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12話 はじめての討伐依頼です

「んーっ」


 朝目が覚め、ベッドの上で背伸びをする。窓の外を見るとまだそんなに日が高くないから、今日は寝過ごさずにすんだみたい。

 りんねえも起こし、朝食を食べた後すぐギルドに向かう。今日は討伐に行くとあって、りんねえもすぐ飛び起きた。ギルドに行く間もうきうきしながら尻尾をパタパタ振っていた。


「イメリアさん、おはようございまーす」


「おはようございます、イメリアさん」


 ギルドに入ってさっそくイメリアさんを見つけ、挨拶しに行く。


「おはよう、二人とも。リンちゃんはすごい嬉しそうだけとなにかあったの?」


「にっひっひー。ほら見て、昨日武器屋で買ったの。だから早く試したくて!」


「ほう、猫の嬢ちゃんは槍を買ったのか」


 返事はイメリアさんじゃなく後ろから聞こえてきた。この声はウルゴさん?


「あ、おじさんだ。おっはよー」


「おう、おはようさん。しっかし猫の嬢ちゃんは槍が使えたのか」


「いや、昨日はじめて使ったよ。実践は今日がはじめて!」


 いや、胸を張って答えることじゃないと思う。ほら、ウルゴさんとイメリアさんが驚いてるじゃない。


「り、リンちゃん。さすがに昨日はじめて使った武器で討伐はちょーっとどうかと思うな。おねえさんは。」


「大丈夫、意外とうまく使えたから!」


「まぁ、ツインベアを素手で倒せるぐらいだから問題ないだろうが……どうも猫の嬢ちゃんはあぶなっかしい」


「ウルゴさん! 分かりますか! そうなんです、りんねえったたとにかく人の話を聞かずに突っ走るんです。強さも分からない敵に急に飛び掛っていくし、明らかに毒がありそうな食べ物もすぐ食べちゃうし、とにかく私が色々慎重になって考えてもすべて台無しになるんです!」


 ちょっと興奮しながらウルゴさんに詰め寄る。


「でも、そうやって危なっかしくても大体は良いほうへと向かうんですよね。そう、考えすぎな私をいつも笑顔で引っ張ってくれるんです。だからそんなりんねえが私は大好きなんです!」


「お、おう。そうか」


「は、はーちゃん。私が、私が悪かったから。恥ずかしいからもう止まって!」


 りんねえの素晴らしさを説いた後、冷静になる。あれ、私は何を言った? 周りからの視線がすごい集まっている。あ、あぁ、ああぁぁぁぁぁ! わ、私なんでこんな所であんなこと言ったの! あまりの恥ずかしさに顔が熱くなってくる。


「に、にゃあああぁぁぁぁ!」


 変な叫び声を上げ頭を抱えて蹲る。


「いや、狐の嬢ちゃんがにゃーっていってどうする」


 そんな突っ込みいらないよ!




「えっとハスナちゃん。落ち着いた?」


「はい、大丈夫です。お騒がせしました……」


 しばらくしてようやく顔の熱さも治まり、立ち上がった。


「なんつーか、狐の嬢ちゃんも別の意味で危なっかしいな」


 ウルゴさん、それどういうこと! って言いたい所だけど、さっきの事があった手前なにも言えない。


「そ、そんなことよりも依頼。そう、依頼受けにきたんですイメリアさん!」


「強引に話題を変えたね、ハスナちゃん。それで何を受けたいの?」


 やっぱり強引過ぎたね……。でももうこの話題は恥ずかしいんだよ!


「えっと、討伐依頼を。何かいいのありますか?」


「討伐依頼なら……ゴブリンとかがいいんじゃないかな」


 ゴブリンか。定番のモンスターだね。クマに比べたら弱そうだし問題ないかな。


「じゃあそれでお願いします。りんねえもそれでいい?」


「うんいいよー。私は槍が使えたらなんでもオッケーだよ」


「じゃあゴブリンを10体討伐、お願いね」


「よし、じゃあ俺も一緒について行くがいいか?」


 なんでウルゴさんが? ゴブリンってそんなに強いの?


