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サムライトリップ・イノグランド  作者: TKG
第4部 帝国進撃編
87/88

第87話 世界を終わらせるもの


──アッサミール──




「ああ、ああああ……」


 突如として現れた空の大孔に皆の注目が集まる中、私はなにも出来ず、ただそれを見上げて声にもならない声を上げるしか出来なかった。



 天に輝いていた太陽を覆い隠すほど大きな孔。

 空に開いた孔から這いずり出ようとするなにか。


 闇の中にらんらんと輝く目が見え、巨大な竜のような口がその孔から突き出す。

 しかし、出たのはその口先だけ。


 開いた孔のサイズより、その召喚されたモノは圧倒的に大きかった。

 うごめきながらちらちらと見えるその禍々しい姿は、まさに怪獣。竜と例えればなんとか表現出来そうなそれは、シルエットだけで正気を狂わせるかのような形をしていた。



 あんなものが現れたら……



『ヴァアアァァァァア!!』


 巨大な咆哮。

 巨大な鍵爪をもつ両手を思しきそれが孔の両端をつかむ。



 バリッ。ビリッ。


 天を覆うほど巨大な孔が、ゆっくりと広がりを見せた。



 巨竜よりも巨大で、巨竜よりも強力な圧力。

 こんなものが世に出たら、世界は終わりだ……



 ごめんなさい。

 ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい!


 その竜にも似た姿を前に、心の中でひたすらに謝る。


 どうして。

 どうしてこうなった。


 お笑い種だ。

 世界を救おうと抗っていると思ったのに、いつの間にか自分がその未来を生み出す側になっていた。


 私は、こんなことがしたかったわけじゃないのに!



 先生が言っていた通りだった。



 最初から先生の言葉を聞いて、その言葉に素直に従っていれば、こんなことにはならなかった。

 自分の力を疑っていれば。あの時未来を覆されたことを素直に受け入れ、先生の言葉を思い出していればまた違ったはずなのに。


 いくらでもこの未来を避ける選択は出来たはず。

 でも、後悔してももう遅い。


 もう、どうにもならない。


 確定した未来は、覆らない。

 世界の崩壊はもう、決まってしまった。


 もう、おわ……



「……だから言ったでしょう」



「っ!」


 諦めの思考を、とめられる。

 この、声……


「先生……」


 顔を上げ、その人を見る。


 そこには、元魔法大臣であるマーリンの姿でなく、美しい女性の姿となったマリン先生がいた。



「未来は私達自身が作るもの。それを先に見ていたら、その未来に引っ張られてしまうのも必然なのよ」


「はい。思い知りました……」


「でも、まだ諦めるのには早いわ」


「いいえ。先生。私が引き込んだせいで、未来は確定してしまいました。もう、世界は終わりです……」


「そう。でもね、彼等はまだ、諦めていないみたいよ?」



 すっと、先生が窓の外を指差した。

 空に開いた孔のはるか下。


 そこには、この砦の屋上となる場所がある。

 窓から見える位置にあるそこへ、私は視線を下げた。


 そこには、孔を見上げる少年の姿があった。


 腰に刀を帯びた、この世界で最も強いサムライ。

 彼は、やれやれと、どこかあきれたように空を見上げている。


「やれやれ。またか」


 そう、今にも声が聞こえてきそうな態度だ。


 さらに彼の隣に、二人の仲間もいる。

 三人並び立つその姿は、これから起きることをまったく想像もしていないようだった。



「なぜ、諦めないんですか。空を見上げれば、あそこに現れた怪物がどれほど強力なのか、彼等にもわかるはずです。あれはかのダークカイザーにも匹敵する、世界を滅ぼす存在。見て、肌で感じれば、それに気づくはず」


 そう。私は十年前の悪夢をみずからの手で掘り起こしてしまった。

 せっかくサムライ達が救ってくれたというのに、それに匹敵する存在を呼び出してしまった。


 かつての悪夢を知っていれば、誰もが諦める存在。


 それが空に現れたというのに。


「なのになぜ、抗えるんです!」



「それは、未来を知らないからよ」



「っ!」


「未来がこうであるとわかっていないから、彼等はがむしゃらに抗おうとするの。元々あなたもそうだったでしょう?」


「……」


「未来はまだ決まってはいないわ。諦めるのは早い。だから、顔を上げなさい。そして、祈りなさい。新しい未来が見えるのを!」



 もう未来は変わらない。

 どれだけ確認しても、見えるのは変わらず闇が支配する滅亡の未来だけだ。


 なのに。

 だけど……


 私も、信じたくなった。


 私の星読みでなく、あの子達が覆す、別の未来を……



 だから、お願い。



 この世界を救って。

 救ってください。この世界に生きる、すべての者のために……っ!




──ツカサ──




 唐突に日がかげったから屋上に出てみたら愕然とさせられた。


 空にでっかい黒い円があって、その奥でなにかがうごめいている。

 なにこれ? なんかとんでもないのがお空にいらっしゃってませんか?



『こいつは、ザラーム。なんであいつがここに。しかも、完全体で……』


 俺と一緒に空を見上げたオーマがつぶやいた。


 ザラーム?

 ちょっとお待ちなさいやオーマさん。


 そのお名前、ちょっと聞き覚えがございますですよ。



 それ、ちょっと前に邂逅した別世界の俺じゃないですかね?


 この前の時はほんのひと欠片だったけど、今回は完全体ってどういうことです?

 完全体ってことは、100パーセントの体がそろった状態でこっちの世界に来たってことだよね?


 前に顔をあわせた欠片は刀ほどの大きさだったけど、あれマジで欠片も欠片だったってこと? あのでっかいのの牙一本どころか爪。いや髪の毛一本でさえ足りないレベルのサイズなんですけどあの本体!

 まあ、見た限り毛が生えてるかわかんないけど。

 産毛の一本でも丸太くらいありそうだけど!


 それから剣サイズの欠片しかなかったんだから、俺を切ろうとした結果俺が真っ二つにもならずあっちが一方的に消えてったのも納得だよ。

 髪の毛一本ほどの深さのかすり傷しかおわなかったのも納得だよ。その位の密度でしかなかったんだから!


 でも、そんな俺がこっちの世界に一体なんの御用です?

 また誰かに召喚でもされたんですか?


 ダークカイザーさんはもうお帰りになられたあとなので、ここに呼ばれる理由もうないっすよ。


 異世界の俺つながりでまさかこの俺に対抗するため召喚されたと言うならお笑い種だよ。

 この俺を倒したいのなら、こんなとんでもなさそうな俺呼ばなくても、もっと別の手段で簡単に排除出来るんだから!


 つまり、そのへんのどこにでもいる高校生その1に魔王をぶつけるとかコスト悪すぎ。そんなことするバカはいない。

 だから、この推測は間違い。


 この俺が言うんだから間違いない。



『我が名はザラーム。次元をたゆたい、すべての次元。すべての世界を破壊し、永遠の安息を得る者なり。生きとし生けるものよ。一度だけ言う。滅びよ』


 咆哮に重なってそんな声が鮮明に聞こえた。

 きっぱりはっきり滅びを宣言したこの俺は、その両手でつっかえた孔を広げるよう動き出す。



 目的俺どころじゃなかった。俺とかそういうレベルじゃなく、まったく別の目的で来てらっしゃってた!



