表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/36

天蠍 episode.1&side

 採取地に向かう道すがら、依頼についてシュテルが説明してくれる。

「依頼ってのはまあ、さっき見たとおり二種類に大別される。討伐依頼と、入手依頼だ。討伐依頼の方は、まあ名前の通り、モンスターを倒してくる依頼だな。入手依頼は、依頼人の要望に沿ったアイテムを提出すればいい。回復アイテムを、とか、日用雑貨が欲しい、とかまあそんなんだな。なるべく良質のアイテムを提出したほうがもちろん収入もいいし、評価も上がる。

「依頼をこなすってのは、必然的にあんたの世界に貢献するわけだから、それ自体でエレメントの上昇が見込める。つまり、アイテムを渡すとそれがお金に変わるだけじゃなくて、還元した時+α(プラスアルファ)くらいのエレメントは入手できるだろう」

「へえ、じゃあ還元するよりも、創ったアイテムはなるべく依頼で使った方がお得ってことだね」

「ああ。依頼に成功すると隠しステータスも色々と上昇するしな」

「ステータスとか言わないで!?」

 世界観を大事に!

「えーっと。そ、そう。今日は、どこに採取に行くのかな?」

「ああ、そうだな。街が出来て道も(ひら)けた。ちょうどいい距離だし、ファングの街道にでも行ってみるか」

 街道かあ……。

 一体何が採れるんだろう?

「そうだ、今日の採取には、もう一人、付き添いを呼んでおいたから」

 え?

 突然のシュテルの言葉に、私は驚く。

 ちょうどそのタイミングで、進行方向に人影が見える。

 採取地に向かう私達を一礼し迎えたのは、異世界初日以来、三日ぶりに会う、白銀の髪の騎士、ルピオさんだった。


 ザッ、ザッ、ザッ……。

 歩く。採取。歩く。

「主神、お疲れではございませんか?」

「いえ! 大丈夫です」

「どうぞ私に敬語はお止めください。……何か御用がありましたら、何なりとお申し付けください」

 ザッ、ザッ、ザッ……。

 歩く。採取。歩く。

 き、気まずい……。

 ルピオさんとどう接したらいいのか分からない! 非常に緊張感のある採取になってしまっている。

 シュテルはいくら美形とは言っても、まだ子供だし、接するのにも気安いのだけど……。ルピオさんは私より年上なのに、私への態度が極端に(うやうや)しいものだから、恐縮してしまう。

 今も、私をかばう様に隊列の先頭(つまり前衛)に立って歩いてくれている。こんなに丁重に扱われるといたたまれないよ。

 だめだ、慣れない。正直に言ってしまおう。

「ルピオさん、あの――」

「私の事は、どうぞルピオとお呼び下さい」

「それです。あの、ルピオさんはどうしてそんなに私に対して丁寧に接して下さるんですか? どうしても慣れないんですけど……」

 すると、ルピオさんはいかにも不思議そうな顔をした。

「どうして、とおっしゃいましても。貴方は主神でいらっしゃいます。当然の事です」

「でも、私はルピオさんよりもずっと年下だし、主神といってもつい数日前に急に連れて来られただけの人間ですよ。そんな大層なものじゃないです」

「とんでもない事です。主神はこの世界で一番尊いお立場でいらっしゃる。我々は主神を支え、お守りし、手足となるのが役目です。主神が主神でいらっしゃる限り、心よりお仕え申し上げます」

 

 ……そうか。

 ルピオさんの言葉を聞いて、すとん、と腑に落ちた気がした。

 ルピオさんは別に、「私」に接している訳ではない。「主神」という立場に対して、礼を尽くしているんだ。

極端な話、主神という任に就くのが誰であっても同じように接しただろう。逆に言えば、私が主神でさえなければこんな風には接されてない訳だ。

 なんだ。そう思うと、前ほど緊張しなくなってきたな。そんなに深く考えなくていっか。

「わかりました」

「?」

「ルピオさんにとって、主神という存在が大切なものであることは自覚しました。ルピオさんの態度は、そのままでいいです。私が慣れる事にします。でも、その代わりと言ってはなんですが、一つお願いを聞いてください」

「何なりと」

「私は、十二柱の人達を臣下と思うことはできません。ルピオさんはルピオさんで、私にとっては主神とか、十二柱とか関係なく、一人の人です。なので、私も接し方は変えません。私のしたいようにします。こんな感じで、これからも接していくので、よろしくお願いしますね」

「いえ! 主神、それは――」

 ルピオさんは焦って止めようとするけれど、もう遅い。私は冗談めかして言う。

「駄目です。主神からのお願いですから、聞いて下さい」

「……っ」

 あはは、ルピオさん、言い返したいけど言葉がないみたいだ。

 うん、前より、ルピオさんと接しやすくなったかな。


 ――side:ルピオ――


 失態だ。私が主神からあのように丁寧に振舞って頂くわけにはいかないのに、なし崩しに受け入れてしまった。

 主神は不思議なことをおっしゃる。一人の人、とは。

 主神は唯一のお立場だ。我々とは天と地の差があるお方なのに。

 個性の強い十二柱の中で、私だけは忠実な(しもべ)であろうと誓ったのに、このままでは他の者に示しがつかぬ。

 困ったことだ。

 ……困ってはいる。

 だけど、不思議と、不快ではない?


【採取アイテム】

・《道端の石:そこら辺に転がっていた石》

・《旅立ちの風:「俺たちの戦いはこれからだ!」》

・《先人の足跡:道しるべになる》

・《小さな花:名前はまだ知らない。アスファルトには咲かない》

・《馬の尾毛:多分馬車から落ちたもの。楽器の弓とかに使うよね》

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