「どうしておじさんが付いてくるの?」


「あぁ、嬢ちゃんたちの言うことを信じてないわけじゃないが、それでもその年でツインベアを単独撃破するのは異常だからな。一回どんな戦い方をしているか見てみたい。だから基本俺は手出ししないから安心してくれ」


 なるほど、そういうことなんだ。まぁ確かにFランクがCランクのモンスターを倒したって聞いたってなかなか信じられないよね。こっちの世界の基準が分からないし、そういう意味ではウルゴさんに見てもらえるのはちょうど良いね。ウルゴさんなら何かあっても黙っててくれるだろうし。


「分かりました。それじゃあよろしくお願いします」




 ギルドを出て、さあ行こうと思ったらウルゴさんに止められた。


「おい嬢ちゃんたち、なんにも用意しなくていいのか?」


「用意って……この身一つあれば問題ないよ!」


「たくましいねりんねえ」


「たくましいな、おい」


 あ、かぶった。


「まぁ、それはおいといてこの時間からだと昼飯用意しておかないときついぞ」


「おぉ、ご飯! それは大事だね」


 りんねえが食いついた。まぁ確かにご飯は大事だよね。


「うし、それじゃ買いに行くか。その様子だと冒険者用の携帯食料とか買ったことないだろ」


「ないね。ね、ね、どんなのがあるの?」


「あー……あんまり期待すんな。まぁとにかく行くぞ」


 苦虫を潰したような顔で返事をするウルゴさん。あぁ、あんまり良い予感がしないね。とりあえずウルゴさんに連れられて商店街へ行き、昨日はあまり見なかった食料品関係の所へ向かう。へぇ、色々あるんだね。屋台からいい匂いもするよ。


「よし、それじゃあ冒険者用の携帯食料について説明するぞ。基本的に黒パンや干し肉など日持ちがするもの、あとは水だな。味は二の次でとにかく日持ちし腹持ちの良いものを選ぶ」


「えー」


「えー、じゃねえ! ほら見に行くぞ!」


 りんねえが不満そうだ。まぁ私も話を聞いて食べたいと思わなかった。言ってることは分かるんだけどね。

 ここでふと思いつく。狐の収納術で食料をしまったらどうなるんだろう? 入れた状態のままなのか、腐ってしまうのか……。よし、試してみよう。

 あーだこーだいいながら携帯食料を見ているりんねえとウルゴさんから離れ、屋台のほうへ向かう。さっき言いにおいがしていた屋台のスープと、一緒に売っているサンドイッチ見なたいな物を買って見ようかな。


「いらっしゃい嬢ちゃん。このスープが欲しいのかい?」


「はい、良い匂いがして美味しそうだったので。そのスープとサンドイッチを各三人前ずつ下さい」


「お、嬉しいこと言ってくれるねぇ。じゃあスープを少し多めにしておこう。全部で銀貨1枚だな」


「ありがとうございます。じゃあこれで」


 銀貨1枚取り出し、屋台のおじさんに手渡す。


「はいよ、量が多いけど大丈夫かい?」


「はい、大丈夫です」


 おじさんからスープとサンドイッチを貰う。その後念のため人気のない所へいき収納術で仕舞う。さて、あとはこれがさめないかだね。


 仕舞い終わり、りんねえたちの所へ戻ると二人も買い物が終わっていた。


「はーちゃん、どこ行ってたの?」


「うん、ちょっとね。後からのお楽しみ」


「うー、気になるけど……まぁいいか。じゃあ今度こそゴブリン退治に行こう!」


「おー」




「そういえばウルゴさん、ゴブリンってどのぐらい強いんですか?」


 ゴブリンが出る森へ歩きながらウルゴさんに聞いてみる。


「ゴブリンにも色々種類があるな。ただのゴブリンならEランクだがゴブリンナイトやゴブリンマジシャンなんかはDランクだな。あとは滅多に居ないがゴブリンジェネラルはCランク相当になるな。ま、基本的に一番弱いただのゴブリンしか居ないがな」


「色々居るんだねー」


「たまにゴブリンが巣を作ることがあるんだか、そこにはゴブリンジェネラルを筆頭に複数のゴブリンナイトとマジシャンがただのゴブリンを従えているから厄介だな。全部あわせて百匹以上はいるだろうから、複数のCランクパーティでいかんときついな」