 バリッ。ビリッ。


 天を覆うほど巨大な孔が、ゆっくりと広がってゆく。



 ちょっ。宣言して即行動!?

 ちっとも猶予はありませんの?


 人類が悪いから壊すとか、俺が気に入らないから壊すとか、そういう理由を話すとかそんなのないの?


 即行動、即破壊決定なの!?


 ある意味その孔を広げるってのが執行猶予なのかもしれないけど、もう世界を壊すってのは決定ずみなわけなのね!



 というか次元をたゆたってるって、もう自分の世界破壊して他も壊すためさまよってるの? 目的が破壊で手段も破壊なの? 壊すのが目的じゃホントに説得もなにもないじゃない!



 やめましょうって言っても絶対聞いてくれない間違いない。


 これならまだ前の欠片の方が話が通じたよ。

 滅べって言う前にそっちから話し聞いてくれたからね。すぐ切りかかられたけど。


 今回はそれよりひどい。

 言ってくれるだけましかもしれないけど、結局一方的だ。



 よくわかった。よーくわかったよ別の世界の俺。



 そんなこと言うのなら、速攻お帰りいただこうか!


 このままお前にこの世界に居座られるとマジでやばいからな。

 マジヤバだから。


 この世界の絶対的なルールとして、同じ存在同士が出会うと互いに消滅してしまうってルールがある。

 これは、同じ人が同じ世界に二人いるのはありえないことだから、その矛盾によって世界に負荷がかかり、下手すると消滅する事態にまで行くらしい。

 それを防ぐため、世界が自己防衛としてそこにいる出会ったその人を消滅。もしくは元の世界へ強制送還させるという、神様でさえ抗うことの出来ない、絶対のルール。


 そのルールのおかげで、世界がマジでピンチなのである。

 今、このイノグランドはいろんなことがあってかなりボロボロだ。女神様が必死に修復しようとしているけど、何度も世界に孔が開こうとしたのは記憶に新しいだろう。


 しかも世界を壊しえるほどの力を持った俺じゃない俺は世界に与える負荷も大きい。


 このままだとタイムアップ前にタイムアップが訪れて、あれが世界を壊す前に、その矛盾に耐え切れなくなったこのイノグランドそのものが消滅してしまう可能性も十分ありえる。


 さすがにそれは避けなきゃいけないだろう。


 一時的な回避策として俺が地球に帰ってもいいけど、それって根本的な解決にならないどころかイノグランド消滅の時間をほんの少しだけ延ばす結果にしかならないから意味がない。

 あっちの目的的にはそれでいいだろうけど、こっちはホントに困るから。


 だから、空の俺にはこのまま颯爽とお帰りいただきますよ。


 やることはもちろん、俺がアレに触れればいい。

 そうすればあいつは元の世界に戻って、この世界は救われる。


 すでに自分の世界がないのなら、あいつもそのまま消滅するかもしれない。まあ、それってかなり当てにならないけど、再びやってくるのは簡単じゃない。

 それは別の俺がここに復讐しに来れてないのが裏付けている。


 つーことで……



「やれやれ。またか」


 思わずつぶやいてしまった。


 これで何度目だ。俺が俺と対峙するの。

 毎回毎回世界を滅ぼせるレベルのとんでもない俺ばっかり見せられて、そのうち俺、俺がいると聞くだけで震えるくらいの俺コンプレックスとか俺トラウマ抱えちまうぞ。

 ホント、困ったもんだぜ。


 本音を言えば安全地帯で惰眠をむさぼっていたい。

 でも、毎度のことを考えれば、俺じゃない他の世界の俺はトンでもないこと出来るのばっかりだ。


 それを放置していたら被害がどんどんと広がるのはわかりきってる。



 だからここは、一発一瞬で処理出来る強制リターンに頼るのはまったくもって理にかなっている。



 怖い。逃げたい。怖気づく。

 とは思わなかった。


 だって、俺が出来るのはアレに触れることだけ。

 そのためにはあそこに到達しなきゃならない。そこに俺を運ぶ努力をするのは、たいてい俺じゃない。


 前は女神様だったし、一つ前のはその世界の俺に似たサムライだった。

 どっちもこっちもその人は必死だけど、俺は守られているからむしろこの世界で一番安全だったというわけだ!


 相手が毎度同じなら、やることも毎度同じ。

 今回だって同じように誰かに守ってあそこに運んでもらう。

 世界を守るため、必死に俺の安全を守ってもらう!


 ゆえに、俺の安全を守ることこそ、世界を守ることなのだ!



 だから、怖くない!

 全然足震えてないから。


 これ、武者震いだから!

 ジェットコースターとか乗る前のそんな感じだから!



 さて、今回誰を頼って、あの空にどーんといる俺に、どうやって触りに行こう。

 今回いきなり空にいるから、けっこう難易度高いね。



「ツカサ!」

「ツカサ殿!」


 空を見上げ、心の中でどうしようかと頭を悩ませていると、よく知る二人がやって来た。




──リオ──




 ズズズッ。


「っ!」

『っ!』


 勝利の余韻に浸っていると、空になにかが現れた。


 この雰囲気。

 この感覚。


 おいら達はそれがなにか知っている。


 これは、この前相対した、人を狂わせた邪剣の気配。


 でも、この圧力はこの前の比じゃない。

 これは、前にオーマが見せてくれた、世界を破壊しようとした張本人。ダークカイザーにも匹敵する!


 ダークカイザーに対抗するため召喚されたって聞いたけど、それ、案外嘘じゃない!!


「ソウラ」


『ええ。この圧倒的な力。あのダークカイザーに比類します。これは、ツカサ君といえども……』


「っ!」


 ひょっとしてと思ってソウラに聞いたら、それを裏付ける答えを返されてしまった。



 それはつまり、ダークカイザーの時と同じく、ツカサが出張らなきゃどうしようもならない相手ということになる。


 しかも今回はあの時と違ってツカサは十年力を貯めていない。

 いくら完全復活したからって、そのために力を温存していないのだから、あの時と違って命も使わなきゃいけないかもしれない。


 きっとツカサなら、あの怪物にも勝つだろう。

 また、たった一人で世界の平和を守るだろう。


 でも、その結果、邪壊王と戦ったあとのように、わたし達はまた、ツカサを失うことになる……


 今度はもう、ツカサを地上に戻してなんて女神様に言えるわけもない。

 正真正銘、お別れの時になってしまう。


 そんなの、嫌。

 絶対に嫌だ!



「ねえ、ソウラ」


『はい』


「今度こそ、おいらはツカサの力になりたい」


『わかっています。私なら、いくらでもリオに力を貸します。だから、大丈夫。これまで彼の背中を追って努力をしてきた事実を信じて。私となら、今のリオはきっとサムライにも匹敵するはずです!』


「うん。行こう! 今度こそ、ツカサの隣に立つんだ!」



 そうだ。行こう!


 今までこうしてツカサの背中を追いかけてきたのもこの時のため。

 ツカサの隣で、ツカサを支えるため!


