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初めての戦闘&合成

 食事を終え。

 採取からの帰り道、突如としてシュテルが警戒態勢をとった。

「来るぞ! 気をつけろ!」

 おお、なんとテンプレなエンカウントボイス。

 予想通り、私達は戦闘に突入した。なるほど、地上は天上ほど安全じゃないっていうのはそういうことね。

 って、私、武器も防具も何も持ってないんですけど! だ、大丈夫かな!?

 飛び出してきたのは、二匹のモンスターだった。

 ……これ、モンスター、なのかなあ?

 透明の柔らかそうな球体に、つぶらな瞳。地面をころころと転がっている。

 若干の愛嬌すら感じさせる。攻撃されても痛くなさそうだ。

「心配するな。バイヒだ。モンスターとしては最弱の部類に入る」

 言いながら、シュテルがショートソードを構えた。十一、二歳の少年が剣を構える姿は少しびっくりするものがあるけれど、しかしその構えはしっくりと馴染んでいて、使い慣れていることをうかがわせる。

「ドラクエで言えばスライムだな」

「いきなりのメタ発言は止めて!!」

 危ない危ない。世界観が揺らいでしまう。

 シュテルが一匹のバイヒに先制攻撃。バイヒは一撃で倒れる。

 確かに、弱そう。

 続いて、私も叩いてみる。うーん、やっぱり私では一撃では倒せないか。

 反撃をされたけれど、クッションで叩かれた感じでダメージは少ない。シュテルの追撃で、二匹目も倒れる。

 戦闘終了!


 ……ん? バイヒが消えた後に、何か光ってるなあ。

「倒したモンスターからも、素材が取れることがある。せっかくだ。拾ってみろ」

 言われたとおりに拾い、アイテム図鑑を確認する。

《バイヒのかけら:名前の通り。低反発で、触ると気持ちいい》

 ……だから何の説明にもなってないって、この図鑑!

「ナーエの小川程度なら、おれ達だけでも大丈夫だけどな。他の採取地には、より強いモンスターが出ることもあるから、そういう所にいくなら、それなりの準備をして行ったほうがいい」

 なるほど。しばらくはこの辺りで採取をしていた方が無難ってことか。

 幸いにもその後はモンスターに出会うことなく、私達は工房へと帰りついた。


「じゃあ、合成について説明を始めるぞ」

 工房でしばらく体を休めてから、私達は拾ってきた素材で合成を試みることにした。

 正直、ちょっと楽しみなんだよね。一体、どんな物がつくれるんだろう。わくわく。

「……っと、忘れてた。その前に、これを渡しておく」

 と言ってシュテルは何かを渡してきた。これは……、種?

 少し大きめで、球形の、植物の種みたいだ。

「あんたにやってもらう仕事の三つ目だ。というか、実質天上と地上の仕事をこなしてたら自動的に果たされるから、特に作業としては必要な事はないんだがな。あんたには、この種を育ててもらう」

「種を、育てる?」

「ああ、これを最後まで育てること。それを果たせば、あんたは元の世界に還れる」

「ものすごい重大事じゃん!!」

 もっと早く言ってよ!!

「だから、基本的には持ってるだけでいいんだって。とりあえずこの工房に置いておけ。それだけでいい。勝手に育っていく」

「ほんとに……?」

「ああ。ただ、どんな『もの』に育つかは、あんた次第だけどな」

 責任重大だ!!

 でも、シュテルはそれ以上種について説明するつもりはない様で、合成の話題に戻した。

「合成については、説明することはほとんどない。合成したい素材を置いて、融合を願うだけだ」

 ちょっと待って……と言いたいところだけど、合成については私も気になるところだし……、種についてこれ以上聞いても答えてくれそうもない。

「え? それだけでいいの? なんか手順とか、法則とかは、ないわけ?」

「ない。あのな、まだ自覚がないみたいだけど、あんたは主神なんだよ。神のトップなの。正直、万能みたいなもんだ。

「だから、ほら。とりあえずやってみろ」

 そんなこと言われてもなあ……。十七年間、一般市民(中の下)だったわけだし。そう簡単に人間変わるわけがない。

 でもま、とりあえず、やってみますか。


 適当に、きれいな水・ただの砂利・ゲベートの香草を置いて、祈ってみる。

 ――と、

《素材の数が多すぎます》

 ……。

 って言われた。

 言われたっていうか、なんか、頭の中にウインドウが表示された、みたいな感じ。

「ああ、言い忘れたが、あんたはまだ一度に二つの素材しか合成できないぞ」

「全然万能じゃないじゃん!」

 重複組み合わせのパターンが限られるよ!素材が6種類だから7C2=21通りだよ!

