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11話 お店巡りをしましょう

「う……ん……」


 目が覚めると見慣れない天井が広がっていた。あれ、ここどこ……?

 だんだん、頭もはっきりしてきて、ようやく昨日の事を思い出した。そっか、異世界に来たんだったね。腕をぐっと伸ばし尻尾もプルプルさせながら背伸びをする。よし、目が覚めた。

 横ではりんねえが幸せそうに寝ていた。このままほっといたらお昼まで寝そうだね、って外を良く見たらもう結構日が高い。あれ、私も寝過ごした……?


「りんねえ、起きて。もうお昼だよ」


「んー……あ、はーちゃんだぁ、えへへ……」


「ちょっとりんねえ、重い!」


 りんねえが寝ぼけながら抱きついてきた。しばらく格闘してたらようやく起き上がってくれた。


「ん、あれ? はーちゃんおはよう!」


「うん、おはよう……」


 起きて早々疲れた……。着替えよう。




「エリンさん、おはよう!」


「おはようございます」


 部屋で着替えた後、階段を下りてエリンさんに挨拶する。


「二人ともおはよう。よく眠てたみたいだね」


「うん、ぐっすりだよ!」


「ちょっと寝すぎましたが……」


「それだけ疲れていたんだろう。昼食が出来ているから食べていきな」


「わーい!」


 用意されていた昼食を食べながら、今日のことを考える。


「りんねえ、今日はどうする? お金入ったしお店でも見てみる?」


「そうだね、昨日見た武器屋とかずっと気になってたんだよ」


 よし、そうと決まれば今日はお店めぐりだ。私はあの魔道具屋が気になってたし、楽しみだ。




 昼食を食べ終わった後宿屋を出て、昨日アランさんに案内された商店街へと足を運んだ。おぉ、昨日もそうだったけど賑わってるねー。


「じゃあまずは武器やから行こう!」


 りんねえに引っ張られ、近くにあった武器屋に入る。外からでも色々あったけど中に入るとその武器の多さにびっくりした。剣に槍に斧に弓に……。おぉ! 鎌まであるよ。やばい……ちょっと……ほしいかも……。

 ってだめだ、私魔法使いじゃない。がまんがまん。

 さて、りんねえの方はっと


「どう、何かいいのがあった?」


「うーん、色々ありすぎて迷うんだよね」


「そういえばりんねえってなにか使えるの?」


「ううん、使ったことない!」


 いや、胸張って言われても。まぁ普通はこんな武器使えないよね。


「しいて言うなら槍とかかなぁ。昔よく棒振り回してたし」


 あぁ、あったねー。なんかいい感じの棒を拾ったって言って、よくクルクル回してたね。しかも意外とうまかった気がする。


「あ、これいいかも。柄の部分が畳めるみたいだから持ち運び便利そう」


 へぇ、そんなのがあるんだ。たしかに毎回私が出すわけにはいかないし、持ち運び便利なのはいいね。


「値段は……金貨1枚だね。でも高いのか安いのか基準が分からない……」


「よし、これ買おう! 大体一番最初に良いと思ったのが当たりなんだよ!」


 りんねんが槍を持って、店員の所へ行く。

 おー即決だ。まぁこんなに種類があったら悩みだすときりがなさそうだしね。

 武器を買って来たりんねえはすごい笑顔だった。


「ぶっきーぶっきーばっじめってのぶっきー」


 ついに歌い出しちゃった。周りからの視線がちょっと痛い。


「うれしそうだね」


「だって武器だよ! ロマンだよ! 早く使ってみたいなぁ」


 うぅ、うれしそうなりんねえを見てると私も欲しくなってきた。よし、早く魔道具屋へ行こう。

 ちょっと早足になりながら近くにあった魔道具屋へと入っていく。

 するとそこには、ファイタジーでは定番の杖や本、はたまた見た事のないような物まで、たくさんの商品が並べられていた。店の雰囲気もさっきの武器屋みたいな物々しいものではなく、神秘的なものになっていた。


「ふわぁ、すごい……」


 りんねえも、驚いているようでぽかんと口を開けている。

 さて、肝心の武器をどうするかだけど、正直何を使えばいいのか分からない。素直に店員さんに聞こうかなと思ったその時、ペアになっている古びた指輪に目がいった。ぱっと見がらくたにしか見えないほどぼろぼろで、値段を見ても50銀貨で他と比べると捨て値同然だった。でもなぜか、それを買わないといけない気がしてさっきから尻尾も落ち着きなくパタパタと揺れている。


「はーちゃん……これにするの?」


「うーん、なぜかこれにしないといけない気がして……さっきから目が離せないの」


「じゃあ買っちゃったら? 直感は大事だし、値段も高い訳じゃないから。だめだったらまた見に来ればいいよ!」


「うん、そうだね。じゃあ買ってくる」


 店員には、本当に買うのか? っていう目を向けられたが気にせずお金を払った。

 そして、お店を出た所でようやく鑑定術の事を思い出した。そういえばたまに掘り出し物を見つけるって説明があったね。という事はこれも鑑定すれば何か分かるかも。宿屋に戻ってからゆっくり見てみようか。

 ちょっとした楽しみが増えた所で、次は防具屋に向かった。


「ここも色んなのがあるねー」


「うん、いっぱいあるね」


 防具屋には鎧からローブまで様々な種類の商品が置かれていて、デザインも色々あるので見てるだけでも楽しいかった。

 と、そういえばこっちに来た時に着ていた服も変わっていたんだよね。意外といい物だったりするのかな、と思い性能を見てみた。


『狐の法衣:今は失われし技術で作られた法衣。全能力、耐性をアップさせる。狐族でないと効果が発揮されない』


 やっばい、なにこれ。なんでこんなの着てるのよ、またあいつの仕業なの?