 今のわたしとソウラなら、きっとそれが出来る!



 ソウラの言葉にあと押しされ、わたしはツカサの隣に走った。




──マックス──




「っ!」


 太陽の光がかげり、突如として襲い来るこの圧力。


 拙者達は。いや、この世界に生きる者ならば一度は感じたことがあるだろう。

 それは、かのダークシップより発せられた死の気配によく似ていた。


 だが、拙者は知っている。


 これはダークカイザーの気配ではないと。

 それに対抗しようと召喚された、別のモノの気配であると!



 しかしまさか、この圧力。これはかつてオーマ殿に見せてもらったダークカイザーと同等。

 これを召喚しダークシップに対抗しようとした者の考えは間違っていなかったということか。


 ……問題は、その力は欠片も欠片しか召喚出来ていなかったということだが。



 空に現われた不気味な影。

 その大きさを見れば、あの時の欠片がどれほど小さな存在だったかよくわかる。



『ヴァアアァァァァア!!』


 巨大な咆哮が響き、空に広がった孔をさらに広げるよう、それは動き出した。



 以前は人の体を使っていたからかその言葉は理解出来たが、今のあれは完全に獣のそれだった。

 言葉はわからない。だが、ヤツの目的は理解出来た。


 ヤツはこのまま、この世界を破壊するつもりだ!



 ダークカイザー級のバケモノ。

 それがなぜ、今ここに現われたのかはわからない。


 わかるのは、再び世界は危機に陥ったということである!



「整列!」


 視線を声のした方へむける。


 そこは砦の一室。

 内部で大会議などを行う場所。


 そこに大将軍一同、先ほどツカサ殿を探し回り、ツカサ殿の勝利で一安心していた兵士達が一同にかいしていた。


「号令!」


 隊の番号と共に、武器を構え、戦闘の準備が進んでゆく。


 さすが、帝国の精鋭。


 十年前、ダークシップ襲撃の教訓があったからだろう。

 空に正体不明の怪物が現われても、慌てることなく迅速に準備が進められている。


 野次馬のように屋上や窓に殺到する者は一人もいない。

 無防備にその身をさらし、謎の敵の標的になってはもとも子もないと知っているからだ。


 ここでそれを平然と行う者がいるとすれば、ただの無知か、よほど自信のある英傑だけだろう。


 もちろん、この中でそれを実行しているのはただ一人。

 一人砦の屋上へあがり空を見上げるツカサ殿だけだ。


 あの方はやはり別格。正体不明の敵に警戒し屋根の下に身を隠す兵達とは違い、気配からその正体を察しているにも関わらず、あえて身をさらしている。


 むしろ自分を標的にしろといわんばかりだ。


 きっとそれが、もっとも被害が少なくすむ方法だと気づいておられるからだ。



 あの方ならばたった一人でもこの世界をお救いになられるだろう。

 しかし、その結果はいつも残酷だ。


 ダークカイザーにも匹敵しうるあれを倒すには、ツカサ殿も命をかける必要性が出てくる。


 拙者はそれを、阻止しなければならない!

 そのために今まで修行をし、ツカサ殿の背中を追ってきたのだから!



「アスラルーン殿!」

「おお、マックス。空を見たか」


「それについて、お話があります。拙者達に、力を貸してくだされ!」


「む……?」


 拙者の言葉に、大将軍殿が少々困惑の表情を浮かべた。

 時間はない。簡潔に思いを伝えねば!



 拙者は必死に、空に浮かぶアレはダークカイザーに匹敵し、魔法が通じぬ存在だと伝えた。

 幸いにも大将軍アスラルーンはその欠片としてこの世に現われた邪剣のことを把握しており、その本体が現われたと聞き、拙者がその正体を知っているのも納得もしてもらえたようだ。


 魔法が効かぬということは武器を持ち直接戦わねばならぬということ。


 だが、人を戦闘可能な速度で飛ばす魔法は非常に難しい。

 ただ浮かせるだけならば並の魔法使いでも可能だが、ただ浮かせるだけではただの的。飛び道具の的となって蜂の巣にされるのがオチだ。


 実践で使えるレベルで飛行魔法を使えるのは魔法使いの中でもほんの一握り。

 我々が良く知る魔法使いの基準は魔法の天災、マリンであり、転移魔法も手軽に使っていた者ゆえあまり難しいというイメージはないかもしれないが、飛行魔法とはかなりのレベルが要求される高位魔法なのである。


 それを軍隊レベルで使うには、相応の準備と儀式が必要になってくる。

 しかし、そんな時間があるはずもないのは明白だった。


「ならば我等はただあれが這いずり現われるのを待つだけというのか?」


「であるから、拙者に力をお貸してください!」

『御意っ!』


 拙者は腰の刀。サムライソウルを取り出し、大将軍へ渡した。


 サムライソウルの特性は『融和』

 これは周囲の者達の力を拙者の力にわけあたえるというものだ。


 刀は拙者の半身。これを持ってもらえれば、その者の力を借りることが出来る。

 さらにその者と他の者が手をつなげば、その力すべてが拙者の力となる!


 すなわち、これを使えば戦えぬ者も拙者と共に戦えるということになるのだ!


「これは……!」


 刀の特性を発動させ、大将軍殿の力が拙者に流れこんだのがわかった。

 それは、大将軍殿にも伝わり、この力がいかようなものか理解が出来たようだ。


「確かにこれならば、我等も戦える。しかし、よいのか?」


「危険なのは先刻承知。むしろ、拙者達に世界をお任せいただけるか?」


 もっとも危険なのは最前線で戦うこととなる拙者。

 しかし戦えぬというのもまた屈辱。

 拙者にすべてを任せるという決断が出来るかどうかというのも問題だった。



「わかった。君に。君達にすべてを託そう。聞いたか皆の者よ。我等の力、すべてをこの者に預ける。互いに手をつなげい! 他の者にもそう伝えよ!」


「はっ!」


 彼の決断は早かった。

 拙者のサムライソウルを持ち、副官の手を握る。


 さらにその副官は、その隣のものの手を握る。


 次から次へと手が握られ、拙者の中に力が流れこんできたのがわかった。



「これで、行けるにござる! 皆の者、あとはまかせよ!」



 拙者は屋上で空を見上げるツカサ殿のもとへと急いだ!




──リオ──




「やれやれ。またか」


 おいらとマックスが同時に屋上に出ると、ツカサはどこか呆れたように空の怪物を見上げてつぶやいていた。

 いつもと変わらぬ態度。それどころか、相手をするのはもう飽きたと言いたげな言葉に、さすがと思いながらも、自分の命になんのこだわりもないかのように見えて少し寂しくも見えた。


 この世界を救うことになんのためらいもない。


 それは本当に凄いことだと思う。

 でも、それでツカサがいなくなっていいわけはないんだ!


 だから……!