「この世界の他の存在に比べりゃ万能だってことだ。『主神』としては最底辺だよ。下の下だ! まだレベル1!」

 うあ。怒られた……。ごめんなさい、浮かれすぎました。

「地道に経験を積んでいくしかねーの。頑張れ」

「……うん、そうだよね。始めたばかりだもんね」

 よし! 気を取り直して、やっていこう!

 そして私は片っ端から色んな組み合わせで合成を始めた。


 一回目。

《素材が不足しています》

「組み合わせはいいが、二素材じゃ無理みたいだな。さらに素材が必要なようだ」


 二回目。

《その組み合わせのアイテムは存在しません》

「組み合わせ自体が間違ってるみたいだな」


 ……三回目。

《スキルが不足しています》

「……何らかのスキルを習得しないと合成できないみたいだな」


 …………四回目。

《レベルが不足しています》

「…………あんた自身のレベルが低すぎるみたいだな」


 …………。

「シュテル~……」

 私は涙目でシュテルを見つめる。

「だ、大丈夫だ! まだ始めたばかりなんだし、素材の種類も少ないんだから仕方ないって! きっと成功する物があるから。もう少しだけ頑張ろう。な?」

 私があまりに痛々しかったのか、シュテルが普段よりも優しい発言をする。

 小学生に慰められる、女子高生の図。

 はっきり言って、情けない。

「うーー。もう一回!」

 なんとか立ち直り、五回目の合成を試みる。

 きれいな水+きれいな水を置いて、合成……っと。

 ピカッ。

 お?

 おおおお!?

 今までとは違い、二つの素材が光ったかと思うと、その後には一つの見たことのないアイテムが出現していた。

《新たなアイテムが作製されました》

「や、……やったーー!! 成功! 成功だよね!?」

「ああ、だな。よかったな」

 シュテルも嬉しそうに微笑んでくれる。

 うわあ、嬉しい。

 そうだ、さっそく図鑑を見てみよっと。えっと……?

《冷湿マテリア:水のエレメントのかたまり。素材よりも少しだけエレメントが多い》

「基本のアイテムだな。単体では特に効力はないが、エレメントは補給できる。他のアイテムの素材にもなるかもしれないな。ちょうどいい。還元をやってみるか」

「還元?」

「ああ。アイテムを分解して、エレメントに戻すんだ。そうすると、あんたにエレメントが蓄積される。それを今度は十二柱神に注げばいい」

「なるほど……。分かった。これも、還元したい、って私が願えばそれでいいの?」

「そうだ。理解が早いな。えらいぞ」

 小学生に褒められる女子高生の図。

 ……やっぱり情けない。

「えっと……、じゃあ、還元!」

 なんとなく、両手をかざしたりしてしまう。雰囲気だ、雰囲気。

 パッ! っと、アイテムが光の粒となって散り、私に吸い込まれた。

「そうだ。今ので、あんたにエレメントが補給された」

 うん、なんとなく、少ーしだけ充実感がある。

「あんたの仕事として教えるべきことは、一通りこんなところだな」

「そっか。じゃあ後は作業するのみだね。シュテル、ありがとう!」

 ぺこりと頭を下げる。

 よし、頑張るぞ! っと。

 そうして私は、合成を繰り返した。

 残念ながら、採取した素材から合成可能なアイテムは冷湿マテリアだけだったので、私は素材がなくなるまでその合成と還元を繰り返した。


【現在の保有エレメント】

・火:0

・気:0

・水:160

・土:0

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