表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ヒスティマⅠ(修正版)  作者: 長谷川 レン
第九章 ソウナの願い
85/96

力技?



「よくここまで来れたものだ、無謀な者ども……」

「お父さん……」


 入って早々、男の声がボクたちを捉えた。

 辺り一面、近衛兵が埋め尽くし、奥の座にはソウナのお父さんがいる。

 その隣には仮面をしている人が静かに佇んでいる。幹部長だ……。


『近衛兵は衛兵の比にならないくらい強いからな』

「具体的な戦闘力は?」

『これまでの死者はいない。傷を負ってもすぐに回復したそうだ』

「え……それって不死……?」


 気持ちを切り替えて目の前の近衛兵たちに銃口を向ける雑賀とデルタの声を聞いて倒せないのか聞く。

 他の者たちも雑賀に習って武器を構える。


「ルナ、シラ……行くよ」

『…………』

『…………』

「ルナ? シラ?」

『リク。さっき亮は近衛兵の人数をなんて答えた?』

「確か……250って……。それがどうかしたの?」


 ルナはボクの答えを聞いて確信を得る。


『やはりな……。リク、近衛兵は全て幻魔じゃ』

『そうですね。『幻魔』ならばしんだことがないのも、このまがまがしい『魔力』のせつめいができます』


 何やら二人で話し始める。

 幻魔がどうとか禍々しい魔力がどうとか、よくわからない言語を使う。

 神様語なのかな~なんて現実逃避をしながら動き出さずに均衡している場に耳を戻そうとすると……。


『リク! 聞いておるのか!?』


 ルナから喝がとんできた。

 いや……、だって二人で話してたじゃん……。


『よいか? 幻魔や悪魔はリクとユウ、二人でしか倒せないのじゃ。つまり、今回の主戦力はリクとユウの二人のみと言うことじゃ。加護を使えれば別じゃがのぅ』

「幻魔とか悪魔とか、ボクとユウしか倒せないとかよくわからないんだけど……」

『『幻魔』とは『悪魔』がうみだした『下僕(しもべ)』のことです。『悪魔』は『低級』から『上級』、もうひとつうえに『邪神級』がいて、『低級』が『250体』、『邪神』が『1000体』うみだすことができるのです。『幻魔』や『悪魔』は『神の力』をつかうもの、もしくは『神の加護』をえているのもしかたおせないという、とくせいをもっています。いまこのばでつかえるのは『リク』と『ユウ』だけなのです』


 な、なんて厄介な……。

 だからボクとユウ以外は……ってあれ?


「ユウも神の力を持っているの?」

『うむ。ユウが契約している神は火系統の神じゃな。かなり高位の神じゃ。妾と正面衝突すれば、おそらく今の妾では負けるであろう。魔法無力化とかは関係なしに考えて、じゃ』