「ツカサ!」

「ツカサ殿!」


 おいらとマックスは、二人同時に、その背中へ声をかけた。



 マックスよりも先にツカサへ駆け寄る。



「ねえ、ツカサ。おいらも一緒に戦わせて。ううん。戦うから!」


「へ?」


 さすがのツカサも、おいらの宣言を聞いて驚いた顔を浮かべた。

 そりゃまあそうだろう。


 相手が相手だ。魔法が効かない相手に魔法の力がメインのソウラで戦うってんだから、驚かれて当然に決まってる。



『おいおい。相手がどんなのかわからねーわけじゃねえだろ。あいつにも魔法は通じねえんだぞ』

「その通りにござる。奴も闇人と同じ。その欠片でさえソウラ殿の魔法は通じなかったではないか!」


 オーマもマックスも同じ心配をする。


 わかってる。空のアレは、サムライの領域に足を踏み入れたヤツじゃないと戦えないってことくらい。


 でも、ソウラは言ったんだ。

 ソウラとおいら。二人なら大丈夫だって!


 だからおいらは、それを信じる!



 べしゃりっ。



 地面になにか落ちた音がした。


 それは、空の孔から落ちたザラームの欠片。

 まるで黒い泥のようなそれが地面に落ち、砂漠の上でぐねぐねと形を変え異形の怪物へと変わる。


 山のように大きなヤツ。翼が生えて、小型のヤツ。無意味に手がいっぱい生えた中型のヤツ。

 泥の山の中から、いくつもの異形が姿を現した。


 それは、かつて世界を襲った闇の怪物を思い起こさせる不気味で気持ちの悪い姿。


 それ一匹一匹が、空のザラームと同じ気配をしている、闇の眷属というにふさわしい姿をしていた。



 バサッ!!


 その一体が、屋上にいるおいら達めがけて迫る。


 目標はきっと、ツカサ!

 あいつ、前に欠片がやられたから、ここで一番手ごわいのが誰か知っているんだ!



『リオ!』

「うん。ツカサ、見てて!」


 ソウラの言葉と共に、おいらは聖剣ソウラキャリバーを抜いて走り出した。

 黄金の鎧を身に纏い、屋上からそいつにむかって飛ぶ!



「やあぁぁぁ!!」


 おいらにむけてふるわれた鉤爪をかわし、渾身の力でソウラを振り下ろす。



 ザンッ!!



『っ!!?』


 飛来したそれを、ソウラは真っ二つに切り裂いた!

 断末魔もなく、それはチリへと消えてゆく。


 ソウラの魔法で空中を蹴り、おいらはまた屋上へ戻った。



「倒した、だと?」

『おい、今お前!』


 マックスとオーマが驚く。

 唯一ツカサだけは、驚きもせずおいらを見ていた。


 きっと、おいらを信じてくれたからだ。


『見ましたか。私とリオはある刀に出会い、稽古をつけてもらう機会を得ました。その中で私はリオのかつてない力を引き出せるようになりました。おかげで私達は魔力の源、マナそのものを力にすることが出来るようになったのです!』


『な、なんだってー!?』


 ばばーんとソウラが宣言する。

 おおー。そうだったのか。あのじじ(第84話)との修行はそういう効果があったのか!


「すっげー。おいらすげー!」


『って斬った本人まで驚いてるじゃねーか』


 そりゃ、ソウラの言葉は信じてたけど、実際やれちゃったりしたら感動もんだろ。



『ぶっつけ本番になりましたが、ちゃんと確信はありましたから大丈夫です。これで、完全に理解しました。リオとならば、私は奴等とも戦えます!』


「それは確かに、心強いにござるな……」


 マックスが感心している。

 戦いにおいてこいつにそう言われるのは悪い気分じゃないな。



「つーか、そういうマックスの方こそどうなんだよ?」


「ふっ。拙者の方も準備は万端よ!」



 さらに屋上へ現われた闇の眷属。


 それにむかい、マックスは腰のロングソードを振るった。

 てか、刀。お前の分身のサムライソウルはどこやったんだよ?


 なんて口に出す暇もなく、こちらへ飛んできた闇の眷属は一瞬でバラバラになり、またチリに帰った。


 なんだこいつ。いつもよりすげぇことになってる。


『そういうことか』


 オーマが一人、納得したような声を上げた。


「へー。そういうことかー」

 おいらも負けじとうんうんとうなずく。



『ぜってーわからずうなずいてるだろおめー』

「……」

 オーマの言葉に返事はしないよ!


「マックス、刀は?」

 ツカサが聞く。


「はい。砦の皆と力をあわせるため、その代表者たる大将軍に預けてきました!」



 そういうことか。

 マックスのヤツ自分の刀の特性を使い、砦のヤツ等からパワーを借りてやがるんだ。


 サムライソウルが大将軍達の力を中継し、人が集まれば集まるほどパワーアップ出来る。

 たとえ戦えないヤツでも戦いに参加出来る。


 マジで一人で百人力にもなるんだから、こりゃすげぇや。

 敵ならやっかいだけど、味方ならこれほど心強いことはない。



「つーわけだからツカサ!」

「そういうわけにござるツカサ殿!」


「おいらと」

「拙者と」


「一緒にヤツを倒そう!」

「共にヤツを倒しましょう!」



 だから、今度こそ、ツカサの力にならせてよ!


 今度は前に出ていたおいら達が、ツカサを振り返る。



「そうか」



 ツカサはおいら達を見て大きくうなずいた。

 どこかほっとして、心の引っ掛かりがなくなったように。



「なら、俺に力を貸してくれ。俺を、あいつのところまで連れて行ってくれ。このまま無傷でたどりつければ、誰も死なずに世界を救える」


「っ!」

「ござっ!」


 ツカサがそう断言した。

 つまりは、余計な力を使わずこのまま本体だけを叩けるなら、ツカサも命の炎まで使わず戻ってこれるということだ。

 ツカサがそう言うのだから間違いない。


 おいらとマックスは互いに顔を見合わせ、大きくうなずいた。

 声に出す必要なんてない。おいらもマックスも、どっちも同じ気持ちに決まってる!


「任せて!」

「お任せあれ!」


 ツカサのためになにか出来る。

 それを拒絶するなんてあるわけないじゃないか!


「頼りにしてる。二人共」


 おいら達二人の間に進み、ツカサがそう言ってくれた。

 その言葉だけで、おいら達はもう天にも昇る夢心地ってヤツだよ!



『ただ、問題はどう飛ぶかですね……』


 ソウラが水をさした。

 でも、それは確かに一番の問題だった。


 おいらはソウラの力で空が飛べる。


 でもそれは、あくまで聖剣ソウラキャリバーをもつおいらだけ。



 かといって二人に足をつかんでもらうとか一緒に運ぶとかするとマトモに戦えなくなる。


 そうなったら、あの泥の山から生まれた闇の眷属達をどうするって話になっちゃう。


 マックスはいいとして、ツカサはその気になれば空飛べるだろうけど、そうなると力を使わずヤツのもとにつくってことが出来なくなっちゃうし。

 それならおいら達がこうして立ち上がった意味もなくなっちゃう。


 意外にこれ、ヤバイんじゃない!?



