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サムライトリップ・イノグランド  作者: TKG
第2部 復活の邪壊王編
43/88

第43話 サムライ対サムライ


────




 馬を駆り、マックス達は伝説のサムライが一人、シュウスイが眠るという氷室のある場所を目指していた。


 そこは王都から徒歩一日。馬を走らせれば半日とかからぬ位置にある誰も名を知らぬような小さな村。

 こんなにも王都から近いところにかのサムライはおろかダークロードまでもが眠っていたなど誰も想像もしていなかったことだろう。


 馬を乗り継ぎ、マックスとトウヤはツカサ達と別れた街からその村へ到着する。

 彼等がいた街は王都からとは違い、馬でも一日以上かかる位置だったが、彼等はその道を通常の半分以下の時間で走り抜けていた。


 到着の時は夕暮れ。黄昏時であった。

 もうじき日が落ち、夜となる時間。


 通常ならばこの日は宿を探すというのが通常の選択だろう……



 だが。



「さあ、村に着いたぞ! その氷室に案内するでござる!」

「その通りだ!」



 やっとのことで到着し、ぜいぜいと息を切らせる案内の元山賊の男に二人は声をかけた。

 馬を走らせどおしだったというのに、サムライの二人はまだまだ元気のようだ。



「ひい。はあ。ちょっと待ってくださいよダンナ方。もう夜だ。明日にいたしましょうよ……」



 体力にあふれ、辻斬りまがいのことを続けていた男だというのに、二人のバイタリティに完全に圧倒されていた。



「問題ない。どうせ氷室の中は暗闇。今でも朝でも同じことよ!」

「その通りにござるな!」


 最初はマックスが声を出し、トウヤが肯定したが、次のさっきはトウヤが行こうと言い、マックスが肯定の言葉を返した。

 つまり二人ともまだまだ元気ということである!


「ちょっ、ダンナ方、ちょっと……」


 二人は疲れて息を整える男の手をつかみ、そのままずるずると強引に引っ張って歩き出してしまった。

 氷室はたいてい山のふもとに開いた洞窟の中にあるものだから、そちらの方へむかって歩いている。



(さ、さすがサムライ。なんて元気だ。これならシュウスイ様の願いをかなえられるかもしれねぇ)



 圧倒的な元気さを見て、男はそう思った。

 噂どおり。いや、噂以上のサムライの凄さに期待が高まる。


 彼等ならば自分の恩人の願いをかなえられるかもしれないと手ごたえを感じた。



 ただ、彼等が自分を引っ張って進んでいるのは、彼の知る氷室とはまったく別の方向なのだが……



「わかりました。わかりましたから。案内しますからせめて自分の足で歩かせてくださいよ! 大体行く方向全然違うんですから!」


「なんと!」


 マックスが驚いて足を止めた。

 男は立ち上がり尻についたほこりを払うと、サムライの体が眠る洞窟にむけ歩き出した。




 ……



 …………



 ………………




 村の森を抜け、広い草原の広場をこえ、山の裾野にぽっかりと広がった洞窟へ彼等は入ってゆく。


 たいまつに火をともし、男の指示の元頭上に気をつけ、飛び出すこうもりに驚きながらも奥へと進んでゆく。

 氷室というだけあり、その中はひんやりと涼しい空気が流れていた。


 深い場所へ潜れば潜るほどその寒さは増して行く。



 どれほどの深さまできただろうか?

 そこは地下の湖全てが凍りつき、天井からは大きなツララがぶらさがっていた。


 その氷の湖をわたり、洞窟のもっとも深いところ。



 そこに、彼等はいた。



 洞窟内にそりたつ巨大な氷の壁。

 巨大な一枚の氷の板の中に、三十前の髪の長い青年が眠っていた。


 目を瞑り、その左の顔は長い前髪に隠れてよくは見えない。

 だが、その顔は整っており、すらりとした鼻先と美しいカーブを描くアゴは誰が見ても美形と判断できた。


 サムライと呼ばれる者達の戦装束を身に纏い、その右手には抜き身の刀を持っていた。

 服のところどころには血のような黒いしみが残り、破れている箇所もある。


 特にぎょっとするのは、左手だった。そこはまるで闇を固めたかのような色となっている。



 そこが、元山賊の男が言ったダークロードが入りこんだ影響なのだろうと彼等は思った。



「シュウスイ殿!」

 かつて見たその姿とまったく同じ姿のまま眠るサムライを見て、マックスは声をあげた。


『おお。まさしくシュウスイ殿。このようなお姿となり。おいたわしや……』

 トウヤの刀たるじいがシュウスイの姿を見て悲しみの声をあげる。


「この方が十四名の志士が一人。凍結のシュウスイか……」

 唯一彼のことを知らぬトウヤがその姿を見てつぶやいた。



「シュウスイ様。それにダークロードのダンナ。あなた様方の最後を満たす者達をお連れしました」


 元山賊の男がシュウスイにむけ声をかける。


「……」

「……」

 二人がじっと、氷の中で眠る青年を注視する。


「……」

「……」

 氷の中の青年は、ぴくりとも動かない。


 だが……



『そうか。来たか。私達のわがままをかなえるため、わざわざ感謝の念を禁じえません』



 声が、響いた。

 まるで頭の中に直接響いてくるような声がマックス達の耳に聞こえてきたのだ。



『何者かはわかりませんが、ありがとうございます』


「いいえ。感謝の言葉などいりませんシュウスイ殿! 覚えておいでですか? 私です。マックスです。あなたに刀のツバをいただいたマックス・マック・マクスウェルです!』


『マックス!? あのマクスウェル領のマックス君か! 覚えているよ。君との約束、守れず申し訳なかった……』


 約束。とはサムライとしての才能があったマックスを見こみ、決戦後戻ってこれたら彼にサムライの技を教えようと約束していたことである。

 しかしシュウスイはダークシップでの決戦の折、ダークロードとほぼ相打ちとなり、その体を奪わんと同化してきたそれをここで氷漬けとなり封印することとなったのだ。


「よいのです。あれから十年。私も立派なサムライとなれました! 今度はその恩をあなたに返す番。あなたの最後の願い、そして、残念なことですが死に水をとらせていただきます!」


『それは心強い。君に最後を看取ってもらえるならば、私も思い残すことはないね……』


 どこか優しく、安堵した声が頭の中に響き渡った。



「お任せください!」



 マックスが力強くどん。と胸を叩いた。



『……』


「っ!」

「これは!」


 シュウスイ以外の気配が感じられ、マックスとトウヤはとっさに警戒の構えをとった。

 二人とも思わず刀に手をかける。


 どこか禍々しい、この世の生き物は放つとは思えないイビツな気配。

 ソレがシュウスイの隣に現れたのだ。


 場にいる全員が即座に確信する。これこそが、世を滅ぼそうとした『闇人』の気配。

 シュウスイと相打ちになり、結果的に今まで命を支えた彼の半身!



