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ヒスティマⅠ(修正版)  作者: 長谷川 レン
第九章 ソウナの願い
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素顔



「むむむ……。お兄ちゃんをあいつのところまで届ける役はユウがやりたかったのにぃ……」

「貴様は私の相手をしていればいい。〈ブラッド・ファング〉!」


 赤黒い血の色の狼の形をした魔法がとんでくる。

 幻魔を切り捨てながら、炎の力を強めて魔法を切り裂く。


「ったく。あんたがお兄ちゃんの方に小剣(ダガー)なんか投げなかったら楽に気絶させてあげたのに」

「それは残念。元より、私が貴様を殺してしまうのだからそんな余裕なんてないけど」

「いや、やっぱり雑賀さんの家でお兄ちゃんの顔に傷を付けたっていうあんたを楽には気絶させない。痛めつける」

「それは怖いな。そうか、同じ銀髪、家族で姉妹か。お兄ちゃんと言っているところは疑問だが」


 仮面はさらに武器を顕現する。

 少し戦って見たけど、仮面の戦闘スタイルはコントロール抜群のダガー投擲と魔法での近距離の相手の攻撃が当たらない連繋攻撃。

 中衛タイプのウザい奴だね。


 事実、仮面は近くとも遠くともない微妙な距離を保っていて、その距離が今のところ動いた様子がない。

 まったく、気持ち悪いね。

 こちらからの攻撃は魔法だけしか当たっていない。剣の間合いに入ってくれないのだ。

 だからと言って遠くに行こうとしても同じようについてくる。

 まるで……、


「くっつき虫みたいだね仮面の人」

「失礼な。私はちゃんと人間だ」

「悪魔の隣にいたような人がね~♪」

「彼の近くに居ようが居まいが、私はレッキとした人間だ」


 するとダガーがまた頭部、胸部、足部を狙って飛んでくる。

 全てをはじいてユウは前に進んだ。


「近づく気ですか? 〈ブラッド・ファング〉」


 また同じ魔法が来たと思うと、ユウは大剣を振ってなぎ払う。そしてその魔法に隠されていたかのようにダガーが飛んできていたので、身体強化を一瞬だけ早くする魔法〈焔麗〉を発動して全てはじく。

