友達のために
ちょっと文字数少ないです。
「シネ……」
上段から剣で斬りかかってきたので身を横にしてすれ違いざまに胴体を横に一閃。
ルナの刀の切れ味はすさまじく、紙のように幻魔は斬れた。
それを見た幻魔は体から少しのところに魔法で作ったろよいのような膜を纏うが、発動して少しのところで光が包み、魔法で作った鎧は解除されていた。
すると銃声が連続して聞こえたり、弓矢が幻魔の(人で言う)頭の部分を的確に貫いたり、時間をおいて、火や水の魔法がとんでくる。
こちらは幻魔を倒すことはできず、せいぜい幻魔の行動の邪魔をする程度だったが、その隙を見逃さず一瞬で切り捨てた。
「へぇ。魔法を使わずで一撃かよ」
すぐ横でキリが幻魔を蹴り飛ばす。
蹴られた幻魔は他の幻魔などを巻き込んで飛んだが、生きているようで、立ち上がる。
「やっぱ神の力を使えんのと関係があんのか?」
さらに近づく幻魔をとばす。
幻魔の動きは単純と言っていい。
近づいて剣や槍、斧などで攻撃。遠くにいれば魔法を放つ。
後者はソウナが七割方解除という恐るべき支援能力を発揮しているので魔法は大体当たらない。
「わかりませんけど……。ルナが言うには、幻魔や悪魔には神の力は有効みたいです」
「へぇ。俺も神を飼ってみるかな……!?」
「え、うわぁ!」
いきなりキリさんが腕を掴んだと思いきや、力強く引っ張ったので、自分の腕の中にボクがスポンと入ってしまった。
しかもキリさんは今女性なので……。
「き、キリさん!? いきなり何――!?」
頭の後ろのふくよかな感触に顔を赤くしながら答えたと思った直後、ボクのさっきまでいた場所を鋭い剣先が通過した。
そこまで見て、キリさんの行動に納得して礼を言っておく。
「あ、ありがと……」
「別に。仲間に死なれちゃ困る。にしても……、数が多いな。俺は一対一用しか魔法使えねぇし……。リクはなんか範囲魔法は持ってるか?」
「ないことは無いですけど……。雑賀さんとか、全員に当たっちゃう可能性が……」
「……どんだけ広いんだよ……」
半ば呆れたように答えるキリ。それでも迫りくる幻魔への攻撃に手を緩めない。
「ハァ。しかたねぇ。俺は地道に倒してくか……」
そう答えたキリは近づいた幻魔の頭を鷲頭かみにし、地面に思いっきり叩きつけた。
その際、床にヒビが入るほどで続けざまに頭をサッカーボールよろしく蹴りあげた。
それがボクの方に来たので、ボクは幻魔の腹を横に切り捨てた。
「いきなりですか……」
「別に見えてたからいいだろ?」
ボクはふぅ。と息を吐いた後、刀を逆手に持って斬りかかってきた幻魔を鎧ごとキリの方に飛ばす。
身体強化を最大限に引き上げる事と、ルナの刀でなければ、多分ボクはできなかっただろう。
そのボクの行動にキリは笑っておもっきり拳を幻魔の腹に放つ。
「グギャ!」
「きめぇ声出してんなよ」
放った拳は何と幻魔の腹を鎧ごと貫いた。
「す、すごいですね……」
絶対にボクにはできない芸当だ。拳で貫くなんて……。
幻魔は薄くなって消えて行く。
「別に人間じゃねぇンだからいいだろ?」
それで拳を貫くのはどうかと思う。
「……楽しそう」
ズドォンッと幻魔に大穴を開けて来たのは白夜。さらにもう一発幻魔に撃ち込むと、ガンランスを振るって幻魔を切り裂いた。
「なんだよ、白夜も一撃で幻魔倒せんのかよ」
「……当然……だとは思わなかった。……幻魔なら遠慮なしに撃ち込める。……それだけ」
遠慮なしに撃ったのが幻魔が耐えれなかったんだ……。
ボクはその間も手を休めずに近づいてくる幻魔を切り捨てる。
影から出てきた幻魔をキリが力いっぱい殴り飛ばす。
「ナイスですキリさん」
「俺より白夜の方がすげぇけどな……」
半眼で白夜を見ると、白夜は小首を傾げただけだった。
ちなみに白夜がしている事は腰を落とし、足で支え、ガンランスを幻魔に向けて黒い光のような物を照射している。
幻魔はそれに当たると、次々と溶けて穴を開けて行った。
うん。どう考えてもレーz……みなかったことにしよう。
ちなみに、白夜の先で妃鈴が大盾を使って幻魔の剣や魔法を次々と防ぎながら大盾で叩いたり、大盾の横の部分を使ってガァンッと音をならせながら攻撃している。
それを一定時間やった後、大盾がいきなり変化したと思ったら、巨大な銃――まるでカノン砲のような――を展開し、直線上にいた幻魔を蹴散らした。
後ろにいた幻魔はなんとか生きていたようだが、前にいた幻魔は粉々に砕けたようだ。
「あれ、カナにやったけど簡単に止められてんだよな……」
「え? 母さんに?」
キリの呟きに驚きながらも幻魔を倒して行く。
だけど、これじゃあきりが無い……。
すると、暴れまわっていたキリと丁度背中合わせとなった時にキリが話しかけてきた
「リクさぁ」
「?」
「お前。あのボスのところまで走れ」
「え? それってどういう……?」
「司令塔が無くなりゃあこいつらも撤収するだろ。だから走れ。ソウナの話が本当なら奴の中に初級悪魔グレムリンがいるんだろ? 引きずり出して潰せ」
「えぇ!? ぼ、ボクなんかが倒せるのでしょうか……?」
「悪魔に神の力が有効だっつったのはどこのどいつだよ。良いから走れ。道は作ってやるよ。〈雷剛拳〉!」
ズガァァァンッ!! と一際大きな音がして一体の幻魔が吹き飛ぶと同時に周りの幻魔も吹き飛んだ。
「ほら行くぞ。ソウナ。救うんだろ? それだったら……」
言葉を止めるキリ。キリはボクにかけているのかもしれない……。
いや、かけているんだ。
そしてボクはそれに答えなきゃいけないんだ。
ユウは幻魔を切り捨てながら幹部長と戦ってる。
ボスと戦えるのはボクしかいない……。
そしてこれはソウナの願い。
友達……、ソウナを救うなら……、
「ソウナさんの父親も救わないとですね。行きましょうキリさん! 助けるために!」
「そう来なきゃな。行くぞ! 〈轟崩拳〉!」
キリがボスに向かって走り出す。
ボクはそれに遅れまいとして強化した体で全速力で追った。
背中を、守ってくれている彼女を感じながら……。




