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サムライトリップ・イノグランド  作者: TKG
第3部 サムライトリップ・ホームグラウンド
47/88

第47話 サムライの家族


──亜凛亜──




 剛乗の死士、鎧谷と先生の戦いから一夜。


 私は、昨日見た学生の通うだろう高校の近くにきている。



 先生は、無茶がたたってしばらく入院することになった。


 昨日はあれから、先生の代わりに現場検証に立ちあった。


 結論から言うと、そこで先生を助けたという少年の存在は確認できなかった。

 あの戦場から確認された士力は先生のものと鎧谷のものだけしかなかったのだから、当然だろう。


 先生が言うには、彼は士力を使わず、小石一つを持って鎧谷を打ち倒したのだから。


 確かに、鎧谷の倒れていたそばに小石が一つ落ちていた。


 ある意味でそれが、その少年がいたという証だろうか。



 現場に来る前、あの少年の姿と行動を見て、言葉を聞いていなければ、私も先生の説明を信じることなどできなかっただろう。


 いや、あの少年を見た私でさえ、先生の言葉を疑っている。

 そんな状態なのだ。先生が口をつぐんだ今、この場に先生を助けた何者かがいたと考える者は皆無だった。



 後で鎧谷が目を覚まし、ヤツの証言が聞けたり、その刀の全貌が解析されればまた違うだろうが、完全に粉砕されたあの刀の解析と、再起不能状態になった鎧谷から結果が伝えられるのはかなり先のことになるだろう。



 私以外の者達は皆、先生が死闘の末鎧谷を倒したのだと思っている。


 このまま私が彼を探さなければ、真実は闇に葬られるだろう。

 先生も、助けた少年を尊重し、そうしようとしている。


 だが、私はそれをよしとはできなかった。



 なぜならその彼が、死士ではないと断言できないからだ。


 先生を助けるためという親切心でなく、なんらかの目的のため、自分の都合で鎧谷を始末しただけという可能性も否定できない。

 私達サムライは組織だって行動しているが、死士の多くは自分勝手、好き勝手に生きているのだから。


 時に死士同士が己の感情のままぶつかり合うことも少なくはない。



 むしろ、今の野放し状態のその少年も広義の意味では死士と言える。

 ならば、きちんと彼をサムライの道に導くのも先達の役目でしょう。


 先生は甘すぎるし適当すぎるんです。


 だから私が、しっかりしないと!



 その学校の近くにあり、正門が見通せるビルの屋上。そこに私はいる。

 ここなら、学校から帰る多くの生徒の顔を確認することが出来る。


「カメラ、希望通りの場所に設置してきたよ」


「ありがとうございます。無茶をいきなり、すみません」


 屋上に一人の女性が姿を現した。

 私と同じくらいの年齢の女性だ(ちなみに私は19歳)


 私と同じ大学に通う人だが、彼女はサムライではない。刀も士力もあつかえないが、士力は感じることの出来る、サムライをサポートする従者と呼ばれる者達の一人である。


 直接死士とは戦えないが、情報収集や戦闘後の後始末。さらに怪我の治療などなど、様々なサポートを担っており、私達サムライにいなくてはならない存在だ。


 ただ、今回私の手伝いをしてくれたのはその彼女だけだった。



「いいのいいの。亜凛亜の頼みなんだから」


 からからと、彼女は笑う。



「はい。これが設置したカメラの映像」


 彼女がスマートフォンを取り出し、その画面を私に見せてくれた。

 四分割された画面には、それぞれ学校の出入り口が表示されている。


 これは彼女が設置してくれたカメラからの映像だ。

 私の頼みで、私がいるこの場所以外で出入りできる校門が写るよう設置してもらったのである。


 彼女はそうした電子機器やカメラに強く、有事の際の情報収集やカメラでの確認などを得意としているのだ。


 今日ここで見つからなかったら、今度はそっちで録画されたのを確認する。


 もちろんここでも出入りする生徒達を録画していますよ。



「でも、亜凛亜が言うことがホントなら、もっと人員を割いてやるべきことだと思うんだけどねぇ」


「私もそう思いますが、言って信じてくれたのはあなただけなので」


「いや、あたしも信じてないけどね。友達だからつきあっただけで」


 彼女が、やれやれと肩をすくめた。


 まあ、信じられないのも無理はないと思います。

 だから他の人の手助けも得られず、私が一人で動いているわけで。


 持つべきものは友達ですね。



 授業終了の鐘が鳴り、生徒達の帰宅がはじまった。


 昨日見た制服は間違いなくここのものであり、彼が歩いてきた方角から考えても、この学校で間違いはない。



「その子の顔がわかれば、私も一緒に見つけられたんだけどねー」


「似顔絵は渡したじゃないですか」


 私に言われ、彼女は私の描いた似顔絵をとりだした。


 私会心の一作。

 そこには、昨日見たあの子の特徴を見事に捕らえた似顔絵があった!