 ということは、りんねえもなのかな。


「ねえ、りんねえ。今着てる服、調べてみて」


「服? んーっと、……うっわぁ、なにこれ」


 あ、同じ反応してる。


「りんねえの方も、やっぱりすごい?」


「すごいね」


「私たちって防具見る必要あるのかな……?」


「……次いこっか」


「そうだね」


 あまり気にしないようにしよう。気を取り直して次いこうか。


 さて、最後は道具屋だね。ポーションとかあるのかな。

 入ってみると雰囲気は意外と普通だった。商品はテントとかバッグとか……あ、ポーション発見。おぉ、色んな種類があって、色もそれぞれ違うから並んでいると綺麗だねー。

 とりあえず必要そうなのを買っておこうかな。ポーション、毒消し、テントと……


「ね、ね、はーちゃん! 面白いのがいっぱいあったよ!」


 りんねえの声がした方へ振り向くと、何に使うか分からない物を腕いっぱい持ってきた。


「りんねえ、それどうするの?」


「面白そうだから買いたい!」


「返してきなさい」


 あ、即答したらりんねえの耳と尻尾がへんにゃりした。




「これで、大体見終わったかな」


「だね、あー楽しかった」


「この後はどうする?」


 と聞いたものの、さっきからりんねえは武器屋で買った槍を持ちながらすごいうずうずしてる。たぶん使いたいんだろうなぁ。尻尾もぶんぶん振られているし。


「この槍試してみたいから、ちょっと外で振り回したい!」


 予想通りだった。


「じゃあ私は先に若葉亭に戻るね。魔道具屋で買った指輪を鑑定したいし」


「了解。じゃあ行ってくるねー!」


「夢中になりすぎて遅くならないようにねー」


 って言ってる間にもう見えなくなった。

 そういう私もさっきの指輪が気になってうずうずしてる。さて、じゃあ私も早く戻ろう。




 部屋に戻った後、さっそく魔道具屋で買った指輪を取り出した。ぱっとみ本当にぼろい指輪だけどさて、どんなものかな。


『古びた指輪:古くなり、何の効果もなくなった指輪。一定の魔力を込めることで本来の輝きを取り戻すことが出来る』


 やっぱり何かあるんだねー。一定の魔力がどれくらいかだけど、そもそもどうやって込めるんだろう。

 ひとまずその指輪を手で包み魔力を込めるイメージをしてみる。すると体から何かが流れていく感じがした。


「これが魔力、なのかな」


 しかし、まだ指輪に変化がないので、もう少し強く込めてみた。どんどん体から魔力が流れていく。これはどこまで込めればいいんだろう。


「だんだん……きつく……なってきた……」


 これ以上は無理か、と思っていた矢先指輪が光りだした。

 光が収まった後そこにあったのは銀色に輝くきれいな指輪だった。

 とりあえずもう一度鑑定してみる。


『成長の指輪:本来の輝きを取り戻した指輪。装備した者の魔力を上昇させる。装備者が成長するとともにこの指輪も成長していく』


 装備者とともに成長ってどういうことだろう……。また名前や効果が変わったりするのかな。とりあえず魔力が上がるし買って正解だった。正直杖や本とかもって戦うのには憧れるけど、持ち慣れていないせいで戦闘に支障が出そうなんだよね。その点指輪だったら邪魔にならないから実用面で言えば当たりだよね。


 あーでも疲れた。魔力使いすぎるとこうなるんだね。気をつけないと。ベッドに寝転がりゴロゴロしながら明日のことを考えながら過ごす。また、依頼でも受けようかな。きっとりんねえはあの槍を使いたいだろうし、今度は討伐系かな。


 でもなんで私たちはここに来たんだろう。ふとそんなことを考える。性能の良い防具は用意されてるし、かといえば何の説明もない。まぁあの説明文には腹が立ったけど。それにいくらりんねえと一緒とはいえ、不安や恐怖が少なすぎる気もする。

 むー、だめだ。考えたところで結局分からないんだろうし、それならもうこの生活を目一杯楽しむしかないかな。よし、そうしよう!


「たっだいまー!」


 気持ちの整理が付いたところでちょうどりんねえが帰って来た。


「おかえり、どうだった?」


「うん、楽しかったよ! 最初はうまく使えなかったけど、しばらくしたら槍術ってスキルを覚えてそれから思ったとおりに使えるようになった!」


 わーお、さすがりんねえ。頼もしい。


「私のほうも鑑定したらいいものだったよ」


 指にはめた成長の指輪をりんねえに見せる。


「おぉーきれいだね! あのぼろぼろだった指輪がこうなったんだぁ」


 目をキラキラさせながら指輪を見つめてくる。うん、あらためて見てもきれいな銀色だ。


「あ、はーちゃん。今日はもう遅いから無理だけど、明日は討伐の依頼受けよう! この槍試してみたいよ!」


「うん、りんねえならきっとそういうと思ってた。それじゃあ今日はもうご飯食べて早めに寝よう」


「了解!」


 さっそく下でご飯を食べた私たちは、明日を楽しみにしながら早めに寝ることにした。

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