「ふふっ。どうやらそこで私の出番のようね。とうっじょう! 復活、マジカルミラクルマリンちゃんよ!」



 ばばーんと、一人遅れてきた魔法使いが屋上に現われた。

 無駄にピースしてそれを目元に当ててポーズをしているのがとっても痛々しい。


「うわあ」

「うわあ」

「ござあ」


 振り返ったおいら達は、そこに現われた魔法使いを見て思わず声を上げてしまった。



「三人共ひさしぶりなのになんか道端の生ごみを見つけたような反応するなんてひどいわ!」


「ま、いいや。ほら、なら、頼んだぜ」


「雑ー! ひさしぶりの感動の再会なのに、どうしてそんな雑なのリオちゃん! せっかくこうして助けに来たのに! 感動の再会やりましょ? がばっとハグしてぎゅっとして、ちゅっちゅしましょうよ!」


「事態が事態なんだからアホな会話してる暇ねーだろ! さっさと協力しろよ!」


「やーん。しょうがないわねー。はい! ほい! ついでに!」


 マリンが声をかけるたび、おいら達の体が一人ずつ浮かび上がっていく。

 三人の体が、ふわりと浮かび上がった。


 魔法でこうやって空を飛ばすのって、本当は長ったらしい呪文が必要で、一回一回けっこうな時間が必要って聞くけど、マリンはそういうの無視して指差すくらいで魔法をかける。

 マジで凄い魔法使いなんだ。とは思うんだけど、全然尊敬出来ないのはなぜなんだろう。


 あれか。日ごろの行いか。


 ちなみにあの目の前に瞬間移動は出来ないのかと思ったけど、魔法触媒がない今、あんな空間の歪んでいるところにテレポートしたら五体バラバラになって出現する羽目になるからお勧めしないってさ。残念。



「これでみんな自在に飛べるわ。飛行は私がここで維持するから、あなた達の力は他に全部回して」


『わかりました』

 ソウラいわく、飛行は意外にエネルギーを食うのだとか。

 だから、かなり助かるってあとで言ってた。


 そりゃ本来飛べないものが強引に飛ぶんだからその分力を使うよな。



「私が出来るのはここまで。世界の命運。頼んだわよ」



『では、行きましょう!』


『おめーら、相棒を無事届けるのに命かけろよ! でも命は絶対散らすなよ!』



「わかってるよ!」

「もちろんにござる!」


「じゃあ、行こう。二人共、頼むぞ!」



 空の孔を広げるザラームを守るよう浮かぶ眷族にむかい、わたし達は突撃を開始した!




──ツカサ──




 そーいやこっち戻ってきた時、空を飛びたいとか思ったこともあったけど、まさかこんなタイミングでかなうことになろうとはね。

 状況が状況だから、地上がどんどん遠くなってもあんまり怖いと考えてる暇ないのが幸いかな。

 別に空が怖いとかそんなことないわけだけどさ!


 砦の屋上からふわりと浮かび上がった俺達めがけ、あっちの俺から生まれた黒い欠片達が殺到してきた。


 砦やずっとむこうの帝都には俺達以外の人が大勢いるというのに、それらは完全に無視。

 数えるのも嫌になるほどの大軍勢が一斉に俺達に迫り、空の俺の間に立ちふさがった。


 ふむん。

 さっき屋上に来たヤツといいこれといい。俺をやたらと警戒しているのを見るに、前に送り返した欠片はあの本体に帰って世界における絶対のルールを伝えているに違いない。


 じゃなけりゃ、こんな平凡普通の俺にいきなり目をつけて襲ってくることはないからだ。


 逆に言うと、ここで戻されることだけが心配で、あとはどうにでもなるってことだし、戻されると困る。ってことでもある。

 つまり、俺が触りに行くって判断は間違いじゃない!


 まあ、ちょんと触れただけで勝負ありなのだから当然だろう。

 ヤツはまだ孔から出ることが出来ない。なんとかするなら今のうちだ。


 だから……



「リオ、マックス。頼んだ!」


「任せて。いくよソウラ!」

「お任せください!」



 あとは、無事もう一人の俺のところへ連れて行ってもらうだけだ!


 正直、あの生まれで俺の眷属達に触れたらどうなるのか考えるけど、殺す気満々で襲いかかってくるあいつ等に触れに行く勇気は俺にない!

 相手だってルール把握してるんだから、俺に触られるの避けるだろうし。

 刀のサイズで髪の毛一本分のかすり傷がつくわけだから、サイズが大きくなればその分リスクも高まるし。


 つまり、なにもしない方がいいってこと。わかるね?



「たあぁぁぁぁ!」

「はあぁぁぁぁ!」


 迫る眷族に、俺を守るため前に出た二人は剣を振るう。



 キュゴンッ!


 なんか凄い音がして、二本のラインが黒い群れの中に描かれた。


 二人から飛んだ斬撃がものすごい数の眷属を消し飛ばしたのがわかる。



 それを合図に、この戦いははじまった。



 ……すっげぇ。



 戦いが本格的にはじまって出た感想はそれだった。



 サムライと同じ力を使えるにまでいたった聖剣&リオと、砦の兵士達の力を借りたマックス。


 二人は魔法が通じないって状態の奴等も、圧倒的な物量さもものともせず、次から次へと迫る敵を切り倒している。

 たぶん。


 正直言わせてもらうと、目がまったく追いついていない。


 俺が認識出来るのは、二人がものすごい速度で俺の周りを飛び回り、あちこちが光ったかと思えば空に浮かぶ影が消えていくさまだけだ。

 影というのは、迫る敵の姿も早すぎてよくわかんないからである。


 近くから遠くからガシガシザシュザシュって音が聞こえる気がするけど、認識出来るのはそれくらいであとは多分斬ったんだろうなあ。という結果しかわからない。



 はっきりわかるのは、かつてこの世界を襲い、破壊の限りを尽くしたダークシップとその主。ダークカイザー&『闇人』と同等(オーマ談)の敵を相手に二人が互角以上に戦えるということだ。

 数々の冒険を繰り広げてきた二人は、そこにいたるまで成長していたってこと。


 並み居るあの闇の眷属をものともしないんだから、頼もしい限りに成長してくれたものである。

 この冒険の中で伸びたと明確に言えるのは身長しかない俺とは大違いだよ。


 いや、身長が伸びたのも地球で過ごしたからであって、戻ったら元に戻る俺って実質成長してないってこと……?


 いやいや。そんなことはない。いっぱい成長した。うん、俺すっごい成長してるし。具体例は全然出ないけど、成長はしてるから大丈夫。


 いっぱいありすぎてあげられないだけだから、この話題は打ち切り。はいはいやめやめ。


 今、そんなこと考えている暇と場合じゃないからね!



 ……まあ、考えちゃうのは実際暇だからなんだけど。



 戦いもマトモに認識出来ない。

 状況も把握出来ない俺に出来るのはこうしてただぼーっとしつつ考えることだけ。


 それだけ周囲はすっごい戦いをしているわけなんだけど、それを伝えるすべさえないって状態だ!