「いや、さすがにこの似顔絵で探そうってのは無理でしょ。なんとか目が二つあって鼻が一つで口が一つあるくらいしかわからないレベルなんだから」


「完璧な特徴じゃないですか」


「どっからそんな自信出てくんのさ」


 おかしい。この、ザッ、普通! って感じのオーラはこれ以上ないほど表現できていると思うのだけれど。


 なのになぜか、ため息をつかれた。

 何故だろう。



「……出すとこ出したら間違いなくあんた画伯って呼ばれるわ」


「画伯なら名誉なことですね」


「この子は……」


 呆れられてしまった。意味がわからない。



「まー、そうやって意固地になって似顔絵のプロ頼らないから、一人でやることになってんだけどね」


「うぐっ……」


「それで正確な輪郭や目鼻立ちがわかれば、あたしの顔認証ソフトでぱぱーっと見つけられたかもしれないのに」



 彼女の言葉に、少しだけ自分が折れそうになる。


 でも、大丈夫です。だって私は、サムライだから!



 なに。彼の通うこの私立高校は大手有名大学に進むため日々勉学に励む進学科から、スポーツエリートを集め育成するスポーツ科。そしてその道のエキスパートを育てる工業科に商業科。そして誰でも入れる普通科と、底辺から頂上まで満遍なくそろう、1学年だけでたった千人を軽く超える程度の高校だ。



「この時代にこの人数抱えているんだから、すごいわねぇ」


 彼女の呟きが聞こえるが聞こえない!



「そんな人数の中からたった一人の人間を見つけるんだから、そう容易いことじゃ……」



「あ、いた」



「……なくないの!?」


 私の言葉に、彼女が驚いた。



「今校門から出てきました。あの子です」


「さすがサムライねぇ」


「ははは。そうでしょうそうでしょう」


 さすがに偶然ですけどね!



 私は裸眼で。彼女は双眼鏡を持ってその方を見る。



 昨日見た時間は夕方だったから、あと数時間出てこないかと思ったが、今日は学校終了後すぐ校門から姿を現した。

 部活などはやっていないのだろうか? まあ、それは今はどうでもいい。



「本当に、普通の子ね。あ、でもちょっとかわいいかも」


 あの子を視線で捕らえ、素直な感想を述べる。



「しっかし、どー見てもフツーの子ね。普通サムライって、あたし達が見てもどこか浮世離れしているってのに」



 確かに、改めて見ると、本当に普通の子だ。


 顔を知らなければ、間違いなく誰も気にも留めないほどの、平凡普通の気配しか感じられない子だった。


 私も顔を知らなければ、気にも留めなかっただろう。



「ですが、普通だからこそ、普通じゃないのかもしれません」


 これが完全に士力を一般人と同じにした『気殺』の状態であり、それを日常的に行ってすごしているのならそれは異常なことだ。


 サムライにとって士力をずっと抑え閉じこめるというのは、例えるならばずっと息を止めて生活するようなもの。

 そんな生活、普通ならば不可能である。



「それで、どうすんの? 捕まえる? 張り倒す?」


「そんな物騒な手段いきなりとりません」


「ならどうすんのさ」


 彼女がむーっと不満げに口をつぼめる。



「直接問い詰める。と言いたいところですが、今の段階ではとぼけられたらそれまでです。ですから、まずはあの子のことを調べましょう。サムライであるならば、なにか逸話を残しているかもしれませんから」


 確かめるべきは、彼が先生を助けられたか否か。サムライかどうか。


 サムライならば、例え隠していたとしてもなんらかの逸話が周囲に残っているはず。

 なので、まずはサムライかどうかを確認し、それから問い詰めても遅くはない。


 存在が確認できたのだ。彼がどこに住み、どんな名なのか調べるのもサムライの権力を持ってすれば簡単なことだ。


 まずは、彼がどんな人間かを調べよう。


 先生が言うほどの実力者であれば、すでにマークされていた可能性も十分ありえる。



 私達は顔を見合わせうなずき、彼を調べるためそのビルをあとにした……




──亜凛亜──




 彼のこれまでの経歴と、家族構成を調べた。


 サムライの権力を使えば、これくらい容易いものだった。

 その気になれば、教育学部でもない私が彼の高校へ教育実習生としてもぐりこむことだって可能である。


 まあ、今は誰も信じてもらえていないから、そこまでの許可は出ないだろうけど。


 それはさておき。



 彼の名は、『片梨かたなし つかさ



 祖父(父方)の代からこの地に住む核家族で、記録上は一人の例外を除いて『普通』の一家だった。


 父は普通のサラリーマンで、母は専業主婦。そして、一つ年下の妹が一人。



 もちろん、普通でない例外とは、この片梨士君のこと……ではなく、彼の妹のことだ。



 名は、『片梨かたなし 彼方かなた


 彼女は普通とは程遠い突然変異。いわば、天才だった。



 とんびが鷹を産むと言えばいいのだろうか。運動、学業に関しては文句をつけるところはなく、いわゆるテストを受ければ100点確実。身体能力もその年代ではずば抜けているという有様だ。