 たった一瞬の出来事だったのに、またも間合いを開けられる。


「どうしよ……。このままじゃ近づけないかも」

『慌てるな。近づけないならこちらも遠距離魔法を仕込むまで』

「ユウが遠距離魔法苦手なの知ってるでしょ?」

『そうだったか?』


 とぼけた風に言うエングスにちょっとイラつきが混じる。お兄ちゃんを傷つけられて、幹部長に怒りがあるからかもしれない。まぁ殺しはしないが。殺しは好きじゃないし。


「じゃ、エンの御所望通り、遠距離で行きますか。〈焔刃(ほのおのやいば)〉」


 大剣にかけてあった焔の性質を変える。そしてユウは大剣を横に振りかぶり……、空を斬る。

 ブォンッと音がすると同時に、焔の刃が幹部長にめがけて飛んで行った。


「これくらい、簡単に避けれる」


 そう言うと、幹部長は悠長に避け、手に持っていた数個のダガーを投擲してくる。


「これ、180度、反転してあげる」

「?」


 ユウは飛んできたダガーを大剣を構えて……撃ち返した。キンッと音を鳴らして撃ち返したダガーはすさまじく、焔の刃と一緒に幹部長に帰ってくる。


「だからどうしたというのだ?」


 幹部長はダガーを消し、焔の刃を避け、さらにダガーを展開。


「しかしこのまま行っても埒があかないな……」


 そう言いつつも、幹部長は先ほどよりも多いダガーを投擲。

 確かにいつまでも続くかも知れないこの状況に少々飽きてきた。

 ユウはやっぱり近づきたいと思い、少々、手荒なマネをするかと心に決めた。

 決めたと同時にユウは投擲されたダガーの真ん中を突っ切っていく。


「また近づこうとするのか? 無駄だしつまらない」

「それはどうかな。〈炎砲〉!」


 火の玉が仮面にとんでいく。

 それは仮面が放ったダガーで消されたが……。


「…………? いない……」

「せいやぁ!」

「!?」


 ザンッと仮面が二つに割れる。

 殺す気はないので薄皮が切れるぐらいで斬った。

 それを仮面の人はとっさの回避をした。

 そして仮面の奥から出てきた顔は……、


「貴様……」

「うわぁお♪ 結構可愛い顔なんだね~♪ ……ってまさか女の子だったなんて……。顔傷ついて無いよね?」

「戦闘中に……ッ。ふざけやがって……ッ」


 年齢は14、5ぐらいだろうか?

 ユウとあんまり離れていないように見える顔で、キッとしたツリ目に赤い瞳。キュッと引きしまった唇。茶髪セミロングの何処からどう見ても女の子だった……。


「よくも! 〈螺旋双投剣〉!」


 二つのダガーが螺旋を描きながら飛んでくる。


「あれ? まさか恥ずかしかった? 〈焔剣〉!」


 ギンッとさながらドリルの如く飛んでくるダガーをはじく。


「くッ」


 口を噛みしめ空中に静止する。

 さらに数百の小剣を顕現させてこちらも空中に静止させる。


 ――って、え……?


「ちょ、ダガー多くない!?」

「これくらい私の生まれ持っての(、、、、、、、)魔力(、、)を使えば造作もない! 〈剣舞〉! 切り刻め!」


 ダガーがさながら舞いのように踊って襲ってくる。

 普通にやって、一つ一つ落とすのは無理だろう。

 だから――ゴウッ。


「火よ……。潰せ、砕け、堕とせ……〈焔神技・乱ノ型 蒼焔撃〉」


 蒼い焔を剣に纏わせ、迫りくるダガーを全て撃ち落とす。

 常人技ではない速さで動いたのでその後の硬直状態になるのは仕方ないが、『崩ノ型』で周り全てを焼き尽くすとお兄ちゃんにまで当たるかもしれないのでこれを使うしかない。


「ば、バカな……。化け物……」

「化け物に利用されているあんたに言われたくないもんね」

「く……黙れ! 〈風烈〉!」


 初めて彼女は接近してきた。

 風の力で上がっているスピードは時速150kmは超えているだろうが、まだまだ遅い。キンッと音をたてて大剣と小剣が交差する。

 その際にぶつかった衝撃が広がる。


「初めてあなたから近づいてくれたね」

「!?」

「ちょっと遅いかな。〈二連〉」


 魔法で加速させた二連撃を関節である肘の裏と膝の裏を目がけて攻撃。狙いがわかったのか、それを紙一重でかわし、また距離を置こうと後ろに移動しようとして下がる。

 だけどせっかく近づいてきたのをまた離される訳にはいかない。距離を開けずにさらに追撃。

 彼女はそれをさらに顕現させたダガーで防ぎ、もう片方の手でダガーを顔目がけて投擲。


「危っ!」

「今のを避けるかッ。なら!」


 さらに何個か投擲。全て避けて大剣を肩に担ぐ様な構えをする。


「〈フレイムロード〉!」


 剣を振って炎の道を作り、加速。


「くっ。〈剣――」

「やらせないよ!」


 加速した大剣が彼女に当たるコース。


 ――ギィンッ!


 彼女はダガーで防いだが、勢いを殺しきれずに飛ばされて壁に激突。


「か、は――ッ」

「ここまでだね」


 大剣を突き付ける。


「く……」


 周りにいた幻魔達はユウ達の乱闘のおかげで、いつの間にか全滅していた。いや、ユウの攻撃だけだろう。幻魔が消えたのは。幹部長に神の加護がついているとは思わない。


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