 へぇ……ユウが……。

 ルナがかなり高位と言うからには強い神様なのだろう。

 いや、負けるかもと言っている時点で強いって事……。

 さっき大剣の柄を握って瞳を閉じたのは大剣と話してたからなんだ……。

 ボクはかなり集中して警戒しているユウに近づいて後ろから声をかける。


「ユウ。近衛兵たちは幻魔だってルナ達が言ってるんだけど……」

「幻魔? ……近衛兵たちの数は250……。そういうことか……」


 普段からは聞けないユウの声にポカーンとするも集中を途切れさせないようにボクはユウの隣に並ぶ。


「どうしよう……。雑賀さんたちじゃ倒せないんだよね?」

「確かに……。デルタさん。雑賀さんに時間稼ぎをさせて。幻魔相手じゃ神の加護のない人達は分が悪すぎる」

『何言っているのかよくわからないけど、了解。なんとか時間稼ぎをさせてみる』


 デルタの声が聞こえるとすぐに近衛が幻魔であることを全員に知らされ、雑賀に時間を稼ぐようにデルタから伝えられる。

 手際のいいユウにボクは少し寂しさを感じる。

 ユウはボクに隠し事なんてほとんどしたことが無かったのだから……。

 でも、いつも後ろをついてきたと思っていたユウの一つの発見をして嬉しくもある。


「……。エン、準備オッケー? ………わかった。それじゃあ……行くよ! 〈炎神の加護〉!」


 ユウが右手を上げて赤い膜のような物を広げた。

 それはボク達に降り注ぐと体をほのかな光が包み込む。

 炎神の力だとわかったが、ボクはシラがいるのでルナで無力可をさせてもらった。

 ユウはその行動に何も言わずに大剣を背中から抜き放つ。


「それは……神の力か」


 ソウナのお父さん……いや。

 悪魔、グレムリンはやはり知っていたらしく、隣にいる幹部長に、おそらくユウを攻撃しろと言われたのだろう、ボクはまだ神の力を使ってはいないのだから。

 仮面の人は飛翔し、空中に静止した。そして遠慮なく右手を天に掲げて魔力を上空に溜める。


『リク、あの仮面の者は風系統の使いじゃ。ユウに十分任せられるであろう』

「わかった。じゃあ……」


 ボクは目の前の幻魔達を見る。

 全身鎧に包まれた大量の軍隊とでも言おうか。

 見るだけでは人間だと思うが幻魔とわかっている今は、殺気だっている奴らはただの怪物だとしか思えない。


『あいては『幻魔』。このよにそんざいしてはいけないの。すべてきりたおすか、『悪魔グレムリン』をたおさなきゃいけない』

「が、がんばってみる……」


 つまり殺せと言うことなのだろう。

 ルナの魔力無力化効果が発動されて、瞬く間に強くされたような気がする。

 魔法に触れれば問答無用で消し去ることができるだろう。

 ルナの本気の力だろう。

 ボク自身はどこまで動けるのか……。

 今までは直感だけで戦ってきたが、その限界がいまだにわからない。

 長期戦になりそうだし、少し慎重になってみるか……、あるいは……。

 ボクは刀を握り直してかまえた。


「ソウナ……。これはどういうことだ?」

「お父さん……。いや、悪魔グレムリン! 私のお父さんの中から消えて!!」


 光の玉がソウナの周りを飛ぶ。


「……そこまでたどり着いたか……」


 ボスは静かに目を瞑り、カッと開く。


「行け近衛兵! ソウナ以外は殺してかまわん!」


 幻魔が一斉に動き出す。

 人間に見えるだろうが、魔力をよく見るとドス黒く染まっているのがわかる。

 魔力が見るだけで色がついて見えるのはルナ……〝ヘカテ〟がいるからであり、他の人が見ようとしても見れない。


「コロ……ス……」

「ヤ、レ……」

「気持ちワリィ声出してんじゃねぇよ!! 〈雷剛拳〉!」


 キリが先陣を切って走りだす。

 すでに〈雷迅〉は発動しているのだろう、〈炎神の加護〉である赤の光以外に雷も覆っている。

 するとずっと上で魔力を溜めていた幹部長が魔法を放つ。


「〈真空波・嵐〉」


 風の真空波が真上から押しつぶすように落ちてくる。

 どうやってもよけれないと思い、ボクはルナの無力化を使おうとした。


「幹部長……。ルナ! いけ――」

「お兄ちゃん任せて!」

「へ?」


 するとユウがボクを押しのけて風の真空波に向かって飛ぶ。


「全て吹きとべ! 〈焔神技・破ノ型 焔舞煉獄 二双連〉」


 ズバァンッと焔の纏った大剣を恐るべき速さでバツ字に斬ると、風の真空波ははじけ飛んだ。

 ボクはなんて力技だろうと感じた。いや、魔力がとても強いから力技に見えるのかもしれない。


「やはり邪魔だな。女。〈風烈〉」

「それはこっちの台詞だよ幹部長。〈焔剣〉。それに……」


 ユウは仮面の人に向かって走り出した。


「あんたはユウの怒りを買ってる!! ただでは済まさない!」


 心なしか、剣を纏っている炎が触れてもいないのに幻魔を燃やしているような気がする。


「何のことかはわからないが……良いだろう。貴様の火など、斬り伏せてくれる!」


 幹部長もユウに向かって飛行。

 真正面からぶつかり合った。



 次に前衛陣(リク、白夜、グレン、妃鈴、ガルム、ケルベロス)が前に出て幻魔を掃討。

 後衛陣(マナ、レナ、雑賀、雁也)は前衛陣、特に僕と白夜を攻撃しようとする幻魔を優先して攻撃する。


 そんな中、一番の戦闘の要となるのはソウナだと言っていい。

 ソウナはボクたちに攻撃が当たってしまうと即座に回復をさせてくれたり、敵の魔法をできる限り解除(キャンセル)しているのだ。

 丸薬で魔力の回復速度が上がっているとしても神型でないのにすごい魔力の持ち主だと、ルナが話してくれた。

 初めてソウナと会った時、どこかズレていると感じたのと関係があるかも知れない……。雑賀から聞いた、部屋にこもる儀式だとかで……。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