 学校の成績以外もスバ抜けている。

 プロ棋士と戦える将棋大会にたまたま参加し、プロ棋士を逆に倒してしまったという逸話があったり、スポーツにおいては海外からいくつもの種目のスカウトがやって来たという記録もあった。


 現在中学三年(兄と同じ学校の中等部)で、全国模試などは受けていないが、受けていれば間違いなく一位をとるだろうと言われている。

 本人は兄と同じ高校へ行くのに必要ないと、模試を受けるのを避けているようだ。


 そうして注目されるのがわずらわしいと思っているのかもしれない。


 彼女に関して言えば、サムライの素質があるかもしれないと報告が上がってきていたほどである。



 一方、肝心の士君にそういうことは一切ない。



 平凡。普通。どこにでもいる少年。

 それが、片梨士君だった。



 調べた記録から見れば、突然変異は妹だけであり、他の家族に特出すべきところはまったくないと言えるだろう。

 スカウトすべきは妹の方であり、兄は相手にする必要などまったくないと断言できる。



 そして記録上、士君に関する怪しい逸話などは確認できなかった。


 周辺を調べれば、幾つか誘拐未遂事件や強盗未遂事件などが起きているが、どれもただの勘違いや自爆で解決しており、広義の意味で言っても、この地は平和そのものといったところだった。


 もっとも、これら大事件になりそうだった小さな事件の裏に彼が関わっていた。という可能性は否定できない。

 どれも彼の生活圏で起きそうになった事件だし、一般人に知覚されない、士力を操れる者ならば、人々に気づかれず解決することも不可能ではないからだ。


 しかしこれは、私の憶測や願望でしかなく、彼がサムライであるという証拠にはならなかった。



 確実な事実は、彼の妹が天才。神童と呼ばれる存在であるということだけだった。



「……これが事実だとすると、あの子徹底的に力を隠して生活してるってことね」


「そうなりますね」


 共に彼のことを調べた彼女がううむと唸る。


「これであの子がサムライだとすると、尻尾を掴むの容易なことじゃないし、絶対認めようとはしないと思うんだけど」


「確かに」


 私もうなずく。



 今までそうやって密かに生きてきたのなら、人の見ている前でボロを出すとは考えにくい。


 ありえるとすれば、今回と同じく姿を現さねば人の命を助けられないほどのどうしようもない危機の時。


 だが、そんなことが都合よく起きるわけもなく、私達が引き起こすわけにもいかない。



「ふっふっふ」


「どうしました?」


「あたしにいい考えがあるってことよ!」


「いい考え、ですか?」


「そう! あんたは言ったじゃない。士力をずっと抑えて生きるのは不可能だって。なら、あの子はどこかでばれないように息抜きしているはず。となれば、人の見ていないところでなら見れるってことよ!」


「……どういうことですか?」


 誰も見てないところなら見てるって。



「ふふっ。それはね……」



 私には思いつかない発想を、彼女は見せた。


 それは……と躊躇することになったが、民のため早急に確かめる必要があるんでしょうと押し切られてしまった。



 そもそも私達サムライの集団は、国家を裏から支える屋台骨の一つ。


 死士の脅威から人々を守る正義の集団だ。その中で、より安全かつ迅速に平和を守るため、サムライはいくつか超法規的手段をとることも許されている。



 それが……




 ……



 …………




「戻りました」


 私は、食べ物などを買い物袋に入れ、道に停めたワゴン車に乗りこむ。


「お帰りなさい。全部正常に作動してるよー」


 中で待つ彼女が出迎えてくれた。


 ワゴンの中には多数のモニターが並べられ、そこにはある家の中が映し出されている。



 これは、あの少年。士君の住まう一軒家に仕掛けられた隠しカメラからの映像だった。


 家人が留守になった間に、サポートの彼女が仕掛けてきたのだ。



 そう。誰も見られない場所でなら、彼とてサムライとしての力。士力を秘密裏に纏っている可能性が高い。


 その可能性の最も高いパーソナルスペースと言えば、自分の家であり、自分の部屋なのだ!



「……しかし、いくらなんでもこれはやりすぎでは?」


 家の中を映すモニターを見て、私は思わずそう口に出してしまった。


「なに言ってんのさ。今さらでしょ。登下校とか監視したりとかしてるんだから」


「うっ」


 その通りだった。

 そういう意味では、確かにその通りで、反論のしようがない。


「死士かもしれないんだし、元々サムライにはこれくらいのこと認められているんだから言いっこなしよ」


「……」


 確かに、はるか昔は公儀隠密と呼ばれる者達が潜入し真偽を確かめていた時代もあったと聞く。


 その手段が人間が直接侵入することでなく機械に代わっただけなのだから、問題はないはずだ。

 元々、サムライはこのくらいの超法規的手段は許されているのだ。だから、大丈夫!