「うわぁ、そんなにうじゃうじゃ居たら気落ち悪いよ……」


 百匹以上のゴブリンか。うん、見たくないね。


「よし、この辺で話は終わりだ。そろそろゴブリンが居るはずだ。さっそく譲ちゃんたちの戦いを見せてもらうぜ」


「あいあいさー。んーと、居るね。はーちゃん右前方にゴブリン四匹」


 りんねえの言うとおり右前方にゴブリンが見えた。とりあえず強化魔法をかけて……半々でいこうか。


「――我らに戦の祝福を―― よし、りんねえは!手前の二匹お願い」


「了解!」


 りんねえが返事をした瞬間槍を構えて一番手前のゴブリンを貫く、そしてそのまま横に槍を振りぬき、隣のゴブリンも真っ二つにする。


「氷よ貫け、氷針」


 私も奥のゴブリン目掛けて魔法を放つ。りんねえに気をとられていたため、ゴブリンはまったく反応できず氷針に貫かれ、絶命した。


「いっちょあがりっと」


「一撃だったね、さすがゴブリン」


 うーん、なんか歯ごたえないね。いや、前みたいな熊ばっかり出てこられたらそれはそれで困るけど、一撃で終っちゃうとあんまり練習にならないね。

 ゴブリンを回収し終わり、ウルゴさんのところへ戻ると口をあけたままのウルゴさんが居た。


「どうしたんですか?」


「いや、どうしたもこうしたもねーよ! 突込みどころ多すぎだろ!」


 ウルゴさんが吼えた。あれ? そんなにおかしいのかな。ゴブリンだしこんなものだと思ったけど。


「とりあえず猫の譲ちゃんは昨日槍使ったばっかでなんであんな動き出来るんだよ、おかしいだろ! 狐の譲ちゃんは詠唱の長さと威力が釣り合ってねぇぞ! なんであんな短い詠唱であんな火力出してるんだよ! ツインベア倒したって聞いたときからおかしいとは思っていたが予想以上だ……」


「「そんなにおかしい?」」


 りんねえと一緒に首をかしげながら聞く。


「とりあえずあれだ、譲ちゃんたちは自分の異常さを理解しろ!」


 そんなに怒らなくても……。ぐすん。




 ウルゴさんの話を聞く限りでは、いくらEランクのモンスターでも一撃で倒せるのはDランクかららしい。私の魔法も普通の魔術師があの威力を出そうと思ったらもっと細かく詠唱する必要があり、少なくとも3節はいるらしい。氷針だったら『氷の針よ、鋭く尖り、敵を貫け、氷針』みたいな感じかな。

 私たちの強さだと少なく見積もってもCランクはあるらしい。まだ本気出してないっていったらまた怒られそうだから黙っておこう。


「しっかし、これだったらゴブリンじゃあ物足りんな」


「でも、実戦経験は皆無に近いからゴブリンで慣らしておきたいっていう気もします」


「あぁ、それもそうか」


「んじゃ片っ端からゴブリンを狩ろう! さっそく左にゴブリン十匹、はーちゃん援護よろしく!」


 りんねえが物騒なことを言いながらゴブリンの群れへ突っ込んでいく。目の前にいたゴブリン攻撃を避けた後群れの中心を位置取り、槍を回転させる。それじゃあ私は打ち漏らしたゴブリンに向かって新しい魔法を打つ。


「切り裂け、風刃」


 目に見えない風の刃に切り裂かれゴブリンたちが崩れ落ちる。ちょっと多めだったけど大丈夫だったね。


「おつかれ、りんねえ」


「はーちゃんも、ナイス援護!」


 そう言いながらハイタッチする。うん、いいね。最初はどうなるかと思ったけど意外とうまく連携できて戦えている。


「…………」


「ウルゴさん?」


「……ん? あぁ、なんでもない。うし、この調子でどんどん狩るぞ」


「りょーかい!」


 なんだろう、すごい難しい顔して考え込んでいたけど。

 疑問に思いながらも、そのままゴブリンを狩り続けた。さぁ色々試してみるぞ。

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