『突然の気配に驚くのはわかる。だが、安心して欲しい。今の彼は敵ではない。さあ、君も挨拶するといい。我等の最後の願いをかなえてくれる者達だ』


『……我、じき、滅ぶ。最後、願い。戦い、散る。お前達、感謝』

 片言であったが、その感謝の念ははっきりと伝わってきた。


 禍々しい雰囲気の中に、どこか穏やかな気配を感じさせる。

 それは、十年の間人と共にいたせいなのか、それともこのダークロードが特別なのかはわからない……


「『闇人』に感謝されるとは、不思議な感覚にござりますな」


 マックスも少し戸惑ってしまった。

 相手は言葉もなく襲いかかってきた世界の敵。


 その敵に感謝されるなど、想像もしていなかったからだ。


 しかし、『闇人』の中でも最上位の存在となるダークロードはきちんとした知性を持ち、独自の考えで動けることをマックスは知っている。

 かつてテルミア平原でマックスが倒した者は、ダークカイザー封印後もそれを復活させようと行動し、カイザーを倒しうるサムライを抹殺するためこの国を二分させかねない策をめぐらせた。


 そうして人類に敵対し続けてきたそのダークロードから感謝の言葉が出るとは本当に驚きの事実であった。



『彼等も死が近づけば多少の歩みよりもするというものだよ』



『我等、敗れた。軍勢は、ない。残るは我のみ。ゆえに、残るは、我が、願いのみ』


 どうやら、シュウスイの中にいるダークロードは主たるダークカイザーが敗れたことにより、自分達の戦いは終わったと考えているようだ。

 ゆえに、全てが消えて終わる前に、自分の願いをかなえたいということなのだろう。



 二人の願い。それは……



『私と彼の願いは一致している。彼が消え、私の命もつきる前に、戦って散りたい。戦場で散ることこそ。それこそが我等最後のわがままだ』


 改めて、願う本人がそれを口にした。

 元山賊の男が言ったことは嘘ではなかった。



「わかりもうした! では早速戦いましょう!」

「そうだな!」


 マックスもトウヤも刀に手をかけた。



『いや、気持ちが急くのもわからないでもないが、戦いは明日にしよう』


「拙者達ならばなんの問題もござらんが?」



『ふふっ。安心しなさい。時間がないといってもこの一晩で消えたりはしない。むしろ君達とは万全の状態で戦いたいのさ。一晩休み、君達一番の強さで我等と戦ってくれた方がより楽しめる』



 マックス達の頭の中でシュウスイとダークロードが笑ったように見えた。

 最後なのだから最大限に楽しみたい。


 そういう心情が感じ取れる。



「ほう。余裕ですな」


 マックスがにやりと笑みを返した。

 トウヤの方を振り返ると、彼も大きくうなずいた。


「わかりました。一晩休み、万全完璧の状態でお相手いたす!」



『では明日の朝、朝日が昇るのと同時に室の近くにある広場へ。そこで一戦まみえようではないか!』

『戦う!』



「了解いたしました。では、明日!」

「万全の態勢で挑ませてもらいます!」


 マックスとトウヤはきびすを返し、洞窟の入り口へ戻っていった。




 洞窟の中ほど。


「だ、ダンナ方。なんでそんなにあっさり引き下がったんです!?」


 追いかけてきた元山賊の男が驚き覚めやらぬ様子で声をあげた。



「あのままやっていれば拙者達はあっさり負けていたかもしれんな」

「ああ」


 口を開いたマックスと、それを同意するトウヤ。

 それを聞き、元山賊の男はまた驚き飛び上がるかと思った。


「ど、どういうことです? あっちは一人なんですから、二人で戦えば……」

 突然口を開いた二人に、男は戸惑いながら聞く。



「言葉のままだ。どちらも力がつきかけているとはいえ歴戦の猛者。見えている姿が一人などと考えると、痛い目を見るぞ」


「そう。あの二人は一つの体に二つの意識があるはずだ。だというのに、あそこにあった気配は大きな気配は一つしかなかった」


「? どういうことですか?」

 マックスとトウヤの言葉に、男はわけがわからないと首をひねる。



 それは、一つの体に入る二つの意識が互いに喧嘩していないということだった。

 消滅を間近にむかえたサムライとダークロードは互いの願いのため協力している。それは、あの二つがまさに一つであり、同じ体を使って意思の疎通ができず、ヘマをやらかすようなことは絶対にないと悟れた。


 シュウスイという一つの体だというのに、実質的には二人分の存在を相手にしなければならない。


 ゆえに、一人で戦いを挑むという選択肢は二人になかった。

 二対二となってやっと互角。いや、出会ったばかりの彼等で相手にするにはこちらの格が圧倒的に不足していた!


 そのために、最高の戦いができるよう、マックス達は時間を貰ったのだ。


 この一晩という短い時間。

 それは、マックスとトウヤの二人でどう戦うのかの作戦を立て、連携のための意思疎通を高めろという時間でもあるのだ。



 それは、このままでは我等は満足できぬという遠まわしの拒絶!



 ダークロードが消えればシュウスイも死ぬ。

 それはかの魂さえダークロードと深く結びついているがゆえのことだろう。


 シュウスイの死もまた、避けられぬ定めだ。

 最後の戦いとなるからこそ、最高の戦いを求める彼等のわがまま。



 だからこそ、万全の体制で立ち向かわねばならない。



 それを理解しているがゆえ、マックスもトウヤもおとなしく引き下がったのだ!

 全力で戦い、本気で勝つために!



(そ、そうだったのか……)

 あの短い会話の中でそのような駆け引きがあったことなど元山賊の男はまったく気づかなかった。

 これが人を超えた者達の腹の探り合いなのかと、驚きを隠せなかった。



「ゆえに、トウヤ」

「ああ。マックス!」



「拙者達は早急に互いを知らねばならぬ。一心同体の彼等に対抗するために!」

「ああ!」


 あちらは声を出さずとも互いの行動が理解できる。

 それに対抗するには、互いの刀の特性やサムライの性格。なにが得意でなにが苦手なのか。それらのことをしっかり把握しなければならない。


 彼等は出会ったばかり。これではろくなコンビネーションもとれない。

 そのために、彼等は互いのことをよく知る必要があった。


 その上で、どう戦うのか作戦を立て、実行する。


 そうしなくては、この変則的な二対二の戦いに勝利することなどできない!


 例え勝つ必要はないとしても、それでも全力をとして当たらぬ理由もなかった。むしろ、相手は世界最高の使い手。今出せる全力を超えてぶつかる相手だ。胸を借りるという気持ちでなく、超える想いで戦いを挑む相手だと彼等は考えていた!