 私は後ろめたさを振り払うよう、そう結論づけた。



「そうですね。彼がサムライでなく死士ならば大問題ですからね。しかし、よくもまあこんな数をあの短い時間で。数が多い分見つかりやすいとかありませんか?」


 彼の部屋の中や廊下、洗面台など、家人がほんの少し留守にしていただけだというのに23個ものカメラが仕掛けられていた。

 これだけ仕掛ければ、一つくらい雑になっていてもおかしくはないと思うが……



「ふふっ。そう言うと思って仕掛けた場所の写真も撮ってきたよ! さあ、どこに仕掛けてあるかわかるかな!」



 いたずらっぽく彼女は笑い、設置したという場所の写真を見せられた。


 設置前と設置後の写真がある。どうやら作業後戻すため参考にするための写真でもあるようだ。


 デジタル写真なので拡大、縮小も思いのままで、細部までじっと見せてもらったが、サムライである私でさえ、それがどこに隠してあるのかさっぱりわからなかった。


 小さな穴はあるとのことだったが、壁と同じ色、模様にしてあるのだそうだ。



「さすがですね」


「こういうことしかあたし達は出来ないからね」


「ありがとうございます」


「いやいや、礼はまだ早いって。問題はむしろこれからっしょ」


「そういえばですね」


 カメラを仕掛けただけではまだなにもわからない。


 彼が何者なのか。それを確かめるためなのが今回の目的なのだから。




 こうして、私の監視生活がはじまった。




 一日目。二日目と。別に変わったことはなかった。


 どれだけ監視しても、普通の少年と変わらぬ生活を彼は送っていた。

 怪しい行動は欠片もない。


 勘違いだったか? と、早くも思った時。異変が起きた。



 じっ。



 彼の私室以外の場所。洗面所に仕掛けられたカメラをじっと見る人影が現われたのだ。



 それは、彼の妹。


 片梨彼方。


 天才という噂のあった彼女が、なにかをいぶかしむよう、カメラに視線をむけている。


 そこに顔を近づけたり、遠ざけたりと、明らかにその場所を怪しんでいた。



 洗面所。とりわけ鏡の前というのは、人が最も素顔をさらしやすい場所でもある。

 ゆえに仕掛けられたわけだが、まさかサムライと疑われる彼以外の人間に怪しまれるなんて!


「まさか……」


「そんな、ありえない。あたしの偽装を、ただの子供が見破るなんて……!」


 感覚が研ぎ澄まされる、サムライの私でさえ気づかなかった彼女の偽装。


 その偽装を、ただの子供が気づくなんてありえない。


 でも、彼女は明らかに、戸棚にあるムースや薬、歯磨き粉の容器ではなく、その後ろにあるカメラをはっきりと見ている!



 天才と評されているのは伊達ではないということ!?



「なにしてるんだ?」


 そこに、監視対象でもある士君もきてしまった。



「あ、兄さん。これ……」


 妹が、仕掛けたカメラを指差す。


 彼もそこへ視線をむける。



 すると、彼はあちゃー。と顔をおさえた。


 やっちまった。という、苦い表情だ。



「え? 兄さん気づいてたんですか?」


 妹が兄の反応を見て驚く。



「ちょっとあってな。こういうのはさ、気づいても気づかないフリするのが優しさなんだよ」


「むっ」


 士君が呆れたような声をあげたのを見て、妹は不機嫌そうに頬を膨らませた。


「でも、見つけちまったのはしかたがない。母さんには内緒にしとけよ」


「え? でも……」



「あとは俺に任せればいい。お前はいつもどおり、普段どおりに生活すればいい。忘れろとは言わないが、気にしなくていい」



「……」


「わかったか?」


「……わかりました」


 しぶしぶとだが、彼女はうなずき、洗面所を去っていった。


 士君に背を向けたその表情は、どこか、悔しそうだ。



 なんとなく、彼女の気持ちもわからないでもない。


 この少年は彼女の安全を考えたのだろうが、彼女は戦力外と思われたのが納得できないのだ。



 彼はその背中を見送り、やれやれと肩をすくめ、こちらに視線をむけた。



 カメラごしに、私達と目があった気がする……



「せっかく気づかないフリしてやったのに、なんでこんなわかりやすいところに。見逃すのは一回だけだからな。次見つけたら、どうなっても知らねーぞ」




 ぞっ!



「っ!」

「~~ぅ!」




 その言葉の瞬間。私達の背筋が凍る。


 呆れた態度の中放たれた、警告の一言。


 それは、サムライの私でさえ思わず恐れを抱くほどの脅し文句だった。



「う、うそよ。一体、いつから気づいていたというのさ……?」


 彼女が歯をぶつけ合わせながら、信じられないと口にする。


 自分がもっとも得意とする分野のことを見破られた上、あんなことを言われたのだ。

 サムライを知り、サムライでない彼女にすれば、その恐怖は途方もないものだろう。


 だが、彼には気づいたそぶりなんてまったくなかった。


 本当に、一体いつから……?



