吹き荒れる風よ、すべてを切り裂け、風塵」


 先ほどと同じ魔法を放ち、敵の数を減らす。


「ていやぁぁ!」


「そぉら!」


 りんねえとウルゴさんも生き残ったゴブリンを片っ端から蹴散らしていく。

 私も蹴散らそうか、そう思った矢先、すごい悪寒に襲われ動きを止める。え、なに……これ……。

 りんねえとウルゴさんも同じように動きを止めていた。まさか、これは……まさか……。


「ちぃ! こっちが当たりか」


「みんな気をつけて、でっかいのが来るよ!」


 すると、大きな雄たけびともに置くから大きなゴブリンが現れた。


「これが……ゴブリンジェネラ……ル……?」


 そう、それは見上げるほど大きかったけど、見た目は……ただの…………ゴブリンだった……。

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