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白羊・処女・双魚 episode.0&side

 工房に帰り着くと、シュテルに声をかけられた。

「主神、どうやらあんたがスキルをいくつか習得したみたいだな」

「え? ス、スキル?」

「ああ。十二柱の神々は、それぞれ十二の工程を象徴している。各神々と交流を深めることによって、あんたはその工程のスキルを習得できる。そうやってスキルを増やしていけば、合成の幅ももっと広がるだろう」

 そうか、ルピオさんやタインさんと一緒に採取をしたことで、少し仲良くなれたのかな?

「今回習得したスキルは、『分離』と『発酵』のようだな。分離は、天蠍宮、つまりルピオとの縁で習得されたスキル。発酵は、磨羯宮、つまりタインの縁だ。縁が深くなればなるほど、スキルの熟練度も上がっていくだろうから、十二柱全員との縁をまんべんなく深めていくのがいいだろう」

「そっか……、全員と、仲良くすることが大切なんだね」

「そういうことだ。そろそろ、他の十二柱にも会いに行くか。まだ半分にしか会ってない訳だしな。採取アイテムも増えてきたから、合成と還元で、エレメントをためておけ」

「皆のキャラが濃すぎてやって行けるかどうか不安だよ……」

「安心しろ。もっと濃い奴もいるから」

 シュテルがにやっと笑って言う。

 ……安心できるか!


【習得スキル】

・分離 Lv.1

・発酵 Lv.1


【合成アイテム】

・旅立ちの風+旅立ちの風=

 《熱湿マテリア:気のエレメントのかたまり》

・何かの鉱石+何かの鉱石=

 《冷乾マテリア:土のエレメントのかたまり》

・岩塩+きれいな水=

 《食塩:精製した塩。食べられる》


【現在の保有エレメント】

・火:0

・気:100

・水:1

・土:140


 次の日の朝、私はシュテルに連れられて天上の宮殿に向かった。

 いつものように、応接間へと向かう。

 …どうせまた美形揃いなんだろうなあ。


「主神をお連れした。入るぞ」

 はい、案の定でしたー。

 右の壁際の床に座り込んでいたのは、二十歳くらいの青年。燃えるような長い赤い髪を後頭部で無造作に一つにくくっており、ルビー色の瞳が真っ直ぐに私を捉えている。なんとなく人を寄せ付けない雰囲気があり、まるで野生の狼のような迫力を感じさせた(……野生の狼を見たことはないけれど)。

 立ち上がって私を迎えたのは、赤い青年より少し若いくらいの、眼鏡をかけた青年。赤い青年とは非常に対照的で、前者が動であるとするなら、眼鏡の青年は静。きちんと整えられたダークグリーンの髪は清潔さと完璧さを、落ち着いた勿忘草(わすれなぐさ)色の瞳は深い知性を宿している。

 けだるげにソファーに片肘を付き、斜めにこちらを見つめているのは二十代後半の青年。柔らかくウェーブしたアクアマリンの髪は軽く結われ、途中から肩に垂らされている。微笑をうかべたマリンブルーの瞳が、艶っぽく私を見ていた。

 

 赤い青年は立ちあがりもせず、座ったまま私を見据え、言った。

白羊宮(はくようきゅう)のヴィッダーだ。お前が仕えるに値する主神なら仕える」

 ……それきり、用は済ませたとばかりに私から視線を外してしまった。

 やれやれ、と眼鏡の青年がとりなす様に言葉を繋ぐ。

「ヴィッダー。仕えるに値するかどうか、なんて、私たちは考える立場ではありませんよ。それが役目である限り、果たすだけです。それに――」

 そこで、ちらりと私を見た。

「数日前に職務に就いたばかりの主神にその価値があるかどうかなど、答えは決まっているでしょう」

 あれ? その冷たい視線は明らかにYESとは言っていないなあ……。

「失礼。処女宮(しょじょきゅう)を司る、ユングと申します。よろしくお願いします」

 ユングさんは、見るからに形式的と分かる礼をした。

「君達、無垢な女の子をあんまり虐めてはいけないよ」

 ソファーの青年が言いながら立ち上がり、私に近づいてくる。うわあ、この人、仕草とか声とかから、あふれ出る色気が半端ない。

 って思って見てると、え、ちょ、近っ!

「はじめまして。僕は双魚宮(そうぎょきゅう)のイッシェ。よろしく」

 顔を覗き込むようにされ、髪を()かれる。

「まだ小さな種の様だね。……綺麗に華開く日を楽しみにしているよ」

 囁くように言われ、思わず赤面する。……けれど、よく考えると全然褒められてない。言われている内容は前二人と似たようなものだ。

「あー……、俺から、補足。ヴィッダーが、マルスの支配を受けた火の加護、ユングが、メルクーアの支配を受けた土の加護、イッシェがネプトゥーンの支配を受けた水の加護だ。……主神のこと、よろしく頼むぞ」

 シュテルに続いて私も挨拶をしたけれど……、きっとその顔と声は引きつっていたと思う。


「……なんというか、クセの強い奴らもいるが、仲良くなれば心強い味方だと思うから」

 帰り道、そんな風にシュテルがフォローしてくれたけれど……。

 その「仲良くなれば」がものすごく大変そうなんですけど……っ!

 ため息をつく私の背中を、シュテルがぽんぽんと叩いてくれた。

 ……この子に癒される日が来ようとは。


 ――side:ヴィッダー――


 主神のくせに、何をおどおどしてるんだか。

 お前はおれ達の頂点に立つ人間だろうに。

 おれの助力が必要というなら貸してやるが、扱い方を間違えるなよ。

 実力に見合わない主神面をするなら、協力するとは限らない。


 ――side:ユング――


 まあ、調査通りの印象でしたね。おそらく、元々社交的ではない人格の上に、慣れない世界と主神としての役割、そして十二柱の神々の性格に戸惑っているといった所でしょう。

 こっちとしては知ったことではありませんけどね。

 この世界を救うために、必要な助力はします。

 現状の私のスタンスとしては、それ以上でもそれ以下でもない。


 ――side:イッシェ――


 ふふ、随分と困ってしまって、可哀想に。

 自然のままに咲く野草も良いけれど、僕の好みとしては少し地味過ぎるかな。

 からかって遊ぶのも面白そうだけれど、さて、どうしようかな?? 君はどうして欲しい?

 役目だけ果たしてくれ、なんてつまらない要望は、通用しないよ。

(忠心度目安:シュテル>ルピオ>タイン>クレイ>シュッツェ=ティア>ユング>イッシェ>ヴィッダー=ヴィル)

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