 あ、でももう一つ認識出来ることがあった。



『次、マックスは左前方から来る奴等。リオは左にいる奴等へ対処しろ!』



 それは、オーマの指示。

 つっても、かなり早くていっぱいあるからあんまりちゃんと聞いて頭に入ってこないけど。


 たった二人で数えるのも嫌になるほどの数を平然と相手出来るのも、こうしていつの間にか指示を出したオーマの活躍あってことでもある。

 一方が動いて手薄になった場所や、迫る敵の数やその種類を分析してどっちと相性がいいかなんかを判断して迎撃の指示を的確に出して俺に近づけないようにしているのだ。


 それをしっかり聞いて実行する二人も凄いわけだけど。



 オーマの力がどんなのか知ってたけど、その把握する力を最大限に使って指示を出せばこんな凄いこと出来たんだな。

 今までなんでそれ、やんなかったの?



『……相棒、今なんかすっげーひどいこと思わなかったか!?』


 あら鋭い。


「そ、そんなことないずらよ?」

『ぜってー今おれっちでもたまには戦闘で役立つんだなとか思ったー! 単純に今まで必要なかったからだけなんだからな! それって相棒のせいでもあるんだからな!』


『オーマ、ツカサ君も! そんなことしている場合ではありません!』


『ちくしょー! おれっちだって役に立つこと相棒にちゃんと知らしめてやるー!』



 ソウラに怒られちゃった。


 ……オーマごめん。

 邪魔するつもりはなかったんだ。


 いや、君が凄い出来る子ってのは知ってるよ。


 問題は俺が戦えないからそれをまったく活用出来ないってことだけど。


 ホント、ごめん。



 だからもう、集中を邪魔しないよう大人しくしているよ。


 やることないなら、他のことやってればいいわけだもんな。

 一応、保険をかけておくから。


 とりだしてそれをやるのは不謹慎だから、腕を組むふりをして懐に手を入れて操作させてもらうから。

 見えないけど、見る必要は別にない簡単操作だからきっとなんとかなるさ!



『二人共、今だ!』

 保険をかけ終えるのと同時に、オーマの指示が響いた。


「いくよ、ソウラ!」

『ええ!』


「おおおぉぉぉ!!」


 二人が同時に、剣を振るう。


 ほとばしる、光。

 二つの剣からなんかすごいビームみたいのが飛び出し、空の俺との間に立ちふさがっていた眷属が吹き飛び、一本の道が出来た。


 どうやらオーマはこれを狙って二人と敵を動かしていたようだ。



 いやはやとんでもねえ。

 二人共もう、伝説のサムライに匹敵するほど強いんじゃない?


 伝説のサムライ達の強さ、俺さっぱりわからないけど!



「さあ、ツカサ!」

「ツカサ殿!」


『相棒、今だぜ!』


「ああ!」


 二人の後押しを受けて、俺はそこに生まれた空白地帯を突き進む。



 眷属達もそれを阻止しようとそこに殺到しはじめるが、ソウラが光の障壁を。さらにマックスが竜巻の壁を作ってくれた。


 俺はその壁の中をひた走る。


 あとはまだ孔を広げようとしている別世界の俺の巨大な体のどこかに触れるだけ!

 鼻先でもいい。牙でもいい。


 迫ってきた巨体に手を伸ばす。



 ぺちっ。


 さわった!



 と思ったんだけど、触ってなかった。


「? ??」


 手ごたえがない。

 あるわけない。孔の中にいる巨体は見えているけど、そこはまだもう少し距離があったからだ。


 俺の手は、見えない壁のようなものに触れ、それ以上先に進めていない!

 見えない壁が、そこにあったのだ!



『っ!? おれっちでさえ気づけない壁があった!?』


 オーマびっくり。俺もびっくり。


 というかけっこうな速度出してつっこんでた気がするけど、手とか折れてないのはなんでだろう。

 なんて関係ないこと思ったのもびっくり!



 ちなみにけっこうな速度を出したまま見えない壁に激突したのにツカサ君がぺちっとなっただけですんだのは、風圧やら寒さやらを無効にするこの飛行魔法のおかげなの。


 並の魔法使いの飛行魔法だと飛ぶだけで風をまともに受けたり体温を奪われたりしちゃうけど、天才にして完璧理論を確立するこの天才魔法使いかつ美少女かつ超絶美少女マリンちゃんの魔法なら防護も完璧。飛行における激突なんかのダメージは全然へっちゃらなのだ!



 ……なんか今、どっかから自慢げなナレーションが聞こえた気がけどきっと気のせいだろう。


 いずれにせよ、オーマでも気づけなかった壁が、俺と孔中俺の間にあったのだ!



 こんなものを仕掛けることが出来るのは、間違いなく……



『ゴオォォ……!』

『よくぞ来た。ここが貴様の墓場だ。この位置ならば、我が一撃をかわせまい……!』


 うなり声の中に声が混じった。



 ……っ!



 違う。

 こいつ、孔に引っかかってたんじゃない!


 俺がここに来るのを待っていたんだ。



 絶対に避けられない位置に俺を置くため、あえて孔から姿を現さなかったんだ!


 ルールを把握しているのなら、俺が触れに近づいてくるのがわかっている。

 待っていれば勝手にターゲットが近づいてくるのだから、確実に滅ぼせる位置で待っていればいい。



 巨大な口が、俺にむけてがぱりと開かれた。



 うえぇ。

 やばい。


 これ、マジでやばい。


 これ、俺が緊急回避で異世界に逃げたとしても、下のイノグランドもヤバいヤツだ。

 かわせないってのはきっとそういう意味もある。


 こいつ今までのんびり孔を広げてこっちにこようとしていたんじゃなく俺を誘いこむため力を貯めていたんだ。


 ヤツはわざわざ俺に触れる必要はない。

 触れずに殺せる力を持っているから!


 そりゃルールがわかってりゃ、近づいてくるのを動かず待つに決まってるがな!



 口の中になんかすっごい光が集まってるのがわかる。


 きっとこの壁は放つ瞬間には消えるのだろうけど、その時にはもう手遅れ。そこには避けようのない太さの一撃が来ているって状況だ。


 このままじゃほんとに世界が終わる。



 このまま終わって……



 終わって、たまるかっ!!



 諦める前に、俺はもう行動していた。

 決断と同時にポケットから携帯を取り出し、見えない壁にそれを押しつける。


 これが、さっき言った保険だ。

 何度か使っているからもうわかっているとは思うけど、この中にあるアプリはこの世界に指定の人を召喚することが出来る。


 さっきは俺はそれを保険としてセットしておいた。

 相手がリターンのルールを把握している可能性があるのだから、それを上回るもう一つを用意しておこうと思ったからだ。


 あとひと押しすれば、ここに俺じゃない俺が召喚される。


 そのひと押しも、今壁に押しつけたことで完了した。



 あとは、発動を待つばかり。



 俺に出来ることはここまで。

 ダメなら一足早く世界が終わるだけ。


 さあ、女神様。

 出番です。


 この前修復出来なかったヤツの汚名返上のチャンスですよ。


 だから、どうかこの召喚を成功させて、このイノグランドを救ってください!



 俺はただ、願う。

 必死に祈る。


 そして、思う。



 死にたく、ねぇえぇぇぇ!!



 竜にも似た俺の口から、巨大な光があふれる。

 同時に、壁に押し付けた携帯の画面からも光があふれた!