「だから、拙者の質問に、素直に正直答えて欲しい」

「いいだろう。対して俺の質問にも素直に答えてもらおう」


 二人は洞窟の中を歩きながらうなずいた。



「ではまず、幼き頃のツカサ殿は一体どのような幼子だったのだ!?」

「今のツカサは、一体どんな好青年になったんだ!?」


「……」

「……」



 二人は無言になり、早めていた足をとめ、にらみ合った。



(そりゃそうだ。二人してなに聞いてンだい)

 聞いてた元山賊の男は呆れてしまった。



「君とはすぐわかりあえそうだ!」

「あんたとは、すぐわかりあえそうだ!」



 二人はがっちりと固い握手をかわした。



「それでいいんですかぃあんたらはあぁぁぁぁ!?」


 男の絶叫が洞窟内に響き渡ったが、それはとても些細なことである。



 こうして二人は、共通にして最高の話題。ツカサを通じ、一気にわかりあえたのだという。


「さすがツカサ殿! 幼き頃よりお優しかったのですね!」

「さすがツカサ! 技を極めても皆を想うとは!」



 その日二人は、宿で作戦会議をしながらツカサ談義に盛り上がったとか。




────




 次の日。


 夜明けを前にして、マックスとトウヤは見届け人となる元山賊の男を連れ、洞窟近くに広がる広場に姿を現した。


 マックスはいつも通り、腹にさらしを巻き上半身裸に羽織と袴。金色の髪はリーゼントにきっちり決めて、腰に昔から愛用するロングソードと自身の半身となるサムライソウルを腰に下げての登場だった。

 ロングソードは明らかに邪魔な一品だが、この姿が今のサムライとしてのマックスの姿であるから、そのありのままを見てもらおうとあえて装備してきたのである。


 トウヤも、彼とであった時と同じくおとぎ話の桃太郎をイメージさせるようないでたちで、腰には彼のお目付け役である刀、通称じいをさげている。


 二人ともやる気満々で日の出を待っている。



 遥か遠くに見える東の山脈に朝日が顔を出した。

 地平線よりほんの少し上の高さに、小さな光が輝きを照らす。


 広場へ日がさしこむのと同時に、氷室のある山から光の矢が空に放たれ、流星のように広場へ落ちた。



 ずんと大きな音が響き、土煙が上がる。

 もうもうとたちこめたそれが薄れ、彼等がその中心へ目を向けると、そこには一人のサムライがいた。


 むき出しの刀を右手に持ち、サムライの戦装束を纏った髪の長い青年。

 昨日彼等が氷の中で見たシュウスイその人だった。


 土煙が完全に晴れ、サムライがゆっくりと目を開く。


 その左の目は、『闇人』の証ともいえる真っ赤な瞳であった。

 シュウスイは鞘を失ってむき出しとなっている刀を地面に突き刺し、長い髪を紐でポニーテールにまとめた。


 さらに上着をはだけさせ、左肩を露出させる。


 その左の素肌は、右手と同じように闇色のきらめきに覆われ、それは胸の半分までを包みこんでいた。これにより、その半身をダークロードが彼を支えているというのがはっきりとわかった。


 シュウスイが突き刺した刀に右手をかけると、闇に塗られた左の掌から一本の剣が姿を現した。



 ダークソード。

 かの『闇人』が使う、刀と同じく一本につき一つの能力を持つ強力な武器である。


 ダークロードはその闇の剣を四本有しており、そのうちの一本が今左手より現れたそれということになる。



 右手に刀。左手にダークロードを握ったシュウスイは、マックス達に視線を送り、ゆっくりと構えをとった。


 刀を前に出し、ダークソードを引くようにして右半身を彼等にむけた二刀流の構え。

 剣をたしなんだものならば、その構えを見ただけで裸足で逃げ出すほどのプレッシャーを放つシロモノだった。


 刀とダークソードという知る者ならば泣いて逃げ出す組み合わせに、さらに一流の構えが加わったのだから、失禁逃亡しても誰も叱ったりはしないだろう。



 だが、マックスとトウヤもシュウスイが武器を構えたところで示し合わせたよう、同時に刀を抜いた。



 戦意も失わず闘気を見せた彼等に、シュウスイとダークロードは嬉しそうに笑う。



 四人の臨戦態勢の姿を見て、見届け人となる元山賊の男はその場を離れ、安全な場所へ避難する。

 行く末を見届けるつもりはあるが、流石に彼は命までかける気はない。


 その彼が、広場の外へ出た。



 それが、合図となった。



「「いざ尋常に」」

「『勝負!』」



 三人は同時に駆け出した!




 戦いが、はじまった!




 間合いがつまると、トウヤとマックスが同時にシュウスイに斬りかかった。

 その一撃に加減はない。


 当たれば間違いなく相手を真っ二つに出来る一撃をシュウスイに向け放ったのだ。



 ギギィン!



 金属同士が激しくぶつかる音が響き、二人の攻撃はそれぞれ刀とダークソードに受け止められた。


(っ!)

「くっ!」


 攻撃をしが側であるマックスとトウヤが苦悶の表情をあげる。

 初手はためしの一撃であるが、予想と違う結果が返ってきたからだ。


 相手は右手と左手に剣を一本ずつ。


 となれば両手で振るった一撃にパワー負けするのが必定。



 しかし、そのどちらもが片手で軽々と受け止められてしまったのだ。驚くのも無理はない。


 

 ダークロードと融合したシュウスイは、パワーも片手で二人分。いや、それ以上の力が感じられた。



(想定のうちでもあったが、どちらも完全に受け止められるとは!)


 マックスは心の中で舌打ちをし、次の攻撃にうつった。



 マックスはシュウスイの頭を。トウヤは足元を狙う。


 上下への攻撃。サムライの速度ならば、どちらもを目で追うのは不可能な速度である!



「むっ」

 やるな。と唸る声をシュウスイがあげる。

 それに呼応し、ぎゅるん。とシュウスイの目が左右別々に動いた。


 通常の瞳であるシュウスイの目はマックスを。真っ赤な瞳であるダークロードの目は足元を狙うトウヤを。


 別々に見たのだ。



 スカッ!



 二人の攻撃は空を切った。

 シュウスイは体を倒し、足元は宙に浮かび、頭は地面の方へと落ちる。

 地面と体をほぼ水平となり、マックスとトウヤの刃の間に体を滑りこませたのだ。


 そうして二人の攻撃をかわした。



 にいっ。

 シュウスイは、笑う。


 刀とダークソードに力をこめ、そのまま体軸を中心に勢いよく回転する。



 ぎゅん! と音が響くほどの回転と共に、白と黒の刃が攻撃を放った二人を襲う。



「っ!」

『若!』


 ギィン!

 かたいなにかがぶつかりあった音が一つ響き、マックスとトウヤは大きく飛び退いた。



「はあ、はあ」

 トウヤが荒い息をはく。


 彼の首の横に、半透明の盾があった。

 彼の刀。じいの特性。盾の力による障壁だった。


 ダークカイザーには一瞬で破られたそれであったが、ダークソードの一撃はきっちり防ぎきっていた。

 先ほど響いた音は、一人かわしきれなかったトウヤを守るため発動され、闇の剣とぶつかりあったモノだったのだ。


 トウヤはそれを確認し、冷や汗を流しながらも、闘志を衰えさせることなく刀を構えた。


 同時に、マックスもシュウスイを挟みこむようにして刀を構えた。



 左右からの挟み撃ちという形となり、シュウスイは二本の剣を一人ずつにむけ、背後を取られないよう体を動かした。


「……」

「……」


 じり。じりと一定の間合いを保ちながら、二人は円を描くようにして動く。


 二人で挟んでいるというのに、その間合いはなかなか詰まらない。



 しばしの睨み合いがはじまった……!