「……まさか、最初から?」



 ありえない。と思いつつも、心の底でそれを完全に否定しきることができなかった。


 むしろ、十分にあり得る話だ。

 対岸から発動を控えた死士の士力を感じ取り、一瞬で弱点を見つけるその慧眼。


 それほどの規格外ならば、監視の目に気づかない方がおかしい!



 ずっと気づかなかったのではない。


 彼は、あえて、今まで気づかぬフリをしていたのだ!



 その気になれば、いつでもどうにかできた。

 彼の態度は、そう言っている。


 士力が見えない得体の知れない相手がこれほど恐ろしいとは思わなかった。


 たたずまいは圧倒的格下だというのに、勝つイメージが欠片もわかないなんて……



 だ、だが、これで一つ確定する。


 彼は、間違いなく。サムライだ。

 それも、とんでもないサムライだ……


 真の実力は欠片もわからないが、士力を使わず鎧谷を倒し、彼女の技術を見破る。そんなことが出来るのは並の人間では不可能。すなわち、サムライ以外ありえない!



 私は、それを確信した!




──ツカサ──




 学校から家に帰り、部屋から洗面所に戻ると妹の彼方が戸棚を凝視していた。


「なにしてるんだ?」


 そんな姿を見れば、当然声をかける。



「あ、兄さん。これ……」


 俺に気づいた彼方が、戸棚にあったあるビンを指差した。


 俺はそれに視線をむけ、あちゃー。と顔をおさえた。



 なんてものを。なんてものを見つけてくれたんだ妹よ。



「え? 兄さん気づいてたんですか?」



 俺の態度を見て、それについて俺は知っていたとわかったのだろう。

 驚いた表情をして振り返った。


 ああ。知ってるよ。知ってて家族には黙ってたんだよ。



「ちょっとあってな。こういうのはさ、気づいても気づかないフリするのが優しさなんだよ」


「むっ」


 俺の皮肉に、あいつはちょっと不機嫌そうな顔を見せた。


 いや、お前は確かに頭いいけど、そういうデリカシーかけてるからさ。



「あとは俺に任せればいい。お前はいつもどおり、普段どおりに生活すればいい。忘れろとは言わないが、気にしなくていい」



「……」


「わかったか?」


「……わかりました」


 あまり納得してないようだけど、彼方はうなずき、洗面所を去っていった。


 女のお前にはわからないかもしれないけど、面子ってのは大事なんだぞ。


 これは、ホントに気づかないであげるのが優しさなんだ。



 俺はあいつを見送ると、やれやれと肩をすくめてそれに視線をむけた。


 戸棚にあるそれは、俺の見間違いではなかった。



「せっかく気づかないフリしてやったのに、なんでこんなわかりやすいところに。見逃すのは一回だけだからな。次見つけたら、どうなっても知らねーぞ」



 思わず愚痴が出た。


 俺の視線の先にあるそれ。




 それは、父さんがこっそり愛用している『育毛剤』だった。




 時々隠れるようにしてなにかしていると思えば、それを頭にふりかけ、祈って禿げるなと詠唱して念じているのだ。



 隠れてやっているのだから、これやその行為は家族に見られたくないモノなんだろう。


 そりゃ、普段気にしてないそぶりをしているのに実は気にしているなんて知られたくないに決まってる。



 そこまで気にするもんなのか? と思うが、それは実際髪が薄くなってこなくてはわからない危機感なんだろう。



 俺は優しいから、気づいても気づかないフリをしていた。


 現に今まで、彼方には気づかれていなかった。



 今日の朝それをやって片付け忘れたんだろう。

 ひょっとすると、母さんにその存在はすでに知られているのかもしれない。


 いや、母さんはそのあたりには疎いだろうから、多分大丈夫だ。きっと。知らんけど。



 とりあえず、前に父さんが戻していた棚に戻してやろう。



 父さんも片付け忘れたことに気づかなければ、疑心暗鬼になることもないし、誰も言わなければそれもわからない。誰も傷つかない。

 きっとこれが一番いい方法だと、俺は思う。


 ったく。今回だけだからな。見逃すのは。




──亜凛亜──




 彼も洗面所から去り、プレッシャーから解放された私達が最初にした行動は、カメラの受信を止めることだった。


 これは、彼の言葉に屈したからではない。


 気づかれたのだから、監視を中止する。それは当然の判断だ!