──マックス──




 この日、イノグランドに住まう多くの者は、あの日の悪夢を思い出しただろう。

 闇の船が空に浮かび、大地を蹂躙した、あの悪夢を。


 太陽を覆い隠すほど巨大な孔より現われた破壊の化身ザラームと、ソレより生み出されし闇の軍勢。


 それが、帝都近くの砦に降って沸いたのだ。

 突如として現われたその群は、砦に居た兵士、周囲にあった街など目もくれず、あるお方めがけて殺到した。


 たった一人のサムライ。その孔より現われし破壊の化身を倒せる存在を排除しようと群がってきたのだ。


 その数、数千。いや、数万いたかもしれない。



 対するは、拙者をふくめたサムライ見習いと聖剣の勇者をあわせて三人。



 その絶望的な戦力差に、空を見上げた誰もが十年前の悪夢を思い出し、再びの絶望を思いださぜるをえなかった。



 しかし、悪夢は再来しない。

 空に浮かんだ三人の戦士は、その闇の軍勢をばったばったとなぎ倒し、その造物主たる孔の怪物へ迫ったのだ。


 二人の戦士が道を作り、最後のサムライが破壊の化身へ迫った。



 対峙する二者。

 空の怪物が巨大なアギトを開き、その口に光をためる。


 空を見上げた者は、その圧倒的な破壊の圧力に、世界の終わりを予感しただろう。

 戦いを心得ぬ者でも、その光は生まれた孔を消し、新たに太陽が生まれたかと錯覚するほどのモノだったからだ。


 世界を破壊する一撃。


 そう言うにふさわしい力がそこに集まっていると、見上げた者すべてが理解出来た。

 その一撃は、例え無敵のサムライであっても粉砕する、絶望の一撃であることがすべての感覚でわかってしまったのだ。



 カッ!!


 光が、あふれた。



 見上げた者達が見たのは、孔で弾けた巨大な光。

 人々にそれは、対峙したどちらが放ったものかわからなかったに違いない。


 あまりの力に、視界は愚か感覚さえ光に染めてしまったからだ。


 光と光がぶつかりあったのか。

 それとも片方がどちらかを撃ち抜いたのか。


 人智を超えた力の奔流に飲まれ、事態を正確に把握出来た者はほとんど居なかったであろう。


 わかったのはせいぜい、世界の破壊と世界の庇護がせめぎあったということだけ。



 そんな中、拙者達はかのもの達よりほんの少し先を見通すことが出来た。


 その瞬間、なにが起きていたか。



 拙者達は、見た。

 孔の中で広げられた口より光が瞬くのと同時に、ツカサ殿からも同じ光が放たれたのを。



 その威力、まさに互角。


 どちらも、世界を破壊すると言うにふさわしい輝きが放たれ、その光の奔流は、拙者達の目も焼いたのであった……



 ……しんっ。


 一瞬、世界から音が消えた。



 音も消え、真っ白になった世界を見て、誰もが世界の終わりを思い浮かべた。



 ──同じく空を見上げた皇帝は思った。


 これこそが、自分の見た滅亡の瞬間そのものである。と──



 しかし、イノグランドは終わらなかった。


 しばしの沈黙の後、皆の耳に風が流れる音が聞こえた。

 鳥が羽ばたく音が響いた。


 近くに誰かの息遣いが感じられた。



 閃光に焼かれた視界が戻る。



 世界は、無事だった。



 真昼の太陽が戻り、暖かな光が再び降り注ぐ。


 空に開いた孔は消え、雲のない青空だけが広がっている。



 圧倒的な破壊の光は、イノグランドに降り注がなかった。


 何者の予測も、予知さえすべて覆し、世界は、救われていたのである。



 見上げた者すべての視線に残されたのは、まばゆいばかりの日の光を背負う、小さな人影であった。


 孔が消え、光が大地を照らすその太陽に手をむけた。

 まるで、太陽を手にしたかのような、あの方のお姿……!


 誰もが、悟った。


 その者が、圧倒的な破壊の光を跳ね除け、世界を消滅せしめんとした破壊の化身をしりぞけ、孔も、その眷属すべても光によって消し飛ばした者だと。



 世界を救ったのは、あの方であると!


 今回もまた、あのサムライが世界を救ったのだと!!



 わっ!

 勝利に砦の者達が、一斉にわきたった。


 いや、砦の者達だけではない。空を見上げ、世の終わりを予感した者達すべてが、この光景を見て喜びの声をあげたのである。



 のちに伝説が語られる時、すべてを救ったサムライは、こう言ったという。

 拙者の耳に届いたのだから、間違いない。


「世界ごと破壊しようとしたのが間違いだったな」


 それこそが、世界の守護者が勝利した要因。

 この世界を狙うのが、いかに愚かしいかというのがわかる一言である。


 かのサムライがいる限り、イノグランドは決して滅びることはないのだ。




 こうして、帝国にて起きた世界崩壊の危機は、ツカサ殿の活躍により去ったのであった……!




──ツカサ──




 はー。助かった。


 空を覆っていた孔が消え、太陽の光がまた降り注いだ。

 その光を浴び、太陽の暖かさを感じている自分を確認し、五体満足なのをしっかり認識して俺はほっと一息をつく。


 死ぬかと思ったー。



 女神様がやってくれた。

 名誉挽回してくれた。


 さすが、女神様!



 あの時。ザラームが俺ごとイノグランドを滅しようとしたあの瞬間。


 一見すると、俺ともう一人の俺。ザラームが対峙して光と光を撃ち合ったように見えたかもしれない。

 ぴかっと激しく光ったから誰も見えてないかもしれない。


 ともかく、俺の携帯から出たあのごんぶとビーム(?)

 ザラームを屠ったあの光線。



 あれ、俺ごと世界を破壊しようとしたザラーム本人の光線です。



 女神様は召喚してくれたんですよ。

 俺の目の前に、ザラーム本人を。


 俺ごと世界を破壊する一撃を、携帯から姿を現したザラームは自分にむけて放ったというわけ。


 鏡写しのような状態になった自分を、自分で撃ち滅ぼしたんだ。



「世界ごと破壊しようとしたのが間違いだったな」


 思わず言ってみた。



 強制リターンを警戒して、触れず確実に俺も世界も滅ぼそうとしたのが幸いした。

 召喚の孔から完全に姿を現していなかったのも幸いした!


 俺だけを消し飛ばすつもりなら、きっとザラームは滅びなかっただろうから(その時は強制リターンの餌食だけど)


 世界も俺も同時に滅ぼす。一石二鳥を狙えた有能さを呪うがいい!



 しっかし、保険というのはやっぱり大事だ。

 俺は心の底からそう思った。


 念のため女神様にお願いしといてよかったあぁ!



 こうして、世界の危機はリオとマックス。そして女神様の活躍によって回避された。

 相変わらず俺は、そこにいただけである。


 まあ、俺の活躍なんて、世界が無事であることに比べれば些細なこと。


 みんなが無事ならそれでいいのだ。



 ……にしても、なんでいきなりもう一人の俺がまた出てきたんだ?