(な、なんて攻防だ)

 見届け人である元山賊の男は、攻防の動きが止まったところでやっと息をつくことが出来た。

 彼の目ではなにが起きたのかまったく見えず、どのような攻防が起きていたのかさっぱりわからなかったが、幾度か音が響いたのだけは認識できた。


 あっという間の時間の中、信じられない数の音が響いたのを理解し、自分など到底相手にならない高すぎるレベルの存在だと改めて気づかされた。


 しかし、立会人の男は不思議に思った。

 この戦いのレベルはとてつもなく高い。目でも追えないくらいだ。しかし、人知を超えたものではない。

 彼はサムライ同士が戦うのだから、もっともっとトンでもないモノで、目にもとまらぬ派手な戦いになると思っていた。


 だが、サムライ同士のぶつかり合いはただ速く、高度なだけで人間同士の戦いのように見えた。



 彼にそう見えてしまうのも仕方がないことだろう……



 彼が予想した地を割り空を裂くような大技は、同等のレベルの相手に出そうとするのは隙が大きすぎるのである。

 並の者から見れば、それさえ圧倒的速さの一撃であるが、彼等ほどのレベルとなるとそれさえ大きな隙と化す。


 派手な大技を放つとなると、敵に大きな隙が現れたまさにとどめにしか使えない。

 その隙を作るため、このぶつかり合いが存在するのだ。隙をうかがいながら、大技を放つための下地作りをし、それを互いに潰しあう。


 互いに技を潰しあい、隙をうかがうがゆえ、ただ見ている者には地味な戦いのように見えてしまうのだ。



 普通に剣を振るっているように見えるが、その裏では多くの大技の元が潰され、隙を作るための見えない戦いが繰り広げられているのである……!



 それでも、かつて山賊を率いていた男の目には信じられないほど高いレベルの戦いだった。

 派手さはないが、地味であるがゆえ、一撃一撃が恐ろしいほどに鋭い。


(これが、本当のサムライ同士の戦い……!)


 見ているだけで背筋が振るえ、額からは逆に熱い汗が流れた。



 十年前粋がっていた自分達がこうして生きているのは、彼等が自分達に慈悲を与えてくれたのだと、今になって心の底から思う。

 そして、改心して本当によかったとも……!




「……」

(あの刀の特性は障壁を張る盾の力か。なかなか厄介な特性を持つ)


 シュウスイの右の目。シュウスイ本人の意思を持った瞳が右側を動くトウヤの姿をとらえる。

 先の反撃を防いだことで、刀の力がわかった。


 盾の力。というが、使い方は攻撃を防ぐだけではない。

 あの力は力のおよぶ範囲内に透明から半透明の盾を自由に設置できるというものだ。大きさも硬さも自在であり、透明の盾を足元に設置し敵の足をひっかけたり、進路を妨害したりなど使い方は千差万別。


 さらに使い方を極めればその盾を用いて敵を斬ることさえ出来るともいうが、今の攻防を見るに、そこまでにはいたっていないように見えた。


 それでも、意思ある刀。じいの的確な防御はシュウスイにとって手ごわいサポートとなるのは目に見えていた。

 下手に打ちこめば、盾に防がれ左右から同時に攻められるという結果になる。


 ゆえに、慎重に攻め手を考えねばならなかった……




『……』

 ダークロードの目は、左側で構えるマックスの姿をとらえていた。

 金髪碧眼という、この地の人間だというのに、サムライの格好をし、刀を構える者。


 それは、十年前の戦いを思い出してみても、不思議な存在に見えた。


『(十年前には見なかった、新たな戦士……)』


 その姿を見て、ダークロードは思う。


 片言の彼であったが、どんどんと頭がさえてくるのがわかった。

 彼は戦いの高揚と共に、その基本性能がどんどんとアップして行くスロースターターである。



 口元が緩むのを感じる。


『(こいつは、強い)』


 確信する。

 不意をついた自分達の攻撃をしっかりとかわした。


 ふざけた格好にも見えるが、技を見れば彼はサムライに十分匹敵していた。

 刀の特性はまだわからないが、あの刀が本物だとすれば、彼は立派なサムライといえよう。


『(ならば……)』


 盾の力を使ったサムライ以上に警戒しなければならない。

 じりじりとこちらの隙をうかがう西洋のサムライを見て、ダークロードはマックスを観察する。




「……」

 トウヤはシュウスイをじっと睨む。


(じいの盾をいきなり使わせてしまった。これで我等の優位性が一つ失われてしまったことになる……!)


 首元を狙いきたダークソードをかわしきれず、じいの特性を使うことになってしまった。

 しかしあそこで防いでいなければ、トウヤは首と胴が泣き別れし、この戦いはすでに決着を迎えていただろう。


 そう考えれば、じいに感謝はすれど、恨み節を言えるわけがなかった。



 トウヤの刀の特性が敵に知られ、手の内が明かされたことにより、マックスとトウヤが不利になったのかと言えば実はそうではない。

 むしろ情報という面で言えばトウヤとマックスはかなり有利であった。



 なぜなら彼等は、シュウスイというサムライを知っているからだ。

 その強さと刀の特性などなど。彼の名と技は、十四名の志士としてダークシップを追いかけたゆえ有名である。


 幼かったトウヤとてダークシップを沈めた英雄達の話を聞いて育った。

 ゆえに、その刀の特性までもを把握しているのだ。


 シュウスイの刀。

 その特性は凍結。


 すでにその例は一度見ていると思うが、自身の体を氷に閉じこめ、時が止まったかのように凍らせていたのはこの刀の力だ。

 刀の触れた範囲を凍らせ相手の動きを止めたり、氷を生み出しそれを飛ばしたりすることも出来る力。


 使い方を極めれば、まさに時さえ凍らせるとてつもない刀である。



 しかし、トウヤ達はその恐ろしさをすでに知っている。

 その対処法もわかっている。


 凍らせようとする力には、体内の『シリョク』を燃やせば戦いの間ならば耐えることは十分可能だし、氷の力も出来ることはわかっている。

 二人は最初から体内で『シリョク』を燃やし、その凍結を無効化させている。


 それはシュウスイの力を知っているから出来ることだ。



 彼は十年前から氷の中に封印され、時が止まっていた。それにより衰えこそないが、同様に成長もしていない。



 ならば、名の知れたシュウスイの力はトウヤ達にとってほぼ丸裸と言えた。



 これは、トウヤの盾の力を知られたとしても情報の上ではまだ互角。

 いや、それでもまだ彼等の方が有利であろう……!