 ワゴンの中で、大きく息をはく。



 やっと、あのプレッシャーを感じなくなった。



「ど、どうする? や、藪をつついて蛇を。いや、龍を出したなんてこと、ないよね?」


「ない。とは思います」


 震える彼女を慰めるよう、私は口を開いた。


 彼の言葉を信じるなら、今のは警告。すなわち、これ以上続けなければ彼女に被害が行くことはなくなる。

 ここまでわかったのだから、これ以上彼女に協力を求めるのも酷だった。


 あとは、サムライ同士の対話となる。



 私の言葉を聞き、彼女はほっとしたように見えた。



「それで、これからどうする?」


「……少し考えさせてください」



 さて、問題はこれからだ。


 彼が先生を救った謎の少年というのは間違いない。


 だが、肝心の彼がサムライなのか死士なのかというのはさっぱりわかっていない。

 士力を見ればその性質から、多少どちらに振れているかはわかるけれど、彼から士力は欠片も発せられていないのでその判別はできない。


 となれば、直接接触するという選択肢になる。



 顔をあわせ、話す。



 だがこれも、警戒された今、良い手ともいえない。

 とはいえ、このままなにもせず彼を見逃すというのもまたありえない。


 正体不明のサムライを野放しにするということもできないからだ。


 応援を呼ぼうにも、今の段階では最初と同じく誰も信じてはくれないだろう。



 先生を助けたという恩義もあるから、敵対するのは避けたい。

 出来るなら、サムライの側へ誘いたい。


 だが、初手を完全にミスしてしまった。


 この挽回は、容易ではない……



 うーんと頭をひねりながら、私は一度頭を冷やすため、ワゴンの外へ出る。




「……あなたですね? ウチを監視していたのは」




「っ!?」



 出たところで声をかけられた。


 夜の帳も降り、街灯によってスポットライトのように照らされた光の中へ、一つの影が姿を現す。



 それは、神童とも報告のあった彼の妹。片梨彼方だった!



「……簡単な推理です」


 私が何故。と思わず口にする前、彼女の方が先に口を開いた。

 その口調は、確信と自信に満ち溢れていた。


「洗面所に仕掛けられたカメラはかなり小さなものでした。壁と棚の位置を考えれば、外に有線を引く事も難しい。ならば、映像を飛ばし、受信する方が効率的です。ですが、あのタイプは画質を維持するとなると、受信範囲は狭いものとなります」


「……」


「となれば、盗撮するため近くにいるのは必定! さらに、あのカメラの質と数から考えて受信するための設備も大掛かりになります。今我が家の周囲に人の潜める空き家はありませんし、そんなことに協力する人もいません。ならば、必要な機材を積んだそれ相応の広さのある車に乗るしかないというわけです」


 その視線は、私の降りてきたワゴン車に向けられた。


(この子……!)


「あとは、この時間帯の住宅に不釣合いで見たことのない車を探すだけ。そこに今まで一度も見たことのない条件にぴったり合致するワゴン車。ならば、怪しいと思うのも当然でしょう! そして、車の中にあった多数のモニター。もう言い逃れはできません! 観念しなさい!」


 彼女の口ぶりから、自分の周囲にある家々の家族構成などは見て把握できているのだろう。

 当然、普段停めてある車や歩く人などもしっかり把握しているのだ。


 そしてあたりをつけ、私が出てきた際逃さず車の中まで観察し、確信を持って姿を現した。


 常人ではそのようなこと容易くは行えない。


 どうやら私達は、この子のことも侮っていた。



 そもそも、彼女もあのカメラを見つけたのだから、並の少女ではなかったとわかっていたはずだ。

 なのに、その兄の凄さに霞み、こうなる可能性を見落としてしまっていた。



 彼女は今、私達を盗撮犯かなにかの犯罪者かと疑っている。



 いけない。ここで彼女と敵対するのはさらなる悪手。


 彼女の敵と認識されるということは自動的にその兄とも敵となること。


 まだ彼が死士であるとわかっていないこの段階でそうなっては大きな失策だ!



 なんて才能溢れた子達なのよ、もう!



 この間コンマ2秒ほど。私は心の中で頭を抱えていた。


 どうする。一体、どう……


 ……あれ?



 そして、気づく。



「あの小さな情報からそこまで正確に推測するのは驚きを隠せません。ですが、わからない。そこまで推理できて、なぜあなたは一人なのです?」


 そう。この場にいるのは彼女一人だけだった。


 彼女の兄はおろか、盗撮犯を捕まえる警察もいない。

 周囲にある気配が、それを私に教えてくれている。


 彼女は、誰も引き連れず、一応の武器と思しき傘のみを持ってここにやってきたのだ。



 それは、周囲をよく観察し、記憶できる天才にあるまじき行為に思えた。



 私の問いに、彼女はふん。と鼻で笑った。



「なぜ? 簡単な話です。盗撮犯程度私一人で十分! 兄さんの手を煩わせるまでもありません!」



「……っ!」


 この子っ……!


