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ヒスティマⅠ(修正版)  作者: 長谷川 レン
第九章 ソウナの願い
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悪魔



「白銀の髪の女と……」


 ぶっ飛ばそうか?


「おいリク。今ぶっ飛ばそうかとか考えてたか?」


 そんな滅相もない。

 って言うかボクの思考を見抜かないで……。


「漆黒の髪の女か……」

「リク。こいつ殺すぞ」


 キリは拳の具合を確かめる。


「ちょっと待ってくださいキリさん! 今ボクを止めたのキリさんですよ!?」


 止める声を放つボクにキリは、一言で切り捨てた。


「忘れた」

「忘れちゃダメですって!!」


 今にも飛びかかろうとしているキリをボクは腕を持って行かせないようにガッチリ、ホールドする。

 その瞬間、キリは目の前のことよりもボクの方に意識が向いてしまったようで、言いにくそうにボクに謝った。


「お、おう……。すまん……。だから、その……」


 最後の部分は聞き取れなかったけどとにかく止まってくれたようでホッとする。


「百合は別の所でやってもらえないかな?」

「んな関係じゃねぇ!!」


 百合がどうかしたのだろうか?

 確かに関係はないが……。

 後ろから来ている幻魔は今のところ銃や弓で全滅している。

 だけどいつまでもは持たないと思われる。


「はぁ……。後ろは任せろ。リクはこいつをぶっ飛ばせ」


 言葉に少し殺意と疲れが入っている気がするのは気のせいだと思い、ボスの前に立つ。


「ダメ元で聞いてみますが……。お願いです、悪魔さん。その人の中から出て行ってもらえませんか?」


 できるだけ穏便に交渉してみる。

 戦いは好きじゃない。

 だって痛いじゃないですか……。

 体も、心も……。


「そこまで知っているからこそ言える言葉か? 悪いが出る気はない」

「では、なぜあなたはこんな事をするんですか? あなたに利益があるんですか?」

「大いにあるさ」

「ここでの事をしゃべればみんな、この会社は無くなって、あなたがここにいる意味も無くなりますよ?」

「ここで君たちを殺せば出回る事もないし、何より悪魔を信じる人はそういないだろう。知識としては知っていてもな」


 座から立ち上がるボスは、片手に邪悪な魔力を纏っている剣を顕現させた。

 交渉ではどうにもならないと思い、無理やりにでも引き剥がす方法がないかルナに聞く。


「ルナ。どうやれば悪魔と引き離せるの?」

『そうじゃのぅ……。一番簡単なのは妾が直接魔力を送り込んで悪魔をあの男から弾く事じゃ』


 直接魔力を……。


「じゃあ近づければいいんだね?」

『後は妾をあやつに刺せ』

「えぇ!?」

『そうでないと直接魔力を送り込めん』


 すると人を刺さなくてはいけなくなるのか……。

 ……どこを刺せば?