 それでも、うかつにはとびこめない。

 刀の特性を知っていようと、その剣技はサムライの中でも最高のレベルなのだから。


 一瞬の油断が命取りとなる。


 ゆえに、慎重に、それでいて大胆に攻める必要があった。

 そのために、トウヤは相手の隙を狙い、じりじりと間合いを詰める……




「……」

 マックスは自分にむけられた闇色の刃に注目していた。


 サムライの刀と同じく、なんらかの力を持った剣。それを『闇人』最高位のダークロードは四本もの数を所有している。

 それはそれだけダークロードが強いということをあらわし、同時にそれを使うということは、サムライさえ苦戦を強いられる存在だということだった。



(そのダークソード。それが今、一体何本残っているかが問題だな)



 シュウスイの左手に握られたダークソードを見て、マックスはそう考える。


 少なくとも一本はダークシップの戦いで砕けていたとマックスはみている。

 ダークカイザーが倒され、その祝いの祭りがはじまろうとしていた際、マックスはダークシップへ乗りこみ、生き残ったサムライ、トウジュウロウと改めて話をした。

 その時消えたシュウスイのところには、一本のダークソードが砕けた状態で転がっていたと思い出したのを聞いたのである。


 砕け、消えてゆくその剣を見てダークロードが滅んだと考えたようだが、ただダークソードが失われただけだったのが今回のことで証明された。


 ただ、シュウスイの戦ったダークロードからダークソードが一本失われているのはほぼ確定した事実である。

 あの場でダークシップが落ちるまで残っていたほどのダークソード。それはそれ相応の強さを持つ存在の持ち物に他ならないからだ。


 となれば、このダークロードの所有するダークソードは最低で三本。下手すると今表に出ている剣が最後の一本という可能性もある。


 しかし、先の推測もまだ希望的観測に過ぎない。

 実は四本全部残っている可能性もふくめ、マックスはこれからの作戦も立ててあった。



(そのダークロードと戦うことになるのなら、もっと詳しく聞いておけばよかったにござる……)



 マックスはトウジュウロウからもっとダークロードの持っていた闇の剣の力について聞いておけばよかったと後悔した。

 しかしそれも後の祭りだ。そもそもその時ダークロードと戦うなど夢にも思っていなかったのだから仕方のないことだろう。


 武器の力がわからずとも、彼等は戦わねばならないのである!



(いつまでも睨み合いをしていてもらちがあかぬな。だが、そろそろか……)




 睨み合いをするだけではらちもあかぬし戦いは面白くない。

 それは場にいる全員の考えだった。



 そして、このにらみ合いも、実はマックス達の一つの策でもあった。



 シュウスイの右をトウヤが、左にマックスがつき、間合いをとりはさみこむ。

 すでにシュウスイのまわりを回転するのはやめ、じりじりと遠い間合いの間といったりきたりしている状態だった。


 シュウスイも左右に敵がいるのだから、下手に飛びこむわけにもいかない。


 立会人である元山賊の男も、ゆっくりと高まってゆく場の緊張に耐え切れず、がたがたと体を震わせてしまっていた。



「……」

 じっとシュウスイを睨んでいたトウヤが、口元を緩めた。



 なにかある。とシュウスイが睨みを効かせたが、ソレは防ぎようはなかった。




 キラッ。




 トウヤがほんの少し横にずれる。

 その瞬間、少しの時がたち高くのぼりはじめた太陽の光がシュウスイの目に飛びこんだのだ!


「っ!」


 まばゆい光が彼の目を襲う。


 ほんの一瞬だが、彼の目が光に眩んだ!



 一瞬の隙。

 だが、彼等はそれを見逃さなかった!


 マックスとトウヤが同時に地をけり、シュウスイへ襲い掛かった。



 しかしダークロードの目はその光など関係ない。

 元々太陽を背にしたトウヤを見ていないのだから、そのような光に目が焼かれようがなかった!


 迫るマックスにむかい、その剣を振るおうとする。


「それはこちらも予想済みよ!」


 動こうとしたダークロードに、見えない盾が襲い掛かった。

 振るわれるダークソードが、マックスの邪魔を出来ぬよう攻撃をさえぎったのだ。


 トウヤがダークロードをおさえ、さらに死角からマックスが襲い掛かる。



 目の眩んだシュウスイは、この死角からの攻撃は防ぎようがなかった!



「はあぁぁぁぁ!」



 ガギィン!



 だが、マックスの一撃はシュウスイに届かなかった。

 マックスの刀は、シュウスイにあたる直前、見えない壁にはじかれ防がれてしまったのだ!


「なっ!?」

『こ、この力!』


 攻撃を防がれたマックスと、さらにその力を感じたじいが声をあげた。


 トウヤの視線がじいの盾によって阻まれたダークソードへむけられる。

 じいの視線も同じくそこにそそがれている。


 まさか。と思ったが事実だった。



 ダークロードの持つダークソード。その力は偶然にもトウヤと同じく盾の力だったのだ!



 シュウスイが刀を振りあげマックスを襲う。



 マックスはそれをバックステップで避け、同時にトウヤも大きく後ろへ跳んだ。

 トウヤのいたところも、透明の盾を避けたダークソードが振りぬかれる。



(まさかじいと同じ力を持っているとは。ダークロードはもっと人を苦しめる攻撃的な力を持っていると思っていたぜ)

 トウヤが黒く光る剣を見て、そう思った。


(はじめて見る。『闇人』が仲間を守ることなどなかったのだからな。今回とて実質自分を守ったようなもの!)

 マックスもダークロードの行動を見て思う。


 まさかあの片言のダークロードがこのような力を持っているとは予想外の極みであった。



 二人の猛攻を防ぎ、シュウスイは動きを止めた。



「……」

「……」


 二人はじっと間合いをとったまま警戒する。



「ふっ。ふふふふふ」

『くく。くくくくくく!』


 再び間合いが離れた直後、シュウスイが笑いはじめた。



『すばらしい。すばらしいな! 正面から堂々ときたかと思えば、太陽を利用しての目くらまし! ただ我等を楽しませ満足させるでなく、むしろ全身全霊をかけ勝つために挑んできている! これぞ戦! これぞ戦い!』


 ダークロードが饒舌に言葉をつむぎ笑う。


「なっ!?」

「に!?」


 いきなり笑い出し、片言だったのが饒舌になるのだからそりゃマックスもトウヤも驚きを隠せない。


 シュウスイの半分も少々苦笑し。


「驚いたろう。彼は戦いで高揚すると饒舌になるのさ」

 シュウスイが教えてくれた。



『立会人をあえて連れてきたのもどちらかが考えた策なのだろう? シュウスイの凍結の力は強力だが、強力すぎるがゆえ、サムライの力が使えねば早々に凍り砕けてしまう。お前達を相手に最初から無制限全力で凍らせにかかれば最初に凍るのはサムライの力を持たぬ者からだ!』


 ケタケタと笑いながら、ダークロードは解説する。


『これでは広場を凍らせお前達の足を塞ぐことは出来ぬ。サムライであり覚悟をしてやってきたお前達を手にかけるならまだしも、戦わず命もかけぬものを巻き添えにしてはサムライの恥と考えるからだ。そこまで読み、お前達はあえて連れてきた! その勝つために策をめぐらせる。すばらしい! 実にすばらしいぞ!』


 卑怯などとは言わない。

 彼は『闇人』。彼の辞書にそもそも卑怯などという文字はないのかもしれない。


 むしろ彼には全力で勝ちに来る彼等の姿勢により、満足のいく戦いが行えるその充実感と高揚感で一杯だった。



 だから、こうして頭の回転が速くなり、口も饒舌となる!



「ふふっ。私以外のサムライの前で彼が饒舌な姿を見せたのははじめて見たよ。君達と戦えて、私達は本当に幸せだ……」


 シュウスイもどこか嬉しそうに口元を緩めた。


 ちらりと、その瞳はマックスを見る。



(マックス。君は十年の時を経て本当に成長した。サムライとしてはまだ未熟であるが、その剣の腕は並のサムライにも劣らない。むしろ剣士としてはサムライに匹敵するほどの腕を持っているだろう。ここから『シリョク』をさらに高めれば、君は稀代のサムライとなるかもしれん)



 その輝かしい才能に最初に目をつけたのが自分かと思うと、シュウスイはどこか誇らしかった。

 ただ、あの日から自分で指導し、育てられなかったことが悔やまれてならない。


 だが、それでも十分!