 その答えで、私は二つのことを理解した。



 一つは、彼女にはサムライの才能があるということ。


 彼女が感情を発露した瞬間、その体から発せられた熱いとさえ感じる力。それは、閉ざされた扉から漏れ出た士力の波動だった。


 私の目には、一瞬彼女の周囲が歪んだようにも見えた。

 まるで陽炎のように、なにかがその周辺に立ち上ったのです。


 これは、ああ、やっぱり。と、驚くことではない。

 むしろ、安堵さえ感じてしまうほどだ。


 あの少年がサムライであるのなら、その妹である彼女にもその才能があっても不思議ではない。


 天才。神童とまで呼ばれた彼女なのだから、この才能の発露は当然とも言えた。



 まだ扉を開いていないとはいえ、そこから漏れる士力の恩恵があるのだ。


 普通に考えれば、いくら天才とはいえ細腕の女の子が盗撮犯を捕らえようと考えるのは無謀。

 現実を見えていない、自信過剰な挑戦としか言いようがない。


 しかし彼女にしてみれば、屈強な男にすら勝つ自信と勝算が十分にあるのである。


 同じ士力を纏うサムライでなければ、例え格闘のプロでも彼女に勝つのは難しいだろう。

 それが、サムライの源とも言える士力の恩恵なのである!


 それほどの力を持つのだから、盗撮犯程度一人で捕まえられるとやってきても不思議はない。むしろ、当然!



 どれほど修行を積んでもこの状態にさえ到達できない者が多い中、それを師もなく実現させているとは、まさに天賦の才。天才と言っていいでしょう。



 妹でこれなのだから、すでに士力の扉を開いているだろう彼はどれほどの実力を隠しているというのだ。



 そしてもう一つ。


 私にとって、こちらの方が重要な事実だった。


 彼女の『私一人で十分! 兄さんの手を煩わせるまでもありません!』という言葉。

 私はそれを聴いた瞬間。彼女にシンパシーを感じました。



 私は、ひとえ先生に一人前のサムライと認めて欲しくて彼の真実を探しはじめた。


 一方彼女も、認めてもらいたいのだ。その、兄に。


 だから、彼女は盗撮犯を捕まえに来た。


 私と同じく。尊敬する人に一人前と認めてもらいたいがために!



 あの時彼が任せろと言った際、悔しそうな表情を浮かべていたのはそういうことだったのね。


 師に認められたいという気持ちがあった私だからこそ、彼女の気持ちがよくわかる。



 そう思った瞬間。私は口を開いていた。


「わかります」


「なにがですか?」


 流石の彼女も、私の言葉の真意が読めず、小さな戸惑いを見せました。



「あなたの、気持ちが。だから、聞いてください。カメラを仕掛け、生活を覗き見したのは認めますし謝ります」


「……あっさりと認めますね」


「ええ。あなたとはお話をしたいと思いまして。なぜ、私達があなたの家を。いえ。あなたのお兄さんを監視していたのか。その理由を」


「やっぱり、兄さんを……」



「あなたは、知りたくありませんか? あなたのお兄さんが見ている、あなたが知るべき、あなたの知らない世界のことを……」



 ぴくっ。

 私の言葉に、彼女の動きが止まった。



「どういうことですか……?」



 私の言葉に、彼女が食いついてきた。


 やはりあなたは、私と同じ。

 はるか遠くを歩く背中を必死に追いかけ、追いつこうとする者同士。


 その気持ち、私がわからないはずがない。



「あなたになら、感じられるはずです。この力を。この波動を。ならば、理解できるはずです。何故私達が彼を観察したのかも!」


 その瞬間、私は体のウチに秘めた士力を解放した。

 常人ならば、私の姿は幻のように消えてゆくだけだろう。


 だが……



「っ! な、なんなの、これ……!」



 私の士力を感じ、この身から発せられる風を視認している!


 私の姿が、はっきりと見えている!



 彼女は私から発せられる士力を肌で感じ、その姿をしっかりと目で感じ取った。

 私の体が揺らいだや半透明になったではなく、士力を纏う私の存在をしっかりと認識している。


 まだ、扉を開いてもいないというのに、なんて『目』ですか。


 やはり、彼女は天賦の才を持っている!



「どうです?」



「……わかりました。話を聞きましょう。それ如何によって、そちらの処遇を考えます」


 彼女は私にむけた傘を降ろした。


 やはり、彼女にもなにか心当たりがあるのだ。

 疑問に思う、サムライのみが引き起こせる、ただの人から見れば不可解極まりないことが!



 彼女の協力が得られるならば、彼の考えもわかるかもしれない。

 例え死士だったとしても、その妹がサムライとなるならば、彼もサムライにむかえいれられるかもしれない!!



