1話 目が覚めたら森の中でした
私は今、混乱しています。
あれ? あれ!? 確か私は姉さんと一緒に家でお昼寝をしていたはず。
しかし、起きてみると見渡す限り木、木、木。
もしや誘拐!? いやいやいや、だとしたら何でこんなところにいるんだ。
そうか夢か! きっとほっぺたでも抓れば目が覚めて……
「いひゃい……」
覚めなかったよ。
いかんいかん、落ち着け、落ち着くんだ私。
落ち着きがないのは姉さんの専売特許、だから私は冷静にならないと。
目をつぶって、大きく深呼吸……。パタパタ
よし、だいぶ落ち着いてきた。パタパタパタ
さて、もう一度今の状況を整理して……パタパタパタパタ……ん?
さっきから後ろで何か動いている。
顔をその方向へ向けると尻尾があった……私のお尻からはえた尻尾が……。
「なに……これ……?」
もう一度いいます、私は今、混乱しています。
私の名前は小黒 蓮那。小さい頃に親がなくなり、親戚にも頼れなかったので今は養護施設でお世話になっている。
「はーちゃん!」
遠くから私の名前を叫んでいるのは私の姉、相馬 凛。
姉といっても血のつながりはないけど、同じ養護施設で育ったので家族も同然だ。
「ね、ね、はーちゃん、今日のおやつはなんだっけ?」
「今日はホットケーキの日だよ、りんねえ」
「ホットケーキ! やったー!」
りんねえが笑顔で叫びながら飛び跳ねている。
あぁ、もう、ご近所のおばさんたちから温かい目が……、恥ずかしい……。
りんねえはいつも笑顔でみんなから慕われている。
だがとにかく落ち着きがなく、興味があるものには猪のように一直線に突っ走る。
でもそんなりんねえが大好きだ。
両親が亡くなった後、親戚と色々ごたごたがあったせいで疑心暗鬼になっていた私を救ってくれたのは、りんねえの裏表のないあの笑顔だった。施設に来た事は本当に誰も信じられなくてずっと一人で過ごしていたからね。りんねえがいなかったら今頃どうなっていたか……。
「さぁはーちゃん、早く帰ろう! ホットケーキが待ってるよ!」
りんねえはそう言いながら私の腕を掴み走り出した。
「ちょ、りんねえ、急に引っ張らないでぇぇぇ……!」
だた、ちょっと自重してほしいと思う今日この頃。
「はぁ、おいしかったー!」
ホットケーキを食べ終わったりんねえが幸せそうな顔をしている。
「食べすぎだよ、りんねえ。そんなに食べて晩ご飯食べられるの?」
「大丈夫! ホットケーキは別腹だから!」
そういいながらホットケーキを食べて満足したりんねえが縁側に寝転がる。
「あぁいっぱい食べたら眠くなってきた。よし、はーちゃん、一緒にお昼寝しよう」
「もう、食べた後すぐ寝ると牛になるよ」
といいつつも私も縁側へ足を運ぶ。
今日みたいなぽかぽか陽気でお昼寝は魅力的だ。
「でもりんねえ、宿題は大丈夫?」
「うぐ、だ…大丈夫…晩御飯食べた後にやるよ! 今はお昼寝のほうが大事だよ……ということで、はーちゃん覚悟!」
「……っきゃあ!」
がばっ! とりんねえが私に抱きつき、二人で縁側に倒れこむ。
そうやって二人でじゃれあっていると、庭のほうからガサガサッという音が聞こえてきた。
なんだろいう? と音が聞こえてきたほうを見ると「にゃーん」「きゅー」という鳴き声が聞こえてきた。
「にゃーん」猫として「きゅー」は……なんだろう?
そう思いながらじっと見ていると。鳴き声の主たちが草むらから姿を現した。
「うわぁ! ねこちゃんときつねちゃんだ! ね、ね、はーちゃん、とっても可愛いよ! ほーらこっちにおいでー」
りんねえがすごいはしゃいでいる。
そういう私も興奮している。あのつぶらな瞳にもふもふの毛並み……。あぁ撫で回したい。
しかし、きつねなんかテレビ以外とかだとはじめて見たよ。どこから来たんだろう。
っておぉ、考え事していたら猫と狐が目の前まで近づいていた。
「ほーら、こわくないよー、ひざの上においでー」
いやいやりんねえ、そんなこと言っても通じない……って飛び乗っちゃったよ。
猫はりんねえのひざの上へ、狐は私のひざの上へそれぞれやってきた。
あぁ可愛い、頭なでてみよう。お、目をつぶって気持ちよさそうにしている。
「可愛いねーはーちゃん」
「うん、可愛い」
「にゃーん」「きゅー」
そうやって狐と戯れていたら不意に眠気が襲ってきた。
そういえばお昼寝しようとしてたんだっけ。
「ふあぁぁぁ……」
そう言いながら、隣にいたりんねえは猫を抱えながら倒れこんだ。
あぁ私ももうだめだ。そう思いながら私も狐を抱えながらりんねえの横へ倒れこむ。
眠りに落ちる前に猫と狐が鳴いた気がした。
そして目が覚めた私は、森の中にいました。