(マックス。君は立派なサムライだ! だから……!)



 今回の策を考えたのはマックスであろうとシュウスイは考えた。

 それだけ彼は本気なのだから。


 あの策は、それだけ本気で自分達を倒しにきているという証拠だ!



『だから……!』

「だから!」



「『我等も本気で答えるのみ!』」



 シュウスイ達は覚悟を決めた。

 残り短い時間がさらに短くなるだろうが、それで散るなら本望。むしろ望むところだった!



『シュウスイ、これを使え!』


 ダークロードがつかさどるシュウスイの左腕から手にするモノとは別のダークソードが二本生えた。


 ずるりと前腕からこぼれるように現れ、一本はすでに折れ半分の状態であり。もう一本はそのまま地面に突き刺さる。

 折れた剣はそのまま地面に落ち力なく転がった。これは本気を出すためデットウェイトとなるモノを捨てたのだと誰もがわかった。

 しかし問題はもう一本。無傷のまま地面に突き刺さった漆黒の剣の方だ。

 それが地面に突き刺さった瞬間、その地面は突如として凍りついた。


 その光景を見て、見届け人をふくめた全員が驚く。



((氷のダークソード!))



 シュウスイの刀と同質の力!


 刹那、なぜこのダークロードとシュウスイが戦うこととなったのか理解することが出来た。

 同質の力を持つのならば、それぞれを打ち消しあい互角の戦いが出来る。


 シュウスイがこのダークロードを足止めすれば船の中で追うこともできず、シュウスイでなければこのダークロードの凍結を止められない。


 ゆえに、この二人は戦わねばならなかった。

 盾の特性が重なった偶然とはまったく違う、氷の力が集まったのは、いわば必然!


「かあっ!」


 手にした刀を一度手放し、地面に突き刺さったダークソードをシュウスイが空に投げた。

 クルクルと回るその剣に向け、刀を握り、その剣のおしり。柄頭に向け突き出した!



 ガチンッ!



 ダークソードと刀がぶつかる音が響き、連結したかのようにその刀剣は一本につながり巨大な剣へ変わった!



 それは、巨大な氷の剣であった。

 連結したように見えたのは、間に氷が生まれたからだ……!



 びゅぉ。と冷たい風がその剣から吹きすさむ。

 冷たい。と感じるほどだが、それだけでそれは今までの刀と違ったものだと確信できた。


 ぶん。と一振りすると、その振り回した範囲の空気が凍り、ダイヤモンドダストが舞う。



 マックスとトウヤはソレを見て背をぞっと凍らせた。

 今までは『シリョク』を燃やし凍結を防いできたが、氷のダークソードの力を得たあの刀の力に抗えるかわからなかったからだ。


 それほど強い力を感じさせるのだ。あの巨大な剣は!



 そしてなにより恐ろしいのは、その間合い。

 剣一本分間合いが広がったのだ。


 しかもそれを片手で振るうシュウスイの速度は変わっていない。剣の速度が変わらず間合いが広がったとなれば、それだけでシュウスイは有利となる。


 その剣を受け止めたとしても、かわしたとしても反撃の間合いに入れなければ一方的な戦いとなるからだ!



 いや、ただ受け止めるのはまずい。

 そのまま凍らされてしまう可能性があるからだ。


 間合いが広がりただでさえ厄介だというのに、さらに厄介になったというわけだ。


 二本分の氷の力。

 サムライとダークロードが共に戦っているだけでも厄介だというのに、力まであわせてきたら手の施しようのない強さになるのは当然だった!



『さぁ! いくぞシュウスイ!』

「ああ!」



 間合いの広がったシュウスイは、その氷の大剣を振り回す。

 速度は変わらない。いや、むしろ速度が上がっているようにも感じた。


 大剣が振るわれるたび、キラキラと輝く氷の結晶が舞う。


 見物する者にとってみればそれはとても幻想的な光景だったが、相対する二人にとってみれば氷の地獄を思い起こさせる光景だった。


 剣をふるう狭いが広い範囲のみの効果であったが、その間合いは非常に凶悪な範囲である。



 見物人が巻きこまれる位置まで移動すればこの凍結の暴風をおさえることも出来るだろうが、その立会人はシュウスイのいる背中側。

 そこへ行くには目の前に立ちはだかるシュウスイをこえねばならない。


 間合いの増えた彼を飛び越えるには空を飛ぶほどのジャンプ力がなければ無理だろう。

 サムライならば『シリョク』を用いてやってやれないことはないだろうが、空を飛べないマックス達では空中ではただのマトだし、バラバラに行こうとすれば各個撃破されてしまう。


 シュウスイとてそれを理解しているからこそ、ここでこの大剣をくりだしたのだ!



「さあマックスよ。その力を出し惜しみしていると終わってしまうぞ!」



 小さな氷の嵐の中、シュウスイは笑った。

 最後の手段は彼等の力がつきるまでしのぐという作戦もあったが、この猛攻にそのようなことを言っている余裕さえない。


 かすっただけで、体内の『シリョク』を急激に燃やし凍結を無効化しなければならないのだ。

 この消耗戦においては、下手をするとマックス側が負ける可能性さえある!



「マックス!」

「ああ!」


 ゆえに、二人は覚悟を決めた。


 別々に回避を行っていたトウヤとマックスが同じ場所に集まり、二人で刀を構えた。



「ほう」

『どうやら、彼等も覚悟を決めたようだね』

 饒舌となったダークロードが、彼等の考えを読み取った。



 それを感じ取った二人も、大剣を振り回すのをやめ、改めて構えをとった。

 自身の前に集まったマックスとトウヤにあわせ、シュウスイはダークソードを前に出し、長い氷の剣を体で隠すようにして構えた。


 盾のダークソードを前に出した構え。

 二人で挟んだ時、同時に二人を警戒したのと同じ構えではある……



 また、しばしの睨み合いがはじまった。

 静かな見えないつばぜり合い。


 息遣いのみが場に響くが、見えないなにかが空中でぶつかりあっているのが感じられた。


 張り詰めた『シリョク』が気合と共に間でぶつかってはじけているのだ。



 ごくり。

 見届け人である元山賊の男も息をのんだ。


 彼も感じていた。



 これで、この戦いも終わりを告げるであろうと!



 パァン!


 張り詰めた『シリョク』がついに大きくはじけ、大きな音を立てた。



 ダッ!


 その音が合図となり、マックス達が同時に斬りかかった。



 だというのに、シュウスイは彼等が動き出した直後に右手を動かした。

 いくら長くなったとはいえ剣二本分。その位置からではどう考えても刃は届かない。


 彼が動いたのはそんな距離からだったのだ!



 しかし……!



「氷が!」



 立会人である男は思わず声をあげてしまった。


 シュウスイの刀とダークロードの剣。そこにさらに氷の刃が足され、間合いがもう一段伸びていたのだ!



 伸びた刃により、動き出したマックス達にその一撃は当たる!

 体でソレを隠すように構えたのはこのためだったのである!



 マックスから横に薙ぐようにして、氷の刃が迫る!