「ええ。話しましょう。あなたのお兄さんが見ている世界のことを。私達、サムライのことを……」


「サム、ライ……?」



 彼女が、戸惑いの声をあげた……




 こうして私は片梨彼方と出会った。



 規格外にして例外とあつかわれることとなった彼を除いて、歴代最高のサムライと呼ばれることとなる、彼女と……




──片梨彼方──




 皆、私のことを天才と言います。


 確かに私は、一度教えられればそれ以上のことが理解出来ますし、一度見たことはまず忘れません。

 運動だって大人の人より出来るますし、その気になれば三階くらいの壁も壁を蹴って軽々と昇れます。


 出会う人出会う人みんなが、私を神童だ。天才だと褒め称えて近づいてきます。


 でも、私は自分のことを、ほんの少し人より優れているだけの女だとしか思えません。

 自分が天才だとは、欠片も考えていません。



 なぜなら、本物の天才というものを、私は知っているから……



 私には一人、兄がいます。


 本当の天才というのはきっと、あの人をさす言葉なのだと私は思っている。



 多くの人はただの人だとか、妹に才能を吸われた男と陰口を叩きますが、それは大きな間違いです。


 その人達は、兄さんの本質がまったく見えていない。

 兄さんの本当の凄さを欠片もわかっていない。


 兄さんは、私にさえ見えない世界が見える、私などがおよばない場所に立つ人なんですから。



 私は知っています。



 この街で何度かおきそうになった、未遂事件を。


 誘拐未遂事件。強盗未遂。火事場に子供がとり残された勘違い事件。

 それらは、誘拐される前に犯人が捕まったり、強盗犯が強盗しようとして車で自爆したり、火事場に子供が残されているかと思ったらそこにすでにいなかったり。


 すべて大事になりそうな事件ですが、結果として小さな事件で終わって笑い話にしかなっていないことです。

 他にも、車で子供が轢かれそうになったと思ったら勘違いで運転手が急いで出てきたら轢かれた子供なんていなかった事故や、子供が高所から落ちるのを見たかと思ったら勘違いだった事故など、色々あります。


 それらの事件、事故が起きたさい、私達一家はその近くにいて、私はその時の兄さんがなにをしていたのかまったく把握していません。


 未然に防がれたとわかったあと、兄さんはふらりと戻ってきて、いつもどおりにすごしていました。



 皆は気づいていませんが、あの事件、事故は兄さんが未然に防いでいたと私は確信しています。



 どうやったのかはわかりませんが、兄さんは私もまったく気づけなかった事件、事故の予兆を事前に察知し、なんらかの方法で解決していたんです。


 

 この疑問に、突然現われた盗撮犯。いえ。サムライの亜凛亜さんが答えをくれました。


 亜凛亜さんの言葉で、すべての謎が解けました。



 サムライ。


 士力を纏い、信念に基づき、無辜の人々を救う存在。

 士力をあつかえない者には知覚さえ出来ない、人知を超えた者達。



 つまり兄さんは、その士力を操れる、影で人々を助ける影のヒーロー。サムライだった。



 そして私も、そのサムライとしての資格があると教えられた。


 大人にも負けない身体能力は、その才能の賜物だと。



 つまり私も、兄さんと同じ世界に立つ資格がある。


 そう、亜凛亜さんに教えてもらったんです!

 


 亜凛亜さんの手を取れば、私もサムライの世界へ行ける。


 これでやっと、兄さんの世界を追いかけられる!

 私はそう確信したのです。



 私は悦びに打ち震え、亜凛亜さんの手を取り、弟子入りを懇願しました。



 もう、ウチを盗撮したことは水に流します。

 サムライの権限ならば、それを訴えても無意味というのもわかりましたし。


 そんなことより、兄さんが信念を忘れ、我欲に走っておのれのために力を振るう死士かもしれないという疑念には異議があります!


 すでに幾度も事件や事故から人達を守ってきた兄さんがそんなことをするはずがありませんから!

 絶対にないと、私が保証します!


 まあ、兄さんがなぜ力を隠しているのか。は私程度では見通すこともかないませんが。


 そんなことより、サムライの道です!



 この日私はついに、兄さんの見ている世界へ足を踏み入れたのです!


 ずっとずっと追い続けた兄さんの背中。



 その影すら見えないと愕然とさせられたのも当然です。

 兄さんの歩いていた場所は、常人では決してたどりつけず、決して見えない世界にあったのですから。



 でも、これで私も同じサムライとして、兄さんと同じステージに立てる。

 兄さんの背中に追いつける!



 兄さん。いつか私は、兄さんの背中に追いついて、その隣に立って歩くことを誓います!



 だから、そこで待っていてください!


 必ず追いつきますから!



 こうして私は、サムライの世界へ足を踏み入れた。


 私の新しい生活が、今、はじまるっ!




 おしまい

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[良い点] 何故こんなにもアイデアが思いつくのだ笑笑 [一言] 何故みんな感想を書かない 正直全話オモロイ笑笑 読み止まらなくて感想書けなかったわ(だからみんな書かないのか) 謎にこのタイミングで書く…
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