 それにあんまり刺したくない……。


『『リク』がなにをかんがえているか、なんとなくわかります。でもいまはそういうのはかんがえないほうがいいです。さすのはいっかいだけ。わたしもてつだいますから』

「そうだね……」


 シラの言葉に少し頷くと、ボスが剣を上段から下段に振りぬく。

 そして顔に笑みを浮かべ、黒い魔力を放出させた。

 悪魔の魔力だろう、隠す気はないようだ。

 ボクは刀を掴み、低く跳躍。

 刀を横に構え、水平斬り。

 しゃがんで避けられたので下段から上段へ斬り上げる。

 ボスはそれを見越したように、体を横に逸らし、剣を水平に振りぬく。

 ボクは後ろに一歩下がり、魔法を発動。


「〈氷弾〉!」


 魔法を使い前方に氷の弾丸が飛ぶ。


「〈武盾(ぶじゅん)〉」


 ボスは面の魔法を目の前に形成。

 全てその黒い盾に阻まれる。


「なら……〈氷柱〉!」


 一瞬で魔力を溜めてボスの足元から無数の氷が突き立つ。

 それをボスは前に移動して回避。


「シ……ッ」


 そのまま剣を前にして突きを放つ。

 ボクは的確なその突きを避けられないと感じ、下からすくいあげて上に弾いた瞬間。

 剣を握っていない左手の拳をまともにくらった。


「がふ……ッ」


 後ろに飛ばされ、無様に転がる。

 なんとか姿勢を直し、立つと、目の前にボスの姿。


「!?」


 完璧に心臓を狙った剣先を刀の横面で防ぐとボスはその姿勢からさらに押し込んだ。


『『リク』! だめ! すぐによこにいどうして! 『幻魔』がうしろでかまえてる!』


 え? と思ったのもつかの間。

 背中に冷たい感触が当たったと感じた瞬間、ズガァンッと幻魔が何かに飛ばされたような音がした。


「大丈夫かよリク」


 構えていた幻魔をとばし、リクの体を支える。


「ほぅ……」


 ボスは失敗だとわかると、すぐにボクから飛び退く。

 一回の跳躍で10m近く飛んだボスを見て、キリに命を助けられたことを知る。


「はぁ。もうちょっとでリクの串刺しを見る嵌めになってたな……。ワリィ。もっと幻魔を倒すスピードあげるわ」

「いえ。助けていただいてありがとうございます」

『ほんとう。『危ない所』でした……』


 シラがホッとしたような声を出す。


『『神』はあいてに……。とくに『悪魔』にすがたをみられては『対策』をされてしまうので、すがたを『武具』にしますが……』


 すると腕輪が光り、ボクから離れてすぐ横に並んで、人型に戻った。

 氷を複数出現させ、シラの周りに氷柱が出現する。


「まだ『リク』はしょしんですから、わたしじしんも、こうげきします。おりをみて『武具』にもどりますので」

「わかった。ごめんね、シラ」

「いいえ。『主』をしっかりとまもるのが『契約した神』のつとめです」

「冬の女神か……」


 剣を構えるボス。

 ボクは刀を鞘に納めて柄を握ったまま、身を低くする。


『二の太刀』を放つ溜めの魔力を溜める。

「一か八かで剣を折る。それができなくても何とかして手からはじく。ルナ、できるかな?」

『あの剣は悪魔の力が纏っておる。腹部に当たれば十分切り捨てれるじゃろう』

「わかった。行くよ……」


 ギュンッと風が僕の動きにつられるようにして吹く。


「〈二の太刀 雪麗〉」


 溜めた魔力を体内で爆発させ、刀を数秒内に何十回。


「〈武連〉」


 だけど、ボスはそれと同じ速度で応戦してきた。

 連続して刀と剣がぶつかり合う甲高い音が鳴り響く。


「速い……」

「貴様に言われたくないな……。さすが神の力を持っているだけの事ではある。〈武乱〉」


 さらに四連撃の刃が同時に襲う。

 避けられないと思い、魔法を使用。


「〈一の太刀 鏡花水月〉!」


 剣が僕の体を通過。

 だけどそれは幻。


「実体がない?」


 剣が幻像を攻撃したことにより、幻像は消え、ボクの居る場所も分からなくなる。


「一体どこに……!?」


 ボスがいきなり体をずらす。

 元いた場所にボクの刀が通る。


「!?」

「もう少しで斬られるところだったがな」


 そう言うとボスは剣を上段から斬り下げる。

 ボクは刀を横にして剣を防ぎ、横に滑らせて流れるように攻撃。

 ボスが横に一歩移動して攻撃仕掛けようとしたとこに、氷の魔法が横から奇襲をかける。


「ぐ……ッ」


 予期してなかったようで、氷の魔法に飛ばされ、剣を床に突き立てて踏みとどまる。


「ナイス、シラ!」

「こうえいです。〈氷槍〉!」


 ボスに向かって氷の槍が数個飛ぶ。


「ガァッ!」


 ザンッと剣が氷の槍をいとも簡単に砕いた。

 剣を振ったボスの表情に苛立ちが浮き出ている。

 歯を噛みしめ、イラつかせながら、剣を上へと向ける。


「よくも……。よくもこの俺にぃぃ……ッ! もう容赦はせん! 我が最大魔法で撃ち砕いてくれる! 死ね人間ども!! 暗黒魔法〈魔神剣〉!」


 剣に黒い力が収縮されていく。


『な!? 初級悪魔が〈魔神剣〉じゃと!?』

「え、なに!?」


 ボクは訳がわからず、一旦ボスから離れる。


「むぅん!」


 ボスは剣をこちらに向けて叩きつけると、黒い何かが地面に吸い込まれていった。


『リク! もう二度と止まるな!』

「え? どうし――」


 て、と言う前に変化は起こった。

 突如地面が黒く染まったと思った瞬間、地面から黒い魔法が空に向かって放出。


「――――ッ!?」


 ズゥゥゥゥゥンッ!!!!


 地響きを鳴り起こして、闇と……、

 白い空気が流れ出ている透明な何かに視界をいっぱいに包まれた。


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