「トウヤ!」

「まかせろ!」


 マックスの掛け声と共にトウヤは足を速め、マックスはそこで足をとめ踏ん張った。

 手にする刀を縦にして、それを盾にしてマックスは氷の剣を受け止める。


 ここで氷の刃をとめ、トウヤに道を作るためだ!



 ガギィ!



 鈍い音をあげ、マックスの刀。サムライソウルとその氷の刃がぶつかった。


 刹那、マックスの刀が氷に覆われる。

 触れただけで一瞬にしてその氷にとりこまれてしまったのだ。


 マックスはそのまま全てを凍らされそうになったが、瞬間的に『シリョク』を爆発的に燃やし、自身の体だけは凍らせまいと抵抗する。


 マックスとの拮抗により、氷の刃の進軍も止まった。


 その隙に、トウヤがシュウスイとの間合いを詰める。

 それを迎え撃つのはダークロードとなった左半身だ。


 闇色の剣がトウヤへ襲い掛かる。

 神速の振り下ろし。


 サムライ以外には知覚も出来ぬほどの速さがトウヤの頭を狙った。



 ギィン!



 迫る刃を、トウヤは無視した。

 防御は盾をつかさどるじいに任せたのだ。


 ゆえに、その刃はじいの盾が受け止める。


 トウヤに振り下ろされた闇色の刃の前に半透明の盾が現れ、その一撃を防いだ。



 強力な盾の力だというのに、その盾は半分以上切り裂かれたが、剣の威力はそこで止まり、止まった瞬間瞬時にその盾は元の形に戻った。

 その闇の刃を包みこむように!


『これでこの刃はもう振るえまい!』

 ワザと切り裂かせ、盾の中にダークソードを固定たじいが言葉をはいた。


 押しても引いても切れぬよう、全ての全力をこの一枚にかける!


 トウヤがさらに肉薄する。

 長くなった氷の刃は、ここまで近づかれればその長さと大きさから逆に足かせとなり不利になる。


 それを見越しての接近だった!



「あとはっ!」



 トウヤがシュウスイの体へ刃を振り下ろす!


 渾身の一撃。それがシュウスイへ迫った!!



 ギィン!


 しかし、その刃はシュウスイの体へ届かなかった。

 届かなかった理由は、トウヤを守ったのと同じ盾の力。


 ダークソードの力だった!



 先ほどじいが行ったダークソードの捕縛と同じ方法で、トウヤの刀も盾の中に絡めとられてしまったのだ!



「くっ!」


 トウヤが苦悶の声をあげた。


 次の瞬間、シュウスイが右の腕を振る。



 巨大な刃を形成していた氷が砕け、中から彼の刀が飛び出した。



 コレは二本の剣を氷でツギハギした刃。

 その維持をやめれば元の刀に戻るのも道理!


 元の長さとなれば、トウヤにむけて刃を振るうのも十分な長さだ!!


 刀を固定されたトウヤはその一撃をかわすことなど出来ない!



「実に、楽しい戦いであった……」



 この戦い、一人が倒れれば必然的に勝ちは決まる。

 二対一になっての逆転は絶望的な戦力差だからだ!


 勝利を確信したシュウスイは、その刃をトウヤにむけ突き出した。




 ギィン!!




 しかし、それもまた半透明の盾にはじかれ、そらされた。



『なっ!?』

(バカな!?)


 シュウスイとダークロードが驚愕に染まる。

 いくら盾の特性を持つ刀があるとはいえ、ダークソードと刀を同時に阻む強度を出すことは不可能。どちらか一本を阻むのが精一杯のはずだ。


 それはダークソードを持ち、同じ盾の力を持つダークロードが驚いていることからも裏づけがとれる。


 それでも二枚目をじいが出したというのなら、今度は最初のダークソードが自由となり、トウヤの体が切り裂かれてなければならない。


 だが、ダークソードはぴくりとも動いていない。

 いまだがっちりとじいの盾に絡められたままだ!



 ならばなぜ、ここに二枚目が!


「っ!」

『そ、うか!』


 シュウスイとダークロードは同時にそれに思い当たった。



(マックスの!)

『(マックス!)』



 彼の刀の特性がなにか関係していると!



 マックスの刀。

 サムライソウルの特性。


 それは、『融和』


 仲間の力を一つにまとめ、おのれで使うことの出来る騎士でありサムライであるマックスの力だ。


 発現したばかりの時はただパワーを上乗せするだけであったが、あの時より成長したそれは、身体能力だけでなく刀の特性さえも一時的に借り、マックスの力としてあつかうことができるようになっていた。


 その特性を利用し、じいの盾を一時的に借りうけ、サムライソウルは全力を持ってシュウスイの刀をはじいたのである!



 それを確信した瞬間、シュウスイの眼前の光が陰った。



 そこに……




 そこに、マックスがいた。




 氷に絡めとられた刀を放り出し、もう一本腰にさしたロングソードを引き抜いて。

 大きく振りかぶったマックスが、そこにいた。



「くっ!」

 シュウスイはなんとかそれをかわそうとするが、盾の力により刀を固定された彼等は動けなかった。

 刀を捨てる。という判断がとっさにとれなかったがゆえ、彼はそれをかわすことが出来なかった!!



 全力全開のパワーをその鋼にこめ、彼は横に倒したそれを思いっきり振り下ろす!!




 ドゴォン!!!!





 ……戦いは、終わった。





────




 戦いは終わった。


 マックスの『シリョク』をこめた一撃を食らったシュウスイは、地面に小さなクレーターを生み出し、その中心で大の字に倒れていた。


 しゅうしゅうと薄い煙が上がり、その体が徐々に薄くなっているのがわかる。


 体がゆっくりと消えてゆく。

 それは、ダークソードの持ち主となり、この世界の理から外れたものの証でもあった。


 体の半分を『闇人』が支える彼の体も、それと同じ。

 力尽き、『闇人』が消えれば同時に彼も消える。


 その時がやってきたのだ……



 マックスは全力で振り切り、真ん中で折れてしまったロングソードを鞘に戻し、倒れたシュウスイを見おろした。



「……ありがとう」

『お前に感謝』


 瞳を揺らしながら、なんとかマックスを瞳に捕らえたシュウスイが言葉を告げる。



「若きサムライ達よ。君達のおかげで、私は満足して逝ける。戦って満足して死ぬ。サムライとしてこれ以上の誉れはない」

『同じ……』


「……シュウスイ殿!」

「……」


 マックスもトウヤも、涙をこらえ消えようとしている二人の戦士を見る。

 そこから目を離すつもりはなかった。


 誇り高い戦士の最後なのだ。最後の最後まで見届けねばならない!