 それだけが、わからない疑問であった。




──アッサミール──




 私の星読みは覆された。

 いや、やはりこの未来は先生が言っていた通り、私が星読みの魔力にのみこまれた結果見ていた『願望』だったのだろう。


 そうならない、私の星読みの覆った未来を認めたくなかったから、自分の見た未来を実現させようとした。


 みずから未来を歪め、世界を滅ぼす存在を呼びこんでしまった……


 なんと浅はかで、視野の狭いことか。



「でもさ、なんでいきなりあんなのが現われたんだろうな」

「わからぬな」


 空から戻ってきたサムライの従者。リオとマックスが首をひねる。

 救世のサムライも口には出さぬが、同じ思いのようだ。



「すべてを正直に話しましょう。なぜ、このような事態になったのかを……」



 戻ってきた三人と先生を前に、私は口を開いた。

 先生の言うとおり、最初からこうしておけばあのような過ちは起きなかったのだろう。


 そんな後悔を胸に抱きながら、なぜかたくなに戦争を起こそうとしていたのか。なぜあの破壊者が現われてしまったのか。

 星読みによって見た未来の結末。それをいかにして阻止しようとしたのかを彼等に語る。



 本当に、愚かだったと思う。


 私の星読みを信じ、命まで投げ出したグネヴィズィールにあわせる顔もない……




──魔法大臣 グネヴィズィール──




 わらわは未来を変えるため、この命を投げ出した。

 サムライに対抗出来る唯一の存在を召喚し、意識は闇に消えた。


 消えた……



 ……はずだった。



「……わらわは、なぜ……?」


 焦点のあわない視界に光が入る。

 闇に消えたはずの意識が、再び戻ったのがわかる。


 まだ体は動かないが、ぼんやりとした焦点があい、そこがどこか、思い出した。


 ここは、召喚の儀式をした施設。



 おかしい。かの存在を呼びこむため、わらわは命をすべて捧げたはずだ。

 なのになぜ、こうして目を覚ました……?


「目を、覚まされましたか!」


 がしゃん。

 となにかタライか桶が落ちたような音が部屋に響いた。


 何者かがわらわに駆け寄ってくるのがわかる。


「……ルォットーか」


 そこにいたのは、わらわの配下。

 帝国の武装商船団の船長。アラミルォットだった。



「なぜ、お前がここに? なぜ、わらわは生きている?」



 疑問しかわかない。



「まさか、儀式は失敗したのか?」


「いえ。成功しました。空にとんでもない怪物が現われました」


「召喚は成功した。なのに、我が命は消えなかった。なぜ、だ?」


「はい。お答えしましょう。あなたの行った儀式は、みずからの命すべてを捧げる儀式。これがどういうものかは、準備にたずさわった私も知っています。ですので、あの瞬間グネヴィズィール様の背後より近づき、私の命を半分捧げさせてもらいました」


「なん、だと……?」


「我々二人で、一人分の命を持っていかれたんです。これが、あなたが生きている理由になります」


 耳を疑った。

 この男、自分がなにをしたのかわかっているのか?


 命を半分捧げた。すなわち寿命が半分になったのだぞ!

 なぜ、そんなことが出来る。


「……なぜ、そんなことが出来る!」


 思いと共に、言葉が出た。



「簡単な話にございます。あなたをお慕いしているからです。グネヴィズィール様」


「……は?」

 あまりのことに、頭がついてこなかった。



「今までどんな無茶にも答えてきたのも、ただの忠義ではございません。慕情と下心があったからです! ですから、あなたに死なれては私が困るのです! これが、理由にございます!!」



 幸運なのか不幸なのか、体を動かせないわらわはこれを語るルォットーの顔を見ることはかなわなかった。

 まあ、どんな顔になっているのかは、中々長いつきあいゆえ、想像は出来ている。


 出来ているが……



「……ふっ。わらわごときに命をかけるとは、本当に困った男だ」


 やれやれと、わらわは苦笑いを浮かべるしかなかった。


 嬉し、恥ずかしい苦笑いを。



 なにはともあれ、わらわは生き残ってしまったようだ。

 あとで、皇帝陛下にお叱りを受けにゆかねばなるまいな。


 今後のこともふくめて……




──リオ──




 なぜ、あのタイミングでいきなりザラームが現われたのか、皇帝から説明を受けた。



『かたくなな態度になんかあるとは思っていたが、勝手に突っ走って、挙句自爆かよ。なにやってんだかな』


「言い訳のしようもありません」


 呆れるオーマに、皇帝がしょんぼりと肩を落とす。

 最初はすげぇ冷たい印象があったけど、こうして落ちこんでいると年相応のねえちゃんにしか見えねえや。


 そういや年齢はマックスとほとんど同じだっけか。



 まあ、オーマの意見にはおいらも賛成かな。

 最初っからツカサを信用して話をしてりゃ、こんなバカみてぇな騒ぎも起こらなかったし、戦争になるならないなんて話もなかった。


 ……そうなるとこっちに来る理由がおいら達になくなるけどさ。

 そうならなくても、結局来ることになってたかもだけど。


 そのへんのもしもはもういいや。


 世界は滅ばなかったし、ツカサも無事。

 その上戦争をする理由までなくなったってんだから、これでおいら達の使命も終わり。万々歳ってヤツだ。



「……一つ、聞いていいですか?」



 皇帝の話をずっと無言で聞いていたツカサが、いきなり口を開いた。



「元々その未来。この世界の滅亡は、ここで起きるはずじゃなかったんですね?」


「そうだ。余が余計なことを考え、行動したゆえ、あのような者が現われ、世界が崩壊しかけてしまった。余が、世界を滅亡させる原因を作ってしまったのだ」


「そうですか……」


 ツカサがなにか考えるように、あごに手を当てた。



「そう。すべての責任は、余にある!」



「いえ。そんなことはありません」



 皇帝の言葉を、ツカサは間髪いれず、きっぱりと否定した。


「は?」


「ど、どういうことさツカサ」

「いったいどういうことにございますかツカサ殿?」


 唖然とする皇帝。

 おいら達も、困惑を隠しきれない。



「いい機会だと思うし、俺の口からもちゃんと伝えておいた方がいいと思うから、言うよ」



 どくん。

 わたしの心臓が、大きく跳ねたのがわかった。


 この予感は、なに……?



「その星読みはきっと、間違ってはいなかったと思うんだ」



 どくん。


 心臓の音がうるさい。

 耳の後ろに心臓が来てしまったかのようだ。


 ツカサの言葉が進むたび、その予感だけが大きくなっていく。



 どくんっ。


 それ以上聞きたくない。

 でも、わたしの体も、誰の体も身動き一つ出来なかったんだ。



「遠くない未来。この世界が消滅するっていうのは」



 どくんっ!


 皆、ツカサがなにを言おうとしているのかわからない。


 いや、わかりたくないんだ。

 わかりたくないから、わからないふりをしているんだ。



 この、嫌な予感を否定したかったから……



「なぜなら、俺の存在が、この世界を滅ぼすから」



 でも、否定は無駄だった。


 聞きたくも知りたくもなかった事実……



「俺がここにいる。それが理由で、そう遠くない未来、この世界は崩壊します。だから俺がここにいる限り、その星読みは、間違っていないんです」



 残酷な真実。

 それが今、明かされた……




 おしまい

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