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ヒスティマⅠ(修正版)  作者: 長谷川 レン
第八章 ジーダス攻略戦・後半
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カナがプラスになる事……。



「ク、ハハ……。やっぱ……強ぇのな、弦。今ので右腕が……イカレちまった……」

「貴様が……言うな……。俺はもう、動けん……」

「お互いさまだ……」


 横たわっていた体を左手でなんとか起こし、壁により掛けて右腕の具合を確かめるが、これは一度、強い回復魔法を使ってもらわなければ動かないと判断した。痛みも感じない所を見ると、右腕の神経は全部破壊されたな。触っても触られた感触がねぇ。


「……なん……だ。今の……魔法」

「自分の……手の内を……明かすバカが、いるかよ……」


 疲れた体で息をしながら言うと、弦は納得するようにしている。

 先ほどの二つ名をかけた世界ゲーム『一撃必殺』は結果だけ言うと俺の勝ち。


 細かいことを言うなら、弦は〈雷炎豪火〉を纏った後、さらに身体強化魔法を限界まで魔力をつぎ込んだ。それを俺は、稲妻属性の〈雷迅〉というスピードに物を言わせて、ある魔法を放ち、弦の魔法を粉々に砕いた。

 ある魔法とは、今のところ俺以外の奴が使ったと言うのを聞いたことが無いので弦も知らなかったようだ。

 だけど、これまでの魔法を使った時の魔力の量を合計すれば……。


「……もう……魔力がねぇな……」

「どう……するのだ……?」

「ん? 何がだよ……」


 今まで横たわっていた弦も重い体を起こして壁に寄りかかりながら、こちらと向きあう。


「魔力が……無くては、戦力外ではないか……」

「確かに、そう、だな……」

「まだ、幹部長が……。ボスが……いるのだぞ……?」

「ん?」


 そこで弦が言わんとしている事を察する。もう、息も上がっていないし、普通に喋れる。体は重く、痛みも、ダルさも感じるようになってきたが少しだけ回復したと思えば良いだろう。


「もしかして俺がボスとやらを倒す、とでも考えているのか?」

「少なくとも、英名が助けに来ない以上、お前の戦力はかかせないものだと思うのだが……」

「クハハハ」


 俺がボス戦のかかせない戦力と、弦の中では決まってしまったらしい。

 そのことに苦笑をもらしてしまった。


「……? 何がおかしいのだ?」


 訝しげに聞く弦に、正直に言ってやった。


「別に俺がいなくても倒せるさ」

「……誰が倒せるのだ? 元ジーダスの者どもか? 無理だな。奴らの手の内はボスに伝わってる」

「ちげぇよ」

「では誰だ?」


 それ以外には心当たりが無いのか……と思いながらも懐から瓶を取りだす。

 その瓶の中には液体が入っていて、それを飲むと魔力を完全に回復できる……


 ――とカナ(、、)が言っていた。


 ゲームのように魔力を完全に回復できる魔法薬などは無い。

 だからこれは俺の最大値の魔力の回復以上ができる魔法薬と考えるのが妥当なハズだが……。

 渡してきた相手はカナだ。

 しかも、これを貰ったのは俺だけだ。

 どう考えても怪しい……。


 怪しいって思わない奴がいるだろうか? いや、絶対にいないな。


「誰なのだ……? それはなんだ?」


 質問に答えずに瓶と睨み合っていると、弦がそれに気づき質問の内容を変えた。


「魔力を完全に回復させる物、と聞いた」

「聞いた? 完全に回復させる物など無いだろう?」


 それは御尤(ごもっと)もだ。今さっき聞かれたけど、なんとなく弦に「これを見たことがあるか?」と聞いても「知らない」としか返ってこなかった。

 ……正直、飲むのが怖かったりする。

 そこで、俺が飲むとカナがプラスとなる事を考える。

 カナがプラスとなること……『遊び』しか出てこないのだが……。


「誰が渡したのだ?」

「英名【自由な白銀(フリーダムシルバー)】」


 名前を言ってもわからないと思ったので二つ名で言ったのだが、すぐ後に、この二つ名は都市伝説程度にしか知らされていないのだったと思って、半ば意味無いかと考えていたのだが……。


「!? た、確か都市伝説程度にしか知らされていない……」


 以外にも知っていた弦に「ああ、そうだ」と答えると「!? 来ていたのか!?」と体ごと驚いたのですぐに痛みが来て、腕を押さえていた。

 そこでふと思い、ある言葉を口にした。


「あぁ。だけど、今は【黒き舞姫(ブラックダンサー)】と一緒に『真紅色の髪で黒のロングコートを着ていた男』と戦っている」

「真紅色の髪の男?」


 ジーダスの人間じゃないのか? さりげなく振ってみたけど、弦は知らないらしい。

 じゃあ、いったいあいつは何者だ?


「それよりも、その瓶だが……。魔力が全回復するのは信憑性があるのではないか? なにせ、あの生きる都市伝説【自由な白銀(フリーダムシルバー)】なのだからな……」

「……だけどカナだからな……」


 いまだに決心がつかづに、瓶を睨むようにしてみる。


「……飲んだらどうだ? 迷うくらいなら。少なくとも毒ではあるまい」


 確かに毒ではないだろう。

 だけど俺にとっては毒になる可能性が無くはないのだ。


「…………はぁ」


 にしてもこのままでは埒が明かないと思い、俺は意を決し、瓶の蓋を開けてグイッと思いっきり飲みほした。

 みるみる減る液体の味は甘く、それでいてどこかすっぱい味がした。


「ど、どうだ……?」


 ここまで首を突っ込んだら結果も知りたいのだろう、弦は恐る恐る聞くが……。


「いや。まだ何も……?」

「どうかしたのか?」


 弦に聞かれたときはなんともなかったのだが、少しづつ違和感を感じてくる。痛みが引いていくのはありがたいのだが、違和感に憶えがある俺はちょっとした厄日(、、)を思い出していた。


「ま、まさか……。いや、待て! カナならやりそうな――」


 そして、眩い光が出て、次に目を開けた時、そこにいたのは弦と――




 ――艶やかな黒髪ロングに、鮮やかな紫色の瞳をした胸の大きな女の子でした。




「ふ、ふざけんなカナぁぁぁぁぁぁぁぁああああああああ!!!!!!」


 怒りで我を忘れて、可愛らしい声で叫びながら雷を纏った拳で壁をぶち壊す。


 そこで、カナがなぜ性転換する魔法薬を渡したのかやっと理解した。

 ヒスティマでは、一人の人間に、男と女、それぞれに魔力を持っていると言われていて、しかもそれは実際に検証されているので本当だ。それだけでなく、男から女に、女から男になった者の魔力の最大値はどちらも変わらない事で、魔力切れ寸前でも魔法、もしくは薬で性別を変えれば魔力が全回復しているということだ。

 ただ、一つ捕捉しておくとして、男の時に魔力を使いきって、女になって、女の時の魔力も使いきってしまっては、もう魔力は無い。

 そこから男に戻っても、男の時に使った魔力そのままなので使えるはずが無いのだ。魔力切れは魔力切れ。しっかり回復しなければ意味が無い。

 女になってる最中に男の時の魔力は少しは回復するだろうが、使いきってしまったものはそう速く溜まるものではないから性別を変えれば必ず魔力があるわけではない。良い例として、今の俺の状況だな。

 今、男に戻ってもまたあの激痛と魔力切れで動くことは困難だろう。


「……だからと言って、むやみに女にする奴がいるか!!」


 すると視界の端にこちらを見まいと赤くさせた顔を横に向けている弦の姿が目に入る。


「ンだよ弦!! 言いたいことあるならハッキリ言えよ!!」

「いや……その……だな……。服……」

「は…………?」


 自分の姿を見る。

 先ほどの世界ゲーム『一撃必殺』のおかげで、右腕の袖からは破けて肩が露出している。

 あとはぶつかった時の余波だろう。


 服が耐えきれなくなって、脇、腹、太股、そして少し、豊満な胸があらわになっていて――


「~~~~~~!!!!!!」

「ま、待て!! 今はさすがにまず――」



 ――ゴスッ



 後日。

 二つ名をかけた戦いで負けてしまってキリの配下のような物となってしまった久詩那 弦氏はこう語る。





 『あの時の姿はとてもエロかった』と……。


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