「ふっ。こうしてまた君に出会え、死を看取ってもらえるのだから、人生なにがあるかわからないものだよ」

『俺、同じ力、あえた!』


 また片言に戻ったダークロードがシュウスイと共に喜びの声をあげた。

 じいがどこか複雑そうに笑い声を上げている。涙のこもった、笑い声を……



「拙者も、あなたに会えて本当によかった! あなたのおかげで、私はよき師匠にも出会えました! 本当に本当に、ありがとうございました!」


 マックスは深々と頭を下げた。


 サムライに憧れるきっかけを作った存在。

 そして、才能があるとツバを渡してくれた存在。


 十年の時を経て、そのツバは最高の師と出会わせてくれた。


 その師は、憧れの存在が出来なかったことをやってのけ、その新たな道中で憧れの人との再会を許してくれた。



 サムライに対して、マックスはどれほど感謝の念を訴えればいいのかわからなかった。



 その姿を見て、シュウスイは笑う。



「ふふっ。その最高の師は、きっと私の知るサムライの誰かなのだろうな。その彼が世界を救ってくれた。私は本当に、安心して眠れるよ……」

『我、悔しいが、満足!』



 シュウスイ達の目が、ゆっくりと閉じられてゆく。

 シュウスイの刀は、彼の魂の欠片。彼が消えればその魂たる刀も消えてなくなるだろう。


 シュウスイがいたと示すシロモノはなにも残らない。



 だが、マックスやトウヤ。さらにこの場にいる元山賊の男の記憶にははっきりと残っている。



 彼は今から死ぬが、決して消えるわけではないのだ……!



「それじゃあ、お別れの時間だ。おやす……」

『さら……』



 最後の言葉を言おうとした、その時だった……




 ずんっ!!



 ゆっくりと閉じようとしたシュウスイの目が大きく見開き、突然地面から生えた腕がその胸を貫いた!!


 驚きに見開かれた目は、自身を貫いた腕へ視線をめぐらす。



 背から胸を貫いたその腕は、光と闇が混沌と混ざりあう力の塊を掌に握っていた。

 それは、サムライと『闇人』の存在を表す概念的なモノ。


 サムライシュウスイのすべてと、ダークロードたる『闇人』のすべてを示すナニカだった。


 それが、地面より生えた掌の中にあった。



 マックスもトウヤも、あまりのことになにが起きたのか頭が理解しきれなかった。



 ほんの一瞬。刹那の時間の間理解できず、固まってしまっただけなのだが、その腕にはその短い時間があれば十分だった。


 ぐっと、その手が掌の中にある光と闇の珠を握りつぶす。



 その瞬間。その腕からその根元までその存在が満たされるように広がったのが見えた。

 同時に、クレーターの中にあったシュウスイの体がチリになって消える。


 それは、サムライと『闇人』のすべてがそれに奪われたことを意味していた。



 消えてなくなるはずの力が、すべてそれに奪われたことを意味していた!!



「な、なにするござー!」

「なにをしている貴様ぁ!!」


 マックスとトウヤがその腕に怒りをあらわにした。


 どちらも髪を逆立て、まさに怒髪天を突くといった様相だ。

 当然だろう。死に逝く者の尊厳を汚すようなマネをしたそれに怒りを見せない理由がない。


 むしろ、怒りに駆られない理由が彼等に存在しなかった!!



 腰の刀を引き抜き、その腕にむかって斬りかかろうとする。



 しかし、同時に空から色が消えた。陽光から力が感じられなくなり、さらに天からなにかが降ってくる違和感を覚える。


 それでも、マックスもトウヤはその腕に斬りかかるのをやめなかった。

 今残された力全てを使い、逝くべき魂を奪ったそれを倒そうとした。



 だが、ダメだった……!



 彼等の攻撃をさえぎるよう、空から巨大な腕が振り下ろされた。



 激しい衝撃が生まれ、その巨大な腕が地面に突き刺さる。

 小さなクレーターがあったそこに、大きなクレーターが新たに生まれる。



 暴風が吹き荒れ、マックスもトウヤもその衝撃に吹き飛ばされる結果となった。



 どくん。

 天から降ってきた腕に、二人は見覚えがあった。


 先ほどシュウスイの胸を貫いた腕とそっくりだった。

 違うのはサイズだけ。


 それ以外はまったく同じ腕が天より降ってきたのだ!



 どくんっ!

 地面にめりこんだそれが、大きく脈動する。


 それは、先ほど人間サイズの大きさの腕が光と闇の珠を取りこんだ時その中に満ちた光りと同じ。

 今度のそれは、巨大な腕全てに満たされたのだ……!



 腕が引き抜かれると、空には大きな人型のシルエットが現れた。



 マックスもトウヤも、そして見届け人である元山賊の男もそれがなんだか知っていた。



 邪壊王。

 古の眠りから目覚めた世界の反逆者の姿だった。



 それが、人の尊厳を無視して力を奪い去った張本人……!



「な、なんてことだ……!」

 空を見上げ、マックスは唇を噛んだ。


 その時彼が想像したのは、最悪の事態だった。



「貴様、サムライとダークロードの力を吸収したな!」


 トウヤの叫びがこだまする。



 しかし、答えは返ってこなかった。



 空に現れた巨大な影。邪壊王はマックス達のことなど眼中にないかのように世界にむけて宣戦布告をはじめたからだ。



「我は、ここに宣言する。我が宿敵キングソウラの血を引きし者がおさめるこの国を攻め滅ぼすと! 明日の昼、天に上る太陽が姿を失ったその時全ての終わりははじまると思え。いかなる場所へ逃げても無駄だ。我は滅ぼし、ここに新たな世を生み出す。覚悟せよ。絶望せよ! 貴様等の命もそれまでだと!!」



 明日。邪壊王が王都を目指し攻めてくる。

 答えは返ってこなかったが、その宣言だけでマックス達は一連の答えを得た。


 聖剣があるこちらに対して、絶対的なあの自信。


 それはつまり、あの邪壊王はサムライと『闇人』の力を手にしたことを意味している。



 サムライの圧倒的なパワーと、そして、魔法の一切効かない体……!



 これでは例え聖剣ソウラキャリバーに力が戻っていたとしても、その力は一切邪壊王に通用しない。

 魔法では一切のダメージを与えられなくなってしまったからだ!



 マックスの想像した最悪の事態。

 ソウラキャリバーの力が通じず、いまだ『シリョク』が全回復しないツカサが戦うことになること。


 それで世界は救われるだろう。


 しかし、ツカサがどうなるかわからない。

 彼なら、自分の命をもちいてでも世界を救おうとするからだ。



 世界に生きる全ての人のために全てをなげうった少年が、世界のために死ぬなんてそんなの認めるわけにはいかなかった!



 一方的な宣戦布告も終わり、空から邪壊王の姿は消えた。



「こ、これは一大事にござる。大至急お知らせにむかわなければ!」



 ツカサも心配だが、なによりシュウスイの最後を邪魔した邪壊王は許せなかった!

 世界の命運をかけた一戦がこれよりはじまるというのに、ここでのんびりと寝転んでいるわけにいかない。


 その思いもあり、マックスとトウヤは即座に飛び起きた。

 それどころか、かつてサムライに破れ更生した元山賊の者達も立ち上がり王都へむかおうと村から飛び出してきていた。


 見届け人であった元山賊の男も、シュウスイの最後を邪魔され怒りに燃え、元部下であった彼等を率いて最後の戦いに参加するためマックスと同道を求めた。


 拒否する理由のないマックス達は、大きくうなずき王都へとむかう。



 邪壊王がサムライと『闇人』の力を手に入れたという、大切な情報を伝えるために!

 そして、その対策を一刻も早く練るために!



 世界の行く末を決める最後の戦い。

 その時が刻一刻と迫っていた。